イベントレポート

【IEDM 2017レポート】Winbond、製品水準の品質を備える抵抗変化メモリを開発

Winbond ElectronicsがIEDM 2017で開発を発表した512Kbitの抵抗変化メモリ(ReRAM)の概要と、富士通セミコンダクターが2016年10月に製品化を発表した4MbitのReRAMの概要。両社の発表資料を基に筆者がまとめたもの。なお表内の1T1Rとは1個のトランジスタと1個の抵抗記憶素子を意味する

 台湾Winbond Electronics(以降はWindbondと表記)は、製品水準の品質を備える512Kbitの抵抗変化メモリ(ReRAM)を開発し、国際学会IEDMで12月4日(米国時間)にその概要を発表した(講演番号2.6)。

 ReRAMは次世代不揮発性メモリの候補の1つで、DRAMに近い高速の読み書きと、電源を切ってもデータが消えない性質(不揮発性)を両立させたメモリである。パナソニックセミコンダクターソリューションズがReRAMを内蔵する8bitのマイクロコントローラ(マイコン)を2013年7月に製品化しているほか、富士通セミコンダクターがパナソニックのReRAM技術を導入して2016年10月から4MbitのReRAM製品を提供している。単体メモリとしての製品開発は、Winbond Electronicsが富士通セミコンダクターに続く2社目となる可能性が高い。

標準型EEPROMとNORフラッシュメモリの置き換えをねらう

 Winbondは、開発した512KbitのReRAMによって標準型EEPROMとNOR型フラッシュメモリの置き換えをねらう。IEDMの講演では、それぞれのメモリとReRAMのおもな性能をレーダーチャートで比較し、ReRAMの優位性をアピールした。

 512Kbitの標準型EEPROM(SPIインターフェイス)との比較でReRAMが有利なのは、メモリセル面積、読み出し周波数、読み出し消費電力、書き込み遅延時間、書き込み消費電力である。2MbitのNOR型フラッシュメモリ(SPIインターフェイス)との比較でReRAMが有利なのは、書き込み回数とデータ保持期間、読み出しと書き込みの消費電流だとする。

512KbitのReRAM(赤線)と512Kbitの標準型EEPROM(青線)の性能を比較したレーダーチャート。中央に近いプロットがより優れている。IEDM 2017でWinbond Electronicsが発表した論文から(以下同じ)
512KbitのReRAM(赤線)と2MbitのNOR型フラッシュメモリ(青線)の性能を比較したレーダーチャート。中央に近いプロットがより優れている

二酸化ハフニウム系材料を記憶素子に採用

 開発した512KbitのReRAMは、1個のセル選択トランジスタ(T)と1個の抵抗記憶素子(R)でメモリセルを構成する、いわゆる「1T1Rタイプ」のメモリセルを採用している。記憶密度では標準型EEPROMよりも高いが、NORフラッシュメモリよりは低い。その代わり、メモリとしての動作は安定である。そしてCMOSロジックとの互換性が維持しやすいように、第1金属配線層と第2金属配線層の間に、抵抗記憶素子を作り込んでいる。埋め込みメモリへの展開がしやすい構造である。

 抵抗記憶素子の材料は二酸化ハフニウム(HfO2)をベースにしたもの。二酸化ハフニウムはReRAMの研究開発では抵抗記憶素子(電圧パルスの印加によって低抵抗状態と高抵抗状態を切り換える素子)に少なからず使われている材料である。ただし抵抗記憶素子の材料は二酸化ハフニウムを基本とするTMO(遷移金属酸化物)材料だとしており、材料組成の詳細は公表していない。

開発した512Kbit ReRAMのシリコンダイ写真とメモリセルアレイの電子顕微鏡観察像。左上はシリコンダイ写真。ダイの寸法は未公表。右上はメモリセルアレイと抵抗記憶素子の電子顕微鏡観察像。第1層金属配線(M1)層と第2層金属配線(M2)層の間に、二酸化ハフニウム系の抵抗記憶素子を作り込んでいる。左下は抵抗記憶素子の断面を電子顕微鏡で観察した画像。TMO(遷移金属酸化物)と表記されている部分が記憶素子の役割をはたす薄膜。詳しい組成は明らかにしていない。右下はセルトランジスタの断面を電子顕微鏡で観察した画像。90nmのコバルトシリサイド技術で製造している

長期信頼性と品質保証の試験で製品水準の品質を確認

 Winbondは講演で製造歩留まりや長期信頼性試験、品質保証試験の結果を公表しており、開発したReRAMがプロダクトビークル(製品化を前提にしたチップ)であると述べている。

 300mmウェハで生産した512Kbit ReRAMの製造歩留まりは、プロセス条件を詰めた結果、最高で95%に達しているとする。これはかなり高い数値である。

 長期信頼性試験では200年を超えるデータ保存期間と、10万回の書き込み後に100年を超えるデータ保存期間、そして100万回を超える書き込み回数といった良好な結果を得ている。100万回の書き込みを経ても、劣化はあまり見られない。

 半導体製品の認証に必須の品質保証試験では、150℃で1,000時間の高温動作寿命(HTOL: High Temperature Operating Lifetime)試験、150℃で1,000時間の高温放置寿命(HTSL: High Temperature Storage Lifetime)試験、25℃で1,000時間の低温データ保持(LTDR: Low Temperature Data Retention)試験の結果を示した。各試験ごとに140個の良品サンプルを用意し、すべてのサンプルが試験を通過した。なお試験前の処理として、260℃の赤外線リフロー(ハンダ付けの処理)を3回通し、そして150℃で2万回の書き込みを加え、さらに初期不良試験として150℃で168時間の連続読み出しを実施した。

製品化を想定した品質保証試験の概要。ハンダ付けの高温ストレスである赤外線リフロー(IR re-flow)や2万回の書き込みといった前処理を加えたあとで、高温動作や高温放置などの品質保証試験を実施している

さらに微細化しても書き込み回数試験の信頼性は同等

 そして90nm版の次世代製品として、55nm世代に製造技術を微細化したReRAMを開発中であることを明らかにした。試作したReRAMで書き込みを繰り返したところ、100万回の書き込み回数までは90nm版とほぼ同等の読み出し特性を得た。また赤外線リフロー処理をあらかじめ加えたチップでも、劣化はとくに見られなかった。

90nm技術で製造したReRAMと55nm技術で製造したReRAMで、書き込みを繰り返してからデータの読み出しで低抵抗状態(LRS)と高抵抗状態(HRS)の電流変化を調べた結果。100万回(E6)の書き込み回数まで確認した。90nm品と55nm品でほぼ同様の読み出し特性を得ていることがわかる

 90nm世代から55nm世代に微細化すると、単純計算では同じシリコン面積のメモリセルアレイに収容可能な記憶容量は2.7倍に増える。すなわち55nm世代で量産すると、製造コストをあまり増やさずに1Mbit品はもちろんのこと、2Mbit品も実現できることを意味する。将来が楽しみな開発成果だ。