イベントレポート
GPU会社の枠を超えたNVIDIA、“AIインフラ企業”としての姿を明示
2025年5月20日 10:50
NVIDIAは、5月20日から開幕している世界最大級のコンピュータ見本市「COMPUTEX TAIPEI 2025」に参加して同社の最新製品などを顧客などに説明している。イベントの開始に先立って、5月19日にはNVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏が参加した基調講演が行なわれ、新製品などが紹介された。
今回のCOMPUTEX TAIPEI 2025はAIが大きなテーマになっていることもあり、フアン氏の基調講演もAIの話題一色。同社が「AI Foundry」と呼んでいる大企業向けのAIソリューションや、「AI Factory」と呼んでいる工場向けのデジタルツインソリューション、「Physical AI」と呼んでいるロボット向けのAIソリューションなど、各種のAIソリューションなどについて説明を行なった。
今やデータセンター群が巨大な1つのAI向けインフラになっているとフアンCEO
もはや説明する必要がないほどトレードマークとなっている革ジャンを着て登場したNVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏は、冒頭でまず過去20年のコンピュータの進化に関して説明した。
フアン氏は「NVIDIAは2006年にCUDAを導入しGPUを汎用に使えるようにし、その後2016年にDGXを導入してGPUからシステムへと進化させた。そしてそれがデータセンターに入り、2019年に仲間になったMellanoxのネットワークを利用してそれを相互に接続するようにしてデータセンター群がAIのインフラとなっている。今やAIを実行するモダンコンピューターはデータセンターそのものだ」と述べ、AIを実行するコンピュータが、GPUから、サーバー機器に、そしてそれがデータセンターになり、さらに今や複数のデータセンターを束ねて利用することら当たり前になっている現状を説明した。
よくNVIDIAはGPUの会社だと捉えられることが多いが、それは半分正解で半分外れだ。フアン氏は以前から「NVIDIAはデータセンターソリューションを提供する企業だ」と強調しており、GPUだけでなく、DGXのようなサーバーシステム、さらにMellanox由来のInfiniBandやEthernetなどのネットワークソリューションも提供しており、それらのデータセンター向けビルディングブロックを一括して提供したことが、今のNVIDIAの強みになっている。今回のCOMPUTEX 2025の基調講演でもそうしたデータセンター向けのソリューションに関する説明が話題の中心となった。
しかし、もちろんPC向けのソリューションとなるGeForceが疎かにされているということではない。ファン氏はそうしたデータセンター向けソリューションの説明に入る前に、この日から販売が開始されることが明らかにされたGeForce RTX 5060、さらにはノートPC版GPUが入ったノートPCなどを紹介しながら、「このGPUがノートPCに入るようになり、AIやグラフィックスなどに利用することができる」と述べ、データセンターだけでなくクライアント側にもNVIDIAの製品が入っているとアピールした。
NVLink FusionやDGX Spark/Station、RTX Pro Serverなどの新技術/製品を発表
フアン氏は既に3月のGTCで発表されたQuantum-GPU ComputingやGrace Blackwell Ultra Superchip(GB300)などを紹介しながら、データセンター向けAIソリューションを紹介していった。そしてそれらが台湾の製造業、たとえばホンハイ(Foxconn)のようなEMS、TSMCのような半導体受託製造、WhistronのようなODMなどに採用されていることを紹介し、AIやOmniverseを利用したデジタルツインなどにより、台湾の製造業が大きな恩恵を受けているとした。その上で、ホンハイ、台湾政府、TSMC、NVIDIAが共同で台湾の研究者/スタートアップ向けのAIインフラを構築していく計画などを明らかにした。
さらに、別記事でも紹介しているNVLink Fusionに関しても発表し、「これまではAIソリューションをNVIDIAから100%提供してきた。しかし、これからはNVIDIAとCPUとパートナーのTPUを組み合わせたり、パートナーのCPUにNVIDIAのAIソリューションを組み合わせることができる」と述べ、CPUパートナーとして富士通とQualcommをアナウンスした。
また、1月のCESで「Project DIGITS」として発表し、3月のGTCにおいて正式に「DGX Spark」として発表されたAI開発用ミニPC、さらには「NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultra Desktop Superchip」を搭載した「DGX Station」に関しても紹介。
こちらは今年(2025年)の後半に出荷が予定されているが、予約が開始されることが紹介された。フアン氏は「これらの開発用デスクトップでは、NVIDIAのAIスタックがそのまま動作する」と述べ、これらのデスクトップPCで開発したコードがAIデータセンターでそのまま動作させることができると強調した。
このほかにも、RTX Proを8枚搭載することで、GPU仮想化やデジタルツインなどに利用することができる「RTX Pro Server」や、ロボット向けの開発ソリューションとなる「Issac GROOT」の最新版N1.5などを発表した。
Endeavor、Voyagerに続いてConstellationと宇宙計画由来の名称の台湾本社を台北近郊に建設
講演の最後に、フアン氏は宇宙船が台北に着陸するビデオを紹介し、その宇宙船はNVIDIAが台北近郊(写真の角度的には新北市のあたりか?)に開設する予定の新オフィス「Constellation」のCGであると明らかにした。
既に地元政府や地権者との調整が済んでおり、今後建物の建設に入るという。NVIDIAは米国カリフォルニア州サンタクララにある同社の本社の建物を「Endeavor」、「Voyager」と呼んでおり、いずれも米国の宇宙船の由来の名称にしている。今回はNASAがかつて進めていた「Constellation program」(コンステレーション計画)に基づく名称だと考えらえる。
現時点では建設開始時期や竣工時期などは明らかにされていないが、完成すれば台北の新名所になることは間違いないだろう。