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理研、あらゆる新型コロナ感染を阻止できる抗体

すべての新型コロナウイルス変異株の感染を阻止できるTMPRSS2抗体

 理化学研究所、東京大学医科学研究所、および滋賀医科大学による共同研究チームは9月11日、「あらゆる新型コロナ感染を阻止できる抗体」を開発したと発表した。これにより、新型コロナウイルス変異株に対する阻害薬の作製に貢献できると期待される。

 これまでの新型コロナmRNAワクチンおよび抗体医薬による抗体は、ウイルスのタンパク質、主にスパイクタンパク質を標的とするものだったが、新型コロナウイルスはスパイクタンパクの変異が著しいため、それに伴って効果が弱まるという課題があった。

 今回、共同研究チームは、ウイルスに対してではなく、ウイルスが感染に利用するヒト細胞側の酵素「TMPRSS2」(セリンプロテアーゼ酵素の一種)に対する抗体を作製。これにより変異の種類によらず、新型コロナウイルス変異株の感染を阻止できる。

 新型コロナウイルスは、ウイルス表面のスパイクタンパクがまずヒトの上皮細胞に発現する受容体ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)に結合するが、その後TMPRSS2によりスパイクタンパクが切断され、ウイルスと細胞膜の融合が起きて細胞内にウイルスが侵入して感染する。今回開発された抗体は、TMPRSS2そのものの活性自体に影響せず、ウイルスのスパイクタンパク、ACE2、TMPRSS2の三者の相互作用を阻害できるのが特徴。

 研究では既にこの抗体をヒト化抗体にしており、前臨床の開発ステージであるため、実際に感染を伴う患者に臨床応用できる段階へと展開していく構え。

TMPRSS2抗体によるウイルス感染抑制の効果
今回開発された抗体4種類はすべてTMPRSS2に対して高い親和性を示した
動物モデルでの新型コロナウイルス感染のTMPRSS2抗体による抑制