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東大ら、東京スカイツリー展望台でも地上より時間が速く進むことを観測

~18桁精度の可搬型光格子時計を開発

 理化学研究所の高本将男専任研究員、および東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授らの研究グループは7日、島津製作所と共同で18桁精度の超高度な可搬型光格子時計を開発し、衛星を使った従来の実験に迫る精度で一般相対性理論を検証できたことを明らかにした。

 一般相対性理論では、重力は時空を歪ませ、時間の進み具合の違いを生むとされている。重力ポテンシャルが低い地面の上では、それが高い宇宙空間と比べて時間がゆっくり進む。これまでこの理論は「宇宙スケール」の現象として議論されてきたが、18桁精度の原子時計では、わずか数cmの日常的なスケールの高さの違いで時間の遅れを観測できる。

 実験では、スカイツリーの地上階と、地上450mの展望台に設置した2台の可搬型光格子時計の進み方の違いを計測し、その結果を国土地理院が測定した標高差と比較することで一般相対性理論を検証。原子時計を人工衛星やロケットに搭載し、1万kmの高低差で計測された従来の宇宙実験と比べ、1万倍以上少ない高低差で同等の実験を可能にした。

 これにより、新たな「相対論的センシング技術」を可能性を広げ、実用化に向け大きな突破口になる。プレート運動や火山活動など、地殻の数cm精度の上下変動の監視、GNSS、高感度重力計と補完的に利用することで、超高精度な標高差/重力場計測システムを確立できるとしている。