特集

ノートPCを充電できるUSB PDモバイルバッテリ、失敗しない選び方はこれだ!

~容量10,000mAh以上/最大出力30W以上の6製品を検証

USB Type-Cケーブルを用いて、ノートPCをモバイルバッテリで充電している様子。USB PDでの充電を行なうには、「ノートPC」、「モバイルバッテリ」、「ケーブル」がそれぞれUSB PDに対応している必要がある

 USB PD(USB Power Delivery)の登場により、市販のモバイルバッテリで、ノートPCの充電を行なうことが可能になった。最近のノートPCはUSB PDをサポートした製品が増えつつあり、モバイルバッテリの容量が10,000mA程度あればノートPCのバッテリを約50%、20,000mAh程度あればフル充電することも可能だ。

 それゆえモバイルユーザーの間では、外出先でノートPCを充電するために、大容量のUSB PD対応モバイルバッテリを持ち歩く使い方が増えつつある。かつては単体で1kgを超えかねない増設バッテリを持ち歩いていたことを考えると非常に実用的で、また専用バッテリと異なり、スマートフォンやタブレットなどと兼用できる汎用性も利点だ。

 今回の検証では、こうしたノートPCとの組み合わせに適した、USB PD対応の大容量モバイルバッテリ6製品をピックアップし、Apple「MacBook Air 13インチ(2019)」、Lenovo「ThinkPad X1 Carbon(2019モデル) 」の2製品と組み合わせて検証しつつ、これらモバイルバッテリを購入するにあたって失敗しないためのポイントを見きわめていく。

フル充電までの時間および充電可能回数をチェック

 今回は、外出先でノートPCを使いつつ、並行してノートPCのバッテリ残量をモバイルバッテリで回復させるケースを想定。検証対象となるUSB PD対応モバイルバッテリは、「10,000mAh以上」、「最大出力30W以上」という条件で、6製品を選出している。

今回検証に使用した6製品。いずれも「10000mAh以上」、「最大出力30W以上」という条件に当てはまる、USB PD対応のモバイルバッテリだ
どの製品もUSB Type-C(入出力兼用)に加え、従来のUSB Type-A(出力)を1ポート以上搭載している。各製品の詳細は次章を参照されたい

 検証にあたっては条件を極力統一するため、製品付属のケーブルではなく、USB IF認証品のCable Matters「107002-BLK-0.5m」を用いている。PDO(Power DATA Object)のチェックには、AVHzYのテスター「CT-2」を使用している。前回の充電器レビューと同じ機材なので、詳細は「これで失敗しない、USB PD充電器選び(ノートPC編)」を確認されたい。

AVHzYのテスター「CT-2」を用い、各社のPDO表記のチェックのほか、どのPDOが実際に選択されるかをチェックした

 今回は、ノートPCが電源オンの状態で、バッテリが「10%以下」から「95%以上」にまで回復した時点で、1回のフル充電とみなしている。条件はなるべくそろうよう配慮したが、10~15分程度の誤差はあるものとして見てほしい。

 なおノートPCは一般的に、バッテリがフル充電に近づくと充電速度が遅くなる。そのため、たとえばフル充電完了に2時間かかった場合も、実際には1時間30分で90%程度まで充電し、残り数%に30分以上を要しているケースもある。今回はあくまでフル充電(前述のように95%を超えるまで)の時間を計測しており、速度変動が見えにくい点はご了承いただきたい。

今回の対象モデルは6製品

 続いて対象のUSB PD対応モバイルバッテリ6製品を紹介する。用いる個体は編集部が2019年10~11月にかけてAmazon.co.jpから購入、もしくはメーカーから借用したもので、ロットにより挙動が異なる可能性がある点をあらかじめお含み置きいただきたい。価格はいずれもAmazon.co.jpにて、12月20日現在の価格となる。

 PDOなどの値については、本体に印刷された内容とメーカー製品ページ記載の内容が異なる場合、前者が正しいものとして扱っている。

今回検証したモバイルバッテリの電源仕様
メーカー型番容量最大出力最大入力Amazon.co.jpの価格
(2019年12月20日現在)
RAVPOWERRP-PB05826,800mAh30W30W6,999円
RAVPOWERRP-PB15920,100mAh45W30W7,599円
AnkerPowerCore+ 26800 PD26,800mAh30W30W9,999円
AnkerPowerCore+ 26800 PD 45W26,800mAh45W45W9,999円
LenovoPB700C14,000mAh45W45W15,500円
LuxtudePowerRapid 26800 PD26,800mAh45W45W8,799円
今回検証したモバイルバッテリのインターフェイス構成など
メーカー型番ポート構成付属品(ケーブル)付属品(充電器)
RAVPOWERRP-PB058Type-C×1
Type-A×2
Micro USB×1
Type-C
Micro USB×2
-
RAVPOWERRP-PB159Type-C×1
Type-A×1
Micro USB×1
Type-C
Micro USB
-
AnkerPowerCore+ 26800 PDType-C×1
Type-A×2
Type-C
Micro USB
PowerPort Speed PD30(30W)
AnkerPowerCore+ 26800 PD 45WType-C×1、Type-A×2Type-CPowerPort Atom III(60W)
LenovoPB700CType-C×1
Type-A×2
スリムチップ×1
ピン×1
Type-C
スリムチップ変換
-
LuxtudePowerRapid 26800 PDType-C×1
Type-A×2
Type-CPPS対応(60W)

製品その1 : RAVPOWER「RP-PB058」

RAVPOWER「RP-PB058」(メーカーの製品ページ)
容量26,800mAh(99.16Wh)、最大出力30W。Amazon.co.jpでの実売価格は6,999円。ケーブルはUSB Type-Cのほか、Micro USBが2本分付属する。充電器は付属しない
500mlペットボトルとのサイズ比較。重量の実測値は463g
USB Type-C×1(入出力兼用)、USB Type-A×2(出力)のほか、Micro USB×1(入力)を搭載する。入力は最大30W
残量は4段階のLEDで表示される。外部デバイスへの接続直後は点灯するが、給電中は消灯する。なおボタン長押しでUSB PDの入出力を強制的に切り替える機能を備える
PSEマークの事業者名は株式会社ニアバイダイレクトジャパン。PDOは5V/3A、9V/2A、15V/2A、20V/1.5A
テスターで計測したPDOは5V/3A、9V/3A、12V/2.4A、15V/2.1A、20V/1.5A。本体ラベルに書かれたPDOとは複数の違いがある。PD 2.0対応

製品その2 : RAVPOWER「RP-PB159」

RAVPOWER「RP-PB159」(メーカーの製品ページ)
容量20,100mAh(72.36Wh)、最大出力45W。Amazon.co.jpでの実売価格は7,599円。Type-Cケーブル×1のほか、Micro USBケーブル×1が付属する。充電器は付属しない
500mlペットボトルとのサイズ比較。重量の実測値は400g
USB Type-C×1(入出力兼用)、USB Type-A×1(出力)のほかMicro USB×1(入力)を搭載する。入力は最大30Wと、今回紹介するなかで唯一、最大出力よりも値が小さい。またType-Aが1ポートしかないのも本製品のみ
残量は4段階のLEDで表示される。外部デバイスの接続直後は点灯するが、給電中は消灯する。上の「RP-PB058」にあったボタン長押しによる入出力切り替え機能はない
PSEマークには近接する事業者名はなく、少し離れた位置に株式会社ニアバイダイレクトジャパンの社名がある。PDOは5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A
テスターで計測したPDOは5V/2.8A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/2.25A。本体ラベルに表示のない12V/3Aに対応している。PD 3.0対応

製品その3 : Anker「PowerCore+ 26800 PD」

Anker「PowerCore+ 26800 PD」(メーカーの製品ページ)
容量26,800mAh(96.48Wh)、最大出力30W。Amazon.co.jpでの実売価格は9,999円。Type-Cケーブル×1のほか、Micro USBケーブル×1、最大出力30Wの充電器×1が付属する。後述する「PowerCore+ 26800 PD 45W」と外観などは同じだが最大出力が異なる
500mlペットボトルとのサイズ比較。重量の実測値は578g
USB Type-C×1(入出力兼用)、USB Type-A×2(出力)を搭載する。入力は最大30W
残量は10段階のLEDで表示される。外部デバイスへの給電中は点灯したままとなる
PSEマークの事業者名はアンカー・ジャパン株式会社。PDOは5V/3A、9V/2A、15V/2A、20V/1.25A
テスターで計測したPDOは5V/3A、9V/3A、12V/2.25A、15V/2A、20V/1.25A。本体ラベルに書かれたPDOと複数の違いがある。PD 2.0対応

製品その4 : Anker「PowerCore+ 26800 PD 45W」

Anker「PowerCore+ 26800 PD 45W」(メーカーの製品ページ)
容量26,800mAh(97.28Wh)、最大出力45W。Amazon.co.jpでの実売価格は9,999円。Type-Cケーブル×1のほか、最大出力60Wの充電器×1が付属する。前出の「PowerCore+ 26800 PD」とそっくりだが最大出力はこちらが大きい
500mlペットボトルとのサイズ比較。重量の実測値は596g
USB Type-C×1(入出力兼用)、USB Type-A×2(出力)を搭載する。入力は最大45W
残量は10段階のLEDで表示される。外部デバイスへの給電中は点灯したままとなる。ちなみに同型の「PowerCore+ 26800 PD」に比べ、LEDの輝度が改善され見やすくなっている
PSEマークの事業者名はアンカー・ジャパン株式会社。PDOは5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A
テスターで計測したPDOは5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A。本体ラベルに書かれたPDOと同一。PD 3.0対応

製品その5 : Lenovo「PB700C」

Lenovo「PB700C」(メーカーの製品ページ)
容量14,000mAh(48Wh)、最大出力45W。Amazon.co.jpでの実売価格は15,500円。Type-Cケーブル×1のほか、Lenovo/NEC製品で見られるスリムチップコネクタへの変換アダプタが付属し、パススルー充電もサポート。充電器は付属しない
500mlペットボトルとのサイズ比較。重量の実測値は301g
USB Type-C×1(入出力兼用)、USB Type-A×2(出力)のほか、スリムチップコネクタ×1、ピン×1を搭載する。入力は最大45W
残量は4段階のLEDで表示される。外部デバイスへの給電中は点灯したままとなる
PSEマークの事業者名はレノボ・ジャパン株式会社。PDOは5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A
テスターで計測したPDOは5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A。本体ラベルに書かれたPDOと同一。PD 3.0対応。なおログを見るかぎりはPPS(Programmable Power Supply)対応のようだ

製品その6 : Luxtude「PowerRapid 26800 PD」

Luxtude「PowerRapid 26800 PD」(メーカーの製品ページ)
容量26,800mAh(96Wh)、最大出力45W。Amazon.co.jpでの実売価格は8,799円。Type-Cケーブル×1のほか、最大出力60W(PPS対応)の充電器×1が付属する
500mlペットボトルとのサイズ比較。重量の実測値は558g
USB Type-C×1(入出力兼用)、USB Type-A×2(出力)を搭載する。入力は最大45W
残量は4段階のLEDで表示される。外部デバイスへの給電中は点滅するのでわかりやすい
PSEマークの事業者名は株式会社泰成商事。PDOは5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/2.25A
テスターで計測したPDOは5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/2.25A。本体ラベルに書かれたPDOと同一。PD 3.0対応

検証その1 : Apple「MacBook Air 13インチ(2019)」(MVFM2J/A)

Apple「MacBook Air 13インチ(2019)」(MVFM2J/A)
第8世代Core i5プロセッサを搭載した、MacBook Air 13インチの2019年モデル。Thunderbolt 3に対応したUSB 3.1 Type-Cポート×2を搭載する。付属の電源アダプタは最大出力30W。バッテリ容量は49.9Wh
左側面にUSB Type-Cポート×2を搭載。今回は左側のポートに接続して検証している

結果

MacBook Air 13インチ(2019)での検証結果
製品容量最大出力選択されたPDO実質出力フル充電までの所要時間充電可能回数の目安
RAVPOWER
RP-PB058
26,800mAh30W15V/2A28W前後2時間10分約1.4回程度
(2回目は41%で終了)
RAVPOWER
RP-PB159
20,100mAh45W20V/2.25A42W前後1時間33分約1.0回程度
Anker
PowerCore+ 26800 PD
26,800mAh30W15V/2A27W前後2時間04分約1.5回程度
(2回目は52%で終了)
Anker
PowerCore+ 26800 PD 45W
26,800mAh45W20V/2.25A41W前後1時間30分約1.7回程度
(2回目は73%で終了)
Lenovo
PB700C
14,000mAh45W20V/2.25A42W前後-約0.7回程度
Luxtude
PowerRapid 26800 PD
26,800mAh45W20V/2.25A40W前後1時間29分約1.6回程度
(2回目は56%で終了)

総評

 MacBook Airについては、今回試した6つの製品のいずれでも充電できる。内容も順当で、最大出力30Wの製品は15V/2AのPDOが選択され、実質出力は27~28W程度。最大出力45Wの製品は20V/2.25AのPDOが選択され、実質出力は40~42W程度と、まったくのスペックどおりだ。

 フル充電までの所要時間は、最大出力30Wと45Wの製品でおよそ30分もの差がある。外出先でモバイルバッテリを用いて充電する場合、自宅での充電と違って所要時間が短くて済むことが求められるため、これから購入するのなら、30Wよりも45Wの製品だろう。これならば、製品添付の充電器(30W)と比べても、より高速に充電できることになる。

 容量については、20,100mAhのRAVPOWER「RP-PB159」がちょうど1回のフル充電で空になったことからもわかるように、20,000mAh前後が1つの目安となる。フル充電後もつないだまま作業を継続するなら、1.4~1.7回程度の充電が可能な、26,800mAhクラスの製品が望ましい。外出先で2~3時間の作業をする場合に保険として携行するだけなら、20,000mAh以下のモデルを選ぶ手もある。

 なお今回の候補からは外したが、ある海外製モバイルバッテリで、MacBook Airの2018年モデルには対応しながら、今回の2019年モデルでは充電できず、接続すると逆にMacBook Air側から給電されてしまうケースがあった。このようにスペック的には問題なくとも利用できないケースもあるので、モバイルバッテリのメーカーが出している対応情報は、購入前にあらかじめ確認すべきだろう。

検証その2 : Lenovo「ThinkPad X1 Carbon(2019)」

Lenovo「ThinkPad X1 Carbon(2019)」
第8世代Core i7プロセッサを搭載した、ThinkPad X1 Carbonの第7世代モデル。Thunderbolt 3に対応したUSB 3.1 Type-Cポート×2を搭載する。バッテリ容量は51Wh。
左側面にUSB Type-Cポート×2(右側はドッキングコネクタと一体化)を搭載。今回は左側のポートに接続して検証している

結果

ThinkPad X1 Carbon(2019)での検証結果
製品容量最大出力選択されたPDO実質出力フル充電までの所要時間充電可能回数の目安
RAVPOWER
RP-PB058
26,800mAh30W----
RAVPOWER
RP-PB159
20,100mAh45W20V/2.25A40W前後1時間58分約1.0回程度
Anker
PowerCore+ 26800 PD
26,800mAh30W----
Anker
PowerCore+ 26800 PD 45W
26,800mAh45W20V/2.25A40W前後1時間54分約1.5回程度
(2回目は53%で終了)
Lenovo
PB700C
14,000mAh45W20V/2.25A40W前後-約0.8回程度
(1回目が77%で終了)
Luxtude
PowerRapid 26800 PD
26,800mAh45W20V/2.25A40W前後1時間49分約1.5回程度
(2回目は53%で終了)

総評

 本製品は前述のMacBook Airと異なり、最大出力30Wのモバイルバッテリでは、本体起動中の充電がきわめて不安定になる。残量によっては30Wはもちろん18Wのモバイルバッテリで充電できる場合もあるのだが、今回の条件である、本体を起動させたまま10%未満から95%以上までの充電を行なおうとすると、30Wでは途中で充電がストップしたり、あるいは充電が開始できずに逆にモバイルバッテリ側が充電されてしまったりする。

 一方の最大出力45Wのモバイルバッテリではこうした症状は一切なく、それゆえ本製品と組み合わせるべきなのは45W以上のモデルがベターだ。ちなみに本製品は最大出力60Wの充電器では実質55W前後での充電が可能なほか、BTOで65Wの電源アダプタが用意されていたりもするので、今後60W対応のモバイルバッテリの選択肢が増えれば、そちらも視野に入れたい。

 容量は、20,000mAhで約1回、26,800mAhで約1.5回のフル充電が可能と、順当な結果だ。1回のフル充電にかかる時間は2時間弱と前述のMacBook Airより長いが、これは80%を超えると充電速度が目に見えて緩やかになるためで、必ずしもフル充電にこだわらず、常時80%程度で止めておくほうが機動力が上がる。付属のユーティリティ「Lenovo Vantage」には指定の割合で充電を止める設定があるので、それを活用するとよい。

 なおメーカーに確認したところ、本製品のUSB PDは「45W以上は通常充電可能」、「45W未満15W以上はシステム状態に依存」、「15W未満は充電不可」とのことで、今回の検証結果と一致している。つまり手元に45W未満15W以上のモバイルバッテリしかなく、また作業を一時中断してもかまわないのであれば、本製品をS3(スリープ)やS5(シャットダウン)などに変更して充電を行なうことで、急場をしのげるだろう。

ノートPCで使えるUSB PD対応モバイルバッテリの選び方

 以上2製品での検証を経て、いくつかの傾向が見えてきた。ここではノートPCで使えるUSB PD対応モバイルバッテリを購入するにあたり、失敗しない選び方について見ていこう。

その1 : まずは最大出力が大きい製品を選ぶ

 外出先でノートPCを充電するのは、帰宅した時点でフル充電にしておくためではなく、その場で使うためだ。つまりなるべく高速に充電を行なう必要があり、そのためにはノートPC側が対応している範囲で最大出力が極力大きなモデル(今回で言うと45W>30W)を選ぶのが鉄則だ。

 たとえ最大出力が大きすぎて宝の持ち腐れになっても、今回のThinkPadのように最大出力が足りずに充電できないよりははるかにマシで、将来的にもつぶしがきく。今後増えてくるであろう最大出力60Wを超えるモデルも、USB PDの規格どおりに設計されていれば「大は小を兼ねる」があてはまるので、そうした選択肢がある場合は積極的に選ぶべきだろう。

今回試用したAnkerの2モデル。本体形状やポート数、容量は同じだが、後発のモデルは最大出力がアップしている(奥が30W、手前が45W)。ニーズに合わせて進化した結果だろう

その2 : 容量は「20,000mAh」は欲しい

 今回検証に用いたMacBook AirおよびThinkPad X1 Carbonは、いずれも1回のフル充電に20,000mAh程度を要している。この2台は、モバイル用途に対応した現行のノートPCとしてはおおむね標準的なバッテリ容量であるため、多少前後はすれど、この「20,000mAh」という値が1つの目安になるだろう。

 ただしこれは使い方にもよる。残量25%→75%など、バッテリを半分ほど回復できれば十分な場合や、あるいは外出先で2~3時間の作業をするにあたり、残量を減らしたくないという継ぎ足し用途ならば、10,000mAh程度の容量でも使いみちはある。一方で、フル充電を行なった上で、つないだまま作業を続行しつつ、さらに手持ちのスマートフォンの充電にも使いたい場合は、26,800mAhクラスの製品を選択したい。

複数製品に見られる26,800mAhという容量は、多くの場合、国内線で手荷物として持ち込めるワット時定格量(100Wh以下)ギリギリのサイズにあたる

その3 : 入力の値も要チェック

 モバイルバッテリの容量が大きければ大きいほど、それ自身を充電するにも時間がかかる。そのため入力側もUSB PDに対応しており、かつ極力大きな電力で充電できるのがベターだ。目安となるのは、そのモバイルバッテリの最大出力と同程度(つまり最大出力45Wだと入力も45W)あることだろう。

 ちなみに製品によっては充電用のMicro USB(Micro-B)ポートを備えている場合もあるが、パススルー充電を行なうにしても出力と入力のバランスが悪すぎて実用性に欠ける。試しに容量26,800mAhのRAVPOWER「RP-PB058」をMicro USBで充電したところ、フル充電まで約10時間15分かかった。仮に夜21時に帰宅してすぐ充電をはじめても、翌朝7時にまだ充電が終わっていないことになる。あくまでも予備手段の域を出ないだろう。

Anker「PowerCore+ 26800 PD 45W」の付属充電器(右)と、Luxtude「PowerRapid 26800 PD」の付属充電器(左)。いずれも最大出力60Wに対応し、モバイルバッテリを高速に充電できる

そのほか判断基準になりうるポイントをいくつか

 ここまで紹介した3つのポイントを押さえておけば大きな失敗はないはずだが、複数の製品でどちらを選ぶか迷ったときのための判断材料も記しておく。

 1つは、バッテリの残量を示すLEDの数だ。たとえば容量20,000mAhのバッテリの残量を4つのLEDで表すとすると、残量は5,000mAh区切りとなる。5,000mAhと言えばスマートフォンをまるまる充電できるだけの量で、ちょっと大雑把すぎる印象だ。そのため、残量のLEDがなるべく多いか、あるいは(今回検証した製品にはないが)残量をパーセンテージで表示できれば、製品選びにあたってプラスとなる。

 付属品も要チェックだ。今回試用した6製品はいずれも両端Type-Cケーブル(いわゆるC-Cケーブル)が付属するが、充電器は付属する場合としない場合があり、価格に影響を与えている。単純に容量を価格で割って比較すると、充電器付属のモデルは割高に見えるので要注意だ。セットとバラのどちらがお得かは一概には言えないが、単品販売されている充電器がそのまま付属するAnker製品などは割安感がある。

 また今回は、USB PDによるノートPCの充電時はほかのポートを使わないことを前提にしているが、Type-Aポートを使って同時に別のデバイスを充電すると、USB PDの出力が落ちる製品もあるので注意したい。たとえば今回の対象機種の1つ、RAVPower「RP-PB159」は、2ポートを同時に使うと、USB PDの最大出力は45Wから30Wへと低下する。同時充電が多くなりそうな場合は、こうした制限の有無は事前に確認しておきたい。

 最後に、複数ポートを搭載したモバイルバッテリや充電器のなかには、全ポートの出力合計を製品名や見出しで強調している製品があるので要注意だ。たとえば「60W」という表記を見て、USB PDの最大出力が60Wと思って買ってみたら、じつはUSB PDは最大出力45W、残り15WはUSB Type-Aの出力合計だったというケースだ。優良誤認か否かの判断が分かれるところを狙っている時点で不誠実で、そのメーカーごと候補から外しても差し支えないだろう。

ベストチョイスは意外な伏兵

 今回は、各製品の挙動をもとに、ノートPCの充電に使えるモバイルバッテリの選び方を把握するのが主旨で、結論は上に述べたとおりなのだが、最後に今回の対象製品のなかから筆者なりのおすすめを挙げて、本稿の締めとしたい。

 ベストチョイスは、今回試用した6製品のなかでは(失礼ながら)伏兵となる、Luxtude「PowerRapid 26800 PD」だ。容量・最大出力ともに文句なく、速度も優秀。またPDOをチェックしても不審な挙動が見られなかった。付属の充電器は60W対応、さらに電流と電圧を自動調整するPPS(Programmable Power Supply)もサポートするなど、単体でも優秀だ。

 いかんせん国内ではほぼ無名でホームページもまともに機能しておらず、検索で見つかるのはFacebookページや他国のAmazonのページばかりなのだが、PSEも取得済みで、今回のテストメニューの範囲ではケチのつけようがない。充電中のLEDの挙動が分かりやすいのも好印象で、価格も後述のAnker製品より安いなど、ベストチョイスにふさわしい。サポート面、および長期的に安定して使えるかどうかは不明なので、その点は保留としておく。

 次点はAnker「PowerCore+ 26800 PD 45W」だ。スペックは前述のLuxtude製品とほぼ同じ、またLEDは10段階で残量が把握しやすく、ベストチョイスでも差し支えないのだが、付属の60W充電器の一部PDO(5V/2.4A)がUSB PDの規格外であること、またLuxtude製品とほぼ同体積ながら若干(38g)重く、価格もわずかに高いことからセカンドチョイスとした。サポートおよび国内ユーザーの多さによる動作情報の入手しやすさは、こちらが上だろう。

ベストチョイスのLuxtude「PowerRapid 26800 PD」(左)、セカンドチョイスのAnker「PowerCore+ 26800 PD 45W」(右)。形状は酷似しているが、Luxtude製品のほうがわずかに薄い

 これ以外の製品は、個別の仕様は見るべきところがいくつもあるのだが、容量や最大出力、価格など、それぞれに欠点もあり、積極的に推しにくい。少なくとも前述の2製品とはかなりの差がある印象だ。

 また本体に印刷されたPDOと実際の仕様が異なる製品は、記載のない12Vが使えるくらいならばUSB PD Rev1.0対応の隠しモードとして許容できるのだが、そのほかの値のズレは、メーカーがまともに仕様を把握していない、もしくは意図的に仕様をごまかしているという意味で、信頼性に疑問符がつく。たとえ特定の組み合わせでは問題なく使えても、今回のような検証記事の結論としてはプッシュしにくい。

 最後になったが、今回の検証では、編集部と筆者で入手性などを加味して対象機種を選定したが、その段階で製品ページの記述不備(とくにPSE絡み)で対象外としたり、あるいは検証がはじまってからふさわしくないと判断して除外した製品もある。

 それゆえ本稿で紹介した6つの機種は、多少の欠点はあっても、最大出力や容量に見合った充電ができている時点で、USB PD対応の大容量モバイルバッテリとしてはかなりマトモな部類に属する製品であることは、最後に付け加えておきたい。