イベントレポート

Huawei、「MateBook X Pro」はやっぱり日本も第一次販売国

~第2四半期に投入予定。日本語キーボード版は現時点で未定

モバイルブロードバンド&ホームデバイスビジネス担当プレジデントWan Biao氏

 MWCというモバイルシーンの祭典であるにもかかわらず、モバイルネットワーク非対応のPC製品として「MateBook X」シリーズの後継「MateBook X Pro」を堂々と披露したHuawei。その意図はなんなのか、そして日本市場への投入はどうなるのか。同社モバイルブロードバンド&ホームデバイスビジネス担当プレジデントWan Biao氏と日本・韓国リージョンプレジデント呉波氏に聞いた。

モバイルブロードバンド&ホームデバイスビジネス担当プレジデントWan Biao氏

--MateBook X Proとスマートフォンの棲み分けはどのようにお考えでしょう。

Wan氏:あらゆるデバイスを揃えるのがHuaweiのやり方です。それによって、人、クルマ、家庭を中心としたさまざまなシーンをスムーズに切り替えることを目指しています。今回のMateBookは人によるビジネスシーンを想定しています。同時に発表したMediaPad M5はエンタテイメントとモバイルビジネスシーンですね。

--頑固にモバイルネットワークに非対応なのが意外です

Wan氏:今の市場ではそこまでのニーズが認められないというのが実状です。さらに、PCを極限まで薄く軽くしていきたいと考えています。MateBookのようなユニボディではアンテナ確保もまだ難しい状況で、デザイン性も損なわれるので、今回もLTEには非対応としました。ですから、今、お持ちのスマートフォンでのテザリング、モバイルルータなどを通してインターネットを使っていただきたいですね。

--Huaweiにとっての日本市場はどうなのでしょうか。

 販売状況については満足しています。日本はハイエンド市場です。そこで高い評価を受けることができていると認識しています。われわれのPC事業のビジネスはスタートしたばかりで、これから販路も拡大していきたいと考えていますが、まだ時間はかかるでしょうね。

 このカテゴリは、IntelのプロセッサとWindowsでどう差別化するのかが重要です。そこで今回は、フルビューのタッチディスプレイを実装する方向性を実現しました。さらに、クラウドサービスとしてのHuaweiShareで、PC、タブレット、スマートフォンを一気通貫する体験を提供する予定です。

 われわれはPCの業界、もちろん日本のPCシーンでは新参者です。そこでやるべきことは着実に製品作りをして、パートナーと販路を拡大することです。そこをしっかりやっていきたいですね。

日本・韓国リージョンプレジデント呉波氏

ブース展示のMateBook X Pro

--今回のMateBook X Proの第一次販売国に日本が含まれていませんでした。

呉氏:お騒がせして申しわけありません。日本は第一次発売国です。今、なぜ発表会スライドの表示で日本が漏れてしまったのか調査中ですが、本当に申し訳ありません。エグゼクティブは全員日本が一次販売国だと認識していました。PC製品の定義は日本が大きな役割をもっているので、一次販売国でないはずがありません。

 需要も大きく、日本1カ国の市場がほかの国の12カ国くらいのボリュームがあり、日本が漏れることはありえません。この第2四半期には発売したいと考えていますが、それがいつになるかは調整中です。

--日本ではMVNOが浸透してきているのでLTEが使えないのは残念に思いました。Intelも5G対応を推進しようとしています。

呉氏:LTEはとてもホットなトピックスですが、もし搭載するのであればMVNOやMNOの考えを取り入れなければなりません。そして、どう売ればいいのかという点でいろんな意見が出てくることになります。

 また、日本ではたくさんのモバイルルータが発売されていますし、当然それはPCといっしょに使われています。調べていくと、2018年の現時点ではLTE搭載についての強い需要はなく、ビジネスモデルも確立していません。

 じつは、MWCの前に社内でLTEに関するディスカッションをしたのですが、そこでも明確な結論は出ていません。ただ、市場にある種のニーズがあることは認識しています。

 もう1つ理由があるとすれば、HuaweiはIntelと戦略的なパートナー関係にあることが挙げられます。だから発表会でもインテルジャパンのゲストを迎えますよね。ですから、今後、Intelが強い要望があれば……といったところでしょうか。今の時点ではこのくらいで、その先はご想像にお任せします。

--第2四半期の発売に日本語キーボード等は間に合いますか

 じつは、日本語キーボード実装は今の段階で未定となっています。ただ、発売までもう少し時間があるので、本社の関係部署にフィードバックしてフォローアップをしようとしています。やはり消費者の声が大事ですし、ニーズにはすばやく応えなければなりません。

 今回の製品ではPCにポップアップカメラを実装していますが、ハッキングによる盗撮防止にも貢献できています。これもまさに消費者ニーズに応えたものです。画面上部のカメラではハッキングされたときに背景まで映りこんでしまい、余分な情報の漏洩リスクが高まりますが、このカメラの位置だと、上方を仰ぐので顔しか映りませんからね。

--あらためてPC製品の日本での販売状況をお聞かせください。

 参入して2年、日本の販売チャネル、そしてパートナー企業との関係作りをしてきました。じつは、とくにこれといった販売目標を設定してこなかったのですが、予想よりは少ないというのが現状です。

 今回のMateBook X Proは本当の意味での主流となる製品です。サイズにしても、ディスクリートグラフィックスにしても力の入った製品に仕上がっています。

 PC製品を日本に投入するからといってなにかビジネスのやり方を変えようとしているわけではないのです。この2年間、B2Cの市場で力をつけようとしてきたわけですが、調べてみると日本におけるおもな製品は15型超のものが多数を占めることがわかりました。

 日本の市場は大きな特徴が2つあります。それは15型以上のPCが多いことと、B2B市場がメインであることです。

 画面サイズについてはこの2年間、グローバル市場でメインになっているのは12~13型です。バルセロナに来てデパートや量販店をのぞいてきましたが、大きなPCは売っていません。その一方で、12~13型は日本ではそのサイズは小さいと見なされます。グローバル市場では15型は大きすぎると見なされます。だから13.9型なのです。日本市場の状況を本社に伝えて日本市場と海外市場の両方を見て落としどころになったのが今回の製品となります。

MWC会場のHuaweiブース

--スマートフォンは日本の市場でも絶好調のようですが、PCはどのように売り方が違うのでしょう。

 PC製品のブランディングとスマートフォンのブランディングは違います。でも日本では今のところスマートフォンはスマートフォン、PCはPCでというふうには売り方を分ける計画はありません。総合的にアピールしていくつもりです。

 タブレットなども含め、ヨドバシカメラに先日オープンしたショップinショップのような専門コーナーなどで展開していきます。スマートフォンの販路を使い、そこにPCをのせて拡大していきたいですね。

 ただ、PC製品に過度な期待をもっているわけではありません。期待が大きければ大きいほどがっかりする可能性もあるからです。だから安定した成長をめざしていきたいと努力してきました。じつは1月にPC製品の販売台数がこれまでの3倍になってほっとしているところです。ゆっくりでもいいので安定して着実に伸ばしていきたいですね。とにかく日本での目標は一位になることではなく、生き残ることですから。

 店舗展開をということを例にあげると、海外のブランドが一気にたくさんの店を作り、たくさんのスタッフを雇っても、ある程度の期間で一気に閉店していくのでは意味がありません。過去3年間、そういうことをやってきたメーカーがいるのをこの目で見てきました。それでは明らかに消費者の支持を失ってしまうことになるでしょう。

 息の短いブランドは他人に打ち負かされるのではなく、自分に打ち負かされていくところです。設立してから数百年も続いている会社のほとんどは日本にあることをご存じですか。Huaweiの願いとしては、日本市場においても末永く消費者のためにサービスを提供していきたいと考えています。

--B2B市場についてはいかがでしょう。

 日本のB2B市場に入るにも大きな障壁があります。それは、Huaweiだけでは対応できずSIerなどのパートナーとの協力が必要である点です。また、保守や修理に対して、クルマの部品と同じくらいのレベルの要求があることもハードルを高くしています。この点は、かなり厳しいですね。それができるように、エネルギーをたくわえている段階です。長く継続されてきた慣習や体制、やり方は、新参者にとっては大きなネックになりますが、なんとかそれをやらなければなりません。

MWC会場のHuaweiブース