イベントレポート

TP-Link、Wi-Fi 7対応ルーター発表。11,520+11,520+5,760+1,376Mbpsの高速通信が可能

TP-LinkがCESでWi-Fi 7のメッシュルーターとWi-Fiルーターを発表

 TP-Linkは、CES 2023の会期に合わせて1月4日(現地時間)に開催されたイベント「Digital Experience」に出展し、Wi-Fi 7対応ルーター3製品を発表・展示した。

 展示されたWi-Fi 7ルーターは、メッシュ対応の「Deco BE95」のほか、メッシュ非対応の「Archer BE900」および「Archer BE805」の3製品。メッシュルーターのDeco BE95は、6GHzが2つ、5GHzが1つ、2.4GHzが1つという4つの帯域を同時に利用することができ、6GHzは11,520Mbpsで、5GHzは5,760Mbpsで、2.4GHzでは1,376Mbpsで通信することが可能になっている。

Wi-Fi 6Eの6GHzのチャンネルを倍にするWi-Fi 7、多くの国では規制当局の対応は必要がない

TP-LinkのWi-Fi 7ルーター「Archer BE900」(左)および「Archer BE805」(右)

 日本では昨年の9月から総務省が6GHz帯をアンライセンスバンド(免許を必要としない無線帯域)として解放することを決定し、無線機器(具体的にはルーター/アクセスポイント/PC/スマートフォンなど)の認証が開始。6GHzのWi-Fiは「Wi-Fi 6E」と総称されており、すでに対応機器が出回っている状況だ。

 業界ではすでに次の規格として「Wi-Fi 7」の取り組みが始まっている。Wi-Fi 7の特徴は、Wi-Fi 6Eでは160MHzのチャンネルを1つの帯域として束ねて利用可能だったが、Wi-Fi 7ではそれが320MHzのチャンネルに拡大されることだ。

 たとえば、Wi-Fi 6Eの6GHzの160MHzチャンネルを利用して5,760Mbpsで通信できれば、Wi-Fiでは11,520Mbpsと10Gbpsを超える通信速度を実現できる。

 また、6GHzの帯域は、まだ使っているユーザーが少ないので、混雑している2.4GHzや5GHzなどに比べて、今のところ「渋滞がない」ことが最大の特徴と言える。

 Wi-Fi 6Eを立ち上げるときには、6GHzをアンライセンスバンドとして利用するために、世界各国の無線政策当局(日本で言えば総務省)の認可や、そもそも既存の電波の移動などが必要になり、それが日本で米国などに比べて導入が遅くなって要因になっていた。

 しかし、Wi-Fi 7ではチャンネルを160MHzから320MHzに拡張するだけで、すでに各国ともそれを見えてチャンネルに余裕を持たせてある場合がほとんどなので、特に無線政策当局の作業は必要ない。

 日本で言えば技適のような認証を獲得すればいいだけと見られ、Wi-Fi 6EからWi-Fi 7への移行はよりシームレスに進むと考えられている。

TP-LinkはWi-Fi 7のメッシュルーターとWi-Fiルーターを発表

Wi-Fi 7メッシュルーター「Deco BE95」
Deco BE95の背面ポート、10GbpsのEthernetポートなどが用意されている

 半導体メーカーはすでにWi-Fi 7に対応したチップの出荷を開始している状況だ。アクセスポイントなどのSoCを出荷しているMediaTekはCESに合わせてWi-Fi 7に対応した「Filogic 880」を発表しており、6GHzの320MHzチャンネルを実現できる。

 また、クライアント側でも、Qualcommが昨年の11月に発表した「Snapdragon 8 Gen 2」がWi-Fi 7への対応をすでに明らかにしている。

 今回のCES 2023では、1月4日(現地時間)にDigital Experienceのイベントにて、TP-LinkがWi-Fi 7に対応したメッシュルーターの「Deco BE95」、Wi-Fiルーターの「Archer BE900」および「Archer BE805」を展示した。

 TP-Linkは、MediaTek Filogic 880の発表時にコメントを寄せており、いずれもFilogic 880ベースのルーターだと考えられる。

 メッシュルーターのDeco BE95は4つの帯域(6GHzが2つ、5GHz、2.4GHzをそれぞれ4ストリームずつ)を仮想的に同時に使えるようになっており、11,520Mbps(6GHzその1)+11,520Mbps(6GHzその2)+5,760(5GHz)+13,76Mbps(2.4GHz)が同時に利用できるので、4つの帯域すべてを合わせて最大33Gbpsで通信できる。

Wi-Fi 7ルーター「Archer BE900」(左)および「Archer BE805」(右)
Archer BE900の背面ポート
Archer BE805の背面ポート

 それに対してWi-FiルーターのArcher BE900は4つの帯域は6GHz、5GHzが2つ、2.4GHzとなっており、こちらは11,520Mbps(6GHz)+5,760(5GHzその1)+57,60(5GHzその2)+1,376Mbps(2.4GHz)というかたちで仮想的に同時に利用できる。

 Archer BE805は3つの6GHz、5GHz、2.4GHzの3つの帯域が仮想的に同時に利用できる。

 TP-Linkによれば、すでにAmazon.comで予約を受け付けており、Deco BE95は1,199.99ドル、Archer BE900は699.99ドルという価格設定がされている。

 すでに述べた通り、Wi-Fi 7はWi-Fi 6Eと同じ6GHzを利用するので、技適マークを除き規制当局の対応が不要と考えられるため、米国で利用が開始されれば、さほど遠くない時期に日本にも入ってくる可能性が高いだろう。今後ともその動向は要注目だ。