イベントレポート
P20への遙かなる道
~HuaweiのRichard Yu CEOインタビュー
2018年2月27日 18:12
MWC開催中の会場において、HuaweiコンシューマービジネスグループCEOであるRichard Yu氏が、日本人プレスとのグループインタビューに応え、3月27日にパリで開催される発表会で、同社フラグシップスマートフォンPシリーズの最新機となる「P20」そして「P20 Pro」が披露されることが明らかになった。
――日本の市場についてどのように考えていますか。
Yu氏:日本はとても重要な市場だと考えている。Huaweiは、スマートフォンに限らず、ほかの製品においても、その内部には非常に多くの日本製品を使っている。JDIの液晶やソニーのイメージセンサーなど多岐にわたり、それを製品に統合し、グローバルに出荷している。
さらに無線の部分も日本製のものが多く、パナソニック、村田製作所や、京セラなどとは長い付き合いだ。また、自分自身はHuaweiに入社して25年になるが、創業者の任正非(Ren Zhengfei)に、日本を見習わないといけないと言われ続けていた。
――Huaweiの強みは何でしょう。
Yu氏:Huaweiは通信が本業であり、通信は強みでもある。通信でHuaweiはビジネスを始めたことで、通信に深い理解を持つようになった。チップセットやモデムを開発しても、高い互換性を維持できている。
さらに、アジアの中ではソフトウェア、システムデザインに長けている企業だと自負している。つまり、アメリカの企業に比べると、ハードウェアで勝つことができる。アジアの企業はハードウェアが強いことで知られる。だが、アメリカからも学ぶべきものも多い。たとえば、ビジネスモデルやエコシステムの構築などがそうだ。
その一方で、アジアはサプライチェーンを作るのも得意だ。Huaweiは工業デザインやIDにも長けていると思う。だが、中国でそれを完結するのではなく、欧米で専門のチームを立ち上げている。つまり、ほかの国から有能な人材を招き入れているわけだ。
うちは欲張りな企業ではない。パートナーにも利益が出るように、儲けを共有している。だから利益率は低い。でもそれが長期的な発展につながるのではないだろうか。
つまり、Huaweiの強みは、目標を高く持ち、正しい方向性で、深い理解と洞察力をもって、確実な実行力で、能力を高めていく姿勢だ。そんな能力を持つ優秀な人材がたくさんいる。
中国のことわざにもあるが、上を目指すと中になる、中を目指すと下になる。だから第3位を目指すとダメになる。常に一番を目指さなければならない。あきらめずに、常に一番を目指すことが重要だ。それは学生時代の経験からも言えると確信している。
――それは、SamsungやAppleを追いこせると信じているということですね。勝算はあるのでしょうか。
Yu氏:Huaweiは無線ネットワークのトップとして、今エリクソンを抜いて売上げも利益も1位になっている。コンシューマービジネスグループは、当初は利益もブランド力もなかったが、この3年で順調にビジネスは伸びている。
だから、自分の口から言うのもなんだが、この1~2年で2位になる。そして、1位になるのにはもう少し時間がかかると思うが、それでも4~5年で世界一になってみせる。
――そのためにHuaweiは何をするべきなのでしょう。
Yu氏:ライバルよりも優れた新製品を、継続的に出すことが重要だ。チャレンジングな目標を立てることも大事だと考える。そうすると次々にそれをクリアでき、結果として伸びる。
――日本を見習うという話ですが、今、日本企業にはB2Bに軸足を置くところが増えています。
Yu氏:日本企業がB2Bをやるなら、B2Cにむしろ力をいれるだろう。B2Bを究める、そんな日本企業と一緒にやっていきたいと考える。
いずれにしても、B2Cは難しいビジネスだ。あらゆる方面をしっかりやらなければならないからだ。販売国が違えば、それも反映しなければならない。それぞれの国のエンドユーザーの琴線に触れられる製品が必要だ。
自分自身は、コンシューマービジネスグループを始める前のHuaweiに入社後、19年間はB2Bをやってきたが、そのほうが楽といえば楽だ。何よりB2Cビジネスは、グローバルでなければならない。
――米国でのビジネスがうまくいかないような声もきこえてきます。
Yu氏:パートナーシップについては、日本のキャリアとの間で良い関係を築いている。ほかの国も同様だ。
ところが、アメリカは政治の力を使って、ライバルが邪魔をしているように感じる。ほかの国では言われることはないのに、たった1つだけの国で良くないと言われるのが理解できない。問題を明確にしてもらえれば反応のしようもあるが、それがわからないので、どうしようもない。
Huaweiは中国に本社があるがグローバル企業だ。年間売上げの6割が中国以外のもので、社員についても世界各国籍だ。
Huaweiを設立して30年、自分自身はそのうち25年いたことになるが、最初はただの中小企業だったし、その歩みをしっかりとこの目で見てきた。そこには最初から、グローバル企業を目指す精神があった。
政治団体とも無縁だし、国ごとのコンプライアンス、文化を尊重する。どの国に進出しても、政治に深く関わることはない。だから信じてほしい。
――Huaweiの次の一手は何でしょうか。
Yu氏:次の一手というか、いつも考えていることは、Huaweiが人々のあらゆるシーンにおける経験を提供しようということだ。人々の衣食住、仕事、芸術などを、1つのアカウントで紐付けるクラウドサービスなどを提供することで浸透させていきたい。
今回発表した「MateBook 10」は、ジャパンディスプレイのLPTS液晶を使った、フルビュータッチディスプレイを搭載している。これは多くの人々に受け入れられるに違いないと信じている。
最初、PCのカテゴリに入ったとき、「なぜレッドオーシャン市場のカテゴリに参入しようとするのか。そこには熾烈な戦いしかないぞ」と言われたのを思い出す。
だが、スマートフォンのカテゴリは血の海だった。だからレッドオーシャンくらいは、たいしたことはないと思ったりもした(笑)。
いずれにしても、あらゆるシーンでスマート体験を提供するためには、PC体験を欠かすことはできない。だからPCカテゴリにも、全力を投入する。
――次のスマートフォン新製品が、3月27日にパリで発表されるそうですね。
Yu氏:MWC直前の発表会でお知らせしたとおりだ。AppleやSamsungの製品を大幅にしのぐ製品ができた。
これも、日本のパートナー企業と一緒にやったからこそ実現できたものだ。イメージセンサー、カメラモジュール、イメージシグナルプロセッサ、複数のレンズを使うアルゴリズム、そしてAIの処理能力を極限まで使うなど、極めて難易度が高い製品が完成した。この分野では、常に他社に先行していきたいと考える。
ぜひ、パリの発表会においでください。お待ちしています。
――ありがとうございました。