ATIは1月24日、ハイエンドセグメントのGPUとなる「Radeon X1900シリーズ」を発表した。昨年10月5日の「Radeon X1800シリーズ」の発表が記憶に新しいが、早くも次の製品がリリースされたことになる。ここでは、ラインナップの下位モデルにあたる「Radeon X1900 XT」のベンチマーク速報をお届けしたい。 ●ピクセルシェーダーユニットは48個に 今回発表されたRadeon X1900シリーズは、上位モデルとなる「Radeon X1900 XTX」(649ドル)、その下位モデルの「Radeon X1900 XT」(549ドル)、CrossFire用の「Radeon X1900 CrossFire Edition」(599ドル)と、TVチューナ搭載の「All-In-Wonder X1900」がラインナップされる。 Radeon X1900シリーズとRadeon X1800シリーズの主なスペックの違いは表1にまとめた通り。90nmプロセスで製造される点は同様、アーキテクチャ的にも大幅な変更はなく、Radeon X1800シリーズの進化版といった製品になっている。 大きな違いは動作クロックとピクセルシェーダーユニット数の違いということになる。シェーダーユニット部を中心としたダイヤグラムを図1に示したが、ピクセルシェーダーユニットは、Radeon X1800シリーズと同様に4つのユニットをひとまとめにしたQuad Pixel Shader Coreを採用。これを12個搭載することで計48個という計算になる。バーテックスシェーダーはRadeon X1800シリーズと同様8個となっている。 テクスチャユニットが分離している点も従来通りだが、Radeon X1800シリーズでは1フェッチあたり1テクセルを参照できたのに対し、Radeon X1900シリーズでは1フェッチあたり4テクセルを参照できるようになった。これは、テクスチャフェッチに伴うメモリアクセスが発生することで性能向上の足枷になってしまうことを回避するための変更となる。
今回は、Radeon X1900 XTを搭載するSapphaire製品を利用してテストを行なう(写真1~5)。裏面にメモリチップがない点や、クーラーの構造等、その外観はRadeon X1800 XTと酷似しており、Radeon X1900 XTのリファレンスカードに準拠した製品と見て良さそうである。 付属していたドライバは、Version 6.14.0010.6587。CATALYST5.12として正式にリリースされているものと同じバージョンになっており、Radeon X1900対応の変更が加えられただけとみていいだろう。 ドライバ上から確認できる動作クロックは、以前にRadeon X1800 CrossFire Editionの記事で触れたように、ドライバをインストール時点では、やはり低いクロックで動作するよう設定されている(画面1)。 といっても、これは現在のクロック、つまり2D描画時のクロックを表示しているものであり、3D描画時にはATI Overdriveにより定格動作へと自動的にクロックが引き上げられる。以前の記事で検証した時のように、南京錠のアイコンをアンロック状態にしなければならないということはなく、初期設定のままで3D描画時にはクロックが引き上げられるようだ。つまり、ATI OverDriveの設定画面の右上の南京錠のアンロック状態は、任意にオーバークロックができるにするための設定ということになる(画面2)。 【お詫びと訂正】初出時に、ATI Overdriveを有効にすると、定格動作を指定できるとしておりましたが、無効のままでも定格動作します。お詫びして訂正させていただきます。 ●Radeon X1800 XTと比較して最大40%弱の性能向上 それでは、Radeon X1900 XTのパフォーマンスを検証したい。環境は表2に記した通り。今回、スケジュールの都合でGeForce 7800 GTX 512MBのテストを行うことができなかった。そのため、以前に行なったテストからデータを流用し、今回使ったRadeon X1900 XT/1800 XT、GeForce 7800 GTX(256MB)の環境は、それに合わせる形となっている。今回の環境では、マザーボードのBIOSが過去記事よりも新しくなっているが、それ以外に特に違いはない。
では、順にテスト結果を紹介していきたいが、ここで、先ごろリリースされたFutureMarkの「3DMark06」について少し触れておきたい。ニュース記事にある通り、「3DMark05」で使われていたゲームテストの表現方法変更を中心に、HDR(High Dynamic Range)とShader Model(SM)3.0のフィーチャーを取り込んでいる。 そのため、3DMark06ではGame Test(GT)もSM2.0テストとHDR/SM3.0テストに分けられた。SM2.0テストでは、3DMark05のGT1とGT2をベースに、光源の数を増やしたり、テクスチャのサイズを上げることで負荷を増やしている。また、3DMark05ではPSM(Perspective Shadow Maps)と呼ばれる影生成技法が使われたが、3DMark06ではCSM(Cascaded Shadow Maps)へと変更されている。 HDR/SM3.0テストは,3DMark05のGT3と新たに追加された「Deep Freeze」と呼ばれるデモが実行される。このテストにおいては、HDRの処理のために16bit浮動小数点バッファのテクスチャ/ブレンディング/フィルタリングが要件とされている。つまり,Radeon X1000シリーズと、GeForce 6200シリーズをのぞくGeForce 6/7シリーズのみが実行できるテストとなる。 また、シェーダーの個別性能などを見るFeatureTestにおいては、SM3.0に特化したテストとして「Shader Particles」「Perlin Noise」というテストが追加された。このうち、Shader Particlesテストは、ハードウェアバーテックスフェッチをサポートしたGPUでないと実行できない。つまり、現時点ではGeForce 6/7シリーズのみの対応となり、Radeon X1000シリーズではスキップされる。 このほか、CPUテストも3DMark06の大きな変更点に挙げられる。3DMark03/05のCPUテストは、VertexShaderで行なうレンダリング処理を、ソフトウェア処理させた場合の性能を見るためのテストであった。しかし3DMark06では、フレームレートを2fpsに固定し、ゲームロジックと物理演算、AI処理を並行するテストに変更された。 実際の3Dゲームにおいては目に見える3D描画以外にもCPUによる演算が頻繁に行なわれている。3DMark06の総合スコアである3DMarks値には、CPUテストのスコアも反映されるように変更されており、実行したシステム全体での、より3Dゲームの実態に近い性能の評価ができるベンチマークへと生まれ変わった。 ATI、NVIDIAは、ともに最新GPUをShader Model3.0に対応させており、両社ともHDRレンダリングの処理性能や機能を強くアピールしている。また、CrossFireやSLIといったマルチGPU技術の登場で3DMark05のスコアが飛躍してしまっており誤差も大きくなりがちである。そういう意味で、新しいフィーチャーを盛り込み、より高負荷とした本ベンチマークは新たな性能指標を見るツールとして期待できる。 その結果であるが、ここでは総合スコアである3DMarksスコア(グラフ1)、SM2.0テストのスコア(グラフ2)、HDR/SM3.0テストのスコア(グラフ3)を掲載した。まず目を引くのは、Radeon X1900 XTのスコアの高さだ。とくにHDR/SM3.0テストの1,024×768ドット/4xAA/8xAnisoの条件ではRadeon X1800 XTに対して39%もの差をつけており、シェーダーユニットの強化を中心にしたRadeon X1900 XTのポテンシャルが如実に表われている。
ちなみに、GeForce 7800 GTXはAAを適用しないときと適用したときのスコア差が非常に小さい。GeForce 6/7シリーズでは、HDR時のAAをサポートしないため、AAを指定してもキャンセルされてしまったのかと思ったのだが、HDR/SM3.0テストでは若干ながらAAによるスコア低下が見て取れるので、AAの指定が生きてはいるようだ。もっとも、この傾向があったとしても、AA適用時のスコアはRadeon X1900 XTが勝っているわけで、プログラマブルシェーダーを活用した3D描画における性能のよさが際立っていると言える。 さて、続いては「3DMark05」(グラフ4)の結果である。このテストより先は、先述のとおり過去に掲載した記事のGeForce 7800 GTX 512の結果も流用して掲載している。SM2.0がメインとなるこのテストでは、Radeon X1900 XTがGeForce 7800 GTX 512も凌駕する結果を見せている。全体の傾向としては3DMark06のスコアに傾向は近い。
残りの「3DMark03」(グラフ5)、「AquaMark3」(グラフ6)、「DOOM3」(グラフ7)、「UnrealTournament 2003」(グラフ8、9)の結果は、Radeon X1900 XTよりGeForce 7800 GTX 512が好成績を出している。これらのテストは、最近のトレンドからいえば、やや古いフィーチャーを使ったソフトであり、プログラマブルシェーダーがフルに活用されていないテストでは、GeForce 7800 GTX 512に分がある格好だ。
●評価は流通量も鍵になりそうなハイエンドGPU 以上のとおり、Radeon X1900 XTのベンチマーク結果を見てくると、シェーダーユニットの強化とコアクロックの向上によって、Radeon X1800 XTからの性能向上は確実に見てとれる。 特に3DMark06や3DMark05といった、SM2.0/3.0のフィーチャーを多用したベンチマークでは、GeForce 7800 GTX 512を上回り、現時点で最高レベルのGPUにあるといっていい。まして、GeForce 7800 GTX 512の流通量が極めて少なく、プレミアム製品となっている現状を考慮すると、Radeon X1900シリーズの流通量が安定するようであれば、その価値はさらに大きなものと言える。 今回はRadeon X1900 XTのみを評価したが、Radeon X1900 XTXやCrossFire環境という、さらに上の性能を出せる製品も用意されている。これらの結果も後日レポートする予定だ。 □関連記事 (2006年1月25日) [Text by 多和田新也]
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