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IPv4と完全下位互換の「IPv8」ドラフトが投稿。IPv6の課題を克服

図はイメージ(Geminiで生成)

 IETF(Internet Engineering Task Force)に対して、次世代ネットワークプロトコル「Internet Protocol Version 8(IPv8)」のドラフト版「draft-thain-ipv8-00」が、One所属のJamie Thain氏によって4月14日が投稿された。なお、このドラフトはIETFの承認や策定を経たものではない。

 前身に当たる「IPv6」は、アドレスの枯渇問題には対処できたが、管理上の断片化問題には対処できず、25年間の展開努力にもかかわらず、世界的なインターネットトラフィックのごく一部しか担うことができなかったという。デュアルスタックによる移行モデルと管理改善の欠如により商業的に受け入れられず、ドラフトでは事実上失敗とみなしている。

【13時30分訂正】タイトル、ドラフトが提出されたものである点、IPv6の課題について修正/追記しました。

 今回公開されたIPv8は、現在のネットワーク管理の断片化と、IPv4アドレス枯渇問題を同時に解決することを目指したプロトコル。最大の特徴は、既存のIPv4との完全な下位互換性を維持している点で、IPv6のようなデュアルスタック運用を必要とせず、強制的な移行期間(フラグデー)も存在しない。

 IPv8のアドレスは64bitで構成され、前半32bitの「r.r.r.r(ASNルーティングプレフィックス)」と、後半32bitの「n.n.n.n(ホストアドレス)」に分かれている。後半のホストアドレスは、IPv4と完全に同一の意味を持つため、前半のプレフィックスを「0.0.0.0」とした場合、標準的なIPv4ルールで処理されるIPv4アドレスとして機能する。つまり、IPv4はIPv8の完全なサブセットであり、既存のデバイスやアプリケーション、ネットワークを変更することなくIPv8ネットワークに参加できる。

IPv8アドレスの構造
r.r.r.r.n.n.n.n
r.r.r.r - 32bit ASNルーティングプレフィックス
n.n.n.n - 32bitホストアドレス
IPv8のアドレス空間
2^64 = 18,446,744,073,709,551,616ユニークアドレス
2^32 = ASNプレフィックス×ASNごとに2^32ホストアドレス
IPv4の表現方法
0.0.0.0.n.n.n.n
r.r.r.r=0.0.0.0のパケットは、n.n.n.nのフィールドに適用される標準のIPv4のルールを使用してルーティングしなければならない

 その一方で、アドレス全体は64bit化により、アドレス空間は2の64乗へと拡大する。各ASN(自律システム番号)の保有者には4,294,967,296個(2の32乗)のホストアドレスが割り当てられるため、CGNATなどを必要とせずにアドレス枯渇問題を根本的に解決できるという。

 また、ネットワーク管理の刷新もトピック。IPv8では「ゾーンサーバー」と呼ばれるプラットフォームが中心となり、アドレス割り当て(DHCP8)、名前解決(DNS8)、時刻同期(NTP8)、テレメトリ収集(NetLog8)、認証キャッシュ(OAuth8)、IPv4/IPv8変換(XLATE8)など、ネットワークに必要なすべてのサービスを統合。デバイスは1回のDHCP8 Discover要求を行なうだけですべての応答を受信できる。

 セキュリティ面では、OAuth2 JWTトークンによるローカル認証を基盤とするほか、ネットワーク内デバイス間のトラフィックはACL8ゾーン分離によって強制され、ほかの宛先へ許可されたルートを存在させないアーキテクチャで防御。また、3つの独立した強制レイヤーといった多層防御も提供する。

 一方、ネットワーク内部からインターネットへ向かうトラフィックは、DNS8による名前解決とWHOIS8レジストリの検証が必須となる。これにより、DNS解決を伴わないハードコードされたIPアドレスによるマルウェアの主要なコマンド&コントロールチャネル通信などを排除できる。

 ルーティングプロトコルも強化され、TCPセッションからラウンドトリップ時間、パケット損失、輻輳ウィンドウ状態、セッション安定性、リンク容量といったテレメトリから導出される32bitの累積メトリック「Cost Factor(CF)」を導入し、各ルーターは協調せず送信元から宛先まで累積CFが最も低いパスを個別に選択するようにした。

 BGP4などで見られたグローバルルーティングテーブルの肥大化についても、IPv8では最小プレフィックスを「/16」に制限し、BGP8のグローバルルーティングテーブルをASNごとに1エントリに制限することで解決を図っている。