多和田新也のニューアイテム診断室

ついにDirectX 11対応GPUが登場「Radeon HD 5800シリーズ」



 AMDは9月23日、かねてより2009年内の投入を表明していたDirectX 11(DX11)対応GPU「Radeon HD 5800シリーズ」を発表した。前世代製品からのパフォーマンス向上も気になる本製品のグラフィックパフォーマンスをチェックしてみたい。

●SIMDコアとROPの2倍化が性能向上へのポイント

 AMDのDX11対応GPUについては、今年のCOMPUTEX TAIPEI 2009において、同社上級副社長のRick Bergman氏が「年内に発売する」と表明し、そのウェハを公開した。その際に行なわれたデモではハードウェア名が「Evergreen」となっていたことから、この開発コード名で覚えている方もおられよう。

 このEvergreenというコード名はDX11対応GPUファミリーを表すコード名で、実際の製品にはまた異なるコード名が付けられている。今回登場するRadeon HD 5800シリーズは「Cypress」の名で開発が進められたものとなる。

 AMDはRadeon HD 3000/4000シリーズ以降、SweetSpot戦略と呼ばれる、ハイミドルレンジのコアを最初に開発して、それをベースにハイエンド製品やバリュー製品へ展開している手法を採ってきた。今回のEvergreenファミリーも同じように、その上のハイエンド製品や下のバリュー製品が計画されており、それらのコード名も公表されている(図1)。余談ではあるが、Evergreenとは常緑樹を意味しており、そのファミリーの製品のコード名は、いずれも樹木の名前が付けられている。

【図1】Radeon HD 5000シリーズにおけるSweetSpot戦略。今回の「Cypress」をベースにマルチGPUの「Hemlock」、廉価モデルの「Juniper」の年内投入が示されている

 さて、そのCypressことRadeon HD 5800シリーズであるが、2製品がラインナップされている。上位モデルの「Radeon HD 5870」と、下位モデルの「Radeon HD 5850」だ。主な仕様を表1、GPUコアのブロックダイヤグラムを図2に示す。グラフィックパフォーマンスに影響しそうな部分を中心に、Radeon HD 4000シリーズとの違いを簡単にまとめておきたい。

【表1】Radeon HD 5800シリーズの仕様

Radeon HD 5870 Radeon HD 5850 Radeon HD 4890 Radeon HD 4870
プロセスルール 40nm 55nm
コアクロック 850MHz 725MHz 850MHz 750MHz
SP数 1,600基 1,440基 800基
テクスチャユニット数 80基 72基 40基
メモリ容量 1GB GDDR5 1GB GDDR5 1GB/512MB GDDR5
メモリクロック 1,200MHz 1,000MHz 975MHz 900MHz
メモリインターフェイス 256bit 256bit
ROPユニット数 32基 16基
ボード消費電力(アイドル) 27W 60W 90W
ボード消費電力(ピーク) 188W 151W 190W 160W

【図2】Radeon HD 5800シリーズのブロックダイヤグラム

【お詫びと訂正】初出時にRadeon HD 5850の最大消費電力を170Wとしておりましたが、後日AMDより正式には151Wに変更になったとの通達がありましたので、記事内容を訂正させていただきました。

 まず、プロセスは先述のCOMPUTEXの場でも紹介されていたとおり、TSMCの40nmプロセスが使われる。トランジスタ数は先日のEyefinity披露の場で「20億個」とされたが、より正確には「21.5億個」となる。ダイサイズは263平方mmから334平方mmへと拡大。プロセスは微細化されているがトランジスタ数が9億5,600万個から21億5千万個へと大幅に増えたためだ。

 SPは800個から1,600個へ倍増。SIMDアレイは5-wayのコア16個を1SIMDアレイとし、これを20アレイ並べる構造となる。この基本構造はRadeon HD 4800シリーズに近く、素直に2倍化した格好だ。SIMDアレイで1クロック当たりに処理できる演算能力も変わっていない。各SIMDアレイに設けられるテクスチャユニットは、SIMDアレイが2倍化されたことで40基から80基へと増加している。

 ROP(レンダバックエンド)ユニットは、これも16基から32基へと倍増。クロック当たりの処理能力はRadeon HD 4800シリーズと比較して、2x/4xMSAAが16ピクセルから32ピクセル、8xMSAAが8ピクセルから16ピクセルへと倍増。2倍の性能を持つことになった。

 メモリ周りは256bitインターフェイスとなっており、Radeon HD 4800シリーズと同スペックに据え置かれている。もちろんメモリコントローラ周りの最適化はさらに進められたとするが、GDDR5を使うことから、インターフェイスを拡大することなく高クロック化のみでメモリ帯域幅を拡大することで十分な性能向上が得られると判断したことになる。ただし、メモリインターフェイスを拡大することでダイサイズが増すことを嫌った一面もあると想像される。

 このように見てくると、Radeon HD 5800シリーズのアーキテクチャは、メモリインターフェイスを除いては、おおむね各ユニットをRadeon HD 4800シリーズから「2倍化」したものとなっていることが分かる。

 グラフィックエンジンのテッセレータエンジンなどをDX11に合わせて進化させたり、ラスタライザを2個に増量するなどの変更(これも2倍化といえる)はあるものの、DX10世代でユニファイドシェーダを採用したことで汎用性が増した現代のGPUが、DX11のために行なうべきことは少ない。とくにグラフィックレンダリングに関わる部分で個々のユニットに対して劇的にアーキテクチャを変えることなく、順当に数を増やして性能を高めるアプローチを採ってきているわけだ。

●リファレンスカードをチェック

 さて、今回テストを行なうのは、AMDから借用したRadeon HD 5870のリファレンスカードである(写真1)。カードサイズは非常に長く、カード末端の吸気口のパーツを含めると実測で280mmほどある(写真2)。標準的なATXマザーからはみ出すほどのサイズなので、奥行きの短いケースに組み込むさいには注意を要する。

【写真1】Radeon HD 5870のリファレンスカード 【写真2】左からRadeon HD 4870、GeForce GTX 285、Radeon HD 5870。10.5”のGeForce GTX 285より長いことが分かる

 ちなみに、下位モデルとなるRadeon HD 5850は本製品に比べると短いようだ。ようだ、というのは筆者も未だ現物を見たことがないからなのだが、AMDのリファレンスカードの写真を見ると短くなっている。この写真をPCI Expressのサイズに合わせてレタッチしてみてみたのでサイズ差の参考にしてほしい(写真3)。

 GPUクーラーはカード裏面も完全に覆った形状(写真4)。クーラーの騒音は回転数が上がった際に非常にうるさく感じるものの、低回転時はRadeon HD 4870と同等か、やや小さいように感じられた。ただ、頻繁に回転数が上がるので耳障りな印象は残る。サードパーティ製のGPUクーラーを搭載した製品もニーズが高まりそうである。

【写真3】Radeon HD 5850(上)とRadeon HD 5870(下)。Radeon HD 5850はかなり短く、Radeon HD 4870と同程度の長さだと思われる 【写真4】カード裏面も金属のプレートで完全に覆われている

 ちなみにカード裏面には目立ったチップの実装はない(写真5)。メモリチップは表面に集中しており、1Gbitのメモリチップ8枚で1GBの容量となる。メモリチップはSamsung製の0.4ns品である「K4G10325FE-HC04」が使われていた。HynixやQimondaのGDDR5は4.5Gbpsの製品が最速であることを考えると、Radeon HD 5870は当面、このSamsung製が載ることになるだろう。ただ、下位モデルのRadeon HD 5850のメモリデータレートは4Gbpsであり、カードベンダーの裁量でチップを選択できそうだ。

 カードの端にはNative CrossFire端子が2基設けられており、Quad CrossFireをサポートしていることが分かる(写真6)。

【写真5】クーラーを取り外した状態。メモリチップは表面のみに8枚を実装 【写真6】CrossFire端子は2基備えている

 ブラケット部はDVI×2(DualLink対応)、HDMI、DisplayPortの4端子を備えており、このうちDVI×2とHDMIから2系統を同時使用可能で、プラスDisplayPortの計3系統を同時使用できる(写真7)。マルチディスプレイ機能の「Eyefinity」についてはすでに公表されているとおりで、Mini DisplayPortを6基備えた「Eyefinity6 Edition」と呼ばれるモデルが後日投入される予定だ(写真8〜9)。

【写真7_I/Oブラケット部。DualLink DVI×2、HDMI、DisplayPortの4系統を装備。DVIとHDMIから2系統、それに加えてDisplayPort出力で3画面同時出力が可能 【写真8】Mini DisplayPort×6個を備えるEyefinity6 Editionの投入も予告されている 【写真9】Eyefinity6 Editionを用いて出力している状態。Mini DisplayPort−DisplayPortを介して接続していることが分かる

 ちなみに、こうしたリファレンスカードの出力端子は文字通りリファレンスでしかない。3系統、6系統出力モデルともに、さまざまな出力端子を組み合わせて提供することができる(図3〜4)。これまでのビデオカードでもベンダー独自にDisplayPortやHDMIを備えた製品が登場したが、Radeon HD 5800シリーズでもそうしたバリエーションが期待できるわけだ。

【図3】3画面出力のコンフィングレーション。DisplayPortの数は自由だが、DVI/HDMI/アナログVGA出力は同時2系統出力 【図4】6画面出力のコンフィグレーション。やはりDVI/HDMI/アナログVGA出力は同時2系統となり、DisplayPortは最大6ポートまで増やせる仕組み 【図5】ディスプレイ出力周りの内部構成。出力パイプラインを6本備えており、TMDS×6/DAC×2を介してさまざまな構成でディスプレイへ送られる

 内部アーキテクチャも公表されている。GPU内に6系統のディスプレイ出力パイプラインを備えており、その先のDACまたはTMDSをさまざまに組み合わせて使うことで、こうしたバリエーションに富んだコンフィグレーションが提供可能となる(図6〜8)。

【図6〜8】TMDS×2個を使ったDual DVI出力、DACを介したアナログVGAなどの出力を組み合わせた例

 このEyefinityの動作をもう少し詳しく紹介したい。ここでは2ディスプレイで試しているが、基本的な操作方法は3ディスプレイや6ディスプレイでも同じである。CATALYST Control Centerの「Desktop & Displays」のメニューから、ディスプレイのグループ作成を選ぶ(画面1)。その際、ディスプレイのグループ化をどのような配置で行なうかの確認などが行なわれる(画面2〜3)。ビデオカード側ではディスプレイの物理的な配置は当然判断できないので、それを手動で設定する画面も用意される(画面4〜5)。

【画面1】Eyefinityの設定はCATALYST Control Centerの「Desktop & Display」からディスプレイのグループ化と呼ばれる作業を行なう 【画面2】どのようなレイアウトで画面を配置するか選択 【画面3】実際にこのように表示されているか確認する画面が表示される
【画面4】もしディスプレイの表示順が間違っている場合の再設定が可能 【画面5】設定後はどの画面がどのディスプレイに割り当てられているか簡単に確認できる

 グループ化されたディスプレイは1つのデスクトップとして認識される。ここでは1,920×1,200ドットの液晶ディスプレイ2枚を横方向にグループ化したので、3,840×1,200ドットのデスクトップ画面ができあがっている(画面6〜7)。

 ちなみに、こうしたディスプレイのグループ化だけでなく、従来どおり2枚のディスプレイで同じものを表示する「Duplicate」や、2枚のディスプレイを独立した状態で連結する「Extend」機能は提供される(画面8)。画面8にある「Replace」は1枚だけディスプレイパネルを利用し、メインパネルを入れ換える機能だ。例えば、EyefinityのディスプレイグループとExtendを組み合わせて利用するといったことも可能となっている。

【画面6】Eyefinity Groupとして、1つの高解像度ディスプレイとして認識される 【画面7】画面のプロパティでも1つのディスプレイとして扱われていることが分かる 【画面8】これまでどおりのマルチディスプレイ機能も提供されている

 さて、話は変わって電源端子に目を向けてみると、リファレンスカードには6ピン×2個が搭載されている(写真10)。表1でも示したとおり、Radeon HD 5870のピーク消費電力は188Wとされており、PCI Expressスロットからの供給と6ピン×2個で十分にまかなえる。

 省電力機能であるATI PowerPlayも強化され、アイドル時消費電力が27Wへ抑制された。これは、コアクロックと電圧をRadeon HD 4890以上に低く抑えたことに加え、GDDR5のLow power strobe modeを使うなど、メモリの省電力機能を強化したことが背景にある。ATI PowerPlayによる表示では、コアクロックが157MHz、メモリクロックが300MHzまで低下していることを確認できる(画面9)。

 なお、標準モデルでは6ピン×2の構成となっているのに対し、Mini DisplayPortを6基持つEyefinity6 Editionの場合は、6ピン+8ピンの構成となっていることが確認されている(写真11)。

【写真10】標準モデルのリファレンスモデルは電源端子が6ピン×2となっている 【写真11】Eyefinity6 Editionは6ピン+8ピンの構成 【画面9】コア850MHz、メモリ1,200MHzで動作するRadeon HD 5870だが、アイドル時はコア157MHz、メモリ300MHzまで落ちている

 本製品は、初のDX11対応GPUということが1つの大きなトピックで、DX11ではさまざまなフィーチャが提供される(図9)。AMDの資料では、テッセレータ搭載に伴うハルシェーダとドメインシェーダが増設されたシェーダパイプラインのステージ数の増加、マルチスレッドサポート、GPGPU機能であるDirect Compute、新しいインストラクションセットを含むShader Model 5.0、16Bit HDRテクスチャに対応したテクスチャ圧縮などが主なポイントとして挙げられている。とくに旧ATIから独自実装してきたテッセレータや、DirectCompute 11はAMDがとくに入れてアピールしている。

 DX11に対応したゲームは現時点でなく、この先に紹介するベンチマークはいずれもDX10.1以前のタイトルとなる。ただ、DX11対応タイトルを表明しているベンダーもあり、早ければRadeon HD 5800シリーズの投入直後から見られる可能性はある(図10)。

【図9】DX11で提供される主な新機能 【図10】DX11対応タイトルの投入を表明しているメーカーとそのタイトル

●シングルGPUビデオカード3製品を比較

 それではベンチマーク結果を紹介していきたい。テスト環境は表2に示したとおりで、ここではAMD、NVIDIA両社の従来のハイエンドシングルGPUビデオカードを比較する。テストに使ったビデオカードは写真12〜13のとおりだ。ただし、GeForce GTX 285を搭載するASUSTeKのENGTX285 TOPはオーバークロック製品であるため、GainwardのExprToolを使って定格クロックへ変更して使っている。

 Radeon HD 5870のドライバは、レビュー用に配布されたものを使用。Radeon HD 4890もこれと同じドライバを使っている。GeForce GTX 285は原稿執筆時点の最新WHQLドライバであるGeForce/ION Driver 190.62を使用している。

 なお、今回から異方性フィルタリングを適用する際の設定を16xへ変更した。併せてグラフ中の表記を従来のAnisoからAF(Anisotropic Filter)へ変更。アンチエイリアスについては、従来どおり4xMSAAを適用している。

 さらに今回は、いくつかタイトルの入れ換えも行なっており、新しく採用したタイトルについては適宜補足説明を加えつつ紹介していきたい。

【表2】テスト環境
ビデオカード Radeon HD 5870
Radeon HD 4890
GeForce GTX 285
グラフィックドライバ Driver Package Version.
8.66-090910a-088431E
GeForce/ION Driver 190.62
CPU Core 2 Extreme QX9770
マザーボード ASUSTeK P5Q Pro(Intel P45+ICH10R)
メモリ DDR2-800 1GB×2(5-5-5-18)
ストレージ Seagete Barracuda 7200.12(ST3500418AS)
OS Windows Vista Ultimate Service Pack 2

【写真12】Radeon HD 4890を搭載する「ASUSTeK EAH4890/HTDI/1GD5 【写真13】GeForce GTX 285を搭載する「ASUSTeK ENGTX285 TOP/HTDI/1GD3

 まずは「3DMark Vatange」(グラフ1、2)の結果は、これを見ただけでもRadeon HD 5870のポテンシャルの高さが見えてくる。Radeon HD 4890の155〜170%程度、GeForce GTX 285からは130〜150%程度の性能を見て取れる。これまでのシングルGPUビデオカードを圧倒するスコアだ。

 とはいえ、細かいところを見ると万能ではない一面も見える。まずAA & AFを適用したときのスコアの落ち込みはGeForce GTX 285よりも大きい。非適用時とAA & AF適用時を比べると、GeForce GTX 285では12%前後、Radeon HD 5870は17〜18%程度のスコア低下となっている。ただし、Radeon HD 4890ではさらに落ち込みが大きい傾向が見られるので、前世代からの改善は見られる。

 もう1つ、Feature Testで、Pixel ShaderやPerlin Noiseでは大幅にフレームレートの伸ばすのに比べると、Stream OutやGPU Perticlesのフレームレート増加が小さいのも気になる点だ。これらはパイプラインからのストリームアウト処理が含まれるこれらのテストで、Stream OutはGeForce GTX 285に追いつけていない。このあたり、シェーダ倍増の効果は発揮されるも、GPU内のデータバス周りはそれほど大きくは変化していないためと捉えられる。Radeon HD 4800シリーズからRadeon HD 5800への進化のポイントがよく分かるサンプルといえるだろう。

【グラフ1】3DMark Vantage Build 1.0.1(Graphics Score)
【グラフ2】3DMark Vantage Build 1.0.1(Feature Test)

 「BattleForge」(グラフ3)は今回から新たに採用したRTSゲームタイトルだ。対応パッチはまだリリースされていないものの、DX11への対応が表明されていることもありテストに加えることにした。すべて最高のクオリティになるよう設定し、ゲームに組み込まれたベンチマークを使用している。

 結果はRadeon HD 4890に対して最大約56%、GeForce GTX 285に比べて最大約133%という大きな性能差が出ている。一方でAA & AF時の性能落ち込みがGeForce GTX 285よりも大きいという性格は3DMark Vantage同様であり、ここではRadeon HD 4890以上にフレームレートの落ち込みが見られるほどになっている。

【グラフ3】BattleForge

 「BIOHAZZARD 5 ベンチマーク」(グラフ4)は、本コラムのCPUテストでは先に採用したが、GPUテストでは初めて採り上げるタイトルとなる。設定は基本的に最高クオリティを指定しているが、設定画面にあるOverall Qualityの設定に応じてTexture FilterlingとTexture Qualityの2つが自動的に指定される仕組みになっている。例えば、Overall QualityでHIGHを指定すると、16x異方性フィルタリング & Texture Quality HIGHが、LOWを指定するとTRILINEAR & Texture Quality LOWが指定される。このほか、HDRの設定もこの項が関係するようだが、どの設定を選んでもLOWが指定される。

 ゲーム上の設定画面からは、この2つを個別に指定することはできないのだが、設定を保存したcfgファイルがプレーンテキストで記されており、こちらを直接編集することで、個別設定が可能になる。cfgファイルを直接編集した場合、画面上のOverall Quality設定欄はCUSTOMと表示され、指定した内容が描画に反映されるのである。ここでは、Texture QualityをHIGHに固定し、テクスチャフィルタリングをTRILINEARまたはANISOTROPIC16Xに指定。HDRはLOWのままに据え置いてテストしている。

 結果はGeForce GTX 285が高い性能を見せる結果となった。NVIDIAが自社製品の最適化を大々的にアピールしているだけに、ドライバチューニングの差が出たものといえるだろう。

 ただ、CPUへの負荷も大きいタイトルであるだけに、差はそれほど大きくはない。また、Radeon HD 5870は低解像度条件でAA & AFを適用したときにフレームレートが上がるという不思議な結果が出ており、このGPUが効率良く使われていないことが見て取れる。これも、ハードウェアのポテンシャルがドライバによってうまく引き出されていることを感じさせる結果だ。

【グラフ4】BIOHAZZARD 5 ベンチマーク

 「Call of Duty:World at War」(グラフ5)は、Radeon HD 5870が高い性能を示した。GeForce GTX 285ではやはり高解像度でAA & AFを適用したときでもフレームレートの落ち込みが小さいという利点は出ているが、それを差し引いても絶対的な性能差が大きく、Radeon HD 5870の良さが際立っている。

【グラフ5】Call of Duty :World at War

 「COMPANY of HEROES Tales of Valor」(グラフ6)、前回まではOPPOSING FRONTSにパッチを適用してTales of Valor相当にしていたが、今回からTales of Vvalorのメディアを使用してテストしている。とはいえ、ベンチマークのシーケンスはOPPOSING FRONTSと同じである。

 従来、GeForceシリーズが良い結果を出す傾向が強かったタイトルだが、ここもRadeon HD 5870が高い性能を見せた。さらに、これまでのテストとは異なりAA & AFを適用したときのフレームレートの落ち込みが小さいのも特徴。GeForce GTX 285に対して50%以上と、もっとも差をつけたのがWUXGAの4xAA & 16xAF条件であるあたり、このタイトルに向けたドライバの最適化がきっちり行なわれている印象を受ける。

【グラフ6】COMPANY of HEROES Tales of Valor(Patch v2.600)

 「Crysis Warhead」(グラフ7)は、非常に負荷が大きく、絶対的なフレームレートが低いタイトルである。GeForce GTX 285は負荷が高くても性能が落ちにくいという利点が感じられる結果だが、現実的な解像度/設定ではRadeon HD 5870が好結果を得られている。むしろ、WUXGA/4xAA & 16xAFの結果が不思議なほどで、まだドライバにチューニングの余地が残されているようにも思う。

【グラフ7】Crysis Warhead (Patch v1.1)

 「Darkest of days」(グラフ8)は歴史上の戦争をモチーフにしたFPSソフトで、CPUとGPUへ適度な負荷がかかるベンチマークモードを備える、新しめのタイトルということで採用した。このアプリケーションはPhysXエンジンに対応しており、そのままではGeForce PhysXが使えるGeForce勢が有利になる。そのため、NVIDIA Control PanelからGeForce PhysXは無効化している。描画品質は最高クオリティの設定を適用している。

 ちなみに、このゲームが備えるベンチマークモードは実行されるシーケンスが毎回異なるのだが、試してみると誤差は±2FPS以内に収まっている。同じシーケンスを実行するベンチマークデモでも、この程度の誤差が生じるタイトルはあるわけで、参考にし得るものといえる。

 結果は低解像度ではGeForce GTX 285がやや有利ながら、グラフィック描画負荷が高まるとRadeon HD 4890とGeForce GTX 285は同等。そして、Radeon HD 5870は描画負荷が高まれば高まるほど、両製品との差を広げるという結果になっている。平均フレームの絶対値で見ても、Radeon HD 5870によって数段高いクオリティでゲームが楽しめるだろう。

【グラフ8】Darkest of days

 「Enemy Territory: Quake Wars」(グラフ9)は、Radeonシリーズが強いタイトルだ。それでも、Radeon HD 4890ではAA & AFを適用したときにGeForce GTX 285に劣る結果が出るのに対して、Radeon HD 5870はフィルタ類を適用したときでもフレームレートが落ちにくく、好結果を維持できていることが分かる。

【グラフ9】Enemy Territory: Quake Wars(Patch v1.5)

 「Far Cry 2」(グラフ10)は、ハイエンド製品ではGeForceに向いた傾向を見せてきたタイトルだが、Radeon HD 5870は最大30%強という差でGeForce GTX 285より高い性能を見せている。ただ、4xAAを適用したときの性能インパクトはGeForceよりもかなり大きく、WUXGA時、GeForce GTX 285では非適用時の88%程度、Radeon HD 5870では79%程度のフレームレートとなっている。

【グラフ10】Far Cry 2(Patch v1.03)

 「Left 4 Dead」(グラフ11)はこのクラスのGPUにとってはかなり負荷が小さいタイトルといえるが、それでも高解像度になることでGeForce GTX 285、Radeon HD 4890はフレームレートを大きく落とすが、Radeon HD 5870はWUXGA/4xAA16xAF条件でも落ち込みが非常に小さい。

【グラフ11】Left 4 Dead

 「Tom Clancy's H.A.W.X」(グラフ12)は、Radeon両製品を使用した環境でDX10.1設定でテストした場合の結果も併記している。GeForce GTX 285はDX10.1非対応なのでゲーム上でもDX10.1に設定できない。

 AAやAFをかけていない状態では、Radeon HD 5870とGeForce GTX 285は同等程度。DX10.1を有効にすることで、ややRadeon HD 5870が良い結果となる当たりは、Radeon勢の良いところである。

 ただ、AA & AFを適用したときのフレームレートの落ち込みは非常に大きい。Radeon HD 4890に比べれば多少マシではあるのだが、それでもGeForce GTX 285がそれなりに踏みとどまっていることを考えると印象は良くない。

【グラフ12】Tom Clancy's H.A.W.X

 「Unreal Tournament 3」(グラフ13)の結果は、CPU負荷が小さく、グラフィック性能に応じてフレームレートが伸びていく傾向にある。ここでは、Radeon HD 5870とGeForce GTX 285がほぼ横並びという結果になった。多少の上下関係はあるものの、誤差が大きめのタイトルであり、この程度の差であれば同等といって差し支えない。Radeon HD 4890に比べ110〜135%程度という伸びを示している。

【グラフ13】Unreal Tournament 3 (Patch v2.0)

 「World in Conflict」(グラフ14)はCPU負荷も高く、頭打ち傾向が出やすいテストだ。ここはRadeon勢が低解像度からまずまずのフレームレートを発揮するが、Radeon HD 4890ではAA & AFを適用した状態ではGeForce GTX 285のフレームレートを下回る。Radeon HD 5870ではここでGeForce GTX 285を上回る結果を見せるというのが大きなポイントになっている。しかも、解像度が上がるほどに、その差を広げる傾向にあり、ハードウェアのポテンシャルの高さが感じられる結果が出ている。

【お詫びと訂正】初出時にグラフ14の内容と解説が誤っておりました。お詫びして訂正させていただきます。

【グラフ14】World in Conflict(Patch v1.011)

 最後に消費電力の測定結果である(グラフ15)。まずアイドル時の結果であるが、ATI PowerPlayの進化がはっきりと見て取れる結果となった。Radeon HD 4890、GeForce GTX 285ともに電力管理機構を備えており、この2製品ではGeForce GTX 285のほうがアイドル時により抑制できるという結果であるが、Radeon HD 5870は、それを超える省電力化に成功している。

 ピークの電力はGeForce GTX 285に対する、Radeon HD 4890のメリットとなっていたが、Radeon HD 5870は、このRadeon HD 4870と同等程度の消費電力に留まっている。公称値ではRadeon HD 5870の方が低い値が出ているのに対し、実際の値は逆にRadeon HD 5870のほうが高い値にはなっているが、差は小さい。公称値から大きくは外れてはいない結果だ。

【グラフ15】消費電力

●次世代を感じさせる性能と消費電力

 以上のとおり結果を見てきたわけだが、おおむねGeForce GTX 285を凌駕するといって差し支えない性能を見せている。ゲームタイトルによりチューニング不足を感じる部分があるが、新アーキテクチャの製品が登場したばかりの状況でもあり、今後、さらなるチューニングがなされていくはずだ。

 ちょっと気になったのはアンチエイリアスや異方性フィルタを適用したときの性能の落ち込みがやや大きめであったことだ。ROP2倍化によってMSAAの性能は上がっているはずなのだが、それでもGeForce GTX 285に比べると、このあたりの性能インパクトに課題はあると思う。もっとも、絶対的なフレームレートで勝っているので、実使用に関していえば、より高い性能を得られるシーンが多いということにはなる。

 こうした絶対的な性能もさることながら、アイドル時、ピーク時ともに消費電力がよく抑えられている。トランジスタ数は前世代から倍増以上という本製品ではあるが、40nmプロセスの素行の良さが、こうした好結果につながっているのだろう。

 参考価格は400ドル以下。国内価格の提示はないが、米ドルの参考価格をベースにすると4万〜5万円あたりの価格帯になると想像される。Radeon HD 4890登場当時の参考価格が260ドルであったことを考えると、やや上の価格帯へ回帰した格好にはなるが、これほどの性能向上を同等以下の消費電力で得られるわけだし、GeForce GTX 285の現在に多少上乗せ程度の価格と考えれば、決して高価すぎるという印象は受けない。

 現状、AMDがSweetSpot戦略を採っていることもあって、ハイエンドビデオカードではGeForce GTXシリーズの性能の高さが好まれる傾向にあった。しかし、そのNVIDIAよりも早くDX11対応GPUをリリースしたというだけでなく、性能面、消費電力面で高いポテンシャルを実現した本製品は、現在GeForce GTXシリーズを使っているユーザに対してもハイエンドビデオカードを望むユーザに乗り換えを考えさせるだけのインパクトがある。

 こうした高性能を望むユーザにお勧めできる製品であることはもちろん、Eyefinity機能の実装によって、マルチディスプレイや大画面を望むユーザのニーズも叶えようとしている。6画面出力が可能なEyefinity6 Editionの早期登場も望まれるところだ。

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