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【懐パーツ】8台のIDE HDDでハードウェアRAIDが組める「MegaRAID i4」

MegaRAID i4

 LSIロジックの「MegaRAID i4」は、4チャンネルのIDEを持つハードウェアRAIDカードだ。2001年末に発売され、当時の価格は5万円前後と高価だった。

 今のコンシューマ用途においては、ストレージ(SSD)は十分に高速であり、不満を持つことはほとんどない。しかし当時は日進月歩するCPUやメモリの速度に対し、HDDの性能はほとんど向上しなかった。そのため、ストレージにボトルネックを感じていたパワーユーザーは、複数のHDDとRAIDを用いて速度を向上させていた。

 このとき、純粋なRAID 0ではいざHDDが故障したさいのダメージは計り知れないので、スピードも信頼性も重視するRAID 5が重宝されていた。しかし当時、ソフトウェアRAID 5でパリティ演算をCPUにやらせると負荷は無視できないレベルだったため、このようなハードウェアRAIDカードは一定のニーズがあった。

 MegaRAID i4もそんな時代背景から生まれた製品の1つ。当時、一般的なマザーボードのIDEポートといえばプライマリとセカンダリの2つで、それぞれマスター/スレーブの2台、合計4台のIDEデバイスが搭載できた。その一方で本製品は4チャンネルも搭載し、8台のHDDを搭載可能だった。

 いくら遅いHDDと言えども、8台もあれば当時にしては画期的な速度を実現できたのではないだろうか。また、(もったいないが)たとえRAID機能を使わないにしても、120GB HDD 8台で1TBに迫る容量を実現できるのは、なかなか魅力的だとは思う。

4チャンネルのIDEポートを搭載し、最大8台のHDDを接続可能

 本製品の核となるのはIntelのRISCプロセッサ「80960RS」だ。このプロセッサがデータ処理やパリティ演算処理など行なうことで、ホストの負荷軽減を実現している。今となってはIntel=x86のイメージはあるのだが、当時はさまざまなアーキテクチャに意欲的で、80960シリーズはこのような組み込み向けとしては成功していた。

 80960RSにはIDEコントローラが内蔵されていないため、別途Silicon Image製のPCI→Ultra ATA/100コントローラ「SiI0649CL160」を2基積んでいる。

 メモリにはMicronの「48LC8M8A2」(8MB)を3つ搭載している。仕様ではキャッシュは16MBとされているので、このままだと計算が合わないのだが、おそらくRAID処理に関連するプログラムで8MB利用していて、キャッシュとして確保されている容量が16MBといった仕組み、あるいは純粋にパリティ用……なのかもしれない。

 このほか目立つ実装としては、SIMTEKの不揮発性SRAM「STK14C88-N45」、シャープ製フラッシュROM「LH28F800BVHE-BTL90」、Xilinxの高性能CPLD(Complex Programmable Logic Device)「XC9536XL」などがあり、集積度合いはかなり高い。

 MegaRAID i4は単純なPCI接続のIDEカードではなく、HDDデータを処理した上でホストに渡す動作をしているため、それ単体で“ストレージ処理専用のシングルボードコンピュータ”としてみなせる。それゆえ複雑な作りになっているのであり、5万円の価値は十二分にある。

 2001年末といえば、後継となるSATAの規格がすでに発表された時期でもあったのだが、まだIDEが主流で、SATA対応のRAIDカードやホストバスアダプタは先行したものの、実際のHDDの登場はあと1年待つ必要があった。そういった意味で本機はパワーユーザーにとって十分に存在意義があり、IDE最後の華を飾るのにふさわしい製品だったと言える。

カード正面
カード背面
80960RSプロセッサ
Silicon ImageのPCI→Ultra ATA/100コントローラ「SiI0649CL160」を2基搭載している
メモリは3チップで合計24MBあるが、キャッシュとして使えるのは16MB
SIMTEKの不揮発性SRAM「STK14C88-N45」(写真上)、シャープ製フラッシュROM「LH28F800BVHE-BTL90」(写真下)
Xilinxの高性能CPLD「XC9536XL」