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【懐パーツ】高機能と高性能を1枚に集約した「All-In-Wonder X1900」
2021年9月22日 06:45
TVチューナとビデオキャプチャ機能、そしてビデオカードを1枚に集約したATI(AMD)の「ALL-IN-WONDER」シリーズ。日本においてもこれまでに何製品か投入されてきており、拡張スロットを節約できる製品として重宝されてきたが、2000年代後半に入ってTVのデジタル放送化が進むにつれ急速に廃れていってしまった。
「All-In-Wonder X1900」は、一時期興隆商事が並行輸入を行ない、秋葉原で販売が確認できたALL-IN-WONDERシリーズ最後の製品である。並行輸入品でパッケージを含めてすべて英語のままであり、チューナも米国のデジタル放送に対応したDVB-Tチューナであるため、TVチューナ複合カードとしての利用価値はない。
しかし、少なくともビデオキャプチャ機能は使えたであろうし、Radeonに実装されていたビデオエンコードを高速化するAVIVOの使い勝手の良さから、拡張スロットを節約したいマルチメディア志向のユーザーにはフィットしていた。特に本製品は、RADEON X1900シリーズが2スロット占有のクーラーを装備していたのに対し、わずか1スロットであったので、なおさらだ。
とは言え、2006年当時はまだMini-ITXフォームファクタはVIA以外のマザーボードで採用が進んでいなかったのも確かで、本機のポテンシャルを最大限に活かせたのはShuttleのベアボーンぐらいかもしれない。
クーラーのダウンサイジングにより、GPUのスペックも通常のRadeon X1900から落とされており、コアクロックは625MHz→500MHz、メモリクロックは1,450MHz→960MHzとなっている。当然、その分性能は低下するのだが、当時ライバルでハイエンドにあたるGeForce 7900 GT程度の性能は発揮できていたので、3D性能と機能性、取り回しの良さのバランスが非常に優れていたと思われる。
さてAll-In-Wonder X1900のカードだが、シリコンチューナの採用により、以前紹介した「ALL-IN-WONDER RADEON」と比較してチューナの基板占有面積が大幅に減っているのが特徴。その一方で部品の実装数は相当なもので、比較的広い面積を持つ基板であるにも関わらず電源部や後段、裏面に至るまで、然るべきところに部品がびっしり配置されている印象である。
カード中央にはRadeon X1900が鎮座している。Radeon X1900はその名から推測できる通りX1800の強化版で、ピクセルシェーダを16基から48基へと3倍に増やしている。X1800登場からわずか3カ月という急ペースで世代交代品として登場し、X1800に飛びついたユーザーをアッと言わせた。その周囲にはSamsungのGDDR3メモリが8枚並び、256MBという容量を実現している(なお、X1900 XTは512MB)。
ちなみにシリコンチューナはMicrotune製の「MT2121F」。Microtuneは2010年にZoran Corporationに買収され、その直後の2011年にCSR plcがZoranを買収。さらにそのCSRは2015年にQualcommに買収されているため、完全に時のチップとなってしまっている。