マイクロソフト株式会社は17日、報道関係者向けの説明会「メディアエクスチェンジ」を開催し、マイクロソフトの日本法人が設立されてからの過去25年間や、今後の取り組みなどを説明した。
説明を担当したのは、マイクロソフト ディベロップメント株式会社 代表取締役 社長 兼 マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者の加治佐俊一氏。同氏は、かつて米Microsoftの日本代理店であったアスキーマイクロソフト株式会社の時代から就職しており、マイクロソフトの役員の中で最も長く現場に携わっている。以下、加治佐氏の説明の要旨をまとめる。
日本法人のマイクロソフトは、1986年に設立され、2011年で25周年を迎える。発足当時16人だった従業員数は、2,500人規模に増加した。2011年2月には、品川への本社移転や、「日本マイクロソフト株式会社」への社名変更を控えている。
加治佐俊一氏の履歴 | マイクロソフトの過去の25年間 |
一方、米Microsoftの出発点は、1975年にビル・ゲイツが掲げた「A computer on every desk and in every home」というビジョンだった。以降、Microsoftはプログラミング高級言語「BASIC」の投入をはじめ、1980年代にパーソナルコンピューター向けのOS「MS-DOS」、ワードプロセッサ「Word」などを販売、さらには1990年代にGUIを洗練したOS「Windows 95」を投入することで、従来メインフレームだけだったコンピューティングパワーを、個人やオフィスにもたらすことに成功した。
「すべての机に家庭にコンピューターを」というビジョン | 年代別のマイルストーン製品 |
日本のマイクロソフトが設立されてから25年間の間で、技術的な3つの大きな転換点もあった。1つ目は1993年に起きたプラットフォームの統一。日本はNECの「PC-9800」シリーズや、富士通の「FM TOWNS」シリーズなど、さまざまな異なるプラットフォームが共存した。マイクロソフトは、Windows 3.1とWindows NT 3.1の投入により、これらの異なるプラットフォーム間のアプリケーションの互換性の問題を解決した。当時、プラットフォームの統一によってメーカー独自の特徴がなくなるのではないかという疑問の声も挙がっていたが、各メーカーともに成長のポテンシャルを秘めていたので、結果的に成功した。
2つ目は1995年にInternet Strategy Dayで発表された、インターネットへの取り組みの強化。Windows 95の投入当初は、インターネットの利用が普及しつつあったにも関わらず、インターネットを利用するためのWebブラウザを標準搭載しなかったが、この方針転換によりインターネット関連の機能強化を図ることとなった。
そして3つ目は2002年に実施された、セキュリティ重視の開発モデルの根本的な見直し。これは2001年にワーム「Nimda」、「Coderead」が流行し、世間がOSのセキュリティと信頼できるコンピューティングへ注目するようになったからであった。この信頼できるコンピューティングの実現に向けて、ビル・ゲイツは初めて全社員向けにメールを出し、開発モデルの見直しを呼びかけた。その結果、Windows Vistaなどでは抜本的にセキュリティの問題への対策が施された。
3つの大きな転換点 | 日本におけるPCプラットフォームの統一 | Internet Strategy Dayで発表されたMicrosoftの方針 |
信頼できるコンピューティングの実現に向けてビル・ゲイツ氏が全社員に送ったメール | 過去のコンピューティングの変化 |
●クラウドコンピューティングとナチュラルUIが新しい転換点となる
今後の展望としては、2つの転換点を迎えるとした。1つ目はクラウドコンピューティング。コンテナ型データセンターの登場により、コンピューティングリソースやデータを従来よりも地方に分散させることができるようになった。また、外気をそのまま冷却に利用できる第4世代のデータセンターは電力効率が向上し、今後ますます普及が進むと見られる。
Xbox 360の「Kinect」をはじめとするナチュラルUIも、コンピューターがより人間に近づくという観点で、2つ目の転換点となるだろうとした。マイクロソフトの研究開発でも、顔や筋肉の動きをコンピューターにフィードバックするような研究を進めており、UIはより自然なものへと進化していくだろうとした。
データセンターの遷移 | ナチュラルUIの普及 |
ナチュラルUIの進化 | 利用が進むナチュラルUI |
また、マイクロソフトの研究は、クラウドコンピューティングやナチュラルUIのほかにもグラフィックスや写真/ビデオ、センサー、検索技術、エイズワクチンなどがあり、研究開発への投資はIBMなどをも大きく上回る年間95億ドル超の規模になるという。その中でも直近では、クラウドコンピューティングに関連するパートナー各社との連携を強め、クラウドコンピューティングを中心とした教育、医療、行政、農業、スマートグリッドなどへ貢献していきたいと語った。
Microsoftの研究開発費 | 研究開発の分野 | 日本のパートナーとの連携 |
クラウドコンピューティングの実現に向けたパートナーとの共同研究 | クラウドコンピューティングを中心とした教育や医療、行政、農業、スマートグリッド |
(2011年 1月 17日)
[Reported by 劉 尭]