2023年2月20日 18:00
イノベーションを「エネルギー」という視点で読み解くことで未来を考えてゆくメディア「EMIRA」は、2023年2月18日、早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(以下、PEP)とともに、ビジネスアイデアコンテスト「EMIRAビジコン2023 エネルギー・インカレ」を早稲田大学内にて実施しました。今回で4度目となるコンテストの様子をご報告します。
本コンテストは、EMIRAと、早稲田大学を代表校に13大学が連携する5年一貫の博士人材育成プログラムであるPEPが共催。今回は、「カーボンニュートラル×エネルギー」というテーマにて、ビジネスアイデアを全国の大学生・大学院生から募り、160チームの頂点が決定しました。
最優秀賞を受賞したのは、「アパレル業界の変革より、環境にやさしい世界を目指す」ことについて発表したECOCLO。受賞後のインタビューでは「チームメンバーの得意を活かしてひとつの形にすることができました」「スモールなものでもいいので実際に取り組めたらいいなと思っています」と語りました。
<「EMIRA」URL>
https://emira-t.jp/
■出場5チームのプレゼン内容
全国160チームの中から、審査によって選ばれた5チームが本コンテストに出場。「カーボンニュートラル×エネルギー」をテーマに、各チームがプレゼンテーションを展開しました。EMIRA最優秀賞は「ECOCLO」が受賞。最優秀賞の発表内容の詳細はEMIRAで掲載予定です。また、KADOKAWA賞は「K小学校同窓会」、TEPCO賞は「アッド・コンポスト」、優秀賞は「地球化学研究室」と「チームES」が受賞しました。
<EMIRA最優秀賞>ECOCLO(大阪大学大学院)
佐藤陸弥・橘尭志・永江千夏・道畑勝利
テーマ:アパレル業界の変革より、環境にやさしい世界を目指す
発表概要:
洋服の購入、管理、手放すといった一連の流れをサポートすることで洋服の長寿命化を目指したアプリを提案する。具体的なアプリの機能は4つ。1つ目はクローゼットの中の洋服をブランドや色別にアプリに入力、確認できるようにする。これにより、似た色の洋服の購入、衝動買いといった無駄な消費行動の抑制を図る。2つ目は自分が所有している洋服を組み合わせた着回しを提案する。この際、洋服の使用頻度を把握し、着用回数の少ない洋服の着回しを提案することで洋服の長期的な利用を促す。3つ目は、洋服の登録時に記載した情報をフリマアプリに反映することで出品支援を行う。これにより、洋服の二次流通を促進し、廃棄洋服の削減を目指す。
そして4つ目は、洋服の購入、管理、手放すといった環境への貢献活動を行うごとに点数が加算され、ソーシャルメディアのような使い方で発信ができる機能を実装する。結果として、利用者自身が行っている活動を他者に訴求することが可能になる。
<KADOKAWA賞>K小学校同窓会(一橋大学・早稲田大学)
愛川優・寺崎琳
テーマ:カーボンニュートラル達成に向けた取り組みの効率化を図るサービス「Choo2(チューズ)」
発表概要:
Choo2は、カーボンニュートラル達成に向けた社会全体の取り組みの効率化を図り、サポートするサービス。企業や教育機関、家庭を対象とし、CO2排出量を減らす手段を提案する。利用者は人数などの必要な情報をフォームに入力し、概算されたCO2排出量を基に「CO2の排出を削減・吸収する方法」の中から挑戦できそうなものを複数個選択。プラン実行後、月末のフィードバックを基に翌月に向けた改善をしながら上記ステップを繰り返す。またフィードバック時に目標を達成できていたらインセンティブを受け取れる仕組みだ。収益化は、会社からの手数料と広告費、NFT投資で行うことを想定。広告費はCO2の排出を削減・吸収する方法を考えた企業から、彼らの製品を優先的に告知したことに対して受け取る。
加えてNFT投資での資金提供呼びかけでは、上場の難しさと非上場の株式取引の手間を考慮し、採用した。
<TEPCO賞>アッド・コンポスト(早稲田大学)
吉次なぎ・大村晃央・長嶋憂門・千徳光・森友輔
テーマ:飲食店向けコンポストサブスクシステム
発表概要:
都内飲食店、食品小売店では生ゴミの廃棄量が多いという課題を抱える。加えて、水分量の多い生ゴミは処理費用がかさむ、生ゴミのリサイクル率が低いといった問題もある。そこでアッド・コンポストは事業者向けコンポストのサブスクリプションを提案。各飲食店店舗にコンポストを設置し、生ゴミの再利用に貢献したいと考えている。アッド・コンポストでは、サブスクリプションで提供したコンポストから一次発酵物を回収、自社工場にて有機肥料生産、首都圏近郊の農家などに販売する。さらにこの有機肥料を用いて生産した農産物はコンポストを設置している事業者に直接販売するなど、双方へのメリットを提供する。この取組みにより二酸化炭素を排出することなくリサイクルの環が完結する。
設置するコンポストは自社開発を考えており、発酵速度がより早く、より多くの生ゴミのリサイクルを可能にするという特徴を持つ。さらにコンポストのカバーにプリントを施すことや、デジタルサイネージを取り付けることで看板としての機能も寄与。広告戦略も視野に入れる。
<優秀賞>地球化学研究室(近畿大学)
清水大河
テーマ:鉱泉を活用した海の環境と漁獲量向上事業
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/346160/img_346160_5.jpg
発表概要:
漁獲量の向上を狙い、魚を増やすために餌となる藻類の増加を考えたところ、藻類が二酸化炭素の削減の手助けになることに気づいた。藻類を増やす方法として、鉄を海に散布するという方法がある。しかし従来までの直接海で鉄を散布する方法では費用対効果が悪く、鉄が酸化して沈澱してしまうなどの課題があり、ビジネスとするには課題があった。そこで本アイデアでは鉄イオンを多く含む鉱泉とフルボ酸を結合させたフルボ酸鉄を用いて、今までの方法よりも遥かに低コストで海に鉄を供給する。この方法では漁獲量の向上に加え、大気中の温室効果ガスの削減が可能。
ビジネスモデルとマネタイズとしては、削減された温室効果ガスによるカーボンクレジットの売却による利益、及び鉄供給により藻類と漁獲量が増加するため、漁業組合などとの契約や県との委託事業によるビジネスモデルを予定している。
<優秀賞>チームES(金沢工業大学)
江原直・山下稜司
テーマ:太陽光発電で人を繋ぐサービス『あんやとSUN!』
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発表概要:
「太陽光パネルを設置してみたいが場所や天候が条件に合わない人」と「場所や天候は良いが太陽光パネルの設置費用が出せない人」をつなげるマッチングサービス。アプリで提供され、土地提供者と太陽光に投資したい人に分かれ、利用する。土地をクラウドファウンディング形式で販売し、少額から投資に参加可能。ターゲットをZ世代など若い世代に定め、気軽に参加できる環境を促す。さらに、太陽光パネルの発電で得られた売電収入の利益は資金提供者にリターンされ、土地提供者は設置場所を貸し出すことで資金提供者たちから利用料金を受け取ることができる。このサービスの利用者が増えることで太陽光発電への関心が高まり、太陽光パネル設置の敷居が下がる狙いもある。
<審査員>
林 泰弘(早稲田大学理工学術院 先進理工学部 教授 / スマート社会技術融合研究機構(ACROSS) 機構長)
平山 学(東京電力ホールディングス株式会社 エリアエネルギーイノベーション事業室 副室長)
亀谷 潮太(EMIRA編集長)
<特別審査員>
関根 泰(早稲田大学理工学術院 先進理工学部 教授 / 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)フェロー)
大畑 慎治(O ltd. CEO / ザ・ソーシャルグッドアカデミア 代表)
<主催>
EMIRA編集委員会
(株式会社KADOKAWA、東京電力ホールディングス株式会社、株式会社読売広告社)、
早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(PEP)
<後援>
文部科学省
早稲田大学スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)、早稲田大学マーケティング国際研究所(MII)、
早稲田大学ビジネススクール(WBS)
<協力>
WASEDA-EDGE人材育成プログラム
■インタビュー
コンテスト終了後、EMIRA最優秀賞を受賞したECOCLO及び、審査委員を務めた早稲田大学理工学術院 関根泰教授と東京電力ホールディングス株式会社 平山学氏にインタビューを実施。電力レジリエンスや今の環境問題を自分ごととして捉えることの重要性について語りました。
<「EMIRA最優秀賞・ECOCLO」インタビュー>
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―最優秀賞を受賞した、今の率直な感想を聞かせてください。
私たちのチームはメンバーが4人いるのですが、内気なメンバーも多くなかなかアイデアが出てこないなどの課題がありました。ですが各々の得意なところを活かし、分析が得意なメンバーには調査分析を任せ、僕は進行が得意だったので計画を立てるなど工夫してひとつの形にすることができました。それぞれの特性を活かして構築した今回のビジネスモデルで、このような賞を頂けてとても嬉しく思っています。
―発表テーマである、「アパレル業界の変革より、環境にやさしい世界を目指す」という内容に着目したきっかけは何ですか。
どういう視点から「カーボンニュートラル」というテーマに結びつけるか考えた時に、メンバーみんなで50個くらいのアイデアを出しました。その中で、特に楽しく取り組めるものや、無意識的にカーボンニュートラルに貢献していたという形が、実現に向けて重要な視点だと考え、アパレル業界の環境問題に焦点を合わせました。
―実際にこの事業を進めていくとしたら、課題はどのようなことになると思いますか?
競合の分析がまだまだ足りていないと感じています。例えば実際に天候に応じたコーディネートの組み合わせを提案するアプリがありますが、そこにどれだけニーズの重さがあるのかをまだ正確に測れていません。僕たちが環境や手放すことに特化したアプリを出しても、実は知らないニーズがあるかもしれない。なので競合の調査とその有効性を見ていく必要があると思っています。
―この研究の今後について、どのようにお考えですか。
このコンペで終わりではなく、スモールなものでもいいので実際に取り組めたらいいなと思っています。例えば洋服を回収して、その流通を促進するなど。環境問題に取り組むアパレルブランドさんと手を組んで、イノベーションを起こしていけたらいいなと思っています。
<審査員 早稲田大学理工学術院 関根泰教授インタビュー>
画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/346160/img_346160_8.jpg
―5組のアイデアについてどのように感じましたか?
書類審査の段階から感じていましたが、非常に広い分野で、それぞれの領域から、若い人の柔らかい発想でアイデアが出されていて、審査をしていて非常に楽しかったです。私は特に「アッド・コンポスト」の企画を強く評価しました。現在のフードビジネスにおける課題とそれに対する対応、そして最後の出口まで、全てを見据えてビジネスを提案していました。さらにこれを実現可能なモデルとするべく、広告用のサイネージをつけるなど複合的な考えをしていた点が非常に良いと感じました。
―今回のビジコンの内容を受け、人材育成の観点から感じたことを教えてください。
自分自身も大学の教員として日々学生さんと接してきました。やはり日本の学生さんは大企業志向が強くて、名前の通った一流の会社に就職したいという方が多かったです。ですがここ数年の間に就職した学生が3〜5年後に転職して、独立したという人も。就職して、会社に属して働くというスタイルから、個人の力で働いていくというパラダイムシフトの中にあると感じています。そんな中で、学生の頃からこのようなビジコンを経由してアイデアを作り、創業の可能性を視野に入れながら様々なベンチャーキャピタルと話をする機会があると、アントレプレナーとして若いうちから社会に出ていける基盤が整うのではないかと思います。そういう意味で、ビジコンはそれを後押ししていく存在であり、非常に重要なことだと思いました。
―PEPの今後の展望についてお答えください。
PEPは、これからのエネルギー・環境を支える若手を育成するプログラムとなっています。全国13大学が連合している中、育っていく学生さん方がこうしたビジコンという場と連携しながら次世代のエネルギー・環境において新しいビジネスを考えていくことはやはり重要です。大きなエネルギー会社に就職することだけがオプションではなく、自ら新しいエネルギー・環境分野でできることを考えていくことは非常に有用なことであると思います。「EMIRAビジコン」とPEPがお互いに刺激を与え合いながら進んでいくと、若い人たちがよりエンカレッジされていくと感じています。
―ご自身は「カーボンニュートラル×エネルギー」というテーマに対して、どのようにお考えですか?
私は今現在、政府のカーボンニュートラル/グリーンイノベーションという政策の中にいて、まさに政府の委員会を引っ張り、動かしている立場であります。一方で、大学においては、カーボンニュートラルに関する研究を、日々、35人の学生さんと一緒にやっています。日本がゆく方向の水先案内人をしながら、一番低いところでそれを動かす水兵の仕事もやっていることになりますね。そういう点で、これからの日本が、日本ならではのカーボンニュートラルの考え方を活かしていけるようにと考えています。例えば、資源がなく人間のリソースしかないことは日本の特性です。資源がないからこそ、人の知恵でカーボンニュートラルを目指す時代において、勝ち残っていけるような取り組みを考えていきたいと思います。
―カーボンニュートラル社会の実現に向け、研究者として今後取り組まなければならないと思うことをお答えください。
大事なことは、社会科学的課題をどう解決するかだと思います。我々が身を置く自然科学の分野は、例えば研究者が論文を書いて企業と一緒に特許をとって、企業がそれを商業化していくだけで、ある程度解決できる可能性があります。一方で社会科学の課題というのは、国民、あるいは一般の私たちの生活者を全て巻き込んでカーボンニュートラルにしていかなければならない。これは言ってみれば行動経済学的に考えたナッジと言われるアプローチが必要です。ナッジとは、気づけばカーボンニュートラルの方向にみなさんがついつい行動してしまうということ。それを社会制度としてどうやって考えていくかが重要ですよね。
例えば、なるべく燃費の悪い車には乗らないという考えから、車には乗らない、車に乗らず電車に乗る、電車に乗らず自転車に乗る……といったことがゆくゆくは一歩ずつニュートラルな方向に社会が動いていることになるわけです。生活の質を落とさずに行動経済学的に社会を変えていくにはどうしたらいいか。こうした分野は自然科学者にはできないことですので、人文科学者、社会科学者のみなさんとタッグを組んで世の中を変えていく必要があると感じています。
また、レジリエンスという観点では、これは主に自然科学の分野で解決していけることだと思っています。カントリーリスクをヘッジして、エネルギーセキュリティをどう高めていくのかが非常に重要です。例えばベースロードの電源をどう考えていくのか。洋上風力発電、あるいは原子力発電、これまでの石炭火力+CCSというのが、これからの一つの大きな柱になると思います。一方でブラックペレットを含めたバイオマス発電、さらには太陽光、風力といった変動の大きな電源をどう平準化していくのかという課題も。そのための水素、あるいはアンモニアなどの平準化のためのツールを複合的に使って、日本がブラックアウトしない社会を作っていかなければならない。エネルギーで困ることがない社会をみんなで作っていくのです。
これがレジリエンシーを高める一つの重要な方法だと思います。
―指導者、研究者として、全国の学生にアドバイスなどをお願いします。
学生のみなさんによく言っていることは、私を含めた年長者の話していることは古い常識だということです。ともすると私たちは、平成の常識、昭和の常識を語ってしまいます。令和の時代の常識はそれらと異なる可能性があります。自らの手を動かし、自らの頭で考え、観察して得られた結果を解析することで、令和の時代の新しい常識を得ることができる可能性があります。そういう点で、決して古い常識に流されず、それを鵜呑みにせず、自らの頭をフルに使って新しい時代の知識の体系化を獲得していってほしいと思っています。
<審査員 東京電力ホールディングス株式会社 平山学氏 インタビュー>
画像9: https://www.atpress.ne.jp/releases/346160/img_346160_9.jpg
―5組のアイデアについてどのように感じましたか?
学生ならではの斬新な発想や生活に密着したアイデアが非常に多かったですね。どのような人たちが、どんな課題を抱え、それをどう解決していくのか、ということをちゃんと筋道を立てながら考え、「ビジネスを創出する」ということにチャレンジしていただいたと感じました。自分が学生だった頃にこんなアイデアが出せただろうか、と思うくらいです。改めて、今の学生の方たちはこうした能力に長けていると感じました。
―5組の発表を聞いて刺激を感じたことや、今後ビジネスをしていく上で良い意見だと感じたことがあれば教えてください。
「アッド・コンポスト」は、コロナ禍の打撃を受けた外食産業の運営費用をどう削減していくかという、直近の問題に触れていただいたと思います。良かったのは、ごみを堆肥に加工して、そこからさらにその出口として受け取る側の農家さんのことまで見据えてサプライチェーンを作っていこうと考えていたところです。入り口から出口まで考えているのが非常に素晴らしいと思いましたね。どの程度のコストがあれば、このビジネスが成り立つのかまで考えており、現在かかっている費用よりも抑えられるような提案が受け入れられやすいということにまで気づいていました。運用面の詳細までいろいろと詰めていけばビジネスになるという可能性を感じます。
最優秀賞を受賞した「ECOCLO」は生活に密着していました。まさに「今日何着て行こうかな」というのは誰もが思うでしょうし、外出の様々なシーン、例えば海外旅行の時に行先の気温をインプットしたらコーディネートの提案をしてくれるサービスがあるとしたら、非常にニーズがあるだろうと想像がつきます。こうしたアイデアが今回「カーボンニュートラル×エネルギー」というテーマの中で出てきたということが素晴らしいことだと感じました。
―ご自身は「カーボンニュートラル×エネルギー」というテーマに対して、どのようにお考えですか?
エネルギー起源のCO2排出量は温室効果ガスの中でも8割ほどあると言われている中で、エネルギー事業者には供給する側だけでなく、利用される側を含めて、そこをいかに下げていくのかの具体策が求められていると思っています。それに対していかにお応えてしていくのかが我々事業者側の責務だと思っています。その中でカーボンニュートラルというチャレンジには、持続可能な社会を繋げていくという大きな大義があると思っていますし、既に災害が激甚化している中で、これをいかに“自分ごと”として考えていくのかが重要ですよね。私たちは、この現状を変えるための原動力になっていきたいと思っております。
そういった意味では私自身も、徹底的に自分ごととして解決する手段を探し、それを事業に変えて、持続可能な形にして皆さんと作っていくことに尽くしていきたいと思っています。私自身も実際に太陽光発電や電気自動車を利用するようになって、やはり気持ちは変わりました。こうやって自分で行動してみて、電気自動車に充電したりすると、ガソリンがちゃんと再エネに置き換わっているという実感も湧きます。そういった個人の小さな行動変容から繋がっていくことが実感になるので、私は社内でもこうした自分の体験も含めて、まずは自分たちが変わることが大事だと訴えています。
―カーボンニュートラル社会の実現に向け、手がけている事業やサービスにはどんな役割やビジョンをお持ちでしょうか。
エリアエネルギーイノベーション事業室を4月に立ち上げましたが、これは「カーボンニュートラルで災害に強い“まちづくり”を、エネルギーを軸に推進していく」ための組織です。カーボンニュートラルは非常に大きな目標なので、本気でやらないと絶対に達成できないと思っています。自治体や企業、そこに住まう皆様とどのように達成していくかチャレンジしているところです。例えば太陽光発電をお家の屋根に設置してそれをサブスクで提供する“エネカリ・エネカリプラス”というサービスがありますが、これは初期投資不要で再エネを手に入れることが出来ます。このように皆さんがすぐ行動に移し利用できるモデルをどんどん広げていきたいと考えています。
また、NTTさんと取り組んでいるTNクロスという会社のように、私達だけではなくて色んな企業さんとのネットワークで繋ぎ合わせた事業展開で、色んな方に受け入れられて広がっていくようなことを私達としても考えて進めています。
―ビジネスの観点から、全国の学生にアドバイスなどをお願いします。
私も学生の時は部活をやっておりました。何かひとつのことに時間を惜しまず集中して取り組むというのは学生の特権だと思っています。魂をこめて取り組むという経験が、ビジネスの上でも役に立つと如実に感じています。完遂したいという思いがあるかないかが、実際に実現できるかできないかに現れます。今取り組んでいることを徹底的に、真剣に取り組むことは、将来のためにとても大切だと思うので、ぜひ積極的に取り組んでもらいたいですね。加えて、人には一人では成し遂げられないことが多々あります。チームという考え方も非常に大事で、社会の中で皆さんが共感できることはビジネスにも繋がってきます。
学生のうちからネットワークを作って相手を「傾聴」することや、自分が「発信」して共感を得るという経験ができればいいですよね。サークルや部活などで、リーダー的な役割をすることも、マネジメント能力が鍛えられる重要な機会になると思います。自分ひとりで成し遂げるだけでなく、ぜひ組織の中で同じ方向を向いて目標を目指すことや、人を動かす立場になることにも挑戦してもらいたいです。
■EMIRA
EMIRA(エミラ)は、イノベーション(変革)を「エネルギー」という視点で読み解くことで未来を考えてゆくメディアです。
<メディア公式サイト>
https://emira-t.jp/