イベントレポート

Arm、「2030年までにはWindowsで支配的なシェア」と大胆予測

Arm CEO レネ・ハース氏

 英Armは、6月4日(台湾時間)から始まったCOMPUTEX 2024の開幕前日に基調講演を、COMPUTEX TAIPEI 2024会場近くのホテルで行なった。この中で、先日発表された新しいCPU、GPUのパッケージIPスイート「CSS for Client」に関して改めて説明したほか、大きな話題の1つであるSnapdragon X Eliteを搭載したArm版Windows(Windows on Arm)に関しても説明を行なった。

 この中でArm CEOのレネ・ハース氏は「2020年代の終わりまでにはArmアーキテクチャのデバイスがWindowsでは支配的なシェアを占めるようになると信じている」と述べ、現在数%しかないArmのシェアが大きく上昇し、2030年までには逆転するという予測を明らかにした。

ChromeやSlackなど続々対応が進む

高性能な演算装置を持つコンピューター(スマホ、タブレット、PC)市場で、ArmはレガシーのPC(x86など)を大きく上回っているとアピール

 基調講演では、5月29日にArmから発表された新しいCPU/GPUなどの2024年版IPスイートとなる「CSS for Client」、そのプライムコアCPUとなる「Cortex-X925」などに関する説明が行なわれた。なお、CSS for ClientやCortex-X925に関して以下の記事が詳しいのでそちらもあわせてご参照いただきたい。

 ハース氏は、Microsoftが発表した「Copilot+ PC」に、ArmアーキテクチャのSoCであるQualcommのSnapdragon X Eliteが採用されたことについて触れ、「Armはもともとモバイル向けのアーキテクチャとしてスタートした。それは今も変わっていない。コンピューティングプラットホームとしてのArmは、レガシーPCを2010年代に追い抜き、既に大きく引き離ししている」と述べ、スマートフォンやタブレット、PCなど高性能なコンピューティング能力を持つデバイスという観点で見れば、Armのシェアが圧倒的だと指摘した。

AWS、Microsoft、GoogleなどのCSPが続々ArmベースのカスタムCPUを投入

 その上で、今はPCだけでなく、データセンターにもArmアーキテクチャが普及しつつあると指摘し、AWSのGraviton、MicrosoftのCobalt、GoogleのAxionなど、クラウドサービス事業者がArm CPUを自社サービスに導入、ないしは導入する予定を発表しており、さらにはNVIDIAがGrace Blackwell(GB200)のようなAI演算向けの製品にもArmが採用されているとアピールした。

ArmネイティブのWindowsアプリケーションは増えている

 ハース氏は「Armはモバイルから来ている。そのモバイルのソフトウェア資産をPCに、そして自動車にと横展開している。AIのアプリケーションも同様で、KleidiというArmアーキテクチャのハードウェアに最適化するツールの提供を開始している。

 また、Windowsでソフトウェアを開発する環境をMicrosoftと協力して構築しており、最近ではChromeブラウザ、Slack、Spotifyなどがネイティブアプリとしてリリースされ、ArmのソフトウェアをWindowsで活用できる環境が既にできあがっている」と述べ、WindowsでもArm向けのソフトウェア環境は整ってきているとアピールした。

 ハース氏の言う通り、100%ではないものの、Armネイティブなソフトウェアが充実してきており、MicrosoftもArmアーキテクチャのソフトウェア開発環境を提供するのに熱心なのも事実だ。

 その象徴がCopilot+ PCであり、Copilot+ PCが一斉に販売される6月18日の時点では、Windows Copilot Runtimeとそのアプリケーション(Recall、Cocreator、Live Captions)はArm版しか存在しない。つまり、少なくとも6月18日の段階ではx86の方がRecall、Cocreator、Live Captionsの互換性がないという状態に置かれることになる。

2020年代の終わりにはArmがWindowsデバイスの主流になるとArm CEOが大胆な予測

記者向けの質疑応答で答えるArm CEO レネ・ハース氏

 基調講演後に行なわれた質疑応答の中で、ハース氏はArm版Windowsに関してさらに踏み込んだ発言を行なっている。ハース氏は2020年代の終わりまでにはWindowsプラットホームでもArmアーキテクチャが大多数になると予想していると述べたのだ。

 ハース氏は「macOSでは既にx86からArmへの移行が起きている。そこでArmネイティブのアプリケーションの性能は目を見張るものがあるし、バッテリ駆動時間に関して妥協がないのはご存じの通りだ。

 Windowsに関しては、これまで多くのアプリがバイナリ変換で動作していたため、それが性能上の障害になっていた。しかし、Microsoft自身や多くのISVがArmネイティブへの対応を進めた結果、障害は取り除かれつつある。

 2020年代の終わりまでにはArmアーキテクチャのデバイスがWindows市場で支配的なシェアを占めるようになると予測している。今後18カ月間でどのようなシフトがあるのか見ていきたい」と語った。