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138億年で誤差0.1秒以下。MIT、世界最高精度の原子時計。暗黒物質などの解明に利用

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)は16日(現地時間)、新たな仕組みを利用した世界最高精度の原子時計を開発したと発表した。

 世界でもっとも高精度な時計は原子が放つ電磁波の振動を測定することで時間を測る原子時計だ。このような原子時計は、宇宙のいまの年齢である約138億年が経過しても0.5秒しか狂わないという。しかし、この精度を持ってしても物理学における謎の解明には不十分で、MITが今回開発したものは約138億年で誤差0.1秒以下というもの。2015年東大と理研が開発した当時最高精度の原子時計は、誤差が160億年で1秒だったので、10倍近い向上となる。

 従来の原子時計は、雲のようにぼんやりと広がり、ランダムに振動する原子を利用していた。これに対して、MITの新原子時計は、原子の「もつれ」を利用する。量子力学における「もつれ」とは、もつれた状態にした2つの粒子について、2つがたとえば宇宙の端と端に離れていても、片方を計測するだけで、その瞬間にもう片方の状態が決定するというもの。その仕組み自体は謎だが、粒子のもつれは実験においてその存在が確かめられている。

 不確定性原理により、原子のような小さな粒子は、位置を正確に計測すればするほど、運動量の計測が不正確となる。そのため、従来の原子時計はガス状に散らばった多数の原子を利用するが、それでも不確定性原理の不確定さの影響からは逃れられない。

 しかし、ここでもつれた状態にある原子を利用することで、精度を保ちつつ、計測時間を4倍以上短縮できることが実験でわかった。従来の原子時計の技術を使いつつ、このもつれた原子の特性を利用することで、原子時計の精度を高められる。

 このような高精度な原子時計を使うことで、重力の変化というひじょうに小さな力をより高精度に計測可能になり、暗黒物質や重力波などの解明に役立てられるとしている。