東京ゲームショウ2012レポート
~ソニーの最新HMDやキャプチャカードなどの周辺機器が展示

9月20日~9月23日 開催(20日、21日はビジネスデー)
会場:幕張メッセ1~8ホール
入場料:前売り1,000円、当日1,200円、小学生以下無料



 社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)主催の、国内最大のゲームイベント「東京ゲームショウ2012」が、幕張メッセで開幕した。会期は9月20日から23日までの4日間で、20日と21日がビジネスデー、22日と23日が一般公開日となっている。

 今年は、Xbox 360のプラットフォームホルダーである日本マイクロソフトが参加を見送るとともに、大手メーカーのブースもコンパクトにまとめられるなど、例年に比べやや華やかさに欠ける印象がある。また、携帯電話やスマートフォンなど、携帯端末向けソーシャルゲームの展示スペースが、昨年(2011年)以上に拡大しており、ここ数年のゲーム業界の勢力図を如実に反映しているように感じる。

 とはいえ、各ベンダーが発売を予定している家庭用ゲーム機向けの注目タイトルにはビジネスデー初日から行列ができている。また、任天堂が今冬発売を予定している最新家庭用ゲーム機「Wii U」の試遊機を展示しているメーカーもあり、最新ゲームをいち早く楽しめるという東京ゲームショウの魅力は変わっていない。それらゲーム関連の記事は、僚誌GAME Watchをご覧いただくとして、本稿では会場に展示されていたPC関連のトピックをお伝えする。

●SCEブースで最新HMD「MHZ-T2」を展示

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)ブースは、参加メーカーの中でも最大級の規模のブースを構え、今秋以降発売予定の最新ゲームの試遊機を多数用意している。また、19日に発表された、PlayStation 3(PS3)の新モデル「CECH-4000」シリーズや、PlayStation Vitaの新色も展示されている。その中で注目したいのは、最新のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用した試遊コーナーだ。

 このHMDは、先月末にドイツで開催された家電系展示会「IFA 2012」において発表された、「HMZ-T2」だ。昨年発売された「HMZ-T1」の後継モデルで、従来同様1,280×720ドットの有機ELパネルを2枚搭載し、20m先の750型相当のスクリーンを見ているかのような感覚で映像を楽しめる。もちろん、3D表示にも対応。従来モデルで一体型となっていたヘッドフォンを分離することで、手持ちのヘッドフォンの利用が可能となっている。これによって、従来の約420gから約330gへと軽量化を実現。また、ヘッドバンドの形状を改善するなどして、装着性も高められている。HMZ-T2が国内で実際に触れられる形で展示されるのはこれが初だ。

 SCEブースでは、PS3用最新タイトルのうち8タイトルで、HMZ-T2を利用した試遊デモが行なわれている。試遊ゲームが3D表示に対応していないため、3D映像は体験できないが、HMZ-T2でどのように映像が見えるのか実際に体験できる。実際に筆者も体験してみたが、解像度はフルHDではないものの、実際に見た感覚では十分に緻密な映像と感じる。また、外の視界がほぼ遮られるため、映像に没頭できる点も大きな魅力。コントローラを持つ手も見えなくなるため、ゲームをプレイするには少々不向きという感じもするが、1人でゲームに没頭したい時などには貴重なアイテムとなるだろう。

 HMZ-T2の日本での発売は10月13日を予定。価格はオープンプライスで、市場想定価格は70,000円前後。

 また、SCEブースとは異なる場所で、HMZ-T2をベースとした限定仕様のHMD「PROTOTYPE-SR」を利用した、「没入快感研究所」と名付けられた特別展示も行なわれている。独立行政法人理化学研究所藤井チームが開発した実験装置で、HMZ-T2にジャイロセンサーとカメラを取り付け、カメラで撮影しているライブ映像と、同じ場所で撮影された360度全方位の過去映像とを切り替えつつ表示することで、現実と映像世界との区別がつかなくなり、映画や音楽の世界が実際に目の前で現実として起こっているかのような錯覚を覚える、という体験が行なえる。

 こちらは、完全事前登録制となっており、すでに登録の募集も9月13日で終了しているため、誰でも体験できるというものではないが、どういった体験が行なえるのか、またPROTOTYPE-SRがどういった構造となっているのか、といった説明は聞けるので、興味のある人はブースに足を運んでみてもらいたい。

ソニーの最新ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T2」。SCEブースでは、一部のタイトルでHMZ-T2を利用した試遊が可能従来モデルのHMZ-T1からヘッドフォンが分離され、軽量化を実現。ヘッドバンドは形状が見なおされ、装着性も向上。ヘッドフォンは付属のものだけでなく、手持ちのものも利用できるディスプレイは、従来同様1,280×720ドットの有機ELパネルを2枚搭載
HMZ-T2を装着している様子。これに、ヘッドフォンを組み合わせて利用することになるSCEブースでは、全8タイトルがHMZ-T2を利用して試遊可能となっている別ブースとなっている、没入快感研究所ブース。体験事前登録は終了しているが、概要などは説明してもらえる
限定仕様のHMD「PROTOTYPE-SR」。HMZ-T2をベースに、前方にカメラとジャイロセンサーを搭載。東京ゲームショウのみの参考展示で、他の展示会での展示や商業化の予定はないデモはこのような室内で行なわれる。この中で、事前に撮影された映像と現実の映像を切り替えつつ、仮想現実のような世界を体験できる
SCEブースでは、9月19日に発表された新型PS3「CECH-4000」シリーズも展示しているこちらは、PlayStation Vitaの新色モデル。「コズミック・レッド」と「サファイア・ブルー」

●Razerブースで日本未発売のPCを展示

 ゲームコントローラやゲーミングキーボード、マウスなどの周辺機器メーカーであるRazerブースでは、日本未発売のPCが展示されている。

 このPCは、昨年海外で発表された「Razer Blade」で、CPUにCore i7-2640M、外部GPUにGeForce GT 555Mを搭載するゲーミングノートだ。Razer Bladeの最大の特徴となるのは、キーボード右に配置される「Switchblade UI」。機能的にはタッチパッドだが、パッド面が液晶画面となっており、テンキーを表示してテンキーとして利用したり、ゲームのメニュー画面を表示させるなどの利用が可能。もちろん、マクロ機能の登録なども行なえる。キーボードバックライトはコーポレートカラーのグリーンで、なかなか鮮やかだ。

 海外では既に発売済みではあるものの、日本での販売予定はないそうだ。ゲーミングPCとしての完成度は高いため、英語モデルのままでもいいので日本でも発売してもらいたいところだ。

 このほかには、昨年も展示されていた、Razerアーケードスティックも展示されている。こちらは、昨年展示されていた試作モデルを発展させたもので、最終ベータ版に近いものだそうだ。PCおよびXbox 360に対応する。ユーザーがボタンやスティックの交換や改造を行なうことを前提とした構造という点は変わっておらず、トップカバーを開くことで簡単に内部にアクセスできるようになっている。ただ、内部の底面に新たに多数のネジ穴が用意されており、改造がやりやすくなっている。発売時期はまだ未定だそうだが、できれば年内に発売したいとしている。

RazerオリジナルのゲーミングPC「Razer Blade」。ゲームデバイスメーカーらしいオリジナル機能満載のゲーミングノート。日本での発売予定はないタッチスクリーン搭載の小型液晶「Switchblade UI」をキーボード右に搭載。タッチパッドとして利用したり、テンキーやマクロキー、ゲーム画面表示などに活用できる専用ユーティリティで、マクロをはじめさまざまなカスタマイズが可能
昨年も展示されていたアーケードスティックのベータモデル。昨年のプロトタイプから仕様面がブラッシュアップされており、年内にも発売したいとしているトップを大きく開いて内部を自由にカスタマイズ可能内部の底面には多くのネジ穴が用意され、カスタマイズしやすくなっている

●H.264ハードウェアエンコーダ搭載のキャプチャカード

 AverMediaブースでは、外部入力映像だけでなく、PCのデスクトップ画面やプレイ中のゲームの映像をキャプチャし、ライブ配信できる専用ソフトを付属したキャプチャカードの新モデルを展示している。

 「AVT-C985」は、H.264ハードウェアエンコーダを搭載したPCI Express x1接続のキャプチャカードだ。ハードウェアエンコーダ搭載により、CPU負荷をかけることなく、デスクトップやゲーム映像のリアルタイムキャプチャとライブ配信が行なえる点が特徴。AverMediaが独自開発したキャプチャソフト「RECentral」が付属しており、PCゲームのプレイ画面のキャプチャやライブ配信が手軽に行なえる。専用の録画ボタンが付属し、ボタンを押すだけで簡単にキャプチャできるように工夫されている点も魅力だ。ライブ配信は、Ustream、Twitch TV、own 3Dに対応し、ニコニコ動画は今後のバージョンアップで対応するとしている。ちなみに、カードにはHDMI入力端子も用意されているが、HDCP非対応のため、プレイステーション3などのゲーム機を接続してもキャプチャは行なえない。こちらは、Amazonで販売が開始されており、販売価格は19,980円だそうだ(注:20日16時の時点で既に売り切れているようで、Amazonでの販売は確認できなかった)。また、ゲームショウの物販コーナーでも販売されている。

 「AVT-C127」は、ハードウェアエンコーダは搭載せず、ソフトウェアエンコーダを利用するPCI Express x1接続のキャプチャカードだ。こちらは、外部入力としてHDMIに加えてアナログRGB(ミニD-Sub15ピン)を備え、変換ケーブルを利用してコンポーネント入力が可能となっている。これによって、家庭用ゲーム機の映像もキャプチャ可能としている。AVT-C985同様、オリジナルのキャプチャソフトRECentralが付属するため、キャプチャやライブ配信も手軽に行なえる。こちらは年内の発売を予定しており、価格は未定だ。

AverMediaのH.264ハードウェアエンコーダ搭載キャプチャカード「AVT-C985」。9月20日より販売開始で、価格は19,980円背面にはHDMI入力端子もあるが、HDCP非対応のため、PS3などの映像はキャプチャできない。PCでプレイ中のゲーム映像などをキャプチャするのがメインの用途となる
カードには専用の録画ボタンが付属。専用ソフトを利用すれば、このボタンを押すだけでキャプチャが行なえる付属のオリジナルキャプチャソフト「RECentral」を利用すれば、キャプチャからライブ配信まで一貫して行なえる
こちらは、ソフトウェアエンコーダ利用のキャプチャカード「AVT-C127」。年内の発売を予定アナログRGB入力にはコンポーネント信号も入力でき(変換ケーブル付属)、PS3等の映像もキャプチャできるとしている

●JINS PCの自販機を展示、実際に購入も可能

 液晶ディスプレイなどから発せられるブルーライトをカットすることで、PC利用時など液晶画面を長時間見る場合の目の疲れを軽減する、いわゆるPC用めがね。そのPC用めがねの1ブランドである「JINS PC」を販売している株式会社ジェイアイエヌが、東京ゲームショウに初出展している。JINS PCは、その名前からもわかるように、メインターゲットはPCユーザーではあるが、液晶テレビや携帯ゲーム機でゲームを楽しむ場合でも、ブルーライトをカットして目の疲れを軽減できるため、ゲームユーザーにも大きなメリットがある。そのため、今後はPCユーザーだけでなく、ゲームユーザーをはじめ、多くのユーザーに訴求していきたいということで、今回の出展となったそうだ。

 ブースと言っても、実際にJINS PCを展示して試せるコーナーが用意されているわけではなく、JINS PCを販売する自動販売機を持ち込んで設置するという、ブースと呼ぶには少々殺風景な雰囲気となっている。ただ、この自販機は単に展示しているだけではなく、実際に購入可能。クレジットカード決済のみとなるようだが、来場者が実際にその場で購入できるため、通常のブースというより、物販ブースに近いと言っていいだろう。

 実際には、JINS PCがどういった効果があるのか、来場者が体験できるほうがよかったように思う。それでも、展示形式に関しては手探りの状態で、これから柔軟に変更していく可能性もあるそうなので、一般公開日には購入できるだけでなく、JINS PC自体を体験できるようになっているかもしれない。そのため、ある意味目の離せないブースと言えそうだ。

JINS PCブース。JINS PCの自動販売機が置かれているだけで、ブースと言うより物販コーナーといった雰囲気。JINS PCを試すことはできなかったが、実際に購入できる自販機だけでなく、マスコットキャラ(?)に扮したコンパニオンも常駐。残念ながら、JINS PCはかけていなかった

(2012年 9月 21日)

[Reported by 平澤 寿康]