パソコン工房新製品レビュー

無難だがそれがいい。GeForce RTX 5060 Ti搭載の質実剛健Ryzen PC

パソコン工房「SENSE-F1B6-R77-SSX」

 パソコン工房の「SENSE-F1B6-R77-SSX」は、クリエイター向けに設計されたSENSE∞ F-Classに属するミドルタワーPCで、NVIDIA最新のミドルレンジGPUであるGeForce RTX 5060 Ti 16GBを搭載している。

 今回は、冷却性能と拡張性を重視したとされるSENSE∞ F-Classのビジュアルや機能を確認しつつ、最新鋭GPUを導入したクリエイター向けPCのパフォーマンスを確認する。

GeForce RTX 5060 Ti搭載のクリエイター向けミドルタワーPC

 パソコン工房のSENSE-F1B6-R77-SSXは、BTO PCブランドであるiiyama PCの「SENSE∞ F-Class」に属するクリエイター向けミドルタワーPCで、8コアCPUの「Ryzen 7 7700」と、ミドルレンジGPUの「GeForce RTX 5060 Ti」を搭載している。

 クリエイター向けPCとしてはミドルクラスの製品で、32GB(16GB×2)のDDR5メモリと1TBのNVMe SSDを搭載し、Windows 11 Homeをインストールした標準構成での販売価格は23万4,800円。

SENSE-F1B6-R77-SSX。黒くカラーリングされたミドルタワー筐体を採用している
AMDの8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7 7700」
NVIDIAのミドルレンジGPU「GeForce RTX 5060 Ti 16GB」
【表1】SENSE-F1B6-R77-SSXの主な仕様
CPURyzen 7 7700(8コア/16スレッド)
GPUGeForce RTX 5060 Ti 16GB
メモリ32GB DDR5(16GB×2)
SSD1TB NVMe SSD(PCIe 4.0 x4)
マザーボードAMD B650 チップセット搭載マザーボード(ATX)
CPUクーラー空冷CPUクーラー
電源ユニット750W(80PLUS Bronze)
PCケースミドルタワーATXケース
ケースファン14cmファン×3(前面)、12cmファン=1個(背面)
ネットワーク機能有線LAN(2.5GbE)
OSWindows 11 Home
本体サイズ230×465×465mm
価格23万4,800円~

 SENSE-F1B6-R77-SSXのSENSE∞ F-Class専用のミドルタワー筐体は、ガラスパネルやLEDといった装飾を排し、ケース全体を黒一色でカラーリングしたシンプルなデザインを採用。USB Type-Cポートを含むフロントパネルインターフェイスは本体天板の右前方に配置されており、PC本体を床置きした際にアクセスしやすくなっている。

本体正面。SENSE∞のブランドロゴが印字されたシンプルなデザインで、両端のメッシュ部分が通気口として機能している
本体背面。マザーボードやビデオカードのインターフェイスや電源ユニットにアクセスできる
本体左側面。通気口のない金属製のフラットパネルを装備している
本体右側面。左側面と同様の金属製フラットパネルを装備
天板。開口部の大きなダストフィルタ付きの通気口を設けており、右前方にはUSBポートや電源スイッチが配置されている
天板の右前方に配置されたインターフェイス。USB 3.2 Type-C(1基)、USB 3.2 Gen 1 Type-A(2基)、ヘッドセット端子のほか、電源スイッチとリセットスイッチを備えている

 ATX規格に対応するSENSE∞ F-Classの筐体内部には広い空間が確保されており、高さ170mmまでのCPUクーラーや、410mm長のビデオカードといった大型パーツを収容できる。

 今回の構成では不要との判断からか使用されていないが、大型ビデオカードの重量を筐体で支えるビデオカードホルダーを備えており、ハイエンドGPUを安心して運用することも可能だ。

ケース左側面内部。大型のCPUクーラーやビデオカードを収容可能な広い空間が確保されている
ビデオカードホルダーを標準装備。今回は使用されていないが、重量級のハイエンドビデオカードを安心して搭載できる
GeForce RTX 5060 Tiを搭載するビデオカード。コンパクトなサイズに最新GPUのパワーと16GBのVRAMを秘めている
ケース右側面内部。裏配線スペースとなっている

 標準構成のSENSE-F1B6-R77-SSXでは、フロントに配置した3基の140mmファン(吸気)と、リアの120mmファン(排気)によるエアフローが構築されており、CPUであるRyzen 7 7700の冷却には純正クーラーの「Wraith Prism」が使用されている。

 なお、天板の通気口には最大で360mmサイズ(120mm×3)の水冷ラジエータが搭載可能であり、SENSE-F1B6-R77-SSXのカスタマイズオプションにも360mmオールインワン水冷クーラーが用意されている。

Ryzen 7 7700の冷却には純正クーラーのWraith Prismを採用。水冷クーラーにアップグレードするカスタマイズプランも用意されている
フロントに3基の140mmファン(吸気)、リアに1基の120mmファン(排気)を標準搭載。天板にファンを追加するオプションも用意されている
天板の通気口は3基の120mmファンまたは2基の140mmファンを搭載可能で、最大360mmの水冷ラジエータに対応

SENSE-F1B6-R77-SSXのパフォーマンスをチェック

 ここからは、SENSE-F1B6-R77-SSXのパフォーマンスをベンチマークテストやクリエイティブアプリを用いて検証する。

 テスト環境は以下の通りで、室温約25℃の室内で計測を行なった。なお、CPUやGPUの各種動作設定はSENSE-F1B6-R77-SSXの標準設定であり、GPUドライバにはクリエイター向けのNVIDIA Studio Driver 576.80を導入している。

【表2】テスト環境
CPURyzen 7 7700(8コア/16スレッド)
CPU動作リミットPPT=88W、TDC=75A、EDC=150A、TjMax=95℃
CPUアンコアFCLK=1,950MHz、UCLK=MCLK=2,600MHz
GPUGeForce RTX 5060 Ti 16GB(PCIe 5.0 x8)
GPUドライバStudio Driver 576.80(32.0.15.7680)
メモリ32GB DDR5-5200(16GB×2)
システム用SSD1TB NVMe SSD(PCIe 4.0 x4)
マザーボードMSI PRO B650-S(BIOS=1.J3)
電源750W(80PLUS Bronze)
OSWindows 11 Pro 24H2(build 26100.4351、VBS有効)
電源設定電源モード「バランス」、電源プラン「バランス」
計測HWiNFO64 Pro v8.26、ラトックシステム「RS-BTWATTCH2」
室温約25℃

PCMark 10 Extendedの実行結果

 まず実行したのは、PCの総合的なパフォーマンスを計測するPCMark 10。もっともテスト項目の多いExtendedテストを実行した結果が以下のグラフだ。

 SENSE-F1B6-R77-SSXの総合スコアは11,093で、最新GPUの搭載によりGamingで30,000を超える高いスコアを記録している。なお、表計算や文書制作での性能を計測するProductivityのスコアが10,000を割り込んでいるが、これはPCMark 10に組み込まれているLibreOfficeで、GeForce RTX 5060 TiによるGPUアクセラレーションが有効になっていないためだ。

PCMark 10 Extended

CPU系ベンチマークと3DMarkの結果

 CPU性能やPCの総合的な性能を計測するベンチマークテストと、ゲーム系ベンチマークテスト「3DMark」の結果をまとめて紹介する。

 SENSE-F1B6-R77-SSXが搭載するCPUのRyzen 7 7700は、CPUの3DCGレンダリング性能を計測するCinebench 2024において、Single Core「114」、Multi Core「1,026」を記録。

 1世代前の設計(Zen 4)を採用するRyzen 7 7700のCPU性能は特別に優れたものではないが、メニーコアCPUの高いマルチスレッド性能が必須な用途でもない限り、必要十分なパフォーマンスを得ることはできる。

 CPU Profileを除く3DMarkのGPU系テストで記録したスコアは、GeForce RTX 5060 Ti 16GB搭載システムの平均的なものであり、Ryzen 7 7700を搭載するSENSE-F1B6-R77-SSXでも最新鋭GPUが本来の性能を発揮していることが伺える。

Cinebench 2024
3DMark「CPU Profile」
UL Procyon「Office Productivity Benchmark」
3DMark「Speed Way」
3DMark「Steel Nomad」
3DMark「Steel Nomad Light」
3DMark「Port Royal」
3DMark「Solar Bay」
3DMark「Wild Life」
3DMark「Wild Life Extreme」

クリエイティブ系テストでのパフォーマンス

 ここからは、クリエイター向けのアプリを使用したテストの結果を紹介する。

 3DCGレンダリング性能を計測するBlender Benchmarkと、Adobe Camera Rawを使用したRAW現像では、CPUのみで処理を行なった場合とGPUを活用した場合の性能を比較する形でグラフ化したが、いずれもGeForce RTX 5060 Tiを使用することで非常に高いパフォーマンスを得られることが確認できる。

 GeForce RTX 50シリーズは、ゲーミング性能だけでなくクリエイティブ用途でのパフォーマンスにも優れていることが知られており、それはミドルレンジのGeForce RTX 5060 Tiも例外ではない。16GBの大容量VRAMは大容量のデータを扱う機会の多いクリエイティブ用途でも有効であり、3DCGや動画、写真などを扱うクリエイターにとっても魅力的なGPUであると言える。

Blender Benchmark
Adobe Camera Raw「RAW現像」
Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」
UL Procyon「Photo Editing Benchmark」
UL Procyon「Video Editing Benchmark」

AI性能をベンチマークテストで計測

 ベンチマークソフトのUL Procyonを使用して、画像生成やテキスト生成を含むAI分野での性能を計測した。

 AI推論エンジンのパフォーマンスを計測するAI Computer Vision Benchmarkにおいて、SENSE-F1B6-R77-SSXが搭載するGeForce RTX 5060 Tiは、CPUのRyzen 7 7700を遥かに上回るスコアを記録しており、GeForce RTX 5060 Tiの高いAI性能が伺える。

 GPUを使用して生成AI性能を計測するAI Image Generation BenchmarkとAI Text Generation Benchmarkでも高いスコアが得られており、1,024×1,024サイズの画像生成やLLAMA 2でのテキスト生成など大容量のVRAMを必要とする場面でも、VRAM容量不足に陥ることなく上々のパフォーマンスを発揮して見せた。

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」
UL Procyon「AI Image Generation Benchmark」
UL Procyon「AI Text Generation Benchmark」

SENSE-F1B6-R77-SSXの冷却性能をテスト

 最後に、SENSE∞ F-Class専用筐体を採用するSENSE-F1B6-R77-SSXの冷却性能を高負荷テストの結果から確認してみよう。

 負荷テストとして用いたのはCinebench 2024の「CPU(Multi Core)」と3DMark「Steel Nomad Stress Test」で、計測時の室温は約25℃。テスト実行中のモニタリングデータ取得には「HWiNFO64 Pro」を使用した。

Cinebench 2024実行中のモニタリングデータ
3DMark「Steel Nomad Stress Test」実行中のモニタリングデータ
負荷テスト実行中のファンスピード(平均/最大)

 Cinebench 2024実行中のCPUクロックと、3DMark実行中のGPUクロックはともに安定して高クロックを維持しており、CPUとGPUの温度はいずれも70℃以下に保たれていた。これらの計測結果かから、SENSE-F1B6-R77-SSXのCPUとGPU冷却に関しては万全なものであることが分かる。

 ファンスピードに関しては、Cinebench 2024実行中のCPUクーラーが平均2,530rpm(最大2,714rpm)に達しており、CPU高負荷時はファンノイズが目立つ印象があるものの、3DMarkによるGPU高負荷時は比較的低いファン回転数を維持しており、ファンノイズも控え目だった。

冷却性能に優れた質実剛健なクリエイター向けデスクトップPC

 ハイエンドクラスのCPUやGPUにも対応可能なSENSE∞ F-Class専用筐体を採用するSENSE-F1B6-R77-SSXは、その優れた冷却性能によってRyzen 7 7700とGeForce RTX 5060 Ti 16GBの性能を最大限に引き出し、クリエイター向けアプリや生成AIで高いパフォーマンスを発揮した。

 ガラスパネルやLEDイルミネーションのような派手な装飾はないが、PCに機材としての完成度を求めるクリエイターにとって、基本的な性能や機能をしっかり抑えたSENSE∞ F-Classは質実剛健な選択肢だ。PCの新調を考えているなら、まずは大容量VRAMと優れたクリエイティブ適正を兼ね備えたGeForce RTX 5060 Ti 16GB搭載モデルからチェックしてみると良いだろう。