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SSDを束ねて高速化させるRAID 0は、ゲームの起動やロード時間短縮に効果があるのか?AMDとIntel環境で試してみた

 RAID 0は2台以上のストレージを1つのドライブとして扱い、分散してデータを記録する方式だ。その最大のメリットは、データ転送速度を高められること。読み書きとも速度が遅かったHDDが主力ストレージだった時代には重宝されていたが、単体でも十分高速なSSDが登場してから注目度は下がってしまった。

 もちろん、動画編集など巨大なデータを扱うクリエイティブ分野では、データ転送速度が作業効率に直結するため需要はまだまだあるが、RAID 0を構築しているストレージが1台だけでも故障するとデータにアクセスできなくなる冗長性の低さ、PCの故障時に別のPCにストレージを接続してデータを救出するのが困難、RAIDアレイの構築やドライバの組み込みが必要になりOSインストールの難易度が上がるなど、一般的な用途ではデメリットのほうが目立ってしまう。

 それでも! 複数のストレージをたばねて“ドン”とデータ転送速度を高速化させるRAID 0にはロマンがある。ただでさえ高速なNVMe SSDを使ってRAID 0を構築すれば、なんでも爆速の世界が開けるのではないかという期待をしてしまうのが自作好きというものだ。

 というわけで、ここでは「Gen 4のNVMe SSDでRAID 0を構築した場合、ゲームの起動やロード時間は短縮できるのか」に挑戦してみたい。

Crucial P5 Plus CT1000P5PSSD8JPを2枚用意した。これでRAID 0を構築する

 用意したNVMe SSDは、MicronのCrucial P5 Plus CT1000P5PSSD8JP(Gen 4接続、1TB)を2枚だ。公称シーケンシャルリードは6,600MB/s、シーケンシャルライトは5,000MB/sでGen 4のSSDとしてトップクラスではないが、十分ハイエンドな仕様と言える。

AMD X670EとIntel Z790の環境でRAIDを構築する

 今回はAMDのRyzen 9 7900XとX670Eチップセット搭載マザーボードの組み合わせ、およびIntelのCore i9-13900KとZ790チップセット搭載マザーボードの組み合わせでRAID 0を構築し、単体で接続したときに比べて速度がどこまで変わるかチェックしていく。

 まず、RAIDを構築するにあたり、チップセットごとに対応するRAIDが変わることを知っておきたい。現在の主要チップセット別のRAID対応を下の表にまとめた。

主なIntelチップセットのRAID対応
チップセットPCI ExpressSATA
Z790RAID 0/1/5/10
H770RAID 0/1/5/10
B760×RAID 0/1/5/10
Z690RAID 0/1/5/10
H670RAID 0/1/5/10
B660×RAID 0/1/5/10
H610××
主なAMDチップセットのRAID対応
チップセットPCI ExpressSATA
X670RAID 0/1/10
B650RAID 0/1/10
X570RAID 0/1/10
B550RAID 0/1/10
A520RAID 0/1/10

 IntelのチップセットはB760/B660だとRAID構築可能なのはSATA接続のストレージだけになり、H610はRAID非対応だ。AMDは主要チップセットはどれもRAID構築が可能となっている。ただし、Intel、AMDともチップセットがRAIDに対応していても、どのRAIDレベルを利用できるかはマザーボードによって異なる点には注意したい(たとえばZ790でもRAID 10には非対応など)。RAID構築を考えているなら、マザーボードの購入前には必ず確認しておこう。

 次は、チップセットごとのRAID構築方法を簡単に紹介しておく。今回の検証に使用した環境は以下の通りだ。

AMDの検証環境Intelの検証環境
CPURyzen 9 7900XCore i9-13900K
マザーボードASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO
(AMD X670E)
ASRock Z790 Nova WiFi
(Intel Z790)
検証環境(共通)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5
(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC
(NVIDIA GeForce RTX 4060)
CPUクーラーCorsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(22H2)

AMD環境のRAID 0

 まずは、Ryzen 9 7900X+X670Eの環境から触れよう。今回はGen 4(PCI Express 4.0 x4)のCrucial P5 Plusを2枚でRAID 0を構築するが、X670Eに関してはCPU直結のM.2スロットとチップセット経由のM.2スロットを利用した場合の2パターンでテストする。

 というのも、X670Eはチップセット経由のM.2スロットの場合、CPUとの接続はPCI Express 4.0 x4になるので、理論値の速度は約8,000MB/s。そこがボトルネックとなってRAID 0の速度を生かし切れない可能性が高いためだ。

ROG CROSSHAIR X670E HEROは、M.2_1とM.2_2のM.2スロットがCPU直結となり、どちらもGen 5対応となっている
M.2_3とM.2_4のM.2スロットはチップセット経由の接続となり、Gen 4対応だ

 CPU直結でもチップセット経由でもRAID 0構築の手順は変わらない。UEFIメニューでRAIDを有効化して、同じくUEFI内に用意されているRAIDXpert2でRAIDアレイを構築。Windows 11インストール用のUSBメモリにRAIDドライバをあらかじめ保存しておいて、OSのインストール途中でそのRAIDドライバを組み込む。あとは通常のセットアップと同様だ。RAIDドライバについてはASUSのWebサイトからダウンロードできる。

UEFIのRAIDXpert2を使用し、取り付けたCrucial P5 Plus×2枚でRAID 0を構築する
Windows 11のインストール用USBメモリにRAIDドライバを保存しておく
OSのインストール場所の選択画面で「ドライバーの読み込み」を選択してRAIDドライバを読み込む(X670Eの場合、3種類のドライバ読み込みが必要)

Intel環境のRAID 0

 続いて、Core i9-13900K+Z790の環境を見よう。こちらはCPUとチップセットの接続にはDMI 4.0 x8(約16,000MB/s)と高速なシステムバスが採用されており、X670Eのようなボトルネックはないと判断。チップセット経由のM.2スロットを使ってRAID 0を構築した。

Z790 Nova WiFiのチップセット経由のM.2スロットにSSDを取り付けた

 RAID 0の構築手順はX670Eとあまり変わらない。UEFIメニューでVMDを有効化して、Intel Rapid Storege Technologyを使ってRAIDアレイを構築する。OSのインストール途中でRAIDドライバの組み込みが必要なのも同様だ。RAIDドライバはASRockのWebサイトからダウンロードできる。

UEFIのntel Rapid Storege TechnologyでRAID 0を構築する
USBメモリのあらかじめRAIDドライバを保存して、OSのインストール場所の選択画面にある「ドライバーの読み込み」で読み込む

 ちなみに、RAID 0を構築するにあたり、細かな設定はすべてマザーボードのデフォルトで行なっている。補足しておくと、ストライプサイズはX670Eが256KB、Z790が64KBとなっていた。

定番ベンチマークでまずは実力チェック

 RAID 0環境を構築したところで、まずはシンプルにデータ転送速度の変化を確かめるべく、CrystalDiskMarkを実行しよう。

シーケンシャル速度
ランダム速度

 シーケンシャルリードとライトに関しては、X670Eのチップセット経由のM.2スロットで構築したRAID 0は予想通り、CPUとチップセット間のシステムバスがボトルネックになっているようで6,000MB/s程度で頭打ちになっている。X670EのCPU直結とZ790のチップセット経由はRAID 0の威力を見事に発揮し、RAIDを構築していない単体の状況よりも、シーケンシャルリードでは2倍以上、シーケンシャルライトでも約1.9倍の速度を出した。

 一方で、ランダム性能に関しては接続方法やチップセットによって速度にバラつきが出た。RAID 0はデータの読み書きの最小容量は設定したストライプサイズで決まる。今回のX670Eなら、256KBだ。その一方で、CrystalDiskMarkのランダムテストは4KB単位で行なうため、256KB単位でのデータ読み書きは効率が悪い。単体よりもランダムアクセスが遅くなることがあるのは、その影響もあるだろう。X670EとZ790環境で傾向が異なるのもおもしろいところだ。

 続いて、ゲームの起動や録画しながらのプレイ、データの移動などゲーム関連のさまざまな処理を実行する3DMarkのStorage Benchmarkを試してみよう。

 意外な結果だ。X670Eのチップセット経由がトップになった。詳細を見ると、録画やインストールで優秀なデータ転送速度を出していた。そのほかは、あまりスコアが変わらなかった。CrystalDiskMarkだけでは見えない差があるということだろう。

ゲームの起動とロード時間の変化を見る

 ここからは、本題と言えるゲームの起動やロード時間をチェックしていきたい。まずは、BLUE PROTOCOLベンチマークとファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを実行しよう。どちらも、ベンチマーク結果にローディングタイムが記録されるので、それを採用している。

 微妙な差ではあるが、Z790のチップセット経由が優秀だ。ただ、X670E環境はどれも大きな差にはなっていないので、RAID 0の効果というよりは、プラットフォームの違いが差に出ている可能性は否定できないところ。

 続いては、実際のゲームの起動時間とロード時間を確かめる。サイバーパンク2077は、ランチャーの「プレイ」ボタンを押してから「スペースキーで続行」が表示されるまでを“起動”、ロード画面からセーブデータをクリックして「スペースキーで続行」が表示されるまでを“ロード”とした。

 Starfieldは、Steamの「プレイ」ボタンを押してから「PRESS ANY~」が表示されるまでを“起動”、ロード画面からセーブデータを選びプレイ可能になるまでを“ロード”とした。

 アサシンクリード ミラージュは、Ubisoft Connectの「プレイ」ボタンを押してから「Press any key」が表示されるまでを“起動”、セーブデータをロードしてプレイ可能になるまでを“ロード”とした。

 それぞれ3回実行した平均値を掲載している。

 Z790のチップセットが優秀と言えるが、RAIDなしの状態に比べてアサシンクリード ミラージュの起動時間以外は1秒以内の差と、わざわざRAID 0を構築するほどの効果があるとは言えない結果だ。アサシンクリード ミラージュの起動が高速なのも、RAID 0の効果というよりは、IntelとAMDのプラットフォームの違いが時間差につながっていると見たほうがよいだろう。

ゲーム目的ならわざわざRAID 0構築は必要ない

 RAID 0を構築すれば、シーケンシャル性能が伸びるのは間違いない。大容量のデータを扱うなら効果はあるだろう。しかし、ゲームの起動やロード時間の短縮にはつながらない、というのが今回のテスト結果だ。

 ゲーム目的ならGen 4接続のSSD単体で十分快適なパフォーマンスが得られると言ってよい。RAID 0にロマンはあるが、ゲームのためにSSDを複数枚導入するならそのまま素直にインストール用として使うことをおすすめする。締まらない結果だが、ゲームには効果が薄いということが改めて分かったのでよしとしよう。