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FMVは「昨今のメモリ急騰の影響を受けにくい」。その真意は?
2025年12月29日 06:12
富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が神奈川県川崎市に構える製品開発拠点のR&Dセンター。今回その内側を見学する機会を得た。その中でいくつか興味深いお話を伺えたので、本稿ではその内容を紹介したい
なお、R&Dセンターの説明や見学は別記事にまとめているので、そちらもあわせてご覧いただきたい。
昨今話題のメモリやSSDの急騰。FCCLは「影響を受けにくい」
PC業界でのここ数カ月の大きな話題と言えば、メモリやSSDの異常なまでの価格急騰が真っ先に挙がるだろう。データセンター需要が急激に高まったことで市場のDRAMやNANDが品不足に陥り、コンシューマ向けのPCパーツにまで影響が波及。メモリの価格が数カ月間で数倍になるなど、まさに異常事態といった様相だ。メモリやSSDを買いそびれたと頭を抱えている読者も少なくないだろう。
当然、これらのパーツを使用している完成品PCも影響を避けられないはずだ。そこで今回、FCCLにメモリやSSDの価格急騰による影響について聞いてみた。すると返答は意外なもので、「影響を受けにくい」とのことだった。より正確に言うと「影響に対するリカバリーが素早く行なえる」体制だからだという。
同社は、開発拠点のR&Dセンターと工場の島根富士通が密接に連携しており、国内工場であることからユーザーとの物理的な距離も近い。このことは大きなメリットとして「機動力の高さ」をもたらしている。たとえばパーツ不足など製造上のリスクが発生したとしても、開発側で即座に代替案を検討/評価して、その結果を素早く工場に適用することで、ユーザーに影響が出る前に対応できるというわけだ。
企画、開発、営業が物理的に近く、場合によっては同じ建物にいるため、すぐに集まって相談もしやすい環境にある。最近では磁石の供給に問題が発生したことがあったが、代替品の手配から検証、部品変更を迅速に行ない、無事乗り切ったのだとか。昨今のメモリ/SSDなどの価格急騰についても、この機動力を生かして、極力価格を変えることなくリカバリーできるよう取り組みを進めているという。
ユーザーには気付かれにくいポイントだが、「気付かれないこと」こそがFCCLの強みということだ。こういった体制はユーザーにとって心強いものだと言えよう。
いくら技術的にすごくても、ユーザーをないがしろにはしない
日本では今や数少ない国産PCメーカーとなったFCCL。そんな同社のものづくりにおける姿勢についても伺った。
同社では、ユーザーとの距離感を非常に大事にしていて、安心して使ってもらえる製品作りが1番重要なポイントだと考えているという。だからこそFMVは、技術のためにユーザーをないがしろにするような設計はしない。
たとえばFMV Note Uであれば、634gという圧倒的な軽さを実現する一方で、使い勝手の面にも妥協をしていない。有線LANやHDMIポートといった、薄型軽量ノートで削られがちなインターフェイスは維持し、十分な堅牢性も担保する。同社の製品では、メインターゲットである日本のユーザーの使用環境などをしっかり調査して、使い勝手を損なうような設計はしていないという。
FMVの強みでもあるキーボードについても、全商品でキーボードマイスターの監修が入るなど、こだわりを持って作られている。癖のない日本語キーボードであることなども含め、ユーザーからポジティブな声をもらうことの多いポイントだそうだ。
新製品の開発については、軽さのFMV Note Uに対し、アルミ削り出しで本物志向なデザインを体現した「FMV Note C」を投入するなど、さまざまな試みに挑戦している。どうしてもNote Uの軽さが目立ってしまっているが、それ以外の面でもユーザーが使ってみたいと思えるものを今後も開発していきたいとのことだった。
過酷な堅牢性テスト。意外と効くのは「地味なダメージの繰り返し」
R&Dセンター内でもかなりさまざまな項目でチェックされていた堅牢性。これについても聞いてみた。
同社としても、製品の堅牢性は重視しているポイントで、それを実現するために落下や振動などさまざまなテストを実施している。中でもバッテリの振動評価は「誰もやっていないんじゃないか」というぐらい厳しいとのこと。長時間振動を加え続けて、バッテリ内部が壊れないか検証するといったもので、過去に製品で起こった問題を受けて、実施するようになった経緯がある。
高いところから落とすといった派手な試験をクリアできると、耐久性が高いように見えてしまいがちだ。しかし実際の故障事例では、小さな振動の繰り返しや、カバンの中で圧迫された状態で振動するなど、地味なダメージが故障の原因になっているケースが少なくないそうだ。
R&Dセンターではユーザーにヒアリングをするなどしてデータを集め、評価の仕組みを改善し続けている。ユーザーとの距離感の近さは、こういった側面でも生かされているということだろう。
なかなか活用の進まないNPU。AI PCらしくなるのはこれから
2024年にMicrosoftが「Copilot+ PC」という明確な基準を定めるなど、いわゆる「AI PC」という言葉が使われ始めてから数年が経つ。一方で「AI PCだからこそできる画期的な何か」がなかなか出てこない現状もある。そうしたAIとPCの関わりについても尋ねてみた。
AIについては、少なくとも現状はまだ急速に機能を進化させている段階であり、どうしてもクラウドが中心になっている。だが、クラウドだけではキャパシティは当然足りない。そうすると、成熟したサービスは少しずつローカルに下りてきて、余力のできたクラウドではまた別の新しい使い方が始まる。そういった循環が繰り返されると考えているという。
AI PCにはこうしたローカルAI処理に適したNPUが内蔵されているが、ある程度NPU自体が普及しなければ、ローカルに下りてきたところで多くの人がその恩恵を受けられない。これまではその準備としてNPUを急速に広めるフェーズであり、それがネガティブに受け取られていた側面はあったかもしれないが、そろそろNPUが活用されるフェーズがやってくると捉えているとのことだった。
製品が増え、ハード/ソフトの両面で着々と地固めが進んできたAI PCだが、その本領が発揮されるときは近いのかもしれない。














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