イベントレポート
Acerが環境意識PC製品「Vero」を推進する理由
2023年6月2日 10:13
Acerは5月30日~6月2日に台湾・台北市で開催されているCOMPUTEX 2023に出展し、同社製品を展示して来場者にアピールしている。会期3日目の6月1日の午前9時からは、Acer CEO ジェーソン・チャン氏による基調講演が行なわれ、同社が最近力を入れている、サステナビリティ(持続成長性)の実現や、IoTといったPC以外の事業などに関して説明が行なわれた。
また、Acerのブースで、同社が取り組んでいる裸眼3D立体視のソフトウェア環境が、従来はUnreal Engineのみに対応していたが、ソフトウェア側のアップデートでUnityにも対応したと明らかにした。
持続的成長を実現するには持続する意志を持たないといけないとチャンCEO
Acerは台湾のODMメーカーとしてスタートし、2001年に製造部門をWhistronとして切り離した後は、PC製品の企画、設計、販売に特化したブランドPCメーカーとして発展してきた。その創業者であるスタン・シー氏は、台湾の松下幸之助のような存在で、伝説の経営者として台湾の経済界で重きをなしている存在だ。
そうしたAcerだが、現在のリーダーは、今回のCOMPUTEX 2023の基調講演に登壇したAcer CEOジェーソン・チャン氏だ。チャン氏はAcerが台湾などで販売している「eKinetkt BD3」という、自転車型トレーニング器具がついたワーキングデスク/チェアに載って登場し、同製品を「ビジネスと運動の両立を実現できて、サステナビリティを実現できる」とジョークを飛ばしながら話を始めた。
チャン氏は「大昔、台北のあるあたりは海だったが、仮にこのまま地球温暖化が進めば再び海になってしまい、台北101(台北で最も高いビル)だけが海から顔をだしている状態になってしまう。そうしたことが起きないようにサステナビリティを実現することを取り組んで行くことが大事だ。では、どうすればいいのかと言えば、サステナビリティの取り組みを持続的に行なっていくことだ(make sustainablility sustainable)」と強調した。
Acerはそうした取り組みの1つとして、「Vero」というブランド名で総称される再生由来の素材を利用したノートPCをリリースしており、持続可能なPC産業を目指す取り組みを進めている。
また、チャン氏はAcerが取り組んでいるPC以外の製品についても触れ、たとえば糖尿病の合併症として知られている網膜症を簡易に検査できる検査機について紹介するなどして、同社がPC以外のビジネスにも積極的に取り組んであり、そうした事業の多角化を進めていると強調した。
台湾ではEVのチャージャーや、電動自転車、さらにチャン氏が冒頭で紹介した自転車型トレーニング器具付きのワーキングチェア、空気清浄機などさまざまな製品に取り組んでおり、既に空気清浄機に関しては日本でも販売が開始されている。
チャン氏は「我々の売上の30%はPC以外の製品になっており、今後もそれは拡大していくだろう」と述べ、Acerは企業の方針としてPC以外のビジネスを積極的に拡大していくと強調した。
裸眼3D立体視がUnreal Engineで作られているアプリだけでなく、Unityで作られているアプリにも対応
AcerはCOMPUTEX 2023の展示ブースも出展しており、同社ブースではCESなどで発表されたPCなどを中心に展示が行なわれていた。その中でも注目は、最近同社が力を入れて製品展開している裸眼3D立体視のソリューションだ。
Acerが販売している裸眼3D立体視は、ディスプレイ上部に用意されているカメラ-センサーが目の動きを捉えて、目の動きの動きに合わせてズレている画像を表示することで、物体が立体であるように見せるという仕組みになっている。
この裸眼3D立体視の製品自体は昨年(2022年)に発表されていたが、今回のCOMPUTEXではそのソフトウェアがUnreal Engineだけでなく、Unityの3Dエンジンにも対応したことが明らかにされた。日本のゲームパブリッシャーが提供する3Dゲームなどは、ゲームエンジンとしてUnreal Engineではなく、Unityを利用していることが多く、対応が待ち望まれていたのだ。今回その対応が明らかにされたことで、この裸眼3D立体視にUnityのエンジンを使っているアプリケーションを対応させることがより簡単になる。
また、従来はこの裸眼3D立体視は、1つのディスプレイだけに対応可能だったが、今回のCOMPUTEXでは、マルチディスプレイにも対応したことが明らかにされた。