イベントレポート
PCでのVR体験を1億人に届けるための「Radeon RX 480」
2016年6月1日 19:03
既報の通り、AMDはPolarisアーキテクチャを採用したGPU「Radeon RX 480」を発表した。199ドルというミドルレンジの価格で、VRヘッドセットが利用可能な性能を提供するという、コストパフォーマンスを追求したビデオカードとなる。本記事では、発表会でRadeon RX 480を紹介したRadeon Technology GroupのSenior Vice President And Chief ArchitectのRaja Koduri氏のパートをお伝えする。
今後のAMDのPCゲーミングの戦略は明確だ。今後のGPUのコードネームは恒星名となる。Polarisは北極星を意味し、今後の戦略を示す重要な役割を担う。まずは2億5,000万人いると言われるゲームコンソールのゲーマーをPCゲーマーに変える。そして最高で幅広いコンテンツをできるだけ早くPCゲーマーに届ける。さらに、真のVR体験を最初の1億人に届ける。この中で最大の挑戦になるのが、真のVRを1億人に届けることだ。
同氏はいくつかの課題を紹介する。まずはビデオカードを購入する84%の人が、100ドルから300ドルという価格帯のものを選んでいること。つまりこれが最大の層だ。Koduri氏はOculusの創始者であるPalmer Luckey氏が発言した、「ユーザーに金銭的な余裕が生まれる前に、VRを欲しがるようになる」の言葉を借りつつ、実に68%の人がVRの導入には高いコストがかかると感じている調査データを挙げた。
最終的にVRを全ての人に届けるために、まずは1億人を今後数年かけて市場に取り入れる必要がある。そのためにはまずVR対応PCを、今すぐにより身近なものにしなければならない。VRアプリケーションの開発に関しても、大きなスケールで実行可能にしなければならない。その解決策がRadeon RX 480であるとした。
速報の通り、Radeon RX 480は5TFLOPSの演算性能、256GB/secのメモリバンド幅、150WのTDPといったスペックを持つ。14nm FinFETプロセスの採用により従来の1.7倍の電力効率、そしてアーキテクチャの改善により従来と比較して合計2.8倍の電力効率を実現したという。
また、ハードウェアだけでなくソフトウェアも注力し、DirectX 12やVulkanといったAPIへの最適化、およびGPUをオープンにする「GPUOpen」戦略などにより、ゲーミング体験を高める。同氏は先日発表されたFPS「Battlefield 1」、および発売済みの「DOOM」の2タイトルを挙げ、Radeon向けの最適化が行なわれることをアピールした。
競合となるGeForceについても言及し、DirectX 12のアプリケーションにおいては、699ドルのGeForce GTX 1080とはほぼ見た目では区別が付かないほどの性能を実現できている点や、2基の同時動作でGeForce GTX 1080を超える性能を500ドル以下で実現できる点を挙げ、優位性をアピールした。
会場にもRadeon RX 480を搭載したLenovoのデスクトップ「Y900-34ISZ」が展示され、DOOMのプレイアブルデモが行なわれた。筆者も試してみたが、画質設定や解像度は分からないものの、FreeSync対応のディスプレイと併せて、非常にスムーズに動いていることが体感できた。