多和田新也のニューアイテム診断室

Radeon HD 5800シリーズ下位モデル「Radeon HD 5850」の実力



 AMDが9月23日に発表したRadeon HD 5800シリーズ。上位モデルのRadeon HD 5870にはやや遅れをとったものの、下位モデルのRadeon HD 5850も先週末から発売となった。このパフォーマンスをチェックしてみたい。

●ボードサイズが魅力、消費電力の修正も
【写真1】Radeon HD 5850のリファレンスボード

 Radeon HD 5800シリーズの概要については、前回記事にて紹介している。表1は、その前回記事でも示した表であるが、Radeon HD 5850はSPを80基持つSIMDアレイの2アレイを制限し、総計でSP1,440基というスペックへ。そして、コアクロック、メモリクロックをそれぞれダウンさせることで上位モデルとの差別化が図られた製品だ。

 ちなみに、前回記事後にAMDから1点修正が入ったので、ここで補足しておきたい。Radeon HD 5850の公称ピーク電力について、当初は170Wとされていたが、これが151Wへ修正された。170Wというのは速報値だったのとのこと。ユーザーにとっては朗報といって良い修正だろう。

 

表1 Radeon HD 5800シリーズの仕様

Radeon HD 5870 Radeon HD 5850 Radeon HD 4890 Radeon HD 4870
プロセスルール 40nm 55nm
コアクロック 850MHz 725MHz 850MHz 750MHz
SP数 1,600基 1,440基 800基
テクスチャユニット数 80基 72基 40基
メモリ容量 1GB GDDR5 1GB/512MB GDDR5
メモリクロック 1,200MHz 1,000MHz 975MHz 900MHz
メモリインタフェース 256bit
ROPユニット数 32基 16基
ボード消費電力(アイドル) 27W 60W 90W
ボード消費電力(ピーク) 188W 151W 190W 160W

 さて、次に実際の製品を見てみたい。本稿ではAMDから借用したリファレンスボードをテストに用いている(写真1)。外観のデザインはRadeon HD 5870に似通っているが、ボードサイズはより短い。前回記事でも推測したとおり、Radeon HD 4870とほぼ同じサイズになっていることが分かる(写真2)。なお写真のRadeon HD 4870はリファレンスデザインと異なるクーラーを備えているが、基板サイズはリファレンスと同じものである。

 PCI Expressの電源端子をボード末端部に6ピン×2基を備えている(写真3)。Radeon HD 5870よりボードサイズは短いが、電源コネクタをここに取り付ける必要があることを考えると、そのメリットは多少相殺されてしまう印象も受ける。とはいえ、この仕様は前世代のRadeon HD 4870/4890も同仕様であり、アップグレードパスとして、ケーブル内配線も含めてそのままスライド使用できるという意味では理に適った仕様ではある。

 ディスプレイ出力はDVI-I×2、HDMI、DisplayPortの4端子を装備(写真4)。Radeon HD 5870同様に、DisplayPortを含めて計3画面に出力できる仕様だ。

【写真2】中央がRadeon HD 5850、左がRadeon HD 4870、右がRadeon HD 5870である。Radeon HD 5850はRadeon HD 4870と同じ長さであることが分かる 【写真3】電源端子はボード末端部に、6ピン×2を備える 【写真4】ディスプレイ出力はDVI×2、HDMI、DisplayPort。DVIとHDMIから2系統、DisplayPortを併せて3画面出力が可能

 ATI OverDriveの設定画面で動作クロックを確認すると、最大動作クロックは定格通りに設定されていることが分かる。ATI PowerPlayによってアイドル時にはダウンクロックされるが、そのさいのクロックはコア157MHz、メモリ300MHzとなっており、これはRadeon HD 5870と同じである(画面1)。

【画面1】ATI OverDriveの設定画面。アイドル時の動作クロックはRadeon HD 5870と同じ

●前回記事の結果とRadeon HD 5850を比較する

 それではベンチマーク結果をお伝えしたい。Radeon HD 5850は比較対象になる製品が前回記事と重なる。ここでは前回記事の結果にRadeon HD 5850の結果を追記する形で紹介したい。ただし、強制的にアップデートされるなどの理由でバージョンが変わってしまったタイトルは結果を割愛している。具体的には、「BattleForge」、「Call of Duty :World at War」、「Left 4 Dead」の結果を省いている。環境は表2、テストに用いた機材は写真5〜7のとおりである。

 

表2 テスト環境
ビデオカード Radeon HD 5850
Radeon HD 5870
Radeon HD 4890
GeForce GTX 285
グラフィックドライバ Driver Package Version.8.66-090910a-088431E GeForce/ION Driver 190.62
CPU Core 2 Extreme QX9770
マザーボード ASUSTeK P5Q Pro(Intel P45+ICH10R)
メモリ DDR2-800 1GB×2(5-5-5-18)
ストレージ Seagete Barracuda 7200.12(ST3500418AS)
OS Windows Vista Ultimate Service Pack 2

 

【写真5】Radeon HD 5870のリファレンスボード 【写真6】Radeon HD 4890を搭載する「ASUSTeK EAH4890/HTDI/1GD5」 【写真7】GeForce GTX 285を搭載する「ASUSTeK ENGTX285 TOP/HTDI/1GD3

 「3DMark Vatange」(グラフ1、2)の結果を見ると、Radeon HD 5850はRadeon HD 5870の80%程度のスコアに落ち着いている。解像度アップやフィルタの適用によって、Radeon HD 5870との差が開く傾向にあり、SP減やメモリ帯域幅縮小の影響も受けている。

【グラフ1】3DMark Vantage Build 1.0.1(Graphics Score)
【グラフ2】3DMark Vantage Build 1.0.1(Feature Test)

 Feature Testの結果はシェーダユニットの性能差が効きやすいPixel ShaderやPerlin NoiseはRadeon HD 5870に対して77%程度に留まるのに対し、内部のバスの影響も受けるStream OutやGPU Perticlesは87〜88%程度の性能が出る。アーキテクチャが同じ製品の上位・下位モデルの比較として妥当な結果になっている。

 以下は実際のゲームタイトルによるベンチマークテストである。テストは、「BIOHAZZARD 5 ベンチマーク」(グラフ3)、 「COMPANY of HEROES Tales of Valor」(グラフ4)、「Crysis Warhead」(グラフ5)、「Darkest of days」(グラフ6)、「Enemy Territory: Quake Wars」(グラフ7)、「Far Cry 2」(グラフ8)、「Tom Clancy's H.A.W.X」(グラフ9)、「Unreal Tournament 3」(グラフ10)、「World in Conflict」(グラフ11)だ。大局的には、どれも似たような傾向が出ている。

【グラフ3】BIOHAZZARD 5 ベンチマーク
【グラフ4】COMPANY of HEROES Tales of Valor(Patch v2.600)
【グラフ5】Crysis Warhead (Patch v1.1)
【グラフ6】Darkest of days
【グラフ7】Enemy Territory: Quake Wars(Patch v1.5)
【グラフ8】Far Cry 2(Patch v1.03)
【グラフ9】Tom Clancy's H.A.W.X
【グラフ10】Unreal Tournament 3 (Patch v2.0)
【グラフ11】World in Conflict(Patch v1.011)

 Radeon HD 5870に対しては、フィルタを適用しない状態で90%程度、フィルタ適用時で80%台前半のフレームレートになる。おおよそ1〜2割の性能差があると見ていいだろう。とくにアンチエイリアスや異方性フィルタを適用した際のフレームレートの落ち込みが大きいという点では、Radeon HD 5870との性能差という観点で重要なポイントになっている。

 Radeon HD 4890との差では、低負荷時は差が小さく、ときにRadeon HD 4890のほうが良い結果を出すタイトルもある。しかし、負荷が高まるとRadeon HD 4890を上回るのが当たり前になる。しかも、先のRadeon HD 5870との比較とは逆に、フィルタ類を適用したときのフレームレートの落ち込みがとくに小さいところがポイントといえるだろう。

 GeForce GTX 285との比較では得手不得手が見られるものの、Radeon HD 5850のほうが良いフレームレートが出るタイトルが多く、おおむねGeForce GTX 285を上回る性能といっても差し支えないレベルにある。ただ、Crysis WarheadやUnreal Tournament 3のように、Radeon HD 5870ならGeForce GTX 285を上回れているタイトルで後塵を拝するシーンもあるので注意を要する。

 最後に消費電力の測定結果(グラフ12)である。まずアイドル時の結果であるが、ATI PowerPlayによる動作クロックの下限がRadeon HD 5870と同じであり、消費電力も似通ったものとなっている。

【グラフ12】消費電力

 負荷が高まった場合の消費電力は、Radeon HD 5870の約30W減といったところ。AMDによる公称消費電力の修正があった件は冒頭で触れたが、Radeon HD 5870との公称消費電力差は修正前は18W、修正後は37Wの違いである。修正後の差ほどではないものの、実際の測定では修正後のほうがより近い結果となっているのは確かだ。

●Radeon HD 4800シリーズからの乗り換えに最適

 以上のとおり結果を見てきたわけだが、上位モデルのRadeon HD 5870から10〜20%減というあたりの性能であることが分かる。それでもRadeon HD 4890はおろか、GeForce GTX 285をも上回る結果が多いのは魅力だろう。

 AMDが提示する参考価格は300ドル未満となっているが、Radeon HD 5850を搭載したビデオカードはすでに自作ショップで3万円台前半で販売されている。Radeon HD 5870搭載製品は45,000円前後が相場だ。どうせなら上位モデルを、という気持ちを抱く方も多いだろうが、この1万円チョットの差は非常に大きい。

 というのも、前世代のRadeon HD 4800シリーズは最上位モデルでも3万円前後から発売されていたからである。Radeon HD 5800シリーズは、価格のレンジが少し引き上げられており、Radeon HD 5850が価格面では前世代の最上位モデルを置き換える格好になる。

 冒頭で少し触れたとおり、製品サイズがRadeon HD 4890/4870と同程度であるうえ、消費電力の面でもRadeon HD 4890(公称190W)より低く、Radeon HD 4870(公称160W)とも近い数値だ。これらの製品からのアップグレードパスとして最適な印象を受ける製品になっている。

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