社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)主催の、国内最大のゲームイベント「東京ゲームショウ 2011」が15日、幕張メッセで開幕した。会期は9月15日から18日までの4日間で、15日と16日がビジネスデー、17日と18日が一般公開日となっている。
今回は、ソニー・コンピュータエンターテインメントの「PlayStation Vita」が国内初お披露目となったことで、久々に新ハードへの注目が集まっている。また、携帯電話やスマートフォンで市場を拡大しているソーシャルゲームの展示スペースが大きく拡大している点も、これまでにはない特徴となっている。それらゲーム関連の記事は、僚誌GAME Watchをご覧いただくとして、本稿では会場に展示されていたPC関連のトピックをお伝えしよう。
●LG、初の裸眼立体視対応液晶ディスプレイを展示LGエレクトロニクスは、東京ゲームショウの開場で3D立体視対応の液晶TVやPC向け液晶ディスプレイを多数展示。その中で、今回初めて披露されたのが、LG初の裸眼立体視対応20型液晶ディスプレイ「D2000N-PN」だ。
立体視の方式は視差バリア方式を採用。また、液晶上部中央に配置された「ヘッドトラッキングカメラ」と呼ばれるカメラを利用し、視聴者の顔の位置を認識してリアルタイムに追跡、常に視聴者の位置から最適に立体視が可能になるよう視差バリアを調節する機能が盛り込まれている。実際に見る位置を移動しながら映像を見てみたが、確かにどの位置からも常に正常な立体視が可能であった。また、視差バリア方式のため、立体視表示をオフにすると、液晶パネルの解像度をフルに活かした2D液晶ディスプレイとしても活用できる。
液晶パネルの方式はTN方式で、表示解像度は1,600×900ドット。映像入力はDVI-DとHDMIの2系統のみ。ただし、HDMIは1.4をサポートしておらず、PlayStation 3などのゲーム機や3D対応映像機器などを接続しても立体視は行なえない。立体視が行なえるのはPC接続時で、付属ソフトの「TriDef 3D」を利用した場合のみとなっている。DirectX 9以上のゲームなどで立体視が可能なので、PCで利用する場合の応用範囲は広いと考えて良さそうだ。発売時期は、2011年10月上旬で、価格はオープンプライス。市場予想価格は128,000円ほどになるそうだ。
また、偏光方式の3D立体視対応製品にも新モデルが展示されていた。そちらは、23型の「D237IPS-PN」だ。従来の3D立体視対応のLG製液晶ディスプレイは液晶パネルとしてTN方式を採用していたが、D237IPS-PNは型番からもわかるように、IPS方式の液晶パネルを採用している点が最大の特徴。これにより、発色性能やコントラスト性能が大きく向上するのはもちろん、視野角も大幅に広くなっており、鮮やかな映像で3D立体視が楽しめるようになっている。
実際にTN方式のパネルを採用する従来モデルも並べて展示されているため、表示品質の違いがよくわかる。パネル以外の仕様は、従来モデルとなるD2342P-PNと同等で、液晶サイズは23型ワイドで表示解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)。入力端子はDVI-D、HDMI、ミニD-Sub15ピンを備える。発売時期は、D2000N-PNとほぼ同じ2011年10月上旬頃で、価格はオープンプライス、市場予想価格は32,800円ほどを予定。従来モデルのD2342P-PNの上位モデルとして位置付けられており、従来モデルも併売となるそうだ。
視差バリア方式の3D裸眼立体視に対応した20型液晶ディスプレイ「D2000N-PN」 | 液晶上部の「ヘッドトラッキングカメラ」で視聴者の顔の位置を検出、常に最適の立体視が可能なようリアルタイムで視差バリアを調節する機能を備える | 視差バリア方式のため、2D表示に切り替えるとパネルの表示解像度をフルに活用した2D表示が可能となる |
映像入力はDVI-DとHDMIの2系統を用意。HDMIは1.4に対応せず、PCを接続し付属ソフトの「TriDef 3D」を利用した場合のみ3D立体視が可能となる | こちらは、IPS液晶パネルを採用した、偏光方式の3D立体視対応23型液晶ディスプレイ「D237IPS-PN」。TNパネル採用のD2342P-PN」の上位モデルとして位置付けられており、2011年10月上旬発売予定だ |
●秋葉原で話題となった“油没PC”を展示
今年夏に、秋葉原のPCショップで展示されて話題となった“油没PC”が、東京ゲームショウで展示されている。油没PCは正式名称ではなく、僚誌AKIBA PC Hotline!の記事でつけられたものだが、今回の展示では、その油没PCという名称を利用して展示されている。ちなみに正式な製品名は「水冷ワークステーションシリーズ」で、米HARDCORE Computer社の完全浸漬テクノロジーを用いた専用ケースを採用したシステム。日本での販売は、HPCテックが行なう。
このシステムは、ケース内を冷却液で満たし、マザーボードやCPU、メインメモリ、ビデオカード、SSD、電源など全パーツを冷却液に浸すとともに、側面の巨大なラジエータを利用して熱交換を行ないつつ、内蔵パーツ全てを一括で冷却するというもの。空冷に比べ1,000倍を超える冷却効率を誇るとしており、これにより搭載パーツの信頼性や寿命も向上するとしている。実際にHARDCORE Computerでは、このシステムを利用することで、通常保証されることのないオーバークロック動作を保証しているそうだ。
ブースでは実際にベンチマークテストなどを実行しながら、CPUやGPUの温度変化を見せるデモを行なっており、ベンチマークテスト実行時に70度近くまで高まったGPUの温度が、ベンチマークテストを終了させると同時に、空冷ではまず不可能なほど急速に、一気に温度が低下する様子が確認できる。
このシステムは、自作向けではなく、搭載パーツを含めたシステムとして販売される。また、ケース内部を冷却液で満たすという構造上、ユーザーによるパーツの増設や交換も不可能とされており、トラブル時にはセンドバック対応となるそうだ。さらに、本体重量が約70kgに達するために、配送や設置にも別途料金が必要になるとしている。
非常に強力な冷却能力に加えて、優れた信頼性が実現されていることで、業務用のワークステーションとして活用するだけでなく、ゲーミングPC用途としても最適と思われる。そのため、今回あえて東京ゲームショウでの展示を行ったそうだ。価格は50~60万円ほどと高価なため、ゲーミングPCとして購入するのは難しいかもしれないが、そのシステムを見るだけでも十分に価値があるので、興味のある人は足を運んでみてもらいたい。
本体上部には、オーディオ出力の端子が並ぶ | 底面には青色LEDが内蔵され、イルミネーションとしてだけでなく、HDDアクセスランプとしても動作するようになっている | 高負荷時に高まったCPUやGPUの温度が、空冷では考えられないほどの急角度で低下していることがわかる |
●Razer、ジョイスティックやヘッドフォンの新モデルを展示
ゲーミングキーボードやマウスのブランドとしておなじみのRazerブースでは、ゲーミングデバイスの新モデルが展示されていた。その中で注目なのは、東京ゲームショウに合わせて発表されたジョイスティックの試作モデルだ。スティック型のコントローラと上部に8個、側面に2個の計10個のボタンが配置された、いわゆるアーケードスティックに属する製品。PCおよびXbox 360に対応する。
このジョイスティックは、ユーザーがボタンやスティックの交換や改造を行なうことを前提として開発されており、本体を開いて内部にアクセスしやすい構造となっている。また、通常ユーザーがボタンなどを交換することはメーカー保証外の行為となることが多いが、この製品ではユーザーがボタンなどを交換することも保証の範囲内とし、自分に合ったボタンやスティックへの交換が自由に行えることを特徴としている。しかも内部には、交換用のボタンを収納するスペースや、交換時に利用するドライバーまで収納されている。底面は、全面がラバー構造となっており、デスクに置いて利用する場合には滑りにくく、膝に置いて利用する場合でも安定性に優れるとしている。
今回公開されたものはあくまでも試作モデルで、今後世界で500人程度のベータテスターにこの試作モデルを配布し、ベータテスターの意見を集約して改良を加えた上で、最終的な仕様を確定し、製品として販売されることになる。販売時期は、2012年の春頃をターゲットとしているそうで、価格は未定だそうだ。
また、近々日本で販売が開始される製品として、ゲーミングヘッドセットの「ELECTRA」が展示されていた。こちらは、密閉型ヘッドフォンタイプのヘッドセットで、マイクはケーブル部に配置されている。また、ケーブルはヘッドフォン側でも着脱式となっており、マイク付きのケーブルを音声ケーブルに差し替え、ヘッドフォンとしても利用できる構造となっている。イヤークッション部は遮音性に優れ、外部の騒音に気にすることなくゲームに没頭できるとしている。海外では59.99ドルで販売されることになっており、日本では5,980円前後の価格で販売を予定。発売時期は年内を予定しているそうだ。
年内に日本での発売が予定されている、ゲーミングヘッドセット「ELECTRA」 | ヘッドフォンは遮音性に優れる密閉式で、騒音の大きな環境でも外部の音がシャットアウトされゲームに没頭できる | マイク付きのケーブルや着脱式で、音声ケーブルに交換してヘッドフォンとしても利用できる |
●ユニットコム、TERA推奨PCの新モデルを展示
今回の東京ゲームショウでは、PCゲームは「ゲームPC&ネットワークゲームコーナー」に集められている。そのPCゲームの中で、今年最も注目されているのが、8月に正式サービスが開始となったNHN JapanのMMORPG「TERA」だろう。大作MMORPGとして注目を集めているだけでなく、「フリーターゲティングバトル」という独特なゲームシステムも話題となっている。もちろん、ゲームPC&ネットワークゲームコーナーにもTERAはプレイアブル展示されているが、そのプレイアブル展示用のPCは、パソコン工房やFaith、TWOTOPなどのパソコンショップを運営しているユニットコムが提供している。そして、その中に、TERA推奨PCの新モデルが含まれていた。
その新モデルは、Faithで販売される「PASSANT X61090TXR/DVR-TERA」と、ツートップで販売される「ViP G-Spec X61090A97/HD6770-TERA」の2機種。双方とも、東京ゲームショウ開催に合わせて用意された新モデルだそうで、15日より各ショップで購入可能となっている。
スペックは、双方ともCPUがAMD PhenomII X6 1090T(3.2GHz)、AMD 970搭載マザーボード、メインメモリがPC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB、ビデオカードがSapphire製Radeon HD 6770、1HB HDDなどとなっており、ほぼ同等。採用するケースなどに違いがあるため、販売価格はFaithのPASSANT X61090TXR/DVR-TERAが79,800円、TWOTOPのViP G-Spec X61090A97/HD6770-TERAが82,800円となっている。もちろん、双方ともTERAインストールDVDメディアや、ゲーム内で利用できる特典アイテムコードが付属している。
今回用意された新機種は、どちらかというとMMORPGのエントリーユーザーをターゲットとしているそうで、スペックはやや控え気味だが、その分安価となっている。とはいえ、TERA推奨PCなので、TERAを快適にプレイできるのは間違いない。実際にTERAが試遊できる状態で展示されているので、興味のある人は実際にどの程度のパフォーマンスでプレイできるのか、試してみるといいだろう。
また、TERAの試遊コーナーには、フルHDの液晶ディスプレイを6枚並べた、6画面マルチディスプレイ環境での試遊機も展示されている。この環境を実現しているシステムは、CPUがAMD Phenom II X6 1100T、マザーボードがASUS SABERTOOTH 990FX、メインメモリがPC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB、ビデオカードが6画面出力対応のPowerColor AX6870 2GBD5-6DGなどとなっている。こちらは、実際に販売されているモデルではないものの、フルHDの液晶ディスプレイ6枚を並べたプレイ環境は非常に迫力がある。この展示機でも、もちろんTERAの試遊が可能なので、ゲームPC&ネットワークゲームコーナーに足を運んだら要チェックだ。
(2011年 9月 16日)
[Reported by 平澤 寿康]