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大学で広がる「BYOD」の波! 学校は生徒にどんなPCを持ってこいと言っているのか? スペックを調べてみました
~PCおじさんの(恩着せがましい)購入アドバイス付き
2024年4月15日 06:13
2024年4月。花咲き誇る春シーズンを迎えた。大学周辺をブラついていると、入学間もないであろう新入学生の姿をよく見かける。どんな教科をとろうか、どのサークルに入ろうか。悩ましくも楽しい時期を過ごしていることだろう。
ところで筆者が大学に通っていたのはもう30年近く前だが、その頃に比べて学生生活の様相はさすがに変わった。代表的なのがPCの扱いだ。履修手続きや日々の勉強においてPCを使う場面が多いため、授業に合わせて教科書を用意するように、学生自身での私物PC購入を推奨する大学が増えているという。専用教室に設置されたPCを使うのではなく、あくまで個人所有のPCを組織内で利用する、いわゆる「BYOD(Bring Your Own Device)」が広がっているのだ。
そこで今回は、大学側が学生たちにどんなPCを買えと説明しているのか、著名校を中心に調べてみた。いわゆる“推奨スペック”が各大学によって示されているのだが、その細目はなかなかどうして差が大きい。家族や親戚から購入アドバイスを請われたときの参考用に、是非ご活用あれ。
Windows/Mac両対応、Core i5以上が大学界のデファクトか? ~東京大学の推奨条件から考える
各大学のBYOD動向を比較する上での基準点・ベンチマークを探るべく、まずは東京大学の状況を確認してみよう。
東京大学のBYODに関するサイト
https://utelecon.adm.u-tokyo.ac.jp/docs/byod
東京大学では2022年度入学生から「個人所有のモバイルPCを大学の授業等で利用するBYODを実施すること」にした。オンライン授業関連の情報を発信するWebサイト「utelecon」では、“PCの必携化”の文言が確認できる。BYODの推進に留まらず、東大生100%全員がなんらかのモバイルPCを持ち歩いてほしい、という意味だろう。
PC推奨要件は「新規に購入する場合」、「既に所有している場合」の2つに分かれているが、今回は新規購入について見てみよう。OSはWindowsかmacOSのどちらでもよいか、最新バージョン(Windows 11かmacOS 14)であること。CPUはIntelのCore i5相当またはApple M2相当以上、メモリは8GBであることを求めている、なおストレージはHDDなら512GB、SSDなら256GB以上。
ディスプレイは11型以上で、物理キーボードが必須。リモート授業に必要なヘッドホン/マイク(の端子)、カメラについても同じく必要だ。バッテリ駆動時間はカタログ値で15時間以上が推奨されている。加えて、自宅で必要なデータ通信環境として、通信速度1Mbps以上かつ月間通信容量が50GB以上の回線が項目に盛り込まれている。
なお、ここで提示されているスペックはあくまで授業の受講に必要なPCの目安。学部によっては個別の要件が設定されている。
要求スペックは、まさに“標準的”いったところ。「いやメモリは16GBくらいはあったほうがいい」、「さすがにHDDは止めとけ。SSD一択」、「画面は11型以上ならいいそうだが、かといって15.6型とかは選ばないほうがいいんじゃない? 本体が重たくなるぞ」等、おせっかいなおじさんからすると言いたいことはある。ただ「授業に必要な基本的性能要件」というのであれば、納得の水準だろう。
ちなみに東大生には「UTokyo Account」という大学共通のアカウントが発行されるとのこと。そしてこのアカウントに紐付く形でGoogle Workspace、さらにはMicrosoft Officeの各種アプリやOneDriveが用意されるという。このあたりはもう大手企業なみの通信インフラ。卒業論文の手書きが過去の話になって当然だ。
なお、メール、クラウドストレージ、そしてオフィス統合ソフトのライセンスを学生に発行する大学はかなり多い。最終的には個別に確認してほしいが、大学用PCの購入にあたってMicrosoft Officeのプリインストールモデルを選ぶ必要性は低いと言える。
あの大学の推奨スペックは? 有名13大学を比較
では、ここからは各大学の動向を見ていこう。購入を推奨するスペックの指定が非常に細かい大学があるかと思えば、「動画が見られればOK」だったり、そもそもMacでないとムリ! な学部も存在する。特徴的な大学を中心にピックアップしたので、是非比較してみてほしい。
早稲田大学のBYODに関するサイト
https://info.mse.waseda.ac.jp/blog/2024/03/19/9162/
私立大学としてトップクラスの知名度を誇り、大学スポーツなどでも著名な早稲田大学だが、調べた限り“全学生共通のPC要件”は見当たらず、学部単位での設定となるようだ。上記は早稲田大学の理工メディアセンターによる新入生向け文書。ファイル共有の「Box」内に、理工系学部別の推奨PC要件がまとめられている。
学科によってかなり条件が異なり、たとえば先進理工学部の化学・生命化学科はWindows 11が前提となっていて、macOSの利用が考慮されていない。逆に、基幹理工学研究科の機械科学・航空宇宙専攻ではPCは必携ではなく任意とされている(とはいえ履修登録などである程度必要だろうが……)。
総じて、早稲田大学の理工系学部のPC要件はバラバラ。ただし前述の東京大学とは異なり、ディスプレイ解像度、本体重量、USBインターフェイスの有無、GPU性能にも言及しているのが印象的だ。
ちなみに要求スペックが特に高いのが先進理工学研究科の生命医学専攻。Windows環境であればCore i7、メモリ16GB、SSD 512GB、ディスプレイが14型(3:2)程度でかつ解像度が2,160×1,440ドット以上、本体重量1kg程度がよいとされる。これだと25万円コースか?
慶應義塾大学のBYODに関するサイト
https://text.univ.coop/puk/START/keio/hiyoshi/hiyoshi_474.html
大学や学部がBYOD推奨要件を定める以外に、大学生協が独自に“おすすめスペック”を提示するケースがある。慶應義塾大学の生協もその1つ。文学部のオススメ1位は「Surface Pro 9」の第12世代Core i5/8GB/SSD 256GBモデルだそう。
なお同大学の湘南藤沢キャンパスでは、BYOD方針を2023年度の段階で示している。こちらによれば、2020年春学期から特別教室の一部でPCを撤去し、個人PC利用を推進しているとのこと。合わせて、PCの推奨スペックが示されており、CPUならCore i5以上、ディスプレイ解像度がフルHD以上、メモリは8GB以上が推奨だが16GB以上ならなお良い、とされている。ただし、いずれも2023年度段階の案内である点に注意を。
明治大学のBYODに関するサイト
https://www.meiji.ac.jp/koho/byod/
明治大学は、学生自身がPCを持参して学ぶBYODについて、公式サイト上で推奨・推進している。授業関連のレポート作成、オンライン受講、学習支援システムの利用はもちろん、将来的な就職活動にも役立つとしている。ごもっとも。
明治大学では、全学通じての推奨仕様を定め、そのほか、学部に応じた条件を提示している。この共通推奨仕様だが、ノートPCやタブレット型であり、軽量かつ薄型、さらに物理キーボードを利用できることが前提(つまりは自宅にデスクトップPCだけあってもダメということ)。
OSはWindows 11かmacOSのとちらでもよい。CPUはCore i5相当かApple M1、ストレージについては250GB以上のSSDを特に推奨している。追加条件の定められている学部は法学部、理工学部などだが、このうち総合数理学部・現象数理学科は「学科が指定するノートPCを入学後に購入していただく」とのこと。
駒澤大学のBYODに関するサイト
https://www.komazawa-u.ac.jp/pass2024/admission_procedure.html
駒澤大学は「PC必携」とまでは押し出していないが、それでも「本学の授業においてはPC使用が不可欠」と強調。2024年度からは一部の学部でBYOD制度をはじめた。
学部ごとの要件基準はかなり異なっていて興味深い。たとえば仏教学部はノートPCが絶対で、タブレット型は完全に不可。第11世代以降のCoreシリーズで6コア以上のもの、MacだとApple M1/M2が推奨されている。対して文学部系の学科はWindowsのみを対象としていて、Macは一切不可だ。
なおOS、CPU、メモリ以外の項目は学部共通の推奨スペックが示されている。画面サイズは13型程度が望ましく、本体重量は持ち運びの観点から1.3kg以下を目安としている。
専修大学のBYODに関するサイト
https://www.senshu-u.ac.jp/visitor/for_new_students/
専修大学でもBYODを推進中。ただしネットワーク情報学部の新入生にだけは、大学側が一括調達したノートPCを配布するそう。このあたり、入学金や教材費が学部によってかなり違うのだろう。
全学共通で示されている推奨スペックは、Windows 11(Mac不可)で第12世代Core i5、メモリ8GB、SSDが256GB、フルHDの画面表示能力。カメラ/マイク等は言うまでもなく必須だ。また重量は1.5kg以下が目安だが、これは持ち運びを考慮してのこと。
さらに、キャンパス内で電源を利用できる場所が限られているため、カタログ値で8時間以上のバッテリ駆動時間を求めている。外部モニター出力の手段としてHDMIだけでなく、USB Type-C(DisplayPort)を認めているのも面白い。いやあ、ミニD-Sub15ピンに頼ってプロジェクター出力していた頃が懐かしい……。
筑波大学のBYODに関するサイト
https://www.tsukuba.ac.jp/campuslife/calendar-ceremony/pc/
筑波大学でオンライン授業が導入されたのは2020年度。コロナ禍での緊急対応という側面もあったかもしれないが、その後も利用が進み、現在ではノートPCの学生個人所持を推奨するようになっている。
そのBYOD用PCスペックは学部ごとに設定されているが、学内「学術情報メディアセンター」のオンライン授業用基準を踏襲するケースが大半を占める。この“センター推奨スペック”は、2年前(2022年3月段階)のものとしており、OSはWindowsとMacどちらでも可。13型以上のディスプレイが推奨されている。
CPUは「一概には言えない」と断定を避けており、目安として中級以上、具体的には第11世代Core i5、Ryzen 5 5000シリーズなどを候補に挙げている。逆にストレージ容量にはまったく言及していない。
横浜国立大学のBYODに関するサイト
https://www.itsc.ynu.ac.jp/news/20240115.html
横浜国立大学では、「情報基盤センター」のWebサイトにて2024年度入学者向けのPC関連情報を提供している。これによれば、2024年度には学内PC教室が廃止。よって学生個人によるPC所持が実質的に必須化される。
同センターがサポートするのはWindowsのみで、macOSが対象外である点には注意。IT上級者なら工夫すればなんとかなるかもしれないが、ここは素直にWindowsノートPCを用意するのが無難か。
また、推奨仕様は原則として全学部共通。画面サイズはフルHD表示対応で12.3型、CPUは第11世代Core i5、メモリ 16GB、SSD 128GB(256GB以上を特に推奨)。なお講義棟に電源設備はないとしている。
東京理科大学のBYODに関するサイト
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20231208_2937.html
2021年度から学生個人所有ノートPCを必携化させた東京理科大学。推奨は多くの学校でされているが、必携を3年前の段階で実施したのは、かなり早い部類になるだろう。なお自宅でインターネットを利用できる環境も準備すべきとしている。
注目は、全学共通の必要最小スペックのほかに“4年間以上の利用を想定しての推奨スペック”を示している点。こちらではCPUはCore i7、メモリ16GB以上、SSD 512GB、バッテリ駆動時間10時間以上、そして「毎日の持ち運びを考慮し、できる限り軽いものであること」と、一段踏み込んだスペックを提示している。
なお、最低でもCore i7のCPUを求める薬学科のように、学部によって違いがあるのは他大学と共通の傾向。
東洋大学のBYODに関するサイト
https://toyocoop.jp/admission/pc/
今回調査した限りでは、東洋大学によるBYOD案内は確認できなかった。ただし同大学の生協では、アンケート情報などにもとづいて「4年間安心して使えるPC」を企画/販売している。中でも“先輩イチオシ”とされるのがパナソニックの「レッツノートSR4」。第13世代Corei5、メモリ16GB、SSD 256GB、12.4型ディスプレイ、重量939gというモデルだ。お値段は20万9,900円。
各学部別にOS、利用頻度、利用者の声をまとめたページも参考になりそう。たとえば文学部はWindowsシェアが81%で、利用頻度は週3日が28%で最多。「教職志望者は学校でWindowsが多いのでMacは避けた方がいい」などのリアルな声もあった。これが国際学部だとMacのシェアが33%に高まる。
法政大学のBYODに関するサイト
https://nyushi.hosei.ac.jp/news/2023/oshirase/news-20231025140939
入試情報サイトの段階で、学生生活におけるノートPCの必要性を強調している。ちなみに理系学部では全学生にノートPCが貸与されるので、逆に言うと文系学生は自身でノートPCを選ばなければならない。それも、通学時に持ち運びできるという前提で、だ。
推奨スペックだが、かなりのザックリ度。キーボード、カメラ、マイク付きで、無線LANに対応していて、バッテリ駆動時間はカタログ値で10時間以上という程度だ。ただし「配信動画が円滑に視聴可能なもの」という注文が付く。また自宅等のインターネット環境は実測値で速度10Mbps以上、月間通信容量30GB以上を推奨。
名古屋大学のBYODに関するサイト
https://www.nagoya-u.ac.jp/academics/curriculum/pc/
名古屋大学による、学生個人用ノートPCに対する考えがまとめられている。学内にPC室などは一応あるが、台数や開室時間が限られているので、個人用PCの利用を“強く推奨”するとの立場。必携化に向けてもう一歩、という段階のようだ。
ここで示されている条件の第一歩が「ノートPCであること」。ゼミのプレゼン等で使うから「持ち歩けるサイズを考えておけ」とアドバイスしている格好だ。その上での推奨仕様として、Windowsなら第11世代Core i5と同等、メモリは8GB、SSDが256GB、ディズプレイは12型以上、USB PD給電に対応していて8時間以上のバッテリ駆動(カタログ値)、HDMI映像出力を有することなどが示されている。Macも原則OK。
このほか、学部によっては追加の要件がある。法学部だと「法令判例データベースの中にはWindowsのみサポートのものがあるのでWindows推奨」、エネルギー理工学科では「1年次の秋学期の履修に備えて、Macの場合は仮想化ソフトを導入してWindowsを使用できるようにしておくことが望ましい」といった具合だ。
日本大学 芸術学部のBYODに関するサイト
https://www.art.nihon-u.ac.jp/blog/index.php?c=topics_view&pk=1699858252
日本大学もまた、学部によってそれぞれ学生用ノートPCの要件が異なるのだが、芸術学部はかなり極端。ここまで見てきた文学部や経済学部、理工系学部とも一味異なる条件だらけだ。
たとえば写真学科は、基本的にMac推奨(現在購入できるモデルであること)。CPUなどの指定はないが、メモリが16GB以上のものがよいという。どうしてもWindowsにしたい場合は「メジャーなメーカーの10万(円)程度のPCで、メモリを16GB以上搭載」がオススメだそう。なおOSに関わらず、Adobe Photoshop最新版が必要なので、アカデミック版Adobe Creative Cloudの契約を勧めているのがナンともすごい。
演劇学科、文芸学科などはWindowsの推奨スペックも示されているが、ほぼ全ての学部でMac優位。たとえば映画学科は、レポート作成ならWindowsで構わないが、映像制作にはMac--デスクトップかノートかは問わない--が必須だという。
なお注意点として「スペックを上げていくとより高額になるので(中略)授業開始後に、実際に大学のパソコンを触ってから購入を検討しても遅くありません」と書いてある。親切。
青山学院大学のBYODに関するサイト
https://www.aoyama.ac.jp/admission/first_year_students_orientation/
青山学院大学の新入生案内ページでは、理工学部 情報テクノロジー学科がノートPCに関する情報を発信している。4月11日の授業開始までに、推奨スペックのノートPCを準備しておいてほしいという。
そのスペックだが、OSはWindows 10/11、第10世代のCore i5、メモリ8GB以上、ストレージは500GB、フルHD以上の表示能力を備えたディスプレイと、かなり標準的。ただし、授業で多くのソフトをインストールするため、ストレージ容量が256GBでは足りないとしている。SSDだと高速だが値は張るため、256GBを選ぶ方は多いはず。近年はクラウドの普及でストレージ問題は出にくくなってきたが、それでも学部や授業によって事情は異なるようだ。
まとめ~4年間みっちり使うならCore i7級・20~25万円の出費は覚悟すべき!? ただしOffice類のプリインは必要なし
以上、14大学が学生に求めるPCの要件について比較してみた。CPUやメモリに共通する傾向はあるが、しかし日本大学芸術学部のように全く異なる原理/原則が働く部門もある。「これくらいのものを買っておけばいいか」と安易に判断せず、まずは通う大学の公式情報をあたる。それが重要だ。
……そうした前提のもと、筆者が考える大学用WindowsノートPCの“理想と現実”スペックを考えてみた。というのも、進学に伴って転居したばかりの学生に、25~30万円のノートPCを薦めるのは気が引けるからだ。異論反論は大歓迎、思考実験の土台としてご覧いただきたい。
項目 | 現実 | 理想 |
---|---|---|
カテゴリ | いわゆる「モバイルPC」 | 同左 |
形状 | 折りたたみ(クラムシェル)型 | 同左 |
OS | Windows 11(HomeかProは問わず) | 同左 |
CPU | 第12世代 Core i5以上 | 第13/14世代 Core i7以上 |
メモリ | 16GB以上 | 32GB以上 |
ストレージ | SSD 256GB以上 | SSD 512GB以上 |
画面 | 13~14型(フルHD表示対応、タッチ操作不可でもよい) | 同左 |
本体重量 | 1.3kg以下 | 0.8~1.1kg |
バッテリ駆動時間(JEITA 2.0カタログ値) | 7~15時間程度 | 15時間以上 |
Office | 不要 | 同左 |
物理キーボード | 必須 | 同左 |
Webカメラ・マイク/ヘッドフォン端子 | 必須 | 同左 |
映像出力 | 必須(USBアダプダで代替可能) | 同左 |
USBポート数(充電状態で使える空きポート数) | 最低でもType-A×1/Type-C×1 | 同左 |
価格 | 16~20万円 | 20~25万円 |
「モバイルノートPCって、10万円くらいで買える?」とお考えの方には大変申し訳ない。各大学で示されている推奨性能ギリギリのPCはおおむねCore i3/8GB/HDD 500GBといったあたりが、それでも購入には10~13万円前後の予算はいるだろう。だが、普段からノートPCを仕事で使う立場からすると、それではさすがに心許ない。表で「現実」と示したCore i5、16GB、SSD 256GBはそれよりも若干上のクラスでなので、15~17万の出費は確実か。
大学生は、朝から夕方まで電源のない教室でノートPCを使い続けるケースを想定しないといけない(学内で電源のある場所は限られている)。CPU性能が高いPCは、連動するようにバッテリ性能も高い傾向にある。Core i3が下位、i5が中位、i7を上位と見なし、真ん中にあるi5を選ぶのは無難な選択だと思う。
ただ、東京理科大学が親切にも示してくれたように、4年間みっちり使い続けられるPCが欲しいというのであれば、より上位の製品を選ぶべきだ。表の「理想」にまとめたように、20~25万円の出費を覚悟してCore i7/32GB/SSD 512GBを選択する。これが1つの答えだろう。逆に、在学中に1回買い替えてもよいなら、Core i5級の中位製品で一旦しのげばいい。
そしてディスプレイは大型のものをむしろ避けるべきだ。良かれと思って15型級を選ぶと、本体重量が2kgの領域になってしまう。将来的には技術革新で状況も変わるかもしれないが、少なくとも2024年時点では13~14型がベターだ。
ディスプレイが小さければ一般的に本体は軽くなる。持ち運び前提なら、PCは軽いほうが絶対にいいい。「重くて学校に持っていきたくない」では本末転倒だ。……これは筆者の趣味も入るが、軽さを追求するなら2in1(ディスプレイとキーボードの分離式)モデルより、オーソドックスな折りたたみ型(クラムシェル型)を選んぶべきではないか。コストパフォーマンスも相対的に上がると思う。もちろん、芸術系の学部の方がペン入力したというのであれば別の話にはなるが。
また今回調べてハッキリしたが、いわゆるWord、Excel、PowerPointを使うためにMicrosoft Officeプリインストールモデルを購入する必要は、ほぼない。本稿で取り上げた大学の大半が、Officeスイート各種やメール、クラウドを使うためのアカウントを学生向けに準備している。ライセンスが重複してしまうのだから、特に事情がなければOfficeレスモデルを選ぼう。これだけで2万円は価格を抑えられる。
PCの性能差/価格差は、Web閲覧や文章執筆程度の普段使いだと実感しにくい。しかし上位モデルであれば、「なんか遅いな?」と感じるシチュエーション--重量級アプリの起動速度だったり、大量のファイルコピーにかかる待ち時間など--がそもそも減るというのが、筆者の意見だ。買い慣れない商品に15~20万円出すのは大変だろうが、一種の儀式として、若い学生の皆さんには乗り越えていただきたい。
とにもかくにもコストを下げたいという方は最低限、ストレージにSSDだけは選択してほしい。HDDとは明らかに体感差が出る部分だ。そしてPCベテランの皆さんにおかれては、若者の“マイPCデビュー”が素晴らしいものになるよう、お手伝いをどうぞよろしく!