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5万円台開始のGeForceに強みはある?エントリー帯に一足先に乗り込んだRTX 5060を検証する

今回筆者が入手したASUS製ファクトリーOCモデル「DUAL-RTX5060-O8G」。本稿執筆時点で価格は知らされていない

 2025年5月20日、NVIDIAは「GeForce RTX 5060(以降RTX 5060)」の国内販売を解禁する。4月より投入されたGeForce RTX 5060 Ti 16GBおよびRTX 5060 Ti 8GBに続く、“RTX 5060ファミリ”の末弟にあたる製品である。

 国内販売価格は5万5,800円~と発表されているが、2年程前に発売されたGeForce RTX 4060より3,000円高いスタートである(北米予想価格はどちらも299ドル)。AMDのRadeon RX 9000シリーズはまだ60番台モデルが正式発表されていないため、RTX 5060の投入は比較的安価なエントリークラスGPUのモデルチェンジにおいて、ライバルを牽制する役目も担っている。

 RTX 5060登場の意義はRTX 50シリーズの要素を5万円台のビデオカードに持ち込むことにある。即ちAI(ニューラルネットワーク)をレンダリングパイプラインに持ち込み、より少ないデータでも従来以上の描写を志向する「ニューラルレンダリング」時代に備えるというNVIDIAのビジョンを達成するための下地作り的な製品である。ニューラルレンダリングはRTX 50シリーズ以外のGeForceでも実行は可能だが、RTX 50シリーズは最初からニューラルレンダリングの実行にターゲットを合わせた設計になっている。

 もっと直接的なメリットといえば、PCゲームのフレームレートを一気に引き上げる「DLSS Multi Frame Generation(DLSS MFGと略)」が利用できることにある。まだ未解放ではあるが、「VALORANT」や「THE FINALIST」などが対応を表明している「Reflex 2」というeSportsシーン向けの機能も準備されている。

 そのほかにも4:2:2 10bitカラーフォーマットをネイティブで扱えるNVEnc、DisplayPort 2.1bといった機能もメリットとして挙げられるだろう。

 今回筆者は幸運にもASUS製のファクトリーOCモデル「DUAL-RTX5060-O8G」をテストできる機会に恵まれた。RTX 5060 Tiや旧世代の60番台GeForceとの比較を通じて、最新の60番台GeForceはどこまで進化したのか検証していきたい。

DUAL-RTX5060-O8Gはスタンダードなデュアルファン構成を採用している。カードの全長は実測228mm、ファン口径は90mmである
DUAL-RTX5060-O8Gのカード裏面。同社製カードの特徴であるP/Q(Performance/ Quiet)モード切替スイッチが上端に配置されている。今回の検証はすべてPモードで実施している
映像出力端子の構成はDisplayPort 2.1b×3+HDMI 2.1b×1。GPUクーラーにやや厚みを持たせているため、厚みは公称2.5スロットである(もう3スロットで良いと思うのだが……)
補助電源コネクタはPCIe 8ピン×1。消費電力から考えると順当である

実は前世代からかなり強化されているRTX 5060

 RTX 5060は、RTX 50シリーズの中でも前世代と比較してSM(Streaming Multiprocessor)数が大幅に増えているモデルである。

 例としてRTX 4070→RTX 5070やRTX 4060 Ti→RTX 5060 Tiといったペアで考えてみると、それぞれSM数は2基(CUDAコア数で256基)なので、前世代の1%も増えていない。ところがRTX 4060→RTX 5060は6基増で25%も増えている。さすがにRTX 4090→5090の約33%増という数字には負けるが、単純な新旧型番比較では、実はRTX 50シリーズ中2番目に強化されたモデルなのである。

 そしてTensorコアやRTコアも前世代から1世代機能が更新されているため、GPUの計算力はRTX 4060から格段に向上している。

 もう1つ、RTX 5060ではVRAM仕様の強化がポイントだ。RTX 30シリーズ以降のGeForceでは、上位モデルに新規格のメモリチップを採用し、下位モデルは据え置きというパターンが多かった。

 たとえばRTX 30シリーズならRTX 3090~3070 TiまでがGDDR6X、それより下はGDDR6(RTX 3060 TiにはGDDR6X版もあるが、これは後から追加されたものだ)となっていたが、RTX 50シリーズはRTX 5060にも上位モデルと同じデータレート28GbpsのGDDR7が採用されている。RTX 5060はメモリバス幅こそ128bitと狭いものの、GDDR7の採用でメモリー帯域においてRTX 4060の約1.65倍に強化している。

 ただし、VRAMの搭載量は8GBのままとなっているため、濃厚な描画を志向したAAAタイトルではフルHDですらVRAMが足りなくなる可能性が出てくる。最高画質設定にこだわりを持つならばRTX 5060 Ti 16GB以上のGPUでないともう厳しい時代だが、中高設定でも満足できるという人にはRTX 5060も選択肢に入ってくるだろう。

RTX 5060と、その近傍の製品とのスペック比較
GPUの情報:「GPU-Z」を利用して取得。ファクトリーOCモデルであるため、ブーストクロックは2535MHzとなる。Unknownの箇所があるのはGPU-Zがまだ対応していないためだ
ファクトリーOCモデルではあるが、Power Limit(=TGP:Total Graphics Power)の定格値はリファレンス準拠の145W。ただしOCツールを利用することで最大160Wまで引き上げることが可能である

検証環境は

 今回の検証環境は以下の通りだ。RTX 5060に合わせ歴代60番台のGeForceを準備した。RTX 5060 Ti 16GB/ RTX 5060 Ti 8GBのほか、RTX 4060/ RTX 3060 12GB/ RTX 2060という陣容になる。

 なお、RTX 5060 Tiの16GB版がリファレンス仕様なのに対し、8GB版がファクトリーOCモデルとなるため、VRAM使用量が8GBで収まる範囲であれば8GB版の性能がやや高くなる点に注意が必要だ。

 GPUドライバはRTX 5060のみGameReady 576.46、それ以外のGPUについてはGameReady 576.40を使用している。「Resiazble BAR」や「Secure Boot」、「メモリー整合性」および「カーネルモードのハードウェア適用スタック保護」、「HDR」などは一通り有効化。モニターのリフレッシュレートは144Hzに設定した。

 なお、今回はCPU→GPU間のPCIeリンク速度に制限は設けていない。PCIe 5.0世代のRTX 5060 Tiを4.0でリンクし、VRAMが8GBでは足りなくなるような状況にした場合、PCIeのトラフィック(GPU→CPU)が非常に大きくなり、性能に強い影響を及ぼすことが分かったためである。

検証環境
CPURyzen 7 9800X3D (8コア/16スレッド、最大5.2GHz)
CPUクーラーEKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」(簡易水冷、360mmラジエータ)
マザーボードASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.20)
メモリMicron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5600)
ビデオカードPalit「GeForce RTX 5060 Ti Infinity 3 16GB」(RTX 5060 Ti、16GB GDDR7)
ZOTAC「ZOTAC Gaming GeForce RTX 5060 Ti 8GB Twin Edge OC」(RTX 5060 Ti、8GB GDDR7)
ASUS「DUAL-RTX5060-O8G」(RTX 5060、8GB GDDR7)
MSI「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8GB OC」(RTX 4060、8GB GDDR6)
ZOTAC「ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」(RTX 3060、12GB GDDR6)
NVIDIA「GeForce RTX 2060 Founders Edition」(RTX 2060、6GB GDDR6)
ストレージMicron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)、Silicon Power「SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe Gen 4)
電源ユニットASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OSMicrosoft「Windows 11 Pro」(24H2)

定番ベンチマークでは順当な性能強化が感じられる

 では「3DMark」を用い基本的な描画性能を比較してみよう。ラスタライズ系テストとレイトレーシング系テストでグラフを分割している。

3DMarkのスコア(ラスタライズ系)
3DMarkのスコア(レイトレーシング系)

 まずスコアの傾向でRTX 5060 Ti 8GB > RTX 5060 Ti 16GBとなっているのは前述の通りだ。一方、RTX 5060のスコアはRTX 5060 Ti 8GBとRTX 4060の間に着地しており、RTX 4060から見ると30~44%高いスコアを示している。

 今回テストしているRTX 5060カードがファクトリーOCモデルだからという点も考慮すべきだが、SM数の増加率以上にスコアが伸びている点に関しては、GDDR7採用によるメモリ帯域の拡大も影響していると思われる。

 続いては消費電力を検証しよう。今回の検証環境においてもHWBusters「Pownetics v2」を組み込み、電源ユニットからマザーやビデオカードに流れる電力を直接計測している。アイドル中とは文字通りアイドル状態で3分間放置した際の平均消費電力を、高負荷時とは3DMarkの“Steel Nomad”実行中の消費電力を示すが、高負荷時は平均値/99パーセンタイル点/最大値の3種類の観点で集計した。消費電力はシステム全体およびTBP(Total Board Power:カード単体の消費電力)の2つの観点で集計している。

システム全体の消費電力。ATXメインパワー+EPS12v+16ピン/8ピン+PCIe x16スロットを流れる電力の合算となる
Total Board Power。上のグラフのデータから16ピン/8ピン+PCIe x16スロットを流れる電力のみを抽出したもの

 消費電力もRTX 5060 Ti 8GBとRTX 4060の中間にRTX 5060が着地したが、ここではややRTX 4060寄りの値になった。TBPの平均値は151W、瞬間最大値でも160Wであり、RTX 3060 12GBやRTX 2060よりもずっと大人しい。こうした世代のGeForceを使っているのであれば、RTX 5060は電源ユニットの負荷を減らしながら描画性能で60~100%向上という大きなステップアップが期待できるはずだ。

ゲーム以外の処理でも順当進化

 ゲーム性能の前にCGレンダリングや動画エンコード、軽めのAIを利用した場合のパフォーマンスも見ておきたい。

Blender Benchmark(Blender Open Data)

 Blender Benchmarkではバージョンは「v4.4.0」を指定した。レンダリングデバイスは当然ながらGPUを指定している。

Blender Benchmarkのスコア

 ここでの傾向も3DMarkと似たようなものだが、特にRTX 2060やRTX 3060 12GBとの差が大きい。これにはRTコアの世代更新が関係していると思われる。上位のRTX 5060 Ti 8GBに対するRTX 5060はどのシーンにおいてもおよそ15%下にとどまった。

DaVinci Resolve Studio

 続いてはDaVinci Resolve StudioによるGPUエンコード性能比較だ。RTX 50シリーズのNVEncは4:2:2 10bitカラーフォーマット対応だが、これは現在公開中のDaVinci Resolve Studioのv20以降で利用できる。原稿執筆時点ではパブリックベータ扱いだが、RTX 50シリーズの実力を試すにはちょうどよいだろう。

 テストは4K動画のプロジェクト(再生時間32秒)をCBR 80MbpsのH.265で出力する時間を計測した。H.265のプロファイルは「Main 10 4:2:2 10bit」を指定しているが、旧世代のGeForceでは利用できないため、比較用に4:2:0 10bitの「Main10」プロファイルを使用した場合のテストも実施した。

DaVinci Resolve StudioによるGPUエンコード性能

 RTX 5060 TiやRTX 5060のNVEncは1基のみ、メモリバス幅や帯域も同じであるためエンコード時間はほぼ同時である。RTX 4060~RTX 2060で利用できるMain10での処理時間と比較すると、RTX 5060であっても劇的な処理速度の短縮が期待できる。

 ただRTX 5060はVRAMが8GBとやや少ないため、GPU活用度の高いDaVinci Resolve Studioにとってはやや心細い選択であることは確かだ。DaVinci Resolve Studio使用前提ならVRAMの多いRTX 5060 Ti 16GBを選択することを強くオススメしたいが、予算がないという場合はRTX 5060も合理的な選択になり得るかもしれない。

AI Text Generation Benchmark

 続いては「UL Procyon」から「AI Text Generation Benchmark」を利用しLLMのパフォーマンスを検証する。大小4つの学習モデルに対し7つのテキスト生成タスクを課し、出力されるトークン生成スピードおよび最初のトークンまでの待ち時間からスコアを導き出す。

UL Procyon:AI Text Generation Benchmarkのスコア。学習モデルはPhi-3.5-mini-instructからLLama-2-13Bまで、バーが下のものほど重い
UL Procyon:AI Text Generation Benchmarkにおける最初のトークンまでの時間。バーが短いほど思考時間が短縮され、応答性が良好になる
UL Procyon:AI Text Generation Benchmarkにおけるトークン生成スピード。バーが長いほど文章が素早くアウトプットされる

 今回の環境(LLMのビルド)では、RTX 2060はすべてのテストにおいてエラーを出し結果はゼロで終了してしまった。RTX 5060はRTX 4060よりもTensorコア数のみならずメモリ帯域においても優位に立つため、トークン生成スピードにおいては最大40%近く改善している。

 ただVRAM 8GB仕様の制約から、LLama-2-13Bモデルを実行できるまでには至っていない。RTX 5060 Ti 8GBとの比較においても、軽いPhi-3.5-mini-instrcutではトークン生成スピードにおいてRTX 5060は約18%も遅くなる一方で、VRAM搭載量ギリギリまで使おうとするLLama-3.1-8Bでは約8%下にまで差が詰まっている。

 その点RTX 3060 12GBはLLama-2-13Bも動かせる点は評価できるが、トークン生成スピードにおいてはRTX 5060よりも大幅に落ちることがある点に注目したい(ただしLLama-3.1-8B以上ではほぼ同等になる)。

VRAM 8GBでは最新AAAタイトルには不十分

 ここから先はゲームにおける検証となる。本稿の検証では以下のようなレギュレーションでテストを実施している。

1.フレームレートの計測は「CapFrameX」を用いる
2.フレームレート計測時にTBPをPownetics v2経由で計測する
3.フレームタイムの計算は「MsBetweenDisplayChange」基準とする
4.DLSS FGに対応しない場合はFSR 3 FGを用いる
5.DLSSやFSR 3のアップスケール設定は「クオリティー」とする
6.DLSS MFGを使用する際は「3x」設定とする
7.画質設定は最高画質設定のほかに、VRAM平均使用量が8GB程度に収まる設定でも行なう

 特別なことはしていないが、6のDLSS MFGの設定についてはもっともフレームレートが稼げる4x設定(中間に3フレームを挿入)ではなく3x設定(2フレーム挿入)とした。これは重量級ゲーム+最高画質設定での動作において、RTX 5060 Tiより下のGPUでは4xよりも3xの方が「筆者のフィーリングとして」ラグ感が少なく妥当と感じたためだ。ゲームの軽重に関係なく3xに統一しているのは、検証時に設定ミスをする余地を排除するためである。

 また、7の項目はVRAM 8GBでは一部AAAタイトルにおいて絶対的に不足することが分かっているがゆえの救済策だ。画質は中程度に下げてもフレームレートとのバランスをとりたい、という人は最高画質設定でのデータよりも画質を下げたパターンでの結果に注目するとよいだろう。

 まずはeSports成分の強いタイトルから検証する。ここではアップスケーラもフレーム生成もあえて使用していない。

Apex Legends

 Apex LegendsではAPIはDirectX 12、画質は最高設定とした。射撃訓練場における一定の行動をとった際のフレームレートを計測した。フルHDにおけるVRAM平均使用量は5GB前後(RTX 5060 Ti 16GBでの値。以下同様)である。

Apex Legends:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Apex Legends:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Apex Legends:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 RTX 5060はRTX 5060 Ti 8GBの下であることはこれまでの検証結果通りだが、特にフルHDではRTX 5060 Ti 8GBにかなり近づいている。これは300fpsで頭打ちになるApex Legendsの設計仕様によるものだ。

 フルHDであればRTX 5060 Ti 8GBから5%程度(平均フレームレート基準)しか落ちていないが、RTX 4060から見れば20%高い。RTX 3060 12GBやRTX 2060といった旧世代GeForceと比較しても、50~60%伸びているのは大きい。解像度が高くなると上位モデルとの差が拡大するが、同時に旧世代GeForceに対するRTX 5060の優位性も確実なものとなる。

Apex Legends:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)

 上の表はそれぞれのベンチマーク中にそれぞれのGPUにおけるTBP(Total Board Power)の平均値と、そこから算出される10Wあたりのフレームレートを解像度ごとにまとめたものだ。前掲の3DMarkを利用したTBP比較と同様に、RTX 5060はRTX 3060 12GBやRTX 2060より低い電力でより高いフレームレートを出している。ワットパフォーマンスで考えるとRTX 4060~RTX 5060 Ti 16GBまでほぼ変化していないが、これはCUDAコア周りの設計(演算効率やキャッシュ階層)がほぼ同じであることに由来する。

Call of Duty (Black Ops 6)

 Call of Dutyは「Black Ops 6」を使用した。画質は「極限」に設定。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを計測した。この設定ではフルHD時のVRAM平均使用量は約12GBと非常に大きい。VRAM 8GBのRTX 5060やRTX 5060 Ti 8GBでは太刀打ちできそうにないと思われるが、果たして……?

Call of Duty (Black Ops 6):1,920×1,080ドット時のフレームレート
Call of Duty (Black Ops 6):2,560×1,440ドット時のフレームレート
Call of Duty (Black Ops 6):3,840×2,160ドット時のフレームレート

 VRAM 8GB以下のGeForceだと、画質設定をする段階でVRAMに関する警告が出るほどだが、実際に動かしてみるとVRAM 8GBでもなんとか動く。むしろRTX 5060 Ti 16GBのアドバンテージが生かせてないゲームといえる(VRAMは確保されているだけで実際にさほど使っていないと推測することもできる)。とはいえ、このゲームの描き込みだとRTX 5060ではフルHDでも60fpsキープすら難しい。画質を下げてプレイした方がよいだろう。

 続いて画質を「バランス重視」設定にした場合のフレームレートも見てみよう。フルHD時のVRAM平均使用量は約7.2GBである。

Call of Duty (Black Ops 6):1,920×1,080ドット時のフレームレート
Call of Duty (Black Ops 6):2,560×1,440ドット時のフレームレート
Call of Duty (Black Ops 6):3,840×2,160ドット時のフレームレート

 描画負荷が下がったことでフレームレートも上がったが、先の極限設定時の傾向がそのまま値を変えて展開されたといった感じである。この設定ではRTX 4060に対しRTX 5060は20%前後のアドバンテージを確保できているが、先の3DMarkのスコアの伸びに近いものがある。WQHDなら60fpsを安定して上回れているようなので、WQHDでのプレイが希望ならDLSS MFGを併用してみるのも手かもしれない。

Call of Duty (Black Ops 6):ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。極限設定時のデータ
Call of Duty (Black Ops 6):ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。バランス重視設定時のデータ

 WQHDより上の解像度では画質を下げフレームレートを稼ぐ設定の方がTBPが上がりやすい傾向がある。とはいえRTX 5060のTBPは平均で150Wを超えず、RTX 30/ 20シリーズ世代の同格GPUよりもワットパフォーマンスが向上している。

Monster Hunter: Wildsベンチマーク

 Monster Hunter: Wildsは公式のベンチマークツールを使用する。画質は「ウルトラ」、レイトレーシング(RT)は「高」、 DLSSは「クオリティー」、フレーム生成(DLSS FG)も有効化。RTX 3060 12GBおよびRTX 2060ではDLSS FGは利用できないため、代わりにFSR 3「クオリティー」とFSR 3のFGを利用している。フルHDにおけるVRAM平均使用量は13.2GB前後である。

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Monster Hunter: Wildsベンチマーク:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Monster Hunter: Wildsベンチマーク:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 これまでの経験より、画質を盛るとVRAM使用量が大きくなることが分かっているが、VRAM 8GB以下のRTX 5060などではフルHDの段階で描画そのものが遅くなる。RTX 5060 Ti 16GBより上のGPUだと開始から5分40秒あたりで豆のスープを食べるシーンに到達するのだが、VRAM 8GB以下のGPUではまだ村の中を歩いているのである。

 フルHDの段階でプレイに致命的に適さないフレームレートであるため、WQHDより上の解像度ではテストをしていない。4KになるとさすがにRTX 5060 Ti 16GBでも力不足は否定できないが、VRAM搭載量の多いRTX 3060 12GBが何とか動いている点が興味深い。

 ちなみに、以前筆者がRTX 5060 Ti 8GBをレビューした際は、RTX 5060 Ti 8GBはこの設定で完走することすらできなかった。PCIe 5.0に上げたことが関係している可能性もあるが、ともあれGeForceのドライバは以前よりは少し進歩したと確認できた点は幸いだった。

 今度は画質を「中」、レイトレーシングはオフ、DLSS「クオリティー」は使用するがDLSS FGはオフとした。オフにした理由はメモリ帯域の狭いRTX 4060などで動かすとかえってフレームレートが落ちるという経験によるものである。フルHDにおけるVRAM平均使用量は約7.5GBである。

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Monster Hunter: Wildsベンチマーク:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Monster Hunter: Wildsベンチマーク:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 RTX 5060 Ti 8GBをレビューした際は、中設定では完走できないが高設定では完走したという謎挙動を示したテストだが、今回は中設定で何事もなく完走した。この設定ならばVRAM 8GBのRTX 5060でも難なくプレイ可能だ。

 RTX 5060はRTX 4060に対しては20%高い平均フレームレートを出している点から、SM数の増加やメモリー帯域の向上がしっかり効いている感じである。RTX 3060 12GBやRTX 2060などの旧世代GPU基準であれば、RTX 5060は良好なアップグレード先として検討しても良いかもしれない。

 先のウルトラ設定ではVRAM搭載量の多いRTX 3060 12GBの方が有利のように見えるが、画質を下げればVRAM使用量も減り、自然とRTX 5060と競るようになってしまう。ただ、Monster Hunter: Wildsに関しては快適プレイを目指すなら、現状はRadeon(特にRX 7000シリーズ以降)の方がより優れた選択であるため、今後出てくるであろう(原稿執筆時点では未発表)「Radeon RX 9060」シリーズの登場を待って判断するとよいだろう。

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。ウルトラ設定の場合
Monster Hunter: Wildsベンチマーク:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。中設定の場合

 ウルトラ設定ではRTX 5060 Ti 8GB~RTX 4060までのTBPが70W前後に下がっているが、これは負荷が重すぎ、またはVRAM不足の理由などによりGPUの処理が大幅に滞っていることを意味する。画質を下げ負荷やVRAM使用量を軽減することでようやく普通に動作するようになったことがTBPの出方から分かる。

The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered

 The Elder Scroll IV: Oblivion Remasteredでは、画質は「最高」、DLSS「クオリティー」とフレーム生成も有効化(RTX 3060 12GB以下はFSR 3を使用)、さらにRTX 50シリーズではNVIDIA AppよりDLSS MFG 3x設定も付与したパターンも追加。“ウェイノン修道院”より一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。フルHDにおけるVRAM平均使用量は約7.8GBである。

The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:1,920×1,080ドット時のフレームレート
The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:2,560×1,440ドット時のフレームレート
The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 RTX 5060 Ti 8GBやRTX 5060は盛大に結果が揺れ動く(何回も回して“この程度が中庸だろう”という値を示している)。これはVRAM不足から発生するものであり、PCIeのトラフィックは30~40GB/secに到達することもある。PCIeのトラフィックに邪魔されてしまいGPUの処理が滞ってしまうわけだ。

 RTX 3060 12GBはその点比較的安定していたが、そもそものフレームレートが低く、RTX 5060より優れているとは言い難い。むしろRTX 5060方がフレームレートが伸びる傾向があるのでいくらかマシ、といった感じだ。いずれにせよこの設定で動かしたいなら、RTX 5060 Ti 16GBより上のGPUが必須であることに疑問の余地はない。

 では画質「中」、レイトレーシング「中」設定の場合はどうなるだろうか?フルHDにおけるVRAM平均使用量は約7.3GBである。

The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:1,920×1,080ドット時のフレームレート
The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:2,560×1,440ドット時のフレームレート
The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 このゲームを中設定で遊ぶ場合でも、DLSS MFGの有効化はマストと言ってよい。DLSS MFGを利用することでフレームレートの落ち込み感がかなり軽減されるからだ。さすがに4KではVRAM不足によりRTX 5060 Ti 16GBとの差が完全に引き離されてしまうが、WQHDであればDLSS MFGを活用しプレイに適したフレームレートが得られる。この場合平均フレームレートはRTX 4060の1.7倍、RTX 2060基準ならば約4.9倍になる。

The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。最高設定の場合
The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。中設定の場合

 RTX 5060 Ti 8GBやRTX 5060ではDLSS MFG利用時に消費電力が上がるパターンと下がるパターンが混在しているが、特に最高設定の場合PCIeのトラフィックのおかげで性能が出にくくなっているため、TBPの出方はほぼ参考にならない。中設定ならVRAM不足によるパフォーマンス低下が起きないWQHDまでのデータに注目したい。RTX 5060はRTX 2060とほぼ同レベル~+20W程度TBPが増えているが、3倍以上のワットパフォーマンス向上を果たしている。

Cyberpunk 2077

 重量級ゲームの代名詞であるCyberpunk 2077に対し、RTX 5060はどの程度対抗できるのだろうか?まずは画質「レイトレーシング:オーバードライブ」をベースにDLSS「クオリティー」およびフレーム生成も追加。さらにDLSSの学習モデルはTransformerを指定した。またRTX 3060 12GBおよびRTX 2060はFSR 3を利用する。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。フルHDにおけるVRAM平均使用量は約9GBである。

Cyberpunk 2077:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Cyberpunk 2077:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Cyberpunk 2077:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 VRAM平均使用量が9GBである時点でRTX 5060では無理な印象があるが、フルHDで動かす限りは前のThe Elder Scroll IV: Oblivion Remasteredのような息苦しさは感じることはない。DLSS MFG 3xの助けを借りれば、100fpsオーバーのプレイが体験可能だ。DLSS FGの登場でパストレーシング(レイトレーシング:オーバードライブ設定のこと)でのゲームプレイが可能になったが、DLSS MFGによって60番台のGeForceでも100fps以上でのプレイが可能になった点は強調しておきたい。

 ただ、フルHDより上の解像度では少々怪しくなってくる。WQHDではMFG 3xを使ってなんとかプレイは可能だが、4KになるとVRAMが足りずに完全にスタックしてしまう。ただ、VRAMの多いRTX 5060 Ti 16GBでも平均45fpsが精一杯であるため、パストレーシング+4Kで遊ぶにはRTX 5070 Tiより上でないと厳しいだろう。

 では画質「レイトレーシング:中」設定の場合はどうなるだろうか?DLSSレイ再構成はオフにしているが、そのほかDLSSやFSR 3の設定は変えていない。フルHDにおけるVRAM平均使用量は約8.9GBである。

Cyberpunk 2077:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Cyberpunk 2077:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Cyberpunk 2077:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 画質を2段下げるとフルHDであってもRTX 4060が平均100fps超の世界に突入するが、RTX 5060であればWQHDでもその領域に到達する。4Kでも戦闘を避ければ十分動き回ることはできるが、戦闘やアクションを行なうのは少々厳しい。ただ同じVRAM 8GBのRTX 4060と比較するとRTX 5060は約70%高い平均フレームレートを示しており、SM数の強化とメモリ帯域の拡大が効いていると推察される。

Cyberpunk 2077:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。レイトレーシング:オーバードライブ設定時のもの
Cyberpunk 2077:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)。レイトレーシング:中設定時のもの

 レイトレーシング:オーバードライブ設定だとVRAM 8GBのGPUではWQHDを境にVRAM不足で性能が下がっているのが見てとれる(解像度が上がってTBPが大きく下がる)。だがレイトレーシング:中設定だと4Kになってもギリギリ回せていることがワットパフォーマンスから推察できる。RTX 3060 12GBはVRAMが多い分有利だが、投入した電力に対するフレームレートを考えると実用度は高くないといえる。

Marvel Rivals

 Marvel Rivalsは画質「最高」に設定(レイトレーシングも有効化される)。訓練場にて一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。本ゲームではアップスケーラとフレーム生成で異なる技術を選択できるため、RTX 3060 12GBやRTX 2060ではアップスケーラはDLSS、フレーム生成はFSR 3 FGとしている。また、DLSSの学習モデルはNVIDIA App経由で「最新」を選ぶことでTransformerモデルにオーバードライブしている。フルHDにおけるVRAM平均使用量は6.6GBであるため、画質を下げた設定では検証しない。

Marvel Rivals:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Marvel Rivals:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Marvel Rivals:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 VRAM 8GB環境でもVRAM残量に余裕の出やすい設定であるため、WQHDまでならRTX 5060のパフォーマンスは良好だ。RTX 4060に対してはDLSS MFGに「頼らなくても」16~27%上の平均フレームレートを示すほか、RTX 3060 12GB相手なら50%前後、RTX 2060ともなれば80~120%上回ることができる。DLSS MFG 3xを追加すれば旧世代GeForceなど全く相手にならないのだ。

 しかし4KになるとVRAM 8GBでは厳しくなるため、最低フレームレートが顕著に落ち込むようになる。ただその場合でもRTX 3060 12GBは基本的な設計が古いため、VRAM容量に余裕があってもRTX 5060に決定的な優位性を示すことはできない(ただし最低フレームレートの落ち込みはやや有利である)。

Marvel Rivals:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)

DOOM: The Dark Ages

 ここまでDLSS MFGがRTX 5060を“盛り立てる”ゲームだけを見せてきたが、必ずしもそうではないという例もご覧いただこう。先日公開されたDOOM: The Dark Agesでの検証だ。画質は最も重い「ウルトラナイトメア」に設定。DLSS「クオリティー」にフレーム生成も追加。RTX 3060 12GB以下のGPUではFSR 3を利用している。キャンペーン最初のステージにおける一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。フルHDにおけるVRAM平均使用量は7.5GBである。

DOOM: The Dark Ages:1,920×1,080ドット時のフレームレート
DOOM: The Dark Ages:2,560×1,440ドット時のフレームレート
DOOM: The Dark Ages:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 まずフルHDの結果だけに注目すると、DLSS MFGの効果は絶大である。RTX 4060でもDLSS FGの効果があるため高いフレームレートが出せるが、RTX 5060は平均200fpsを超えるフレームレートを叩き出せる。DLSS MFG 3xの利用で最低フレームレートの出方についても改善されている点に注目したい。RTX 3060 12GBでもフルHDなら100fpsオーバーが出せるが、検証時のビルドではかなり不安定だった(ゲーム側の問題と思われる)ことも記しておきたい。

 ところがWQHDより上の解像度では状況が一変する。RTX 5060 Ti 8GBおよびRTX 5060ではDLSS MFGが効いている様子がない。RTX 5060 Ti 16GBではDLSS MFGの効果が出ていることも考えると、DOOM: The Dark Agesの実装ではVRAMが不足した場合DLSS MFGがキャンセルされてしまうようだ。DLSS MFGはRTX 50シリーズの大きな切り札ではあるが、VRAM搭載量を絞ってしまったばかりにその切り札が無効化されてしまうわけだ。

DOOM: The Dark Ages:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)

 フルHDではRTX 5060 Ti 8GBやRTX 5060のDLSS MFGが効くためワットパフォーマンスもこれに連動しているが、WQHD以上になるとVRAM不足からDLSS MFGがキャンセルされ、RTX 4060並のワットパフォーマンスに落ちてしまうのが興味深い。

VRAM 8GBで厳しい結論は変わらない

 以上でRTX 5060のレビューは終了である。今回はRTX 4060との対比を中心に見てきたが、SM数の大幅増設(RTX 40→RTX 50シリーズでは2番目の増量規模)とGDDR7採用によるメモリ帯域拡張により、RTX 4060を20%以上上回るシーンもたびたび観測された。

 もしRTX 3060や2060といった旧世代の60番台(近辺含む)GeForceを使っているなら、電源ユニットの強化を考えずに強化できる。そしてDLSS MFGを効かせれば、描画の重いAAAタイトルも高フレームレートでプレイできるだろう。

 ただしRTX 5060を使用する際はゲーム中のVRAM使用量を8GB程度に納める必要がある。最近のゲームは画質設定でVRAMの予想使用量を出してくれるものも増えてきているため、ゲームの警告を無視しなければよいだけの話だ。

 今の時代8GBのビデオカードを出すことは正しいのか?という議論はあるが、VRAMを増やせばコストに跳ね返る。特にRTX 50シリーズはメモリ帯域を拡げるためGDDR7を採用しているため、コストが大幅に上がってしまう(その点ではRTX 5060 Ti 8GBの初出価格はかなりのオーバープライシングだった)。画質はある程度欲しいが最高設定にはこだわらない&予算も抑えたい、そんな人向けのGPUといえる。

 筆者はRTX 5060の良い側面について言及してきたが、「これからGeForceを買うのであればRTX 5060 Ti 16GB以上が良い」という考えは微塵も変わっていない。将来的にゲームグラフィックスはニューラルレンダリングを採り入れ、より少ないリソースでよりリッチな表現を目指すように進化していくことは確実だが、そんな変化がすぐ到来するわけではない。長く使いたければVRAMは多い方がよいのだ。