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パナソニック「Let'snote AX3」

~IPSフルHD液晶とHaswellを搭載しパワーアップ

パナソニック「Let'snote AX3」
6月21日 発売

価格:オープンプライス

 パナソニックは、コンバーチブル型Ultrabook「Let'snote AX」シリーズの最新モデルとなる「Let'snote AX3」を発表した。液晶が360度開閉し、クラムシェル型ノートPCとピュアタブレットスタイルを使い分けられる仕様はそのまま継承しつつ、CPUがHaswellに強化されるとともに、IPS方式のフルHD液晶となり、魅力が大きく向上している。今回、開発中の試作機をいち早く試用できたので、ハード面を中心に紹介していこう。

フルHD表示対応のIPS液晶を採用

 「Let'snote AX3」(以下、AX3)は、2012年秋に登場した「Let'snote AX2」(以下、AX2)の後継モデルだ。AX2は、特殊なヒンジ構造を採用することによって液晶が360度開閉し、クラムシェル型ノートPCとして利用しつつ、本体裏まで液晶を開くことでピュアタブレットスタイルとしても利用できる、Let'snoteシリーズ初のUltrabookとして登場。Let'snoteシリーズの優れた堅牢性を維持しつつ、Ultrabook準拠の薄さと軽さを実現。しかも、本体内蔵バッテリと、ホットスワップ可能な着脱式バッテリを併用することで、公称約9時間、着脱式バッテリ2個を併用すれば約15時間と、圧倒的な長時間駆動を実現している点も魅力となっていた。

 AX3では、そのAX2の特徴をほぼそのまま受け継ぎつつ、各種パワーアップが実現されている。その中で、最も大きなパワーアップとなるのが、液晶だ。

 AX2では、1,366×768ドット表示対応の11.6型液晶を採用していた。表示解像度に関しては、液晶サイズを考えると我慢できる範囲内ではある。ただ、視野角の狭い液晶パネルが採用されており、表示品質についてはやや不満があった。Let'snoteシリーズがこういった仕様の液晶パネルを採用しているのは、コストの面だけでなく、なるべく消費電力の低い液晶パネルを採用するといった思想があったからだ。また、文字入力中心の一般ビジネス用途をターゲットとしていたことで、通常のクラムシェルスタイルのモデルでは、視野角が狭くても不満は少なかった。ただ、AX2はピュアタブレットスタイルでも利用できるようになっており、視野角の狭さがタブレットモードでの使い勝手を大きく損なっていたのも事実だ。

 それに対し、AX3では液晶パネルがIPS方式に変更された。これによって、液晶の視野角が一気に広くなり、多少視点が移動しても画面の色合いや明るさが大きく変化するといったことがなくなり、非常に見やすくなっている。タブレットモード時にAX3を囲んで画面を見るようなシチュエーションでも、画面が見にくいといった問題は解消された。しかも、表示解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)表示へと拡大。作業領域が大きく拡がるとともに、画像なども緻密に表示できるようになった。

 今回は、従来モデルと並べて比較はできなかったものの、一見しただけで液晶の表示品質が大きく向上していることがわかる。さすがに、広色域パネルの表示品質にはかなわないが、従来までの液晶表示品質の不満は解消されたと言っていいだろう。

 液晶パネル表面は、AX2同様非光沢処理が施されている。これによって、外光の映り込みもほとんど気にならず、文字入力作業も快適にこなせる。液晶パネルが変更されたものの、これまでのLet'snoteの思想がしっかり受け継がれている点は嬉しい。また、静電容量方式のタッチパネルも当然搭載しており、Windows 8の操作もタッチで快適に行なえる。

 液晶ヒンジ部の仕様は、AX2と同じだ。板状のヒンジを2枚組み合わせ、360度開閉できるスタイルとなっている。180度までは液晶パネル側の回転軸のみが回転し、180度を超えると本体側の回転軸が回転することで、スムーズな開閉が行なえるようになっている点も同様。キーボード面を下にしてフォトスタンドのような形状での使用など、さまざまな使い方が可能だ。

1,920×1,080ドット表示対応の11.6型液晶を採用。従来から大幅に表示解像度が高まった
IPSパネルになったことで、液晶の表示品質が大きく向上。発色も自然で、写真や映像も鮮やかに表示できる
IPS液晶のため視野角が広く、斜めから見ても色合いの変化は少ない
ヒンジの構造はAX2と同じ板状のヒンジを採用
180度までは液晶側の回転軸のみが動き、180度以上液晶を開くと本体側の回転軸が動く
通常は、ノートPCとほぼ同等に利用できる
キーボードを360度開くと、ピュアタブレット相当として利用可能
このように、フォトスタンドのようなスタイルでも使える
液晶上部には、Windowsボタンを配置。720p対応のカメラも搭載する

搭載CPUをHaswellに強化

 AX3に搭載されるCPUは、発表されたばかりの、コードネーム“Haswell”こと第4世代Coreプロセッサである、Core i7-4500Uを採用している。このCPUは、HaswellのUltrabook向け低電圧版モデルで、1パッケージにCPU/GPUコアだけでなくチップセット機能も統合したプラットフォームとなっている。CPUの仕様は、2コア4スレッド対応で、動作クロックは標準1.8GHz、ターボブースト時最大3.0GHzとなる。また、統合グラフィックス機能は、Intel HD Graphics 4400となる。

 CPUがHaswellに強化されたことで、気になるのはどの程度のパフォーマンスが実現されているか、という点だろう。そこで今回は、ここでベンチマークテストの結果を紹介したい。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」の6種類。比較用として、エプソンダイレクトの「Endeavor NY10S」、東芝の「dynabook KIRA V832」、ASUSの「TransBook TX300CA-C4021HS」の結果も加えてある。なお、PCMark Vantageは一部テストが正常に計測できなかったため、計測できたスコアのみを掲載している。また、3DMark Professional Editionは、比較機種と使用したバージョンが異なるため、参考値として見てもらいたい。

Let'snote AX3Endeavor NY10Sdynabook KIRA V832TransBook TX300CA-C4021HS
CPUCore i7-4500U (1.80/3.00GHz)Core i5-3337U (1.80/2.70GHz)Core i5-3337U (1.80/2.70GHz)Core i7-3537U (2.00/3.10GHz)
チップセットInte HM76 ExpressInte HM76 ExpressInte UM77 Express
ビデオチップInte HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000
メモリPC3-12800 DDR3L SDRAM 4GBPC3-12800 DDR3L SDRAM 8GBPC3-12800 DDR3L SDRAM 8GBPC3-12800 DDR3L SDRAM 4GB
ストレージ128GB SSD128GB SSD128GB SSD128GB SSD + 500MB HDD
OSWindows 8Windows 8Windows 8Windows 8
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score5211433046294328
Lightweight score3507276131452696
Productivity score2650219922712152
Creativity score3811309132523109
Entertainment score9640771592387895
Computation score16968139871468715490
System storage score5181419253754082
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark SuiteN/AN/AN/AN/A
Memories Suite8621622178285570
TV and Movies SuiteN/AN/AN/AN/A
Gaming Suite10799834999938459
Music Suite18314112071540211324
Communications SuiteN/AN/AN/AN/A
Productivity SuiteN/AN/AN/AN/A
HDD Test Suite47023177794085617040
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/AN/A
CPU Score9513944781178843
Memory Score8812728671678392
Graphics Score3039260627742632
HDD Score44164230634455220592
3DMark Professional Edition v1.1.03DMark Professional Edition v1.0
Ice Storm38512280752935028035
Graphics Score41118282402988029392
Physics Score31522275132763624136
Cloud Gate4739337936793177
Graphics Score5897364843393577
Physics Score2809268824022285
Fire Strike680444535412
Graphics Score738476581463
Physics Score3682370633883083
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score6196400051864242
SM2.0 Score2108124716941379
HDR/SM3.0 Score2580166522151752
CPU Score3676362931803093
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.17.16.97.0
メモリ5.97.27.45.9
グラフィックス5.84.65.65.4
ゲーム用グラフィックス6.56.36.46.3
プライマリハードディスク8.17.58.07.6
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット2769187724792029
ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版
横1,280ドットフルスクリーン414N/A142191

 結果を見ると、Core i5搭載のEndeavor NY10Sやdynabook KIRA R832はもちろん、Core i7-3637U搭載のTransBook TX300CA-C4021HSと比較しても、全ての項目で結果が上回っている。そして、特に目立つのが3D描画関連テストの結果で、比較機種よりもかなり優れた結果が得られている。これは、Haswellの基本性能の高さが如実に表れていると言っていいだろう。これなら、ビジネス用途でのさまざまな処理はもちろん、画像や映像処理などのやや重めの作業も、従来よりも快適にこなせそうだ。

バッテリ駆動時間も大幅に延長

 AX2は、公称で約9時間と長時間のバッテリ駆動を実現するとともに、本体内蔵のバッテリに加え、着脱式のバッテリを備え、OSをシャットダウンすることなくバッテリを交換できるという仕様が特徴となっていた。もちろん、これら特徴はそのままAX3にも受け継がれている。その上で駆動時間が公称で約13時間と、従来モデルから約4時間延びている。

 CPUがHaswellになると、バッテリ駆動時間が1.5倍に伸びると言われていることを考えると、少々延びが少ないようにも思うが、AX3では液晶がフルHD表示対応のIPSパネルに変更されていることを考えると、十分に満足できる駆動時間だ。

 そこで、実際に駆動時間を計測してみた。Windowsの省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測してみたところ、約10時間3分と、10時間を超える駆動時間を記録した。公称の駆動時間よりもやや短いものの、液晶輝度を40%とやや高めに設定していることなどを考えると、優秀な結果と言える。

 また、AX3の店頭モデルでは、標準で着脱式のバッテリパックが2個付属しており、併用することで約22時間の駆動が可能とされている。そこで、先ほどと同じ条件で、2個のバッテリパックを併用した場合の駆動時間も計測してみたところ、約16時間13分もの駆動が確認された。おそらく、液晶バックライトの輝度をさらに落とすなどすれば、20時間の駆動も十分実現できそうだ。1日の外出であれば、もはやバッテリ残量を気にする必要はほとんどなくなったと言ってよさそうだ。

従来同様、本体内蔵バッテリに加えて、着脱式のバッテリパックが利用できる
店頭モデルにはバッテリパックが2個付属。本体内蔵バッテリがあるため、OSが起動した状態で交換できる
USB接続のバッテリパック専用充電器も付属するため、2個のバッテリパックも効率良く充電可能だ
バッテリ駆動時間
内蔵バッテリのみ約3時間20分
内蔵バッテリ+バッテリパック約10時間03分
内蔵バッテリ+バッテリパック2本約16時間13分

その他の仕様は従来モデルをほぼそのまま踏襲

 本体サイズや堅牢性、キーボード、タッチパッドなど、仕様面は従来モデルから大きな変更はない。

 本体サイズは、288×194×18mm(幅×奥行き×高さ)と、従来モデルと同じ。また重量も約1.14kgと同等だ。実測での重量は1,118.5gと、公称の重量よりもやや軽かった。もちろん、従来モデル同様に、天板部分の100kgf加圧振動試験や、76cmの底面方向落下試験、30cmの26方向落下試験をクリアしている。

 CPUは、先に紹介したようにCore i7-4500Uを搭載。メインメモリは標準で4GBの搭載で、増設は不可能。メインメモリの搭載量が標準で4GBと少ない点は少々残念。ただし、直販サイト「マイレッツ倶楽部」の直販モデルでは、標準で8GBのメインメモリを搭載するモデルが用意される。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載。また、別途WiMAXモジュールも標準搭載される。WiMAXが引き続き搭載される点は嬉しい。照度センサー、地磁気センサー、ジャイロセンサー、加速度センサーなど、搭載されるセンサー類も従来同様。

 キーボードやタッチパッドも従来モデルと同じ。キーボードのキーピッチは、横18mm、縦14.2mmと、従来同様の長方形キーのため、使い始めは違和感を感じるかもしれない。また、ストロークが約1.2mmと短く、かなり軽い打鍵感も気になるところだが、慣れればタッチタイプも問題ないだろう。タッチパッドも、従来同様長方形のパッドを搭載。パッドの面積が広く、Windows 8の操作も快適。独立したクリックボタンが用意される点も嬉しい。左右のクリックボタンの間には、キーボードとタッチパッドの動作を切るHOLDボタンを配置。液晶を360度開くと、キーボードとマウスは自動的に動作が切り離されるが、このボタンを利用すれば、どのタイミングでも動作を切り離せる。さらに、付属のユーティリティを利用し、キーボードとタッチパッドの切り離し動作の設定も行なえる。

 側面のポート類は、左側面に電源コネクタとGigabit Ethernet、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、SDカードスロット、マイクジャック、ヘッドフォンジャック、内蔵無線機能のオン/オフスイッチを、右側面にUSB 3.0×2ポートとHDMI出力をそれぞれ用意。右側面のUSB 3.0ポートのうち1つは、電源オフ充電機能をサポート。本体前面にはタブレットモードで利用するボリュームボタンと画面表示自動回転のオン/オフスイッチも用意される。

本体正面。本体の仕様は従来モデルのAX2から変わっていない
左側面。高さは18mmで、前方から後方までほぼフラットとなっている
背面。特徴的な2つのヒンジが見える
右側面
天板。ボンネット構造など従来同様で、100kgf加圧振動試験など堅牢性はしっかり維持されている
底面。着脱式バッテリパックの構造も従来から変化はない
本体重量は、実測で1,118.5gだった
キーボードの形状や配列も従来と同じだ
キーピッチは、横18mm、縦14.2mmの長方形キーのため、慣れるまではやや違和感を感じる
ストロークは約1.2mmと浅く、打鍵感も軽い
ポインティングデバイスは、Let'snoteでおなじみの円形のホイールパッドではなく、長方形のタッチパッドを搭載
独立したクリックボタンと、キーボードとタッチパッドの動作をオン/オフできるHOLDボタンを備える
HOLDボタンの動作は、付属のユーティリティを利用して設定可能
左側面には、電源コネクタ、Gigabit Ethernet、アナログRGB出力、SDカードスロット、マイクジャック、ヘッドフォンジャック、内蔵無線機能のオン/オフスイッチがある
右側面にはUSB 3.0×2ポートとHDMI出力がある
前面には、電源ボタンに加えて、ボリュームボタンと画面表示自動回転のオン/オフスイッチを用意
付属のACアダプタは、従来モデルと同じ軽量でコンパクトなものが付属する
電源プラグ収納式のウォールマウントプラグも付属
ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測239.5g
ウォールマウントプラグとのセットの重量は、実測で197.2g

CPUと液晶の刷新で魅力が大きく向上

 AX3は、ノートPCとタブレットのどちらでも利用できるAX2のコンバーチブルスタイルをほぼ継承しつつ、CPUが第4世代Coreプロセッサに強化されるとともに、液晶が広視野角でフルHD表示に対応するIPSパネルに変更され、バッテリ駆動時間も大きく延長。そして、コンパクトな本体サイズや約1.14kgの軽量ボディ、優れた堅牢性といった特徴もそのまま受け継いでいる。見た目こそ従来モデルからの変化はないが、製品としての魅力は大幅に向上していると言っていい。

 コンバーチブル型Ultrabookは、他にもさまざまな製品が存在するが、それらの中でも魅力はトップクラス。ビジネスシーンで利用する、常に携帯するモバイルノートを探している人はもちろん、液晶品質を理由にこれまでLet'snoteシリーズを敬遠していた人にもおすすめしたい。

(平澤 寿康)