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【懐パーツ】波乱のIDE RAIDカード「3ware Escalade 7410」

Escalade 7410

 前回は8台のIDE HDDでRAIDが組めるLSIロジック製カード「MegaRAID i4」を紹介したが、今回はほぼ同時期に登場し、対抗とも言える3wareの「Escalade 7410」を紹介する。

 Escalade 7410もまたハードウェアによるRAID構成が可能なカードで、価格は5万円前後だ。MegaRAID i4は1チャンネルあたり2台のHDD(マスター/スレーブ)接続可能であったが、Escalade 7410は1チャンネルあたり1台までのHDDしか接続できない点が異なる。

 ただ、MegaRAID i4はホストと32bit PCIによる接続であり、最大理論転送速度は133MB/sに制限されていたのに対し、Escalade 7410は64bit PCIに対応しているためバスの理論転送速度は2倍の266MB/s。このためバスによるボトルネックは少なく、高性能を発揮しやすいと言える。

 また、MegaRAID i4はIntelの「80960RS」や、Silicon ImageのPCI→Ultra ATA/100コントローラ「SiI0649CL160」といった汎用部品を採用していたのに対し、Escalade 7410は3wareのロゴが印刷された専用部品を主として搭載している点が大きく異る。チップの配置からして、大きいチップのほうが80960RSの代わりとなるメインコントローラ、小さい方がUltra ATA/100対応のIDEバスコントローラであるのは間違いないだろう。

Escalade 7410カード表面。パーツが整然と並んでいて美しい
カード背面にもコンデンサや抵抗が多数実装されている
メインのコントローラ「200-0017-00」。パリティ演算などを行なっているとみられる
こちらはUltra ATA/100バスコントローラだろう

 ボード上にはICSI製のシンクロナスSRAM「IS61NW6432-5TQ」を2つ搭載している。額面どおりのスペックなら、100MHz駆動で256KB(64K×32bit)のSRAMであり、キャッシュに使われている可能性が高い。もともとこのチップはPentiumやPowerPC用のキャッシュとして設計されたものであるが、このカードが登場した2001年頃にはCPUにL2キャッシュを内蔵したのが当たり前となってしまい、マザーボードに使われなくなってしまった。

 その横のST Microelectronicsの「ST10R172LT6」は16bitの低電圧MCU、ICSIの「IS61LV12816-10T」は128K×16bitのSRAM、Lattice Semiconductorの「GAL16LV8」はプログラマブルロジックデバイス、Atmelの「AT29LV020」はNORフラッシュメモリである。

そのほかのチップ。キャッシュにはDRAMではなくSRAMをあえて採用しているのがユニークだ
IDEは4チャンネルだが、1チャンネルあたり1台までしか接続できない
反対側は空きパターンとなっているが、これは上位のEscalade 7810で実装される

 64bit PCI対応ということで性能面で期待されたEscalade 7000シリーズだが、発売から3カ月で代理店のアスクから急遽リコールが発表される。負荷の高い環境ではデータが喪失する可能性があり、内部バスのCRCエラーによるシステムのハングアップや、ATAケーブルのCRCエラーによるRAID 5アレイの縮退といった現象が確認されたからだ。

 幸いにも(?)、今回入手した7410はファームウェアのアップデートで問題が解消されたが、上位モデルはメーカーによるコンデンサや整流器の交換作業を伴ったので、実環境で導入したユーザーは困っていたことだろう。

 そしてこの10月のリコール発表のさいに、3wareは急遽Escalade 7000シリーズの生産中止を発表し、不採算部門であるRAIDカード事業を中止し、市場からの撤退するとしたが、その2カ月後に新CEO就任と、新たな追加投資の受託を契機にシリーズを再開。取り扱いを中止するとしていたアスクも継続を発表する。

 しかし、取り扱い再開後の7410は価格は、なぜか2万円も高くなっている。PCパーツは、時代とともに値下がりするのが世の常なのだが、そういうところも含めて、本製品は波乱を経験しているカードだと言える。