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東芝エネルギーシステムズら、再エネ利用で世界最大級の水素製造研究施設を福島に建設
2020年3月9日 19:23
東芝エネルギーシステムズは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、東北電力、岩谷産業との協業で、再生可能エネルギーを利用し、世界最大級となる10MWの水素製造装置を備えた、福島県浪江町の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field、通称:FH2R)」が2月末に完成し、稼働を開始したと発表した。
水素は電力を大量に長期で貯蔵することができ、長距離輸送が可能であり、燃料電池によるコジェネレーション(熱電併給)や、燃料電池車など、さまざまな用途に利用できる。また、将来的な展望として、再生可能エネルギー由来の水素を活用し、製造から利用にいたるまで一貫して二酸化炭素(CO2)フリーの水素供給システムの確立が望まれている。
政府が2017年12月に公表した「水素基本戦略」では、再生可能エネルギーの導入拡大や出力制御量の増加に伴い、大規模で長期間の貯蔵を可能とする水素を用いたエネルギー貯蔵・利用が必要とされている。この水素を用いたエネルギー貯蔵や利用には、出力変動の大きい再生可能エネルギーを最大限活用するための電力系統需給バランス調整機能(ディマンドリスポンス)だけでなく、水素需給予測に基づいたシステムの最適運用機能の確立が必要となるという。
このような背景を受け、東芝エネルギーシステムズら4社は、再生可能エネルギーの導入拡大を見据え、ディマンドリスポンスとしての水素活用事業モデルと水素販売事業モデルの確立を目指した技術開発事業に取り組んでおり、その一環として、福島県浪江町の同施設を建設、稼働するにいたったという。
FH2Rでは、18万平方mの敷地内に設置した20MWの太陽光発電の電力を用いて、世界最大級となる10MWの水素製造装置で水の電気分解を行ない、毎時1,200Nm3(ノルマルリューベは、0℃、1気圧における乾燥状態の気体の体積を表す単位)の水素を製造し、貯蔵、供給するという。
同施設では、電力系統に対する需給調整を行なうことで、蓄電池を使わず出力変動の大きい再生可能エネルギーの電力を最大限利用するとともに、クリーンで低コストな水素製造技術の確立を目指すとしている。
水素の製造・貯蔵は、水素需要予測システムによる市場の水素需要予測に基づいて行ない、電力系統側制御システムによる電力系統の調整ニーズにあわせて、水素製造量を調節することにより、電力系統の需給バランス調整を行なう。
今回の実証運用の最大の課題は、水素の製造、貯蔵と電力系統の需給バランス調整の最適な組み合わせを蓄電池を用いることなく、水素エネルギー運用システムにより実現することだといい、今後の実証運用のさいに、それぞれ運転周期の異なる装置で、電力系統のディマンドリスポンス対応と水素需給対応を組み合わせた最適な運転制御技術を検証する予定としている。
なお、同施設で製造した水素は、定置型燃料電池向けの発電用途、燃料電池車や燃料電池バス向けのモビリティ用途などに使われる予定で、おもに圧縮水素トレーラーやカードルを使って輸送し、福島県や東京都などの需要先へ供給する予定。