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急速に立ち上がるWi-Fi 7。Qualcommは搭載スマホ、MediaTekは搭載PCやTVを展示

MediaTekがMWCで展示したWi-Fi 7に対応したFilogic 380をLenovoのPCに組み込んで行なっているデモ。メーターの数字がその時点でのライブの通信速度で5,100Mbpsという通信速度が実現されている。

 通信関連のイベントMWC 2023が、スペイン王国バルセロナ市にある「Fira Gran Via」において2月27日~3月2日の4日間にわたって開催されている。MWCの主役は通信キャリア、それを支えるインフラプロバイダーなどで、ここ数年の傾向として5Gの普及に向けた各種の取り組みが紹介されている。

 例えば、通信キャリアの通信を支えるコアネットワークの仮想化(vRAN)は引き続き大きなテーマで、IntelやQualcomm、AMDといった本誌でもおなじみの半導体メーカーもvRANを実現するようなCPUやアクセラレータなどを提供して、それをOEMメーカー(Dell Technologies、HPE、Ericsson、Nokia)などが搭載したvRANソリューションを提供している。
 そうしたMWCだが、クライアント系の話題も多数あり、既に2月27日から開始されている展示会場では、次世代Wi-Fiとして導入が進むWi-Fi 7対応製品が注目を集めている。機器ベンダーに対してWi-Fiコントローラチップを提供するMediaTekとQualcommは、いずれも自社のWi-Fi 7対応コントローラを搭載したクライアント機器や自社チップを搭載したアクセスポイントの展示を行なった。

QualcommはFastConnect 7800 Wi-Fi 7を採用したクライアントやWi-Fiルーター

例年通りホール3に設置されているQualcommブース

 Wi-Fi 7は、昨年(2022年)の9月に日本でも利用可能になった6GHz帯を利用可能にするWi-Fi 6Eの後継規格で、6GHzや5GHzなどで320MHzのチャンネルを束ねて通信することが可能になるので、より高速な無線データ通信が可能になることが大きな特徴だ。

 Wi-Fi 6Eで初めてサポートされた6GHzは新しい帯域になるため、各国の規制当局により割当を受ける必要があり、規制当局側の手続きが終わるまで利用できなかった。このため、米国のようにいち早く利用できるようになった国、日本のように昨年の9月になった国、そしていまだに利用できていない国と、電波の割当手続きの進展に差があって利用できるようになるのに国によって差が出ている。

 しかし、Wi-Fi 7では、既に割り当てられている5GHzおよび6GHzの帯域のうち、複数のチャンネルを束ねて通信する形になるため、日本で言うところの「技術基準適合証明」(いわゆる技適マークを受けること)のような機器ごとの無線認証は受ける必要があるが、新しい帯域を割り当ててもらうよりは迅速に利用することが可能になる。

 具体的にはWi-Fi 6Eまでは最大160MHzを1つに束ねて通信できるようになっていたが、Wi-Fi 7では320MHzを1つに束ねて通信することが可能になり、単純計算でも帯域幅は倍になる。

Wi-Fi 7に対応しているXiaomi 13(左)とXiaomi 13 Pro(右)

 Qualcommは既に昨年のMWCで、Wi-Fi 7を実現するWi-Fiコントローラ「FastConnect 7800 Wi-Fi 7」を発表しており、それを11月に発表したSnapdragon 8 Gen 2と組み合わせることで、Wi-Fi 7対応のスマートフォンを実現できるとアナウンスしている。

 これを受けて、12月にはXiaomiが、中国国内向けに発売する同社のフラッグシップ向けXiaomi 13 Pro/Xiaomi 13で、Snapdragon 8 Gen 2とFastConnect 7800 Wi-Fi 7を搭載し、Wi-Fi 7に対応すると明らかにした。今回XiaomiはXiaomi 13 Pro/Xiaomi 13をグローバル向けに発表し、そちらのグローバルモデルでもWi-Fi 7に対応すると明らかにしている。

XiaomiのWi-Fi 7対応ルーター「Xiaomi Router BE10000」、Qualcomm Networking Pro 1220ベース
XiaomiのWi-Fi 7対応ルーター「Xiaomi Router BE7000」、Qualcomm Networking Pro 820ベース
TP-LinkのWi-Fi 7対応ルーター「DECO BE95」、Qualcomm Networking Pro 1620ベース

 また、Qualcommはアクセスポイント向けにもWi-Fi 7のソリューション(Qualcomm Networking Pro 1620/1220/820)を提供しており、今回のMWC 2023ではXiaomi、TP-Linkなどのルーターメーカーが発表したWi-Fi 7対応ルーターを展示していた。

MediaTekは、スマートフォン、PC、TVなどにWi-Fi 7を搭載、実際の動作デモも

Filogic 380を利用したWi-Fi 7対応PCのライブデモ、5100Mbpsなどダウンロードスピードを実現

 台湾のMediaTekは、コロナ禍の間にスマートフォン向けSoCでQualcommを抜いてトップシェアになったほか、薄型TVの市場でもSoCでトップシェアになっている半導体メーカーだ。近年ではQualcommの牙城だったフラッグシップ向けのスマートフォンSoCにも取り組んでおり、昨年にはDimensity 9200というQualcommのSnapdragon 8シリーズに匹敵するようなハイエンドSoCを発表し、出荷を開始している。

 同時に、本年のCESのタイミングでは「Filogic 880」(ルーター/アクセスポイント用)および「Filogic 380」(クライアントデバイス用)というWi-Fi 7に対応したWi-Fiコントローラを発表している。

Dimensity 9200を搭載したVIVO x90
こちらはFilogic 380Tを採用したWi-Fi 7に対応した8K TVのデモ
Filogic 880を採用したTP-LinkのBE19000、Wi-Fi 7に対応したメッシュルーター、6GHzにおいて4x5で通信できるのが特徴

 今回のMWCではそのDimensity 9200を採用しWi-Fi 7に対応したスマートフォンとして「VIVO x90/x90 Pro」を展示したほか、LenovoのゲーミングノートPCにFilogic 380を組み込み、外部Wi-Fiアンテナ(2x2)を接続したWi-Fi 7の接続ライブデモを行なった。そのデモでは常時5Gbpsを超える通信速度が表示されており、従来のWi-Fi 6E(2x2アンテナで2.4Gbps)では実現できない速度が実現できている様子を確認できた。また、Wi-Fi 7モジュールをTVに組み込んで、Wi-Fi 7で通信している様子も確認できた。

MediaTekのT800を採用した、FibocomのFM380-GL。現行のThinkPad X1 Carbon Gen 10やThinkPad X13 Gen 3などではFM350-GLが採用されている

 なお、MediaTekブースではPC用の5Gモジュールの最新版も展示されていた。中国の通信モジュールメーカーFibocomの「FM380-GL」がそれで、現行製品の「FM350-GL」の後継となる。FM350-GLはLenovoのThinkPadシリーズなどに採用されている5G通信モジュールで、MediaTekの「T700」が採用されている。

 今回展示されたFM380-GLはその後継となる「T800」という5Gモデムが搭載されている。T700ではサブ6(6GHz以下)の5Gに対応していたが、T800ではミリ波、そしてSA(Standalone)方式にも対応すると機能が拡張されている。

 近年のThinkPadは、Intel CPUを採用したモデルでは通信モジュールとしてFibocom製のものをずっと利用しているので、次世代製品あたりでこのFM380-GLが搭載される可能性が高いということができるだろう。