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パナソニック、「Let'snote AX3」発表会を神戸工場で開催
~リニューアルした工場ショールームも披露
(2013/6/12 01:53)
パナソニックは11日、「Let'snote」を生産する神戸工場(兵庫県神戸市)において、2013年度の同社モバイルPC事業戦略を説明するとともに、同工場のショールームをリニューアルし、オープニングセレモニーを開催した。
神戸工場は、国内でも数少ない、実装から組み立てまでの一貫生産を行なう生産拠点。Let'snoteの生産を中心に月産7万台の規模を誇る。今回のショールームのリニューアルは、同社のPC事業をより付加価値型あるいはソリューション型へとシフトするための足がかりの1つと位置付ける。
パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部の原田秀昭事業部長は、「新たなショールームは、もっとお客様と、しっかりと話をしたいという狙いから一新したものである。海外生産品は、ユーザー自身が個別に仕様を決めても、かゆいところに手が届いていないことが多い。神戸工場における一品一様のカスタマイズや、高品質で、スピードをもった製品提供、日本生産の安心感、キメ細かなサービス対応力を強化するとともに、ショールームを見てもらうことで、どんな提案ができるのかといったことを知ってもらい、どんな提案が求められているのかを勉強したい」などと語った。
また、パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部神戸工場の清水実氏は、「工場そのものを『見る』だけの工場から、『体験・体感』するための工場に変える。そのための取り組みが新たなショールームになる」と述べた。
新たなショールームは、歴代製品を展示したり、現行製品のラインアップ展示、ソリューション展示などで構成する「商品ラインアップ・ソリューション展示ゾーン」と、ビジネスシーンごとでの提案や、業種別製品展示、要素技術展示、カスタマイズ事例展示などの「活用ビジネスシーン展示・体験ゾーン」に分かれており、「体験、対話型の工場として、パナソニックのPCと、サポート力、日本のモノづくりの信頼を伝えていく」(清水工場長)という。
ショールームへの年間来場者目標は、前年比2倍となる、3,000人を目指す。
一方、同社のPC事業戦略について説明した原田事業部長は、「パナソニックのPC事業は、事業領域の明確化、一歩先を行く差別化商品、そして、最優先事項として、お客様とのパートナーシップに取り組み、狙った市場でのナンバーワンを目指しており、モバイルPC市場では、9年連続ナンバーワンシェアを獲得している」として、「現在、国内販売の約75%がフェイス・トゥ・フェイスの企業向け販売、5%がWeb販売であり、20%が店頭販売。店頭は、ユーザーへの認知度向上、ブランドイメージ向上のためのタッチポイントと捉えている。今後はカスタマイズ需要が増加するとみており、Web販売が増加するだろう。そこに神戸工場の強みを活かしたい。一品一様のカスタマイズや、お客様ダイレクトなソリューション工場を目指し、2012年度には約3割だったコンフィグレーション比率を、2015年度には約7割にまで高めたい」とした。
神戸工場では生産ラインにおいて、2012年度実績で、Let'snoteで、12シリーズ340機種、「TOUGHBOOK」で4シリーズ408機種の生産を可能としており、さらにコンフィグレーションサービスとして、ハードウェアの各種オプションを事前に組み込んだり、IPアドレスの設定、アプリケーションのインストールなど、企業ごと、個人ごとに環境を設定して、導入する現場に1台単位で届ける仕組みを構築している。
「届いたその日に、箱を開けたらすぐに使える状況で提供できる」(清水工場長)とし、「今後のパナソニックのPCの姿は、ビジネスマンの生産性向上に貢献するハードウェアそのものの進化に加えて、ハードウェアカスタマイズ、ネットワーク、クラウドによって提供されるソリューションサービスを加えたものになる。お客様の困りごとをワンストップで解決するモバイルソリューションを提案し続けていくことになる」と語った。
また、同社では、2015年度には、ITプロダクツ事業部の売り上げ計画として、1,200億円を目指していることを明らかにした。同社がPC事業の売上高を公表するのは初めてのことだ。2013年度から業績開示事業の1つにITプロダクツ事業が含まれ、それに合わせて、このほど公表した。
これによると、2012年度のITプロダクツ事業部の売上高は約1,000億円。また、2012年度は68万台のPCを出荷したという。2012年度は、当初計画で80万台以上を目指していたが、原田事業部長は、「国内コンシューマ市場において苦戦したのが理由。海外は引き続き成長している」とコメント。2013年度は83万台を目標に掲げ、「Let'snote、TOUGHBOOKに続き、3本目の柱として『TOUGHPAD』を展開。新たな市場を開拓することによる成長と、国内法人市場向けに差別化製品を連打することで80万台以上の出荷を目指す」などとし、過去最高となる出荷台数達成に意欲を見せた。
なお、同事業部の営業利益については開示していないとしたが、「全社の方針として、各事業部は5%以上の営業利益率を目標としている」と語った。2015年度には、「ITプロダクツ事業部として、念願となる年間100万台を目指したい」としている。
さらに、同社では、Let'snoteの新製品として、タブレットとノートPCの両方で利用できるハイブリッドPCの「Let'snote AX3」を発表した。
パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンターハード設計1チーム・星野央行主任技師は、「Let'snote初のコンバーチブルPCとなったAX2では、対面営業やMRの情報提供、化粧品店の店頭アドバイスなど、我々が思った以上にさまざまなシーンで利用された。こうしたお客様の声をもとに進化したのが、Let'snote AX3となる」とした。
AX3では、IPS液晶ディスプレイを新たに採用。1,920×1,080ドットのフルHDを実現するとともに、上下/左右とも170度の視野角を持っていることに触れ、「広い視野角によってプレゼン効果が最大化でき、打ち合わせも複数のメンバーで同時に確認できるなどの効果がある。ビジネスシーンに適したPCだといえる」(星野主任技師)とした。
また、第4世代Coreプロセッサを搭載。個人向けモデルでは、Core i7-4500U(1.80GHz)を、法人向けモデルではCore i5-4350U(1.40GHz)を搭載。「高性能と駆動時間の延長を実現し、AX2では最大9.5時間であったものを、AX3では約13時間にまで延長。ホットスワップ対応の予備バッテリを利用すれば、約22時間の利用が可能」とした。
さらに、11.6型液晶搭載のコンバーチブルPCにおいては、法人向けモデルで1.13kgを実現。耐100kg級のタフボディと、動作時の76cmからの底面方向落下や、30cmの26方向落下の試験を行なう頑丈設計を実現したという。加えて、AX2から採用している新たなボンネット構造についても説明。「これによって薄く、軽く、強度が出せる」と語った。
会見にゲストして参加した日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「私はパナソニックの出身であり、ここを訪れるのには感慨深いものがある」前置きし、「PCはタブレットに押されていると言われているが、タブレット時代のフェーズ1では、タブレットに飛びついたが、新しいことができない、セキュリティに問題があるといった声が出始めている。この理由は明白で、かつてのPC資産を断ち切るところで作られたタブレットであったからだ。これからは新たなタブレットのあり方が問われるフェーズ2の時代がくる。PCとして利用するのか、タブレットとして使うのかといった時のバリエーションが求められており、そこに『Windows PC/タブレット』という提案ができる。管理性、セキュリティ、堅牢性、バッテリ寿命といったところにこだわるのがLet'snoteの哲学である。私もAX2を使っているが(使い勝手は)抜群である。日本の顧客が求める品質、堅牢性を追求した製品であり、こうした製品は、日本そのものを盛り上げることにもつながる。企業用途でのタブレット需要が加速している。一方で、インテルもタブレット向けCPUに対して、本気になって投資を行なっている。これによって、タブレットが大きく進化する。日本マイクロソフトは、パナソニックとインテルと、面と面で付き合っていきたい」などと語った。
また、インテルの宗像義恵取締役副社長は、「第4世代のCoreは、過去10年で最大の技術革新をPCにもたらすことになる。クリエイティブ、エンターテイメント、ゲーム、教育といった領域において、妥協のないコンピューティングを提供する。そして、PC向け製品としては、初のワンチップSoCを投入し、2-in-1の薄くて革新的なフォームファクタを実現できる。電力効率もインテルの歴史上最高であり、3Dグラフィックス性能は最大で3倍に高まり、高速起動の実現や、セキュリティ機能の強化も図っている。Let'snote AX3は、数多くの技術革新を実現した製品であり、第4世代Coreプロセッサを搭載した製品として、妥協を許さずに開発した、日本が誇るビジネスモバイルPCだといえる」と語った。
工場や、ショールームのセレモニーなどの様子は以下に写真で紹介する。