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実はプラモデルよりも簡単!世界に1台だけが手に入る「自作PC」のススメ
2023年11月14日 06:17
本誌の読者なら、自作PCとはどんなものか知っている人がほとんどだろうが、最近PCを自作したという人はそれほど多くはないように思われる。筆者がPC/IT系ライターとして記事を書き始めてから30年以上経っているのだが、その間、何度か自作PCがブームになり、PC雑誌などでも自作PCに関する記事が盛んに掲載された。しかし、最近はPCを自作する人が以前に比べると大分少なくなったように思う。
もちろん、昔からずっと趣味でPCを自作している人はいるだろうし、自作PCの先鋭化ともいえるMOD PCも登場している。ただ、それ以外にも、自作PCには自作PCならではのメリットがあり、PCへの理解が深まるだけでなく、自分で作ったPCには愛着が湧くものだ。
そこで、1度もPCを自作した経験はないが、自作PCに興味があるという人や、はるか昔にPCを自作したことがあるが、その後は自作PCを組んでないという人に向けて、自作PCのメリットやPCを自作する際の注意点について、改めて解説したい。
PC自作の7つのメリット
まず、自作PCとは何だろうか?
もちろん文字通り、「PC」を「自作」することだ。PCは、ノートPCとデスクトップPCに大別できるが、自作PCは基本的にデスクトップPCが対象となる(ケースのサイズなどは多種多様な選択肢があり、コンパクトなPCも大きなPCも自作できる)。
電子製品の自作と聞くと、中学の技術家庭科で作ったラジオやインターフォンなどのように、基板に部品をハンダ付けする作業が必要なのではないかと考える人もいるかもしれないが、一般的なPCを自作する際にそうした作業は一切する必要がない。もちろん、特殊な工具なども不要だ。自作と言っても、実際の作業はケーブルをコネクタに接続したり、部品を所定のソケットやスロットに差し込むだけだ。自作には違いないが、家具やレゴを組み立てるようなものだ。部品の数もガンプラなどに比べると遙かに少なく、細かな作業もいらない。自作と聞いて、「私には無理」と思う人もいるかもしれないが、作業自体の難易度はそれほど高いわけではなく、小中学生でもPCを自作している人はたくさんいる。
それでは、PCを自作するべき理由として、主なメリットを紹介しよう。PC自作の主なメリットとしては以下の7つが挙げられる。
コストパフォーマンス(既製品より安い)
まず、自作PCのメリットとして挙げられるのが、コストパフォーマンスの高さだ。国内の大手PCメーカーの製品と比べると、自作なら同じスペックのPCをより安い価格で実現できることが多い。
ただし、直販主体のPCメーカーやショップブランドの製品は、スケールメリットでかなり安い値段で売られていることも多く、自作PCとの価格差がほとんどない場合もある。それでも、丹念に安売りされているパーツを集めたり、友人から不要になったパーツを安く譲ってもらったりすれば、格安でPCを手に入れることができるだろう。
カスタマイズ性(好みや予算に合わせて選べる)
2つ目のメリットがカスタマイズ性の高さだ。CPUやGPU、メモリ、SSDといったPCの基本性能を決める主要パーツはもちろん、ケースのデザインや色、サイズ、ファンなど、あらゆるパーツを自分で自由に選ぶことができる。
もちろん、用途や予算によってもおすすめの仕様は変わってくるが、メーカーお仕着せの仕様ではなく、自分好みのスペックのPCを実現できることが魅力だ。見た目にこだわったり、フルカラーLEDが搭載された光物パーツをふんだんに採用してド派手なゲーミングPCを作ることも自由自在だ。
最新技術や高性能パーツを盛り込める
また、CPUメーカーやGPUメーカー、ストレージメーカーなど、各社から発売されたばかりの最新高性能パーツをいち早く盛り込めることもメリットだ。
たとえば、2023年10月16日にIntelから最新の第14世代Coreプロセッサが発表されたが、国内の大手PCメーカーではまだ第14世代Core i搭載製品を発表したところはほとんどない。一部のショップブランドPCでは、第14世代Coreプロセッサを搭載した製品も登場しているが、自作PCなら発売日にそのパーツを入手してPCに搭載することも可能だ。発売されたばかりのパーツをいち早く使ってみたいという人にも、自作PCはお勧めだ。
拡張性と自由度の高さ
自作PCは、一般的にPCメーカーの製品に比べて、利用できるインターフェイスやPCI Expressスロットの数が多く、拡張性が高いこともメリットだ。ゲーム実況配信をする場合など、市販のPCではUSBポートが足りなくなることもあるが、自作PCならマザーボードがサポートしている全てのUSBポートを利用することもできるので、そうした心配はない。ほかにもストレージを複数台搭載してRAID構成にするなど、メーカー製PCにはない自由度の高さが魅力だ。
アップグレードが容易で長期にわたって使い続けられる
拡張性や自由度の高さとも関連するが、自作PCは、CPUやビデオカードなどのアップグレードがしやすいこともメリットだ。自作PCなら数年間利用して、最新ソフトを動かすにはパフォーマンスが不足するようになった場合でも、CPUやビデオカードをより高性能なものに交換することで性能を向上できる。
また、自作PCは、ストレージが一杯になった場合でも、ストレージを追加したり、大容量のものに交換することができるため、アップグレードがしにくいメーカー製PCよりも長期にわたって現役のマシンとして使い続けられる。
PCに関する知識とスキルの向上
PCを自作することで、PCに関する知識やスキルが自然に身についていく。CPUやビデオカード、メモリなど、PCを構成するパーツを集めて、自分の手で組み立てることで、PCはどんなパーツで構成されているのかといった知識が身につく。
また、OSやドライバのインストール、セットアップを行なうことで、PCを動かすのに必要なソフトウェアの知識も身についてくる。PCを自作することで、PCへの理解度が高まり、急に起動しなくなるといったトラブルにも、早急に対応できるスキルを得ることができる。
個別パーツの保証
最後に挙げるメリットが、パーツ保証を個別に受けられるということだ。メーカー製PCの場合、ビデオカードやメモリなど特定のパーツに不具合が生じても、基本的にそのパーツだけを送って交換してもらうことはできず、PC一式を修理に出す必要がある。自作PCなら、不具合が判明したパーツだけを送って交換や修理を受けることができるので、手間がかからない。
PC自作のデメリット
もちろん、PC自作はメリットばかりではない。主なデメリットとしては、以下の2つが挙げられるだろう。
パーツ単位で故障を特定する必要がある
メーカー製PCは基本的に動作チェックをしてから出荷するので、いきなり動かないということはあまりないのだが、自作PCの場合、一見正しく組めてるように見えても、スロットやソケットにパーツがしっかり装着されていなかったり、マザーボードへの電力供給が足りないなどの原因で、組み立てても正常に動作しないこともある。
自作PCの場合、パーツ単位ではメーカー保証が付いていても、PC全体の保証をしてくれるわけではないので、パーツの故障が原因で動作しない場合は、その故障したパーツを特定する必要がある。ある程度PC自作に慣れていて、代替パーツが一通り揃っているなら、故障したパーツの切り分けはそれほど難しくはないが、あまり経験のない方だと自作PCにトラブルが起こったときに、その原因を見つけるのはなかなか難しい。自作PCに詳しい友人がいるのなら、頼んでみるのも1つの手だ。
ソフトウェアのインストールが手間
また、メーカー製PCなら、Windowsをはじめ必要なドライバやユーティリティなどがインストール済みで、買ってきたらすぐに使い始めることができるが、自作PCは組み立てが完了しても、OSやドライバ、ユーティリティなどを自分でインストールし、Windows Updateなどを行ない、最新状態に更新するといった作業が必要になる。
もちろん、一からPCをセットアップすることは、PCのスキル向上にもつながるし、不要なアプリケーションを入れずに済むというメリットもあるのだが、場合によってはかなり時間がかかる作業ではある。
自作PCを組む際の注意点
このように自作PCには、多くのメリットがあり、どんな構成にするかいろいろ考えることも楽しい。興味を持った人は是非挑戦してみることをおすすめしたいが、初めてPCを自作する人が、何も調べずに闇雲にパーツを買ってきて組み立てを始めると、何かとトラブルが起きがちだ。
PCの自作に挑戦するなら、まず以下に挙げる4つのポイントを全てクリアすることが大切だ。
十分な知識を得る
まず、自作PCに関する十分な知識を得ることが大切だ。PC Watchを読んだり、PC自作に関する書籍や雑誌を読むなりして、CPUやGPU、マザーボード、メモリ、SSDといったパーツ単位の理解を深めるようにしたい。
また、最新の価格情報については、AKIBA PC Hotline! などが参考になる。そのほか、Googleで「自作PC 入門」などのキーワードで検索すれば、自作PCの入門者に向けた記事が書かれているサイトが数多くヒットするので、そうしたサイトをチェックするのもおすすめだ。
パーツ選定と互換性について
パーツ選定と互換性の確認も非常に大切である。基本的なところでは、CPUとマザーボードの互換性がある。
自作PC経験のある方なら当たり前に思われるだろうが、Intel製CPUとAMD製CPUでは対応マザーボードが異なり、Intel製CPUをAMD製CPU対応マザーボードに装着することや、その逆にAMD製CPUをIntel製CPU対応マザーボードに装着することはできない。
ここまでは初心者でも知っている人が多いだろうが、さらに、Intel製CPU対応マザーボードでも、搭載チップセットによって対応CPUの世代が異なる。大ざっぱにいえば、最新CPUを使ってPCを組むなら、マザーボードも最新のものを選ぶことがおすすめだ。自信がない人は同じショップでCPUとマザーボードを同時に購入し、このマザーボードでこのCPU使えますよね? と確認するのがよいだろう。
メモリの互換性も注意したい。現在主流のメモリは、DDR4メモリとDDR5メモリだが、DDR4とDDR5では互換性がなく、DDR4メモリスロットにはDDR4メモリしか装着できず、DDR5メモリスロットにはDDR5メモリしか装着できない。マザーボードのメモリスロットの仕様をしっかり確認することが大切だ。
さらに、自作PC初心者は電源容量も見落としがちだ。搭載するパーツによって必要な電源容量が変わってくるが、将来CPUやビデオカードをより高性能なものにアップグレードする予定なら、最初から余裕を持った容量の電源ユニットを選ぶことをおすすめする。特に高性能ビデオカードは消費電力が大きいので、ゲーミングPCを組むなら、800W程度の電源ユニットを選ぶことをおすすめする。
安全な作業環境
PCを組み立てる上で意外と忘れがちなのが、安全に組み立て作業ができる環境を用意することだ。PCデスクの上で組み立てることもできるが、筆者は床の上で組み立てるのが好きだ。PCケースを横倒しに置いて、さらに周囲に十分なスペースを確保するようにしたい。マザーボードのマニュアルなどを見ながらの作業になることもあるので、できるだけ広めのスペースを確保したい。
ドキュメントの熟読
組み立てを実際に始める前に、用意したパーツに関するマニュアルなどのドキュメント類にはしっかり目を通しておくことをおすすめする。パーツによっては詳しい紙のマニュアルは要されておらず、サイトからPDFをダウンロードするようになっていることもあるが、そうした場合もできるだけプリンタで紙にプリントしておくと見通しがよくなり、組み立て作業時に戸惑うことがなくなる。組み立てに慣れてない場合は、組み立ての順序をあらかじめ箇条書きなどで、書いておくとよいだろう。
以上の4つのポイントさえ守れば、初心者でもスムーズにPCを組み立てることができるだろう。自分でパーツを買い集めて作ったPCは、愛着もひとしおだ。PC自作に興味を持った方は是非、挑戦してみてはいかがだろうか。