【CES 2010】【AMD編】初のノート用DX11対応GPU「Mobility Radeon HD 5000」発表

Mobility Radeon HD 5000

会期:1月7日~10日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
   Sands Expo and Convention Center/The Venetian



 AMDは、1月7日(現地時間)にノートPC向けのGPUとしては、初めてDirect3D 11(いわゆるDirectX 11)に対応したGPUである「ATI Mobility Radeon HD 5000」シリーズを発表した。

 開発コードネーム「Manhattan」と呼ばれてきたこの製品は、5800シリーズ、5700シリーズ、5600シリーズ、5400シリーズの4つのシリーズで10個のSKUが用意されており、OEMメーカーは消費電力や性能などと相談して最適なSKUを選ぶことが可能になっている。

 なかでも最上位のSKUとなるMobility Radeon HD 5870は1.12TFLOPSを実現しており、ノートPCでも1TFLOPSオーバーの性能を持つGPUが内蔵される時代がやってきた。

●デスクトップPCの選別版となるMobility Radeon HD 5000シリーズ

 今回発表されたMobility Radeon HD 5000シリーズは、5000番台全体として「Manhattan」という開発コードネームで呼ばれてきた製品で、TSMCの40nmプロセスルールを利用して製造される。

 今回用意されているシリーズとSKUは表のようになる

Mobility Radeon HD 5000シリーズ(AMDの資料を基に筆者作成)
シリーズ名称HD 5800シリーズHD 5700シリーズHD 5600シリーズHD 5400シリーズ
SKU5870-56705470
5850575056505450
58305730-5430
コアJuniperRedwoodRedwoodCeader
FLOPS1.2TFLOPS572GFLOPS未公表120GFLOPS
シェーダープロセッサ80040040080
メモリバス幅128bit128bit128bit64bit
メモリGDDR5/GDDR3/DDR3
メモリクロック(最大)4GHz3.2GHz未公表3.2GHz
Eyefinityの対応ディスプレイ数最大6台最大6台最大6台最大4台
HDMI 1.3a対応対応対応対応対応

 デスクトップPC向けのRadeon HD 5000シリーズは、Cypress(5800シリーズ)、Juniper(5700シリーズ)、Redwood/Cedar(未発表)の各製品が用意されているが、Mobility Radeon HD 5000シリーズでは最上位のMobility Radeon HD 5800シリーズがJuniperベース、HD 5700/5600がRedwoodベース、5400がCedarベースとなっており、1つずつずれた形になっている。これは「モバイル向けに設定するにあたり、消費電力などを勘案した結果モバイル向けではJuniperが最上位のSKUとなっている」(AMD モバイルグラフィックス製品事業部 製品マーケティングマネージャ Asif Rehmen氏)と説明されている。従来のシリーズと同じ方策だ。

 各製品シリーズには、下2桁に70、50、30がつくSKUが用意されている。「各シリーズのSKUの違いは熱設計消費電力やコアクロックの違いになる。OEMメーカーは自分の製品に必要な消費電力や性能を勘案してSKUを決定することになる」(同)。

 なお、モバイル向けの特徴としては、省電力機能への対応があげられるが、「従来製品に比べるとスイッチャブルグラフィックスの切り替えが速くなったり、メモリのクロックゲーティングやスケーリングがより高度になったりというあたりが強化されている」(同)と基本的には機能が追加されたというよりも省電力機能がより高度になったという改良であると理解すればいいだろう。

Mobility Radeon HD 5800シリーズのスペック(出典:AMD)Mobility Radeon HD 5700/5600シリーズのスペック(出典:AMD)Mobility Radeon HD 5400シリーズのスペック(出典:AMD)
Mobility Radeon HD 5000シリーズの省電力機能(出典:AMD)各シリーズのスペック比較(出典:AMD)

●Direct3D 11に対応することで性能向上

 気になる性能だが、AMDが発表した資料によれば以下のようになっている

Mobility Radeon HD 5870とGeForce GT 280Mとの比較(出典:AMD)Mobility Radeon HD 5650とGeForce GT 240Mとの比較(出典:AMD)Mobility Radeon HD 4870と同5870でのベンチマーク結果の違い。おおむね20%程度の描画性能向上が実現されている(出典:AMD)

 Mobility Radeon HD 5870とGeForce GT 280Mとの比較では、Mobility Radeon HD 5870がGeForce GT 280Mに比べて25%程度の高性能を発揮している。Mobility Radeon HD 5650とGeForce GT 240Mとの比較でも同様で25%程度の高い性能を発揮しているだけでなく、それ以上の結果を出しているものもある。

 なお、これらの結果はいずれもDirect3D 10環境下での結果ということになるが、Direct3D 11を利用した場合にはさらに性能が向上するという。「Direct3D 11環境下ではテッセレーションなどの新しい手法を利用することができる。これにより描画性能も向上し、タイトルにもよるがおおむね20%程度改善する」(同)と、そちらも性能向上が期待できそうだ。

●すでに出荷開始。搭載製品は多数登場予定

 Rehmen氏によれば、Mobility Radeon HD 5000シリーズは、すでにOEMメーカーに向けた出荷が開始されているという。いつ入手可能になるかは「OEMメーカーのスケジュール次第だが、すでにチップそのものは問題なく出荷している」(同)とのことなので、追々OEMメーカーから搭載製品が登場することになるだろう。

 すでにASUSからはG73JhというMobility Radeon HD 5870を搭載した製品が登場しているが、これ以外にも発表会場にはMobility Radeon HD 5850を搭載したAspire 8942G、搭載GPU/型番とも不明な東芝のSatelliteなどが展示されていた。AMDによれば、CESの展示会場には、Mobility Radeon HD 5000シリーズを搭載した製品が多数展示されているとのことなので、おそらくIntelの新しいモバイルプロセッサなどとセットで新製品に搭載されて発表されることになるだろう。

AcerのAspire 8942G。Mobility Radeon HD 5850を搭載したCore i7搭載ゲーミングノートPC東芝のSatellite、Mobility Radeon HD 5000シリーズを搭載しているが、搭載GPUなども含めて不明とのことだった。
AMDはLenovoがThinkPad Edge/X100eで採用したVision Pro(AMDの企業向けプラットフォームブランド)をアピール。Lenovoの他にHPのVision Pro対応製品が展示されていたAcerの「Ferrari One」を利用したXGP(外付けGPUボックス)のデモ。現在市販されているFerrari Oneでも、XGPの外付けボックスが発売されれば、このように外付け3画面でゲームができるという。ぜひ発売して欲しいオプションだ

(2010年 1月 7日)

[Reported by 笠原 一輝]