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Snapdragon X Plus 8-coreは低価格向けに設計された新しいダイだった

Snapdragon X Plus 8-coreを発表するQualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 Qualcommは、IFA 2024開幕前々日となる9月4日(現地時間)にドイツ共和国ベルリン市内で記者会見を開催し、Windows on Arm(WoA)向けのプロセッサ「Snapdragon X Plus 8-Core」を発表した。同社 CEO クリスチアーノ・アーモン氏は「新しいSnapdragon X Plus 8-coreの役割は、もっと多くの価格帯にCopilot+ PCを提供し、より多くのユーザーに届けることだ」と掲げた。

 質疑応答の中で、QualcommはSnapdragon X Plus 8-Coreが上位版となるSnapdragon X Elite、Snapdragon X Plus 10-coreとは違うダイであることを明らかにし、これにより価格帯向けの製品として投入できた理由だと明らかにした。

シングルスレッドでパフォーマンスリーダー

Qualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 Qualcommが9月4日(現地時間)に行なった記者会見では、CEO クリスチアーノ・アーモン氏が登壇し、同社がIFA 2024に合わせて発表した新しい「Snapdragon X Plus 8-core」に関して説明を行なった。

22を超えるSnapdragon Xシリーズのデバイスが出荷されている

 Qualcommは、Copilot+ PCに対応した「Snapdragon X Elite」および「Snapdragon X Plus 10-core」を、ほかのWindows向けプロセッサベンダー(AMD、Intel)に先だって投入し、6月18日から搭載PCを販売している。

 AMD、IntelともにCopilot+ PCの要件を満たすRyzen AI 300シリーズ(Strix Point)、Core Ultra シリーズ2(Lunar Lake)を発表済みで、かつ前者は発売済みだが、x86向けのCopilot+ PCに対応ソフトウェアが提供開始されるのは11月であり、依然としてQualcommがリードしている状況だ。アーモン氏によれば既にIFAの前までに22機種超のデバイスが提供開始されており、成功裏に立ちあがったとアピールした。

Core Ultra 9 185Hとの比較
Ryzen 9 HX 370との比較

 「ほかのベンダーも新しい製品をリリースしているが、既に発売されたCore Ultra 9 185H、Ryzen 9 HX 370を利用してシングルコア性能を比較したデータを紹介したい。Core Ultraとの比較では同じ15Wであれば51%高い性能を発揮し、ピーク性能が我々の製品と同じ性能を発揮させるためには180%も多く消費電力が必要だった。Ryzen 9 HX 370との比較でも、同じ15Wなら12%高い性能を発揮し、同じピーク性能であれば43%も多くの消費電力が必要だった」と述べ、シングルスレッド性能に関してはQualcommが依然としてパフォーマンスリーダーだと強調した。

 その上でIntelがQualcommの会見前日に発表したCore Ultra シリーズ2に関しては「現時点では彼らの製品が販売されていないので比較することはできないが、彼らの製品が販売開始されたそうしたデータを共有できると思う。我々は彼らのように、なぜか我々の製品の低い方のSKUと比較したりはしない」とした。

 実は、IntelがCore Ultra シリーズ2の発表において、Snapdragon X Eliteのうち上から3番目のSKUとなるX1E-80-100を利用してCore Ultraシリーズ2との性能比較を行なったのだが、これに対して皮肉を述べたわけだ。

Googleドライブの同期ツールArm版が第4四半期に登場予定

 また、Arm版Windowsの弱点と指摘されているソフトウェアの互換性に関しても解消に向けて努力をしていると強調し、第4四半期にはGoogleがGoogle Driveの同期ツールのArm版をリリースする計画だと明らかにした。

より小さなダイとして製造されるSnapdragon X Plus 8-core

Snapdragon X Plus 8-coreのパッケージとダイ

 続いて新製品としてSnapdragon X Plus 8-coreを発表した。発表されたのは「X1P-46-100」(CPU 8コア、GPU 2.1TFLOPS)、「X1P-42-100」(CPU 8コア、GPU 1.7TFLOPS)という2つのSKUであり、講演の最後には、Snapdragon X Plus 10-coreに新しいSKUとして「X1P-64-100」(CPU 10コア、GPU 3.8TFLOPS)が追加されることも明らかにされている。

 アーモン氏は「今回発表するSnapdragon X Plus 8-coreで、Copilot+ PCを700~800ドルの価格帯へとレンジを広げることが可能になり、より多くのユーザーにより幅広い価格帯を提供することが可能になる」と述べ、市場を拡大することが可能になると述べた。

ASUS 執行役員 コンシューマビジネス事業部担当 ランゴーン・チャン氏(左)とアーモン氏(右)
ASUSのSnapdragon X Plus 8-core搭載製品

 今回の会見中に2人のゲストを呼んでいる。1人はASUS 執行役員 コンシューマビジネス事業部担当 ランゴーン・チャン氏、そしてもう1人がCopilot+ PCを推進するMicrosoft Windows・デバイス担当 執行役員 パヴァン・ダブルリ氏だ。

 ASUSはキーボード脱着式2-in-1型デバイスとなる「ProArt PZ13」と、「Vivobook S 15」のSnapdragon X Plus 8-core版という2つの搭載製品を発表し、同日より販売開始すると発表した。

アーモン氏(左)とMicrosoft Windows・デバイス担当 執行役員 パヴァン・ダブルリ氏(左)
Microsoft Surface Pro(11th Edition)、Microsoft Surface Laptop(7th Edition)の法人向け製品は9月10日より販売開始
マンチャスターユナイテッドのスポンサーになったQualcomm。チームのウェアには「Copilot+ PC」のロゴも入る、このユニフォームはダブルリ氏に送られた

 一方でMicrosoftのダブルリ氏は、Snapdragon X Elite/Plus 10-coreを搭載し、既に販売が行なわれている「Surface Pro(11th Edition)」、「Surface Laptop(7th Edition)」の法人向け製品を、9月10日より販売を開始することを明らかにした。

 なお、Qualcommは記者会見後に行なわれた質疑応答の中で、Snapdragon X Plus 8-coreは、Snapdragon X Eliteなど上位版とは別のダイとして製造されていることを明らかにした。

 ダイがどのようなCPU/GPU構成になっているかなどに関しては明らかにしなかったが、最初から低価格向けにCPUコア数やGPUのSP数などを減らして構成になっていると考えられ、公開されたダイは明らかにSnapdragon X Eliteよりも小さいことが見てとれた。

 ダイサイズが小さければ小さいほど、歩留まりは向上し、かつウェハ1つで製造できるダイの数が増えることになるので、製造コストは下がることになるため、普及価格帯を実現するという目的を実現するには正しい選択だと考えることができるだろう。