イベントレポート
充電事情はPDよりもワイヤレス?
2018年1月15日 12:37
CES 2018ではさぞや多くのUSB Power Delivery(PD)関連の製品が登場するだろうと興味津々で臨んだが、ちょっと期待が大きすぎたようだ。次世代の画期的な電力供給デバイスはとうとう見つけることができなかった。
エンドユーザー製品としてのPCについては着々と対応が進んでいる。DellにしてもHPにしてもLenovoにしても発表された多くの新製品が積極的にPD対応をはたしている。かと思えば、ASUSのWindows on Snapdragon PC「NovaGo」のような製品でも、Type-C端子を持たずPDには対応していない製品があったりもする。
PCを使いながら45~65W、さらには100W近い大きな電力を得て、さらにバッテリも充電するという現在のACアダプタがはたしている役割を代替し、かつモバイル利用にも耐えるようなコンパクトなPD電源アダプタの登場にはもう少し時間がかかりそうだし、エンドユーザーにとっての使い方のモデル自体も提案しきれていない。
今年(2018年)のCESでは従来のSホールに隣接し、中国・深センや香港、台湾などの機器ベンダーが集中したパビリオンがサウスプラザと呼ばれるエリアとしてオープンした。通路、ブースともにものすごく整理された徘徊しやすいレイアウトで、しらみつぶしに見ていくにも負担がほとんどない。
そのあたりを丹念に見ていっても、PD対応アダプタというともっこりした直方体のおなじみの形状をしたものばかりでガッカリ感が強い。いくつかのベンダーに話を聞いてみたが、春には新しい製品が用意できるだろうといったコメントばかりだった。
かろうじてAnkerが2つのType-Cポート、2つのType-Bポート、合計4ポートを装備したPD充電アダプタを参考展示していた。PDは30W対応で日本でも夏には50ドル前後で発売するとのことだ。同様に参考展示されていたType-C、Type-B各1ポート合計2ポートを装備したアダプタも同様に片側30Wずつとなっている。その結果アダプタ自体は60Wで大きくなってしまっているのにPDについては30Wに制限されるといった状況だ。
2つのポートにPD対応機を接続し、両方のポートにユーザーが期待する電力を提供するというのはどうあるべきかということは、今後きちんと考えていく必要がある重要なテーマだ。順次充電するのがいいのか、半分ずつを分け合うのがいいのか。急速充電を期待するエンドユーザーのわがままな要求にどう応えるかは難しい。この先、3つ以上のポートを持つPDアダプタなども期待したいところだが、はたしてどのようになるのか。
もっともPDのソリューションそのものは着実に進んでいる。たとえばPDコントローラで知られるCypressは今回のCESで認証機能つきPD充電をデモしていた。これはネゴシエーションのプロセスでソースとシンクがたがいの認証を要求するもので、認証が成功しなければ、PD対応でも5Vを超える電圧を流さないというものだ。
そのほかCypressでは、PD対応USB 3.1 Gen 2 Type-C Hubや、さまざまなパワーアダプタのリファレンスデザインなどを紹介していた。これらがベンダー各社によって採用されることでスマートなエンドユーザー製品が生まれていく。それを期待して待ちたいところだ。
そんななかで想像以上に元気だったのがワイヤレス充電のソリューションだ。Qiによるワイヤレス充電はずっと5V対応のパッドが一般的だったが、昨年(2017年)、Galaxyシリーズが10W、iPhone 8世代が7.5Wの急速充電に対応したことで、市場が一気に広がろうとしている。
先の深センベンダーに話を聞いても、AppleがType-C LightningケーブルのMFi(Made for iPhone/iPod/iPad)認証を認めず、各社が対応ケーブルを作れないことから、iPhoneのPDによる急速充電対応製品は積極的になれず、必然的にワイヤレス充電に力を入れるしかないというのが実情らしい。
そんななかで、日本のローム(ROHM)が、約24WのACアダプタで給電し15Wを実現した高効率のワイヤレスチャージャーや、NFCを使った充電ソリューションをデモするなどの展開もある。今後のワイヤレス充電環境はかなり期待ができそうだ。