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Wi-Fi Directのアプリケーション開発基盤が提供開始

~ユーザーも利用がより容易に

Wi-Fi Allianceの概要

 無線LANの規格策定を行なっているWi-Fi Allianceは16日(日本時間)、都内で記者会見を開催し、Wi-Fi Allianceでマーケティング担当 ヴァイス・プレジデントを務めるケリー・デイヴィス フェルナー氏が、8月より提供開始されたWi-Fi Direct機能拡張および開発基盤「Wi-Fi Direct Toolkit」の概要、および今後のWi-Fi規格のロードマップなどについて解説を行なった。

 Wi-Fi Allianceは、無線LANの規格“Wi-Fi”を策定する企業ネットワークで、全世界で650社以上の企業を抱えている。これまでに、スマートフォンやタブレット、PCなど多数の製品に搭載され、2万以上のWi-Fi認定製品が出ており、2018年までには100億台以上の機器に搭載され、ホットスポットも現在の500万から1,050万に増えるだろうとしている。ケリー氏は「近年の技術では最も成功したものの1つ」だと表現する。

 Wi-Fi Allianceは、2014年で15周年を迎えており、これまで継続的に相互運用性やレガシー互換性の確保に努めてきた。日本にも117社のメンバー企業がおり、2社の認定テストラボが存在している。そして技術の革新もこれまでに多くリリースしてきたが、今後もそれを続けていくとした。

 その技術革新の1つのマイルストーンとして、現在アライアンスが推進している、アクセスポイントなしでデバイス同士が通信できる規格「Wi-Fi Direct」を拡張し、8月に認定プログラムを開始した。

ケリー・デイヴィス フェルナー氏
Wi-Fiは現代における技術の成功事例の1つとなった
Wi-Fi Allianceは15周年を迎える
日本でのWi-Fi Alliance参加企業

Wi-Fi Directを拡張し、接続を容易にする

 Wi-Fi Directは、デバイス間のP2Pとグループの接続性を実現し、データの共有や閲覧、印刷や再生を可能にするもの。WPA2による強固なセキュリティや、WPS(Wi-Fi Protected Setup)による容易な接続性を特徴とするが、「Wi-Fi Directを利用するためには、まずデバイスを無線LANアクセスポイントのリストの中から、対象のデバイスを選んで接続するといった一手間が必要だった。加えて、例えば印刷の場合は、そのメーカーが提供する独自アプリを利用する必要があった」とケリー氏は指摘する。

 今回の機能拡張では、コンテンツの送受信を行なう「Wi-Fi Direct Send」、コンテンツの印刷を行なう「Wi-Fi Direct Print」、DLNA対応デバイスの発見を容易にする「Wi-Fi Direct for DLNA」と呼ばれる3つの標準サービスセットを追加し、無線でディスプレイ表示を行なう「Miracast」を拡張してより容易に接続できるようにする。また、開発者向けに「Wi-Fi Direct Toolkit」を提供し、容易にアプリケーションを開発できるようになるという。

 Wi-Fi Direct Toolkitを用いることで、開発者はWi-Fiの接続に関する開発を省けるほか、ユーザー側もWi-Fi Directをセットアップする手間が省けるようになる。例えばWi-Fi Direct Printを使った印刷の場合、「印刷したいドキュメントを選んで、印刷ボタンを押すだけで、バックグラウンドで自動的にプリンタを探し、それに接続して印刷を行なうことが可能になる」とした。

 なお、この機能拡張のテストベッドデバイスとしては、Googleの「Nexus 10」や、Marvellの「Avastar 88W8797 802.11a/b/g/nリファレンスデザイン」、MediaTekの「MT6592+6625搭載フォン」などが用意されている。また、OSレベルでの対応が非常に効果的であるとし、今後OSベンダーに働きかけていくとした。

Wi-Fi Directの機能と特徴
Wi-Fi Direct対応機器の出荷
Wi-Fi Direct機能の拡張を8月より認定開始
新たに加わる機能
Wi-Fi Directのテストベッドの機材
今回の機能拡張に関して賛同する声

IoTに対応するための802.11ahなど

 今後、あらゆるものがインターネットに接続するという“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”が広がって行くと予想されているが、その接続にもWi-Fiが非常に有効であるとケリー氏は言う。

 「Wi-Fiにはこれまで15年間に培ってきた相互運用性やレガシー互換性、接続のしやすさ、対応デバイスの多さ、そしてWPA2による政府グレードのセキュリティ性と堅牢性を備えており、IoTに最適な技術になる。特に電化製品やホームモニタリング、自動車などの分野において有効である」とアピールした。

 また、より低消費電力と遠距離通信が求められるデバイスに対しては、1GHz帯以下のバンドを使う802.11ahを用意。2016年以降の規格策定に向かって現在動いているという。「現時点ではまだシリコン(チップ)が完成していないため、それを待つ必要があるが、IoTに適した規格となる」とした。IoTと言えば、低消費電力なBluetooth 4.1があるが、802.11ahは遠距離で通信できるなどBluetoothにはない特徴もあり、「相互に補完する技術になるだろう」とした。

 このほかWi-Fi業界全体の動向としては、デバイスのIEEE 802.11acへの移行が順調に推移していること、2017年以降シングルバンド(2.4GHz帯のみ)からデュアルバンド(2.4GHz+5GHz)への移行が進むこと、ホットスポットへの接続が容易になるWi-Fi CERTIFIED Passpoint対応デバイスが10月に新機能を追加すること、そして非圧縮のHD映像をストリーミングできる60GHz帯の超高速通信技術WiGigが2016年のリリースに向けて開発が進んでいることを紹介した。

IoTやスマートホームによる通信の増加
Wi-Fiの使われ方の進化
Wi-Fiの特徴
デバイス搭載Wi-Fi規格の推移予測
IEEE 802.11acへの移行はタブレット/スマートフォンを筆頭に順調推移
Wi-Fi CERTIFIED Passpointにより容易にホットスポットに接続できる
WiGigの認定プログラムは2016年へ

(劉 尭)