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評価が割れるGeForce RTX 5060。VRAM不足指摘も3060/4060ユーザーは移行すべきか?徹底検証で答えを出す

GeForce RTX 5060、RTX 4060、RTX 3060と人気のミドルレンジGPUを中心にテストを行なった

 ゲームのメインストリームやミドルレンジ向けGPUとして、常に人気を獲得しているNVIDIAの「GeForce RTX xx60」シリーズ。2025年7月上旬現在、GeForce RTX 5060/4060/3060の3世代が市場に出回っている。なにせビデオカードは高額なので、「買い替えなくてもまだいけるか?」、「あえて1世代前のを買ったほうがいいか?」なんて悩んでいる人は多いかもしれない。

 ここでは、この3つのGPUを「性能」、「電力効率」、「コスパ(コストパフォーマンス)」で比較。そして、後半ではワンランク上のGeForce RTX 5060 Ti(16GB)、Radeon RX 9060 XT(16GB)との比較も加え、ビデオメモリが8GBで十分なのかも検証していく。ミドルレンジGPUの現在地が見えてくるはずだ。

根強い人気のGeForce RTX 3060/4060
Steamによる使用GPUのシェア調査では、GeForce RTX 3060と4060が上位に位置する。50シリーズはまだまだ少数派のようだ

GeForce RTX 5060の強みとは?

 まずは各GPUのスペックを紹介しておこう。

GeForce RTX 5060/4060/3060のスペック
GeForce RTX 5060GeForce RTX 4060GeForce RTX 3060(12GB)
CUDAコア数3,8403,0723,584
ベースクロック2,280MHz1,830MHz1,320MHz
ブーストクロック2,497MHz2,460MHz1,777MHz
メモリサイズGDDR7 8GBGDDR6 8GBGDDR6 12GB
メモリバス幅128bit128bit192bit
L2キャッシュ24MB24MB3MB
RTコア第4世代第3世代第2世代
Tensorコア第5世代第4世代第3世代
アーキテクチャBlackwellAda LovelaceAmpere
DLSS432
NVENC第9世代第8世代第7世代
カード電力145W115W170W
電源コネクタ8ピン×1または12VHPWR×18ピン×1または12VHPWR×18ピン×1

 メモリバス幅、ビデオメモリ(VRAM)の容量を見ると2世代前のRTX 3060が192bit/12GBと上回っている。しかし、 RTX 5060/4060はメモリバス幅こそ128bitだが大容量のL2キャッシュを搭載。 これによってメインメモリへのアクセスを減らし、性能・電力効率を高めている。

 また、 RTX 5060はビデオメモリは8GBだが高速なGDDR7を採用する。 CUDAコア数もこの3モデルでは一番多く、着実に進化していると言ってよいだろう。

 そして、機能面にも大きな差がある。RTX 3060はDLSS 2までの対応。DLSSによるアップスケーラーは利用できるが、フレーム生成には非対応だ。RTX 4060はDLSS 3までの対応でアップスケーラーとフレーム生成は可能だが、マルチフレーム生成は使えない。 RTX 5060はDLSS 4サポートでアップスケーラーに加えて、1フレームから最大3フレームをAIによって生成するマルチフレーム生成を利用できる。DLSS 4対応ゲームにおいてはRTX 5060が有利だ。

 ハードウェアエンコーダのNVENCも第7世代のRTX 3060はAV1のエンコードには非対応。第8世代のRTX 4060はAV1をサポート、 第9世代のRTX 5060はそれに加えて4:2:2フォーマットのH.264/H.265コーデックにネイティブ対応 なので、4:2:2フォーマットを扱う際のエンコード時間を大幅に短縮できる。

 カード電力はRTX 5060が145W、RTX 4060が115W、RTX 3060が170Wだ。実際のゲームにおいてどこまでの差になるのかも注目したい。

DLSS 4対応ゲームなら5060の真価を発揮
RTX 50シリーズはマルチフレーム生成が可能なDLSS 4に対応しているのが大きな強み

 最新世代のRTX 5060が多くのスペック、機能面で充実しているのは当たり前の話ではあるが、ここに価格が加わると見え方は変わってくる。記事執筆時点では、 RTX 5060の中心の価格帯は5万6,000円前後 、最安クラスで5万円前後。 RTX 4060は5万円前後が中心 、4万5,000円前後が最安クラス。 RTX 3060は4万円前後が中心 、3万5,000円前後が最安クラスだ。

 自分がプレイしたいゲームがRTX 3060でも十分フレームレートが出れば、それでもよいという人はいるだろう。そこも踏まえて実ゲームでの性能差に注目してほしい。また、実ゲームでの結果からワットパフォーマンスとコストパフォーマンスも算出する。

検証で使用したビデオカード

 今回用意したカードは以下の通りだ。

  • GeForce RTX 5060
    ZOTAC GAMING GeForce RTX 5060 SOLO
  • GeForce RTX 4060
    MSI GeForce RTX 4060 GAMING X 8G
  • GeForce RTX 3060(12GB版)
    ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC
GeForce RTX 5060
ZOTAC GAMING GeForce RTX 5060 SOLO。OCモデルでブーストクロックは2,497MHzと定格通り
シングルファンでカード長164.5mmとコンパクトなのが特徴だ
補助電源は8ピン×1
GeForce RTX 4060
MSI GeForce RTX 4060 GAMING X 8G。OCモデルでブーストクロックは2,595MHzでMSI Centerで2,610MHzまでアップできる
GeForce RTX 3060
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC。OCモデルでブーストクロックは1,807MHz

人気の6タイトルで性能&カード単体の電力をチェック

 ここからは性能チェックに移る。テスト環境は以下の通りだ。今回はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を導入。ゲーム系のベンチマークではカード単体の消費電力も合わせて掲載する。

検証環境

【CPU】Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)●マザーボードCPUROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E)●【メモリ】G.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)●【システムSSD】Micon Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCIe 5.0 x4、2TB)●【CPUクーラー】Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス)●【電源】Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold)●【OS】Windows 11 Pro(24H2)

3DMark

 まずは、定番の3Dベンチマーク「3DMark」のスコアから見ていこう。

3DMark

 3DMarkは、スコアが高い順にRTX 5060、RTX 4060、RTX 3060と順当な結果だ。RTX 5060はRTX 3060の約1.6倍のスコアに達している。ビデオメモリこそRTX 3060のほうが多いが、基本性能には大きな差があることが分かる結果だ。

オーバーウォッチ2/Apex Legends

 続いて、実ゲームを試そう。まずは定番FPSの「オーバーウォッチ2」と「Apex Legends」だ。オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレート、Apex Legendsは射撃訓練場の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。DLSSなどアップスケーラーやフレーム生成を使わない状態での性能や消費電力を確かめるテストと言える。

オーバーウォッチ2

 傾向は3DMarkと変わらない。 オーバーウォッチ2は、4Kまで快適にプレイできるのはRTX 5060だけ。 地力の強さが見える部分だ。フルHD解像度を見ても144Hzのゲーミングモニターをフルに生かせるのはRTX 5060となる。

Apex Legends

  Apex LegendsはRTX 3060でも4Kで十分快適にプレイ可能だ。軽めのゲームならば、RTX 3060もまだまだ現役と言ってよいだろう。 消費電力に目を向けると、おおよそカード電力通りと言える。消費電力が大きい順にRTX 3060、RTX 5060、RTX 4060だ。電力効率はRTX 3060が悪い。

ストリートファイター6/ELDEN RING NIGHTREIGN

 次は、フレームレートの上限が60fpsのゲームを試してみよう。ここでは「ストリートファイター6」と「ELDEN RING NIGHTREIGN」だ。ストリートファイター6はCPU同士の対戦を実行した際のフレームレート、ELDEN RING NIGHTREIGNは円卓の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

ストリートファイター6

 ストリートファイター6はRTX 5060なら4Kまで快適、RTX 4060/3060はWQHDまではほぼ最大のフレームレートでプレイできる。 注目はフルHDの消費電力だ。RTX 5060ならあまりパワーを使わずに60fpsに到達できるため、わずか51.3Wで済んでいる。 性能が高ければ、低負荷時の消費電力は大きく下がるというのが分かる例だ。

ELDEN RING NIGHTREIGN

 ELDEN RING NIGHTREIGNもほぼ同じ傾向だ。 RTX 5060はフルHDなら消費電力は44.4WとRTX 3060の半分以下だ。

モンスターハンターワイルズ/サイバーパンク2077

 次に、DLSS 4のマルチフレーム生成に対応したタイトルとして「モンスターハンターワイルズ」(2025年6月30日のアップデートから対応)と「サイバーパンク2077」を用意した。モンスターハンターワイルズはベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

 モンスターハンターワイルズについては、DLSSの設定はバランス、RTX 4060はDLSSによる通常のフレーム生成、RTX 3060はDLSSのフレーム生成に対応していないので、FSRのフレーム生成を利用している(モンスターハンターワイルズはアップスケーラーとフレーム生成で別々の技術を適用可能)。

 サイバーパンク2077については、RTX 5060/4060はDLSSをバランスに設定、RTX 4060はDLSSによる通常のフレーム生成、RTX 3060はFSRをバランス、フレーム生成を有効にしている(サイバーパンク2077はアップスケーラーとフレーム生成を別々の技術にできないため)。

モンスターハンターワイルズ

  DLSS 4のマルチフレーム生成の威力はすさまじい。生成するフレームの数が増えているので当然とも言えるがRTX 5060はRTX 4060のほぼ2倍のフレームレートを出している。

  ただし、モンスターハンターワイルズの4Kは画質設定が「高」であっても、RTX 5060/4060はビデオメモリ不足もあってマルチフレーム生成だとカクついたり、早送りのような動きになったり安定しなかった。 プレイするならWQHDまでがよいだろう。

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077は、 画質がレイトレーシング: ウルトラでかなり描画負荷が高い設定だが、RTX 5060なら4Kでも平均103.4fps出ている。 モンスターハンターワイルズとは異なり、ベンチマークを見る限りではマルチフレーム生成でも描画に問題はなかった。

フルHD時のワット&コストパフォーマンスを集計

 ここまでのテストを集計し、各タイトルのフルHD時の消費電力をフレームレートで割ったものを「ワットパフォーマンス」、各ビデオカードの平均的な価格をフレームレートで割ったものを「コストパフォーマンス」としてグラフ化してみた。コストパフォーマンスではRTX 5060を5万6,000円、RTX 4060を4万5,000円、RTX 3060を4万円とした(2025年7月上旬調べ)。

ワットパフォーマンス

  ワットパフォーマンスでは、RTX 5060が優秀だ。少ない電力で高いフレームレートを出せている。 カード単体の消費電力自体はRTX 4060が低いが、効率で見るとRTX 5060が上回るというわけだ。RTX 3060はカードの価格は今回の中で一番安いが、ワットパフォーマンスはよくない。スペック上のカード電力も高いので当たり前と言える結果ではあるが。

コストパフォーマンス

  コストパフォーマンスで見てもRTX 5060は強い。特にマルチフレーム生成に対応したモンスターハンターワイルズとサイバーパンク2077は優秀だ。

 その一方で、フレームレートが60fpsで上限となるストリートファイター6とELDEN RING NIGHTREIGNでは、カードの価格が高いRTX 5060は不利になり、価格の安いRTX 3060がトップに立つ。 DLSS 4に対応していない、上限60fpsのゲームにおいてはRTX 3060はまだまだ活躍できるところを見せている。

LLMではビデオメモリ12GBのRTX 3060が強い場面も

 AI処理性能も見ていこう。さまざまな推論エンジンを実行してスコアを出す「Procyon AI Computer Vision Benchmark」、Stable Diffusionによる画像生成速度を測定する「Procyon AI Image Generation Benchmark」、4種類のLLM AIモデルを使ってテキストの生成速度を見る「Procyon AI Text Generation Benchmark」を実行した。

Procyon AI Computer Vision Benchmark
Procyon AI Image Generation Benchmark
Procyon AI Text Generation Benchmark

 Procyon AI Computer Vision BenchmarkとProcyon AI Image Generation Benchmarkは順当にRTX 5060がトップに立ったが、注目はProcyon AI Text Generation Benchmarkだ。 パラメータ数が多くビデオメモリを求めるLlama-3.1-8Bでは、12GBのメモリを搭載するRTX 3060がトップに立ち、さらにパラメータが多いLlama-2-13Bでは、そもそもビデオメモリが8GBのRTX 5060/4060は動作できなかった。 ビデオメモリ12GBのRTX 3060はAI入門に最適と言われていたが、それは現在も続いていると言ってよいだろう。

ビデオメモリ16GBのRTX 5060 TiやRX 9060 XTとも比較

  最近のAAA級タイトルでは8GBのビデオメモリでは容量不足と言われることが増えている。 実際はどうなのだろうか。ワンランク上のGPUとして、ビデオメモリ16GB版のGeForce RTX 5060 TiとRadeon RX 9060 XTを用意した。型番は以下の通り。検証環境はこれまでと同様だ。

  • GeForce RTX 5060 Ti(16GB)
    Gainward GeForce RTX 5060 Ti Python III
  • Radeon RX 9060 XT(16GB)
    PowerColor Reaper AMD Radeon RX 9060 XT 16GB GDDR6
GeForce RTX 5060 Ti
Gainward GeForce RTX 5060 Ti Python III。ブーストクロックは2,572MHzと定格仕様だ。実売価格は8万5,000円前後
Radeon RX 9060 XT
PowerColor Reaper AMD Radeon RX 9060 XT 16GB GDDR6。OCモデルでブーストクロックは3,230MHz。実売価格は6万5,000円前後

 ゲームはAAA級から「モンスターハンターワイルズ」、「DOOM: The Dark Ages」、「The Last of Us Part II Remastered」を用意した。モンスターハンターワイルズは16GB以上のビデオメモリを求める最高画質設定にし、ベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレート、The Last of Us Part II Remasteredはジャクソンの一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。DOOM: The Dark Agesはゲーム内のベンチマーク機能を実行した。

モンスターハンターワイルズ

 最高画質かつレイトレーシングも有効にしたモンスターハンターワイルズの描画負荷は重く、ビデオメモリも必要になる。そのため、 RTX 5060ではマルチフレーム生成があるにも関わらず、1フレームから1フレームを生成する通常のフレーム生成しか使っていないRadeon RX 9060 XTにすべての解像度で負けている。 特にRTX 5060の4Kはカクつきが目立ち、マルチフレーム生成がうまく働いていない印象だ。

DOOM

 DOOMに関して、 RTX 5060はビデオメモリ不足からかWQHD以降はマルチフレーム生成を使ってもまともなフレームレートが出ていない。描画負荷が強烈に高いパストレーシングを無効化しているのも関わらずだ。 RTX 5060 TiやRX 9060 XTは4Kでも問題なくプレイできるフレームレートが出ている。基本性能だけではなく、ビデオメモリの重要性が見えてくる結果だ。

The Last of Us Part II Remastered

 The Last of Us Part II RemasteredはWQHDまではRTX 5060とRX 9060 XTは拮抗。 マルチフレーム生成は効いているが、4KになるとRX 9060 XTがRTX 5060を大きくリードする。性能&ビデオメモリ不足がフレームレートが伸びない原因だろう。

ビデオメモリの使用量

 では、それぞれのゲームがどの程度ビデオメモリを使っているのか調べてみよう。あくまでCapFrameXでの測定だが、RTX 5060 Tiのベンチマーク中の平均ビデオメモリ使用量は以下の通りだ。

ゲーム動作時のビデオメモリの使用量

 すべて8GBを超えている。 もちろん8GBのRTX 5060でも動作はするが、ビデオメモリ不足ゆえにフレームレートが伸びない可能性は高い。特に描画負荷とビデオメモリ使用量がともに高まる4Kではフレームレートが伸びない傾向にあった。 フルHD解像度なら影響は小さいように見えるが、先のことを考えると予算に余裕があるなら「ビデオメモリが16GBあるビデオカード」を選んだほうが安心なのは間違いない。

フルHD解像度ならワッパ/コスパとも良好なRTX 5060だが……

 2025年7月上旬現在、RTX 5060/4060/3060とGeForceを代表するミドルレンジGPUが3世代に渡って現役で販売されている珍しい状況だ。価格差があるので迷い所だが、 この3つの中ではRTX 5060が性能、ワットパフォーマンス、コストパフォーマンスともに優秀だ。DLSS 4のマルチフレーム生成に対応するなど機能面も進化している。もちろん、フルHD解像度を超える環境では性能が落ちる、という点に目をつぶればだが……。

 いずれにしても、RTX 5060/4060/3060の中から選ぶとして、どうしても予算を絞ってゲーミングPCを作りたい、ビデオメモリ10GB以上を求めるAI処理を使ってみたい、といった用途以外ではGeForce RTX 5060は優秀と言えるだろう。

 では結論だが、 RTX 4060/3060からの買い換え先としてRTX 5060はアリか?という視点では“微妙”と言わざるを得ない。 フルHD解像度ならRTX 3060でも快適にプレイできるフレームレートを出せるからだ。モンスターハンターワイルズもサイバーパンク2077も十分遊べる。

 現状RTX 5060は8GB版しか存在しない。もし将来の解像度アップを見据えて買い換えるなら、高解像度でもフレームレートを出しやすくなるビデオメモリ16GBを搭載する5060 Tiといった上位製品を選びたい。しかし、いかんせん8万円前後と高いのがネックである。