特集
ニュースリリースで振り返る、時代を築いたPCたち【NEC編 TK-80~PC-9800シリーズ】
2025年3月3日 06:12
筆者が執筆している本誌コラムの「パソコン業界 東奔西走」の1回目が掲載されたのが、2001年2月である。この2月で、連載開始から25年目に突入したことになる。パソコン業界の動向を中心に記事を掲載するという、当時のWeb媒体にはあまりない例がない連載としてスタートしたが、四半世紀という長い期間に渡って続けることができた。ご愛読をいただきました読者のみなさま、ありがとうございます。
それにあわせて今回から、「パソコン業界 東奔西走」の番外編として、短期集中の特集企画「ニュースリリースで振り返る、時代を築いたPCたち」をお送りする。1970年代以降の黎明期に話題を集めたPCに関する当時のニュースリリースを、全文掲載するという初めての企画となる。
今回の記事化にあたっては、主要PCメーカー各社の広報部門の多大なる協力を得た。広報部長自らが、倉庫に保管された紙の資料をひっくり返して、該当する資料を探し出してもらうなど、各社広報部門には、大変なご迷惑をおかけしながら実現した企画である。日本のPC業界の貴重な資料の1つとして残したいと考えている。
PCメーカーごとにニュースリリースを掲載するので、ぜひ楽しんでいただきたい。まずは1回目として、NEC編その1を掲載する。
1977年11月24日発表「TK-80BS」
最初のニュースリリースは、1977年11月24日に発表した「TK-80BS」である。NECは、同社初のマイコントレーニングキットとして、1976年9月に「TK-80」を発表しているが、NECには、この時のニュースリリースが存在していなかった。そのため、NECが保管し、現存する最初のPC(マイコン)に関するニュースリリースが「TK-80BS」ということになる。「TK-80BS」は、TK-80やTK-80Eと組み合わせて使用されるマイコントレーニングキットだ。
【10時11分訂正】記事初出時、画像がCOMPO BS/80のリリースになっておりました。お詫びして訂正します。
1978年10月3日発表「COMPO BS/80」
1978年10月3日に発表したCOMPO BS/80は、TK-80BSとCPUボードと電源をキャビネットに組み込んだCOMPO BS/80-Bと、これに、ソフトウェアを読み込むためのカセットテープレコーダーや、インターフェイス回路を組み込んだCOMPO BS/80-Aの2製品を用意。NEC LWVEL-2 BASICを搭載しており、同社が初めてBASICを搭載した製品となった。
キャビネットに組み込んだという表現からも分かるように、それまでのボードむき出しのマイコンから、PCのような形をした製品へとし進化したものとなっている。
1979年5月9日発表「PC-8001」
1979年5月9日に発表となったのが、PC-8001である。NEC初のPCと位置付けられる製品で、開発コードネームは「PCX-1」。FDD(フロッピーディスクドライブ)ユニットやディスプレイも同時並行で開発し、カラー化にも取り組んだ。
ニュースリリースを見ると分かるのだが、ここには、「PC-8001」という型番は一切書かれておらず、「パーソナルコンピュータを製品化」するという表現となっている。5月16日から開催された第3回マイクロコンピュータショウに試作機を初めて展示し、話題を集め、その後、製品名が正式に決定した。
ニュースリリースでの発売予定は、1979年8月としていたが、実際には1カ月遅れの1979年9月に発売。MicrosoftのBASICを採用したことでも話題を集めた。
1982年10月13日に発表「PC-9800シリーズ」
1982年10月13日に発表されたPC-9800シリーズは、その後、「国民機」と呼ばれるほどの圧倒的シェアを獲得し、NECがPCメーカーとしてのポジションを確立した「98(きゅうはち)シリーズ」の最初の製品がPC-9801となる。
当時は、機種ごとにソフトェアの互換性がなかったが、PC-9801では、PC-8000シリーズのソフトウェアを利用できるようにしたほか、出荷開始1~2カ月前に、約50社のソフトウェアメーカーに試作機を提供し、サードパーティ製アプリケーションソフトの品揃えに力を注いだ。
この結果、PC-9800シリーズに対応したソフトウェアが増加。ソフトウェアのラインアップ数の豊富さを背景に、シェアを伸ばしていった。ニュースリリースの中でも互換性を訴求していることが分かる。