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突如来たWindows 11の大型アップデート。自然言語AIのCopilotなど、気になる新機能を解説

Copilotのプレビューが搭載された22H2(ビルド22621.2361)

 9月26日、Windows Updateの非セキュリティ更新にて「Copilot in Windows」を含むWindows 11の大型パッチの配信が開始され、ついにWindowsにAI機能が組み込まれることになった。ただし、今回の更新は「23H2」と噂されていたメジャーバージョンアップではなく、現行バージョンの22H2向けの機能アップデートで、23H2はまだ先の予定となる。異例の2段階大型アップデートでCopilotの普及を図ろうという狙いだろう。

現状の整理

 9月21日に「Copilot」の先行公開が発表されたことで、「いきなり23H2か?」と驚かれた人も少なくないかもしれない。筆者もその1人だったが、ふたを開けてみれば、9月26日に配信が開始されたのは現行の22H2の機能更新ビルド「22621.2361」だった。

 同社のブログ記事でも「On September 26th, Copilot in Windows will start to roll out in September 2023 optional non-security update for Windows 11, version 22H2」と言及されていたが、9月26日の更新は、22H2の非セキュリティ更新としてCopilotシリーズを含む、23H2の機能の一部が先行公開された形となった。

 なお、本稿執筆時点(9月26日時点)で、Windows Insider向けに公開されているリリースプレビューチャネルで「22631」の配信が開始された。こちらがいわゆる23H2に相当するバージョンと推測される。

 9月26日の更新は、Windows Insider向けのリリースプレビューチャネルと、メジャーバージョンアップの23H2の間に位置するもので、言わば一般ユーザー(非Windows Insiderユーザー)向けの広範囲な、Copilotの先行お披露目というか、プレビューテストという位置づけになる。

 では、23H2はいつなのか? と言われると、公式には2023年第4四半期となっている。法人向けのMicrosoft Copilotの公開が11月1日となっているので、同日もしくは少し前と考えるのが妥当だろう。正式なバージョンが変更されると、サポート期限が変わるため、このあたりはさすがに慎重に実施されると考えた方がよさそうだ。

 Copilotの先行配信でWindows 11の見た目は大きく変わったが、実質的なバージョン番号の変更は、もう少し先になりそうだ。

9月26日更新で何か進化したのか?

 それでは、9月26日に公開された更新によって、何が変わったのかを見ていこう。

 なお、Copilot in Windowsを含む最新機能を利用したい場合は、Windows Updateにて「2023-09x64ベースシステム用Windows 11 Version 22H2の累積更新プログラム(KB5030310)」を適用後、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」をオンにすればいい。

 逆に言うと、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」がオフの状態では、いきなりCopilotや新しいエクスプローラーなどを含む大規模な変更は適用されないので安心してほしい。

 公式の情報によると、今回の更新では150を超える機能が追加されているとのことだが、すべての機能がいきなり適用されるわけではない。特にアプリの更新については、Microsoft Store経由での配信となる予定だが、現状は一部の機能しか配信されていない。

 このため本稿では、9月26日の時点で確認できている機能と、今後提供される予定の機能を分けて紹介する。後者はWindows Insiderのビルド22631の画面を使用していることをお断りしておく。

Copilot in Windows(実装済み)

Copilotでアプリの起動が可能になった

 自然言語による操作が可能なAIが新たに搭載された。以前はWindows Copilotと呼ばれていたが、Copilotシリーズは全体的なブランド名が「Microsoft Copilot」となり、Windowsに統合されるのは「Copilot in Windows」という名称になった。

 従来のバージョンとの違いは、アイコンが変更されたことと、できることが少し増えたことだ。従来バージョンのアイコンは、色合いや形がEdgeに似ていて、微妙にクリックミスすることがあったので、確かに新しいアイコンになった方が使いやすい印象だ。

 具体的に何ができるのかというと、以下のような操作が可能になっている。新たにアプリの起動ができるようになったが、残念ながら終了や操作はできず、まだ発展途上のような印象も受ける。

  • ダークモード/ライトモードの切り替え
  • 応答不可モードにする
  • スクリーンショットの撮影
  • 音量の調節
  • ウィンドウのスナップ
  • アプリケーションの起動

 従来のコルタナと異なり、必ずしも機能名などを指示する必要がないのがメリットで、たとえば「集中する手助けをして」とお願いすると、応答不可モードやフォーカスセッションの提案が表示されるなど、大規模言語モデル(LLM)らしい使い方ができる。こうした「あいまい」な使い方ができるのがCopilotの魅力だ。

あいまいな依頼で機能を提案してくれるのがメリット

 使える機能はまだまだ少ないが、アニメやSFの世界で描かれてきた、人間と対話できるコンピューターの第一歩を踏み出した印象だ。

エクスプローラー(実装済み)

ツールバーとアドレスバーの位置が変わった

 ユーザーインターフェイスの変更ではエクスプローラーのデザインが変更された点が大きい。

 具体的には従来のツールバーとアドレスバーの位置が上下逆転した。ユーザーによって好き嫌いが分かれそうだが、ツールバーへのアクセス距離を短くなるメリットがあるが、エクスプローラーウィンドウ全体が間延びした印象になり、個人的にはデザイン的に美しいとは思えない。

 さらに、ツールバー右端の「詳細」ボタンから詳細ウィンドウをすぐに表示できるようになり、詳細ウィンドウ内に「共有」などのボタンも追加された。これにより、大量のファイルからプレビューで内容を確認しつつ目的のファイルを探して共有するといった操作がやりやすくなった。

詳細パネルで共有などの操作が可能

 このほか、「ギャラリー」ビューが追加され、写真を日付などで表示しやすくなった。

新たに追加されたギャラリービュー

設定アプリの変更(実装済み)

 Windowsの各種設定が可能な「設定」アプリも機能が追加された。

推奨事項などが表示されるようになったホーム画面

 新たにホーム画面が追加され、各種サブスクリプションの状況や推奨される設定などが表示されるようになった。また、アプリによって動的に明るさを変更できる「動的ライティング」が追加されたり、接続済みのWi-Fi接続先のパスワードを表示したりできるようになった。

動的ライティングを利用可能
Wi-Fiパスワードを表示できる

パスキーへの対応(実装済み)

 新たに「パスキー(Passkeys)」に対応し、対応サイトでパスワードレスのサインインが可能になった。

設定済みのサイトは「設定」のでパスキーのサイトを管理可能

 パスキーは、生体認証を使ったサインインの仕組みだ。ユーザーアカウント登録時に生体認証などでパスキーを作成して端末に保存しておくと、次回以降、端末上のパスキーを使って自動的にサインインできる。

rar、7-zip、tarのサポート(実装済み)

 従来のZipに加えて、新たにrar、7-zip、tarなどの圧縮形式に対応した。外部のツールをインストールしなくても、圧縮されたファイルを開いたり、すべて展開したりできるようになった。

ZIP以外のアーカイブ形式としてrar、7-zip、tarにも対応

通知アイコンの変更(実装済み)

 タスクバーの通知アイコンのデザインが変更され、通知がある場合、件数ではなくシンプルに色が変わるだけに変更された。わざわざ件数表示をやめた意図は分からないが、無駄な通知が多かったということだろうか?

通知は件数表示ではなく色が変わるだけになった

ボリュームミキサーの変更(実装済み)

 ボリュームミキサーで、アプリケーションのボリュームを簡単に変更できるようになった。ブラウザでの動画の再生やビデオ会議アプリなどのボリューム調節がしやすくなった。

ボリュームミキサーでアプリの音量を調節しやすくなった

開発者向けの機能(実装済み)

 開発環境を簡単に構築できるDev Homeアプリが追加され開発環境を簡単に整備できるようになった。wingetを利用したパッケージの入手やGitHubへの接続などが可能になる。

Devホームで開発環境の整備ができる

 また、「設定」から仮想ドライブを簡単に作成することが可能となり、VHD、VHDXに加え、「開発者ドライブ」を作成できるようになった。開発者ドライブはReFSを利用した高速なドライブで、パフォーマンスモードを利用することで最大30%の高速化が期待できるとされている。

ReFSを使った開発者ドライブを作成可能

ナレーター(実装済み)

 Microsoft Keita(Natural)とMicrosoft Nanami(Natural)という自然な音声を新たに利用できるようになった。なめらかで聞き取りやすい音声となっている。

ナレーターで新しい自然な音声を追加可能になった

Outlook for Windows(実装済み)

 メールやカレンダーを管理できるアプリとして新たに「Outlook for Windows」が利用可能になった。従来のメールアプリの置き換えになる予定だが、現状はまだメールアプリもそのまま使える。

新しいOutlook for Windowsアプリ

ClipChamp(実装済み)

 ホーム画面から「AIでビデオを作成する」が利用可能になった。ビデオや写真などの素材を選択すると、テーマやBGM、切り替え効果などをAIが自動的に判断してビデオを作成することができる。

公開予定だった「AIでビデオを作成する」が利用可能になった
素材とテーマを選ぶと自動的に動画が作成される

Windows バックアップ(実装済み)

 Windowsの設定をバックアップできるアプリが新たに追加される。

アプリとして独立した「Windowsバックアップ」

 従来も、「設定」アプリの「Windowsバックアップ」からOneDriveや資格情報の同期などを管理できたが、それをアプリとして独立させた形となる。従来の設定アプリと異なり、「バックアップ」ボタンを押せばすぐにバックアップを実行できるのがメリットとなる。

 具体的には、以下の情報をバックアップ可能で、バックアップしたデータは、Windowsの初期設定時の選択によって復元できる。なお、USBストレージなどを利用して、OSのイメージやアプリそのものをバックアップする機能は搭載されない。

  • フォルダ(ファイル、ドキュメント、写真をOneDriveと同期)
  • アプリ(アプリの設定を記憶)
  • 設定(Windowsの設定を同期)
  • 資格情報(Wi-Fiネットワークやその他のパスワードを同期)
その場でバックアップを実行することが可能

省電力機能(実装済み)

 時代に合わせて省電力機能も強化された。エネルギーに関する推奨として、「ダークモード」などが追加され、利用状況に合わせた設定がしやすくなった。電力を節約したい場合は、この画面を一通りオンにしておけば事足りるようになる。

メモ帳(実装済み)

 自動保存に対応し、保存せずに閉じても前のセッションからコンテンツを開けるようになった。まさにメモに最適で、サッと起動してコピーしておけば、うっかり終了しても情報を保持しておいてくれる。

セッションを自動保存し、ファイルに保存しなくても次回開ける

順次提供予定の機能

 以下の機能については、今後順次提供される予定となっている。アプリに関しては、Microsoft Storeでのアプリの更新によって配信される予定だ。

ペイント(提供予定)

 新たにレイヤー機能が追加され、より高度な画像編集が可能になる。また、背景除去や生成AIを利用したCocreatorも搭載予定となっている。

レイヤー機能を搭載したペイント

フォト(提供予定)

編集機能が強化された。具体的には背景のぼかしが可能になり、簡単に被写体以外をマスクしたりすることが可能になる。

背景ぼかしが可能になる

Snipping Tool(提供予定)

 キャプチャした画像から文字認識が可能になる予定だ。

画像から文字を認識可能

Ink Anywhere(提供予定)

 ペンに対応したデバイスで、検索ボックスやWebフォーム、メールなど、すべてのテキスト入力欄で手書き入力が可能になる予定。

かなり大規模な更新

 以上、筆者の手元で確認できた最新版22H2(ビルド22621.2361)の新機能を紹介した。

 最大の特徴は、やはりCopilotだが、現状はまだできることが少ないのが残念な上、質問の仕方によってはインターネット検索が実行されることもあり、意図しない動作や返答までのレスポンスが悪い印象だ。もっと洗練されたAIとして実用的になるまでには、もう少し時間が必要に感じた。

 その一方で、ユーザーインターフェイスや各種設定、アプリなどにも大規模な更新が適用されており、かなり細かな改善がなされたように思う。正直、ここで紹介しきれないような細かな更新ももっとある。

 Windows 11は、確実に便利なOSになってきているが、個人的にはVista時代のようなゴチャつき感もあるように思える。そろそろ、使用頻度が低い機能をオフにできるようにしてくれてもいいのではないだろうか。