特集
これで失敗しない、USB PD充電器選び(ノートPC編)
~ThinkPadとMacBook Proで検証
2019年1月19日 11:00
前回は、いま幅広く普及しつつある急速充電規格、USB PD(USB Power Delivery)の特徴にざっと触れつつ、製品選びで陥りやすいポイントなどを紹介した。今回からは実際に各社のUSB PDアダプタを用い、各デバイスと総当たりで検証を行なっていく。
今回はまずノートPC編として、レノボ「ThinkPad X1 Carbon(2018モデル) 」、Apple「MacBook Pro 13インチ(2017)」の2製品の検証結果を紹介する。
まずは対象のUSB PDアダプタ8製品をまとめて紹介
本題に入る前に、検証対象となるUSB PDアダプタ8製品の概要について紹介する。実際の検証ではこれらに加えてデバイス付属のアダプタも対象に含めているが、それらは各デバイスと併せて紹介するため、ここでは省略している。
対象製品は、現在国内で入手可能なモデルの中から、最大出力45W以上の製品を中心にチョイスしている。ただしUSB-IF認証製品に限り、最大30W対応の製品も対象に追加している。用いる個体は編集部が2018年12月にAmazonを中心に購入したもので、別のロットでは挙動が異なる可能性があるので、予めお含み置きいただきたい。
ゴッパ「E00650A1CBLKUS」
・E00650A1CBLKUSの製品情報
・ヨドバシカメラで購入する
ゴッパが輸入、アイ・オー・データ機器が販売するUSB-IF認証品。Power Delivery 2.0対応、最大65W(PDOは5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/3.25A)。折りたたみプラグ式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのみ。USB-IF認証を取得した5A対応USB Type-Cケーブルが付属する。ヨドバシ.comでの実売価格は8,620円(2019年1月9日現在)。
エレコム「MPA-ACCP01BK」
・MPA-ACCP01BKの製品情報
・ヨドバシカメラで購入する
エレコムが製造、販売。USB-IF認証品。Power Delivery 2.0対応、最大30W(PDOは5V/3A、9V/3A、12V/2.5A、15V/2A、20V/1.5A)。折りたたみプラグ式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのみ。ヨドバシ.comでの実売価格は3,670円(2019年1月9日現在)。
サンワサプライ「ACA-PD58BK」
・ACA-PD58BKの製品情報
・Amazon.co.jpで購入する
サンワサプライが製造、販売。USB-IF認証品。Power Delivery 3.0対応、最大45W(PDOは5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/2.25A)。折りたたみプラグ式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのみ。USB-IF認証を取得した3A対応USB Type-Cケーブルが付属する。Amazonでの実売価格は6,197円(2019年1月9日現在)。
Anker「PowerPort ll PD(A2321)」
・PowerPort ll PD(A2321)の製品情報
・Amazon.co.jpで購入する
Ankerが製造、販売。Power Delivery 2.0対応、最大30W(PDOは5V/3A、9V/3A、15V/2A、20V/1.5A)。実機で確認した限りではほかに12V/2.5Aも通知している。折りたたみプラグ式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのほか、同社独自のPowerIQ 2.0に対応したUSB×1ポートを搭載する。Amazonでの実売価格は3,799円(2019年1月9日現在)。
Omars「OMWCBK60WPDYX」
Omarsが製造、販売。Power Delivery 2.0対応、最大60W(PDOは5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/3A)。折りたたみプラグ式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのみ。USB Type-Cケーブルが付属する。Amazonでの実売価格は2,899円(2019年1月9日現在)。
Anker「PowerPort+ 5 USB-C Power Delivery(A2053)」
・PowerPort+ 5 USB-C Power Delivery(A2053)の製品情報
・Amazon.co.jpで購入する
Ankerが製造、販売。Power Delivery 2.0対応、最大30W(PDOは5V/3A、9V/3A、15V/2A、20V/1.5A)。電源ケーブル式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのほか、同社独自のPowerIQに対応したUSB×4ポートの合計5ポートを搭載する。Amazonでの実売価格は3,999円(2019年1月9日現在)。
【1月21日訂正】記事初出時、PowerIQ 2.0対応としておりましたが、正しくはPowerIQ対応となります。お詫びして訂正します。
AUKEY「PA-Y12」
・PA-Y12の製品情報
・Amazon.co.jpで購入する
AUKEYが製造、販売。Power Delivery 3.0(PPS)対応、最大60W(PDOは5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/3A)。電源ケーブル式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのほか、同社のAiPower技術に対応したUSB×2ポートの合計3ポートを搭載する。Amazonでの実売価格は4,999円(2019年1月9日現在)。
Satechi「ST-MCTCAM」
・ST-MCTCAMの製品情報
・Amazon.co.jpで購入する
Satechiが製造、販売。Power Delivery 3.0対応、最大60W(PDOは5V/3A、9V/3A、15V/3A、18V/3A、20V/3A)。実機で確認した限りでは他に12V/3Aも通知している。電源ケーブル式で、搭載ポートはUSB Type-C×1ポートのほか、Quick Charge 3.0に対応したUSB×1ポート、さらにUSB×2ポートの合計4ポートを搭載する。Amazonでの実売価格は6,499円(2019年1月9日現在)。
テスターおよびケーブルも併せて紹介
検証に使うテスター、ケーブルについても紹介しておく。
テスターはAVHzYの「CT-2」を使用した。本体上下のUSB Type-Cポートに接続したデバイスおよび充電器について、電圧や電流、電力を測定できるほか、各種急速充電規格への対応の有無、PDOの一覧なども見ることができる。またPCと接続してログを取得することも可能。本体およびPCユーティリティとも日本語化されているのでわかりやすい。
このほか、5A対応ケーブルはCable Mattersの「107002-BLK-0.5m」とエレコム「USB3-CC5P05NBK」、3A対応ケーブルはAmazon Basicの「L6LUC017-CS-R」を使用している。これらケーブルは以前の検証記事で紹介しているので、必要に応じて参照いただきたい。また一部の検証ではゴッパ製品付属のUSB-IF認証済5Aケーブル、およびデバイス付属のケーブルも使用している。
さて、前置きが長くなったが、ここからが本題となる。
レノボ「ThinkPad X1 Carbon(2018モデル) 」
第8世代Coreプロセッサを搭載した、ThinkPad X1 Carbonの第6世代モデル。Thunderbolt 3に対応したUSB 3.1 Type-Cポート×2を搭載している。付属のACアダプタはこのType-Cポートに接続する仕様で、最大65Wまで対応する。
総評
ThinkPad X1 Carbon(2018)は、ほぼUSB PDアダプタの容量通りの充電速度となる。具体的には以下のとおり。
・30W未満だと28W前後(20V/1.3A)
・30~45W未満だと40W前後(20V/2.0A)
・45~60W未満だと48W前後(20V/2.3A)
・60W以上だと59W前後(20V/2.9A)
本製品の2017年モデルでは、最大30Wのアダプタでは充電できない問題があったが、今回の2018年モデルでは同様の症状は確認できなかった。モデルチェンジにあたって、低容量のUSB PDアダプタでも充電を行なえるよう改良が加えられたものと考えられる。
ただし最大30WのUSB PDアダプタでは充電速度が極めて遅く、接続時に本体側で「低速のUSB充電ケーブルが接続されています」というアラートが表示されるほどだ。一晩放置しておいて朝までに充電が完了すればよい、という使い方に限られるだろう。
今回取り扱っている製品の中では、ゴッパの「E00650A1CBLKUS」が唯一、製品添付の65Wアダプタと同じ「20V/3.25A」で充電を行なっており、実測値では製品添付の65Wアダプタよりも高速に充電できている。その他の製品は太刀打ちできておらず、速度を重視するならば、ゴッパの製品一択となるだろう。
ちなみにこのゴッパ「E00650A1CBLKUS」は唯一、60W(最大20V×3A)を超えて充電を行なっているため、ケーブルを5A対応から3A対応へと交換すると45~60W未満のアダプタと同等の速度に低下する(通知されるPDOも「20V/3.25A」ではなく「20V/3A」となる)。実際にはあまり目にすることがない、ケーブルがボトルネックになる具体例として興味深い。その他の組み合わせでは、5Aケーブルと3Aケーブルの違いによる影響はない。
なおThinkPadシリーズは接続されたアダプタの容量をユーティリティ「Lenovo Vantage」から見ることができるが、いずれも正しい値を示すなか、AUKEY「PA-Y12」についてのみ、正しくは60Wと表示されるべきところ、75Wと誤表示された。詳しい原因は不明だ。
Apple「MacBook Pro 13インチ(2017)」
MacBook Pro 13インチの2017年モデル。Thunderbolt 3に対応したUSB 3.1 Gen 2対応のType-Cポート×2を搭載している。ACアダプタは付属ケーブルを用いてこのType-Cポートに接続する仕様で、最大61Wまで対応する。以下の測定はバッテリ残量30%台で実施。なおAppleではUSB Type-Cを「USB-C」と表記しているが、本稿では前者の表記に統一している。
総評
本製品は製品添付のACアダプタ(最大61W)は、実測50W台での充電が行なえる。これと同等なのは最大65W対応のゴッパ「E00650A1CBLKUS」、最大60W対応のOmars「OMWCBK60WPDYX」、同じくSatechi「ST-MCTCAM」の3製品だ。
なかでもゴッパ製品は唯一、実測値で50W台の後半を記録しており、これは純正アダプタよりわずかながら速い。今回検証しているアダプタの中で唯一、純正アダプタからの買い替えで高速化が可能な製品ということになる。
そのほかのアダプタも基本的にスペック通りで、最大30Wのアダプタは28W前後(20V/1.4A)、最大45Wのアダプタは44W前後(20V/2.1A)となる。今回計測したのはバッテリーの残量が30%台の場合で、満充電に近づくと最大60W以上のアダプタと最大45Wのアダプタの差はほぼなくなるので(いずれも実測35W前後まで下がる)、本体サイズの小ささや価格も考慮し、45W対応のアダプタを選ぶという考え方もありだろう。
またもう1つの特徴として、出力が小さいアダプタでも充電可能なことが挙げられる。試しにiPad Pro付属のアダプタ(最大18W)を接続してみたが、実測でほぼ上限いっぱいの17W(9V/1.9A)で充電が可能だった。これ単体で満充電に持っていくのは現実的ではないが、ほかに選択肢がない場合、バッテリの減りを少しでも緩やかにする用途には使える。
なお対象アダプタのうち唯一挙動が微妙なのが、AUKEY「PA-Y12」だ。ログを見ると、いったん20V/1.5Aが選択されたのち、同製品がサポートするPPS(Programmable Power Supply)機能によって電圧/電流を微調整しているのだが、十数秒ごとに切断と充電開始を繰り返し、そのたびに「ポン」という通知音が鳴るという挙動を繰り返す(後述の動画参照)。
リアルタイムのモニタで見ていると、電圧/電流がピークに達したところでMacBook側から切断され、そのたびにやり直しになっているようだ。原因の切り分けのために本製品の前モデルにあたる「PA-Y10」も購入して試してみたが、こちらも同じ症状だった。稀にこれらの症状が発生しない場合も28W前後(20V/1.4A)がピークで、最大60Wのポテンシャルを発揮できていない。
いろいろ実験をしていたところ、この症状が起こるのは、2つ並んだUSB Type-Cポートの奥側でだけ発生することがわかった。手前側に接続した時のログを見たところ、こちらはPPS機能による電圧/電流の調整が行なわれておらず、これが原因である可能性が高い。同じくPPS機能を備える前モデル「PA-Y10」も同じ挙動をするので、辻褄は合う。
上記は実機の挙動やログなどから筆者が推測したもので、詳しい原因については不明だが(OS側の問題である可能性もある)、少なくともほかの7製品ではこの症状は発生しておらず、現段階ではあまり積極的に使いたいと思わない。すでに購入してしまっている場合は、前述のように2つ並んだUSB Type-Cポートの手前側を用いるとよいだろう。
以上、ノートPC編として、レノボ「ThinkPad X1 Carbon(2018モデル) 」、Apple「MacBook Pro 13インチ(2017)」の検証結果を紹介した。次回はスマホ・タブレット・ゲーム機の検証結果をお届けする。