【CeBIT 2010レポート】【第2世代ION編】
新型Atom対応の第2世代IONを搭載した製品が多数展示
~ネットブックやPCI Expressビデオカードも

NVIDIAの第2世代ION。単体型GPUとなる

会期:3月2日~3月6日(現地時間)
会場:ドイツ共和国 ハノーバー市 ハノーバーメッセ



 NVIDIAはIntelのPine Trailプラットフォーム(新型Atom)に対応した新しいIONを発表した。新しいIONはチップセットではなく単体型グラフィックスとなる。Pine TrailプラットフォームのサウスブリッジチップとなるNM10とPCI Express x1で接続されることになる。CeBIT会場には、新しいIONを搭載した製品が多数登場しており、各社とも第2四半期あたりをターゲットに出荷を開始したい意向だ。

●従来と同じIONのブランドを利用、SKUの製品モデル名もなし

 新しいIONは、これまで次世代IONとかION2などで呼ばれてきたが、発表された新製品のブランドは従来通り「ION」で変更はない。かつ、GeForceで言えば、GT 240などといったモデル名も用意されておらず、ただIONと表示されている(以下、本記事では第2世代IONと称する)。

 これに関してNVIDIA ION担当プロダクトマネージャ Mark Aevermann氏は「GeForceはターゲットとしているユーザーがどちらかといえばテクノロジーに造詣が深いユーザーであり、モデル名を見ることで性能差をすぐ理解できるようにモデル名をつけている。これに対してIONはそうしたテクノロジーには興味がないリアルコンシューマユーザーであり、そうしたユーザーにとってはモデル名があるほうがわかりにくいと判断した」と述べた。

 このため、そもそも最初の世代のIONか、2世代目のIONであるかは、プラットフォームがDiamondvilleベースなのか、Pine Trailベースで判断する必要がある。リアルコンシューマだからこそ、簡単に判断できるようにION2などと称したほうがよかったと思う。

 なお、第2世代IONでは、開発コードネーム「GT218」で知られるGeForce GT 210Mなどに採用されているチップが利用される。ストリームプロセッサ(SP)とNVIDIAが呼ぶ内部演算器の数は16と8という2つのSKUが用意されている。もちろん性能は16のSKUが優れているのだが、8のSKUは熱設計消費電力が低いというメリットがある。このため、SP16個のSKUは12型のネットブック向けとネットトップ向けとなり、SP8個のSKUは10型のネットブック向けという扱いになる。なお、熱設計消費電力は未発表だが、OEMメーカー筋の情報によればSP16のSKUは十数W程度になるという。

 ビデオメモリは最大で512MB搭載することができるが、容量はOEMメーカーの選択による。ビデオメモリ幅は64bit幅ないしは32bit幅となり、自由に選ぶことができる。

●第2世代IONを搭載したビデオカードがCeBITで多数展示

 CeBITで展示された第2世代IONを搭載した製品は、ノートPCとネットトップ、およびPCI Express x1のフォームファクターを利用したビデオカードの3種類となる。

第2世代ION搭載ネットブック。ASUSの「Eee PC HD 1201N」第2世代IONを搭載したベアボーン。ZOTACの「ZBOX HD-ID11」「ZBOX HD-ID11」の内部構造
ZOTACのIONビデオカード。一応Atom D510やN450などを搭載したシステム用と説明されたが、ほかの環境で使えない理由はなさそうだ。これが汎用で利用できると、デスクトップPC環境でスイッチャブルグラフィックスが利用できることになるのだがZOTACのIONビデオカードの出力、DVIとHDMIがサポートされているBIOSTARのPCI Express x1ビデオカード。こちらはGeForce GT 210になるので、Optimusは利用できない

 ASUSTeK Computerが展示したのは、12.1型LEDバックライト液晶を採用したネットブック「EeePC HD 1201PN」。CPUはAtom N450、メモリ1GB、160GBのHDD、無線はIEEE 802.11nとBluetooth 2.1+EDRというスペックになっている。

 初代IONのマザーボードを初期から発表していたZOTACも、第2世代IONにも積極的に取り組んでいる。第2世代IONを搭載したネットブックを展示したほか、ユニークなPCI Express x1のビデオカードもあわせて展示していた。これは、第2世代IONをそのままビデオカードにしたもので、帯域幅がx1に制限されてしまうが、性能をあまり重視しない用途、例えば複数ディスプレイへの出力などの用途には十分な製品といえる。ネットブック「ZBOX HD-ID11」は、メモリがDDR2のSO-DIMMで、CPUはAtom D510。ビデオ出力はDVIとHDMIを備えている。

 なお、BIOSTARにもIONと同じGT218コアのGPUを搭載したPCI Express x1のビデオカードが展示されていた。ただし、こちらはブランドがGeForce GT 210となっている。厳密に言えばIONではないが、事実上同じものと言ってよい。

JETWAYのMINI-TOP、CPUはAtom D510で、DDR2のSO-DIMMを2スロット搭載。JETWAYのNC98-LFは第2世代ION搭載Mini-ITXマザーボード

 JetwayはMINI-TOPと呼ばれるベアボーンとMini-ITXマザーボードを展示していた。ベアボーンのMINI-TOPは、CPUはAtom D510で、第2世代IONを搭載したネットトップ。メモリはDDR2のSO-DIMMを2スロット搭載しており、SATAのストレージを入れてPCとして利用することが可能になっている。電源は60WのACアダプタで、液晶TVなどと組み合わせて利用することを想定しているという。

●Pine Trailベースの製品に比べて60~100ドル増し

 各ベンダともに価格に関しては現時点では未定というところが多く、明らかにはなっていない。しかし、OEMメーカーの関係者に一通り聞いてみると、市場の小売り価格(リテール価格)では、第2世代IONなしの場合と比較して60~100ドル程度は上がってしまうと説明するところがほとんどだった。そうした意味では、最大で約1万円というコストアップをどのように考えるかはユーザーの受け取り方によるだろう。

 なお、GT218のチップそのものに関してはすでに出荷されている。あとはOEMメーカーの準備が整えば出荷することは可能だという。OEMメーカーの中には早いところでは第2四半期の出荷を目指していると説明しているところもあり、まもなく市場で手に入れることができそうだ。

(2010年 3月 3日)

[Reported by 笠原 一輝]