イベントレポート
【ISSCC 2018前日レポート】世界26カ国/地域から半導体研究の最新成果が集結
2018年2月13日 11:59
最先端半導体チップの研究開発成果が公表される、世界最大の国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)」が今年(2018年)も、米国カリフォルニア州サンフランシスコで始まる。会場は例年と同じく、ダウンタウンのMarriott Marquisホテルである。プロセッサやメモリ、ミックスドシグナル、無線通信、有線通信、人工知能、バイオメディカルなどの最新半導体技術が登場する予定だ(参考記事:回路設計に関する世界最大のイベント「ISSCC 2018」の概要が固まる)。
メインイベントの技術カンファレンス(技術講演会)は、2月12日から14日までの3日間(米国太平洋時間)に渡って開催される。プレナリ講演セッション(基調講演セッション)を含めて全体で31本のテーマ別講演セッションが予定されている。技術講演会の前日である2月11日には、フォーラムやショートコースなどと呼ばれる、技術講座が実施された。
611件の投稿から202件の論文を採択
今年のISSCCで発表することを目指して投稿された研究開発成果(投稿論文)の件数は611件で、前回(2017年)の641件からは少し減少した。採択された論文の件数は202件である。採択率(採択論文数/投稿論文数)は33%で、最近はほぼ同じくらい。3件の投稿の中で発表できるのは1件だけ。かなりの狭き門であることがわかる。
地域別の発表件数では北米優位が続く
202件の発表論文(採択論文)を地域別(北米、欧州、アジア)に見ると、北米が89件で44%と最大を占める。2015年以前はアジアが最大地域となったこともあった。ここ3年は北米が最大地域を維持してきた。アジアは78件で39%、それから欧州が35件で17%となっている。最近は欧州の発表件数が減少しているように感じられる。
今年のISSCC(ISSCC 2018)における発表者の地域をもう少し詳しく見ていこう。北米が2カ国、アジアが日本を含めて7カ国/地域、欧州が9カ国合計すると18カ国/地域となる。前年の21カ国からは少し、減少した。
なおこれらの数字はすべて、第1著者(採択論文の著者が複数のときに、最初に記述された氏名)の国/地域を数えた結果である。複数の著者が複数の地域にまたがっている論文では、第1著者を除いた国/地域はカウントされていない。したがって実際には、18カ国よりも数多くの国/地域が発表論文に関わっている。この問題については後でもう少し詳しく述べよう。
日本の採択件数は前年と同水準の低空飛行
「日本は2012年~2016年のISSCCで、25件~30件程度の採択論文数を維持してきた。残念なことに前年のISSCCでは、採択件数が14件に急落した。内訳は企業が8件、大学が6件である。2012年~2016年のISSCCでは企業が15件~20件の採択件数を維持してきた。企業の落ち込みが激しい。そして大学の採択件数は増えておらず、逆に減少している。」(参考記事ISSCC 2017の半導体チップがサーバー、PC、モバイルの将来像を指し示す)。
上記は前年のISSCCを紹介したときの文章である。残念ながら、今年のISSCCでも日本の採択論文数は低い水準のままだった。採択論文数は13件である。前年からさらに1件、減少した。企業の発表件数は8件、大学の発表件数が5件である。
最新のプログラムから全著者の国/地域をカウント
ISSCCの極東委員会が発表した論文数の国/地域が、著者名が複数の場合は第1著者(筆頭著者、あるいはファーストオーサー)の所属地域で計算していることはすでに述べた。しかし、複数の著者による論文が複数の所属機関と国/地域にまたがる場合、第1著者だけでは実態を正確に表しているとは言いづらい。
そこで2月11日に入手した最新のプログラムから、全著者の全所属地域を独自にカウントした。ISSCCの論文著者がどのくらいの国/地域に広がっているかを調べるため、例えば1件の論文著者に3種類の所属があって3カ国/地域にまたがっている場合は、それぞれの国/地域を1件に計上した。こうすると論文数に比べて国/地域の件数が増えてしまうという問題が生じる。目的を優先するためにこの問題は、無視しているので、あらかじめご了承されたい。
独自に全著者の所属地域をカウントした結果、ISSCCの著者は全世界で26の国/地域にまたがっていることがわかった。北米が3カ国、アジアが12カ国/地域、欧州が11カ国である。