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暗黒物質をみつけたか?東大の研究者が発表

銀河系の中心から広がるハロー状のガンマ線放射

 東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授は、銀河系(天の川銀河)の中心方向からガンマ線放射を発見し、これが暗黒物質(ダークマター)についての仮説に合致すると報告した。11月25日、オンライン科学誌「Journal of Cosmology and Astroparticle Physics」に掲載された。

 銀河などの運動を説明する要因として、光学的に観測できないが重力相互作用する物質として「暗黒物質」の存在が仮定されている。暗黒物質の正体についてはさまざまな仮説が挙げられており、その1つとして未発見の素粒子「WIMP(Weakly interacting massive particle、弱く相互作用する重粒子)」がある。WIMPは陽子の10倍から10万倍程度の質量を持つ素粒子とされ、まれにではあるが互いに衝突して対消滅する際、高エネルギーのガンマ線を放射すると予測されている。

 そこで、銀河系の中心部など、暗黒物質が密集している領域からのガンマ線が長年探索されてきた。しかし、宇宙線や天体起源の強烈なガンマ線放射も観測されるため、そうした成分を丁寧に取り除き、微弱なシグナルを慎重に探す必要があった。

 今回、戸谷教授はフェルミガンマ線観測衛星が取得した15年分の最新データを解析。天体起源の放射を除去した結果、銀河中心から角度30度以上にわたり、ぼんやりと広がるハロー状(中央が濃く、周囲が薄くなる同心円状の分布)のガンマ線成分を特定した。これは一般的な天体起源のガンマ線とは異なり、質量が陽子の約500倍であるWIMPの対消滅から理論的に予想されるスペクトルとよく一致するという。また、放射の空間的な広がりも、暗黒物質ハローの分布予想と合致しているとしている。

 今回の発見が検証され、暗黒物質由来であることが確定すれば、宇宙科学における最大の難問の1つが解決されることになる。