PC短評

Snapdragonで驚異的なバッテリ持ちを実現したASUS製2in1登場。キーボード着脱式で薄型タブレットにもなる

ASUSの2in1「ProArt PZ13 HT5306」(型番 : HT5306QA-PU161W)。直販価格は24万9,800円

 ASUSはSnapdragon X Plusを採用し、AIを快適に利用できるCopilot+ PCの要件を満たした13.3型2in1「ProArt PZ13 HT5306」を9月5日に発売した。キーボード、スタンドカバーの着脱が自由なのに加えて、長時間のバッテリ駆動も可能とさまざまなスタイルや利用シーンに対応できるのが大きな特徴。試用する機会を得たので早速レビューをお届けしよう。

柔軟に使い方を選べる2in1

 ProArt PZ13 HT5306は、タブレット/キーボード/スタンドカバーを装着した状態の本体サイズは297.5×211.15×17.6mmで、重量は約1.489kg。タブレット+スタンドカバーでは高さが11.8mmまで減り、重量は約1.127kgに、タブレットのみは高さが9mmで約850gとかなりの薄型軽量となる。

キーボードを外した状態。動画の視聴に便利なスタイルだ
ノートPCスタイルでは背面に装着するスタンドカバーで本体を支える
スタンドカバーを外すと厚み9mmとかなりの薄型に
タブレット+キーボード+スタンドカバーの状態は実測は1,515g
タブレット+スタンドカバーで実測は1,145g
タブレットのみで実測は874g
ACアダプタはType-C形状で65W出力。重量は実測で217g

 CPUはSnapdragon X Eliteの下位モデルになる「Snapdragon X Plus X1P-42-100」を搭載。8コアで動作クロックは最大3.4GHzだ。グラフィックスはCPU内蔵の「Adreno GPU」で性能は3.8TFLOPSとなる。

CPUは8コアのSnapdragon X Plus X1P-42-100を搭載
グラフィックス機能はCPUに内蔵されているAdreno GPUを利用

 AIアクセラレーターとしてNPUの「Hexagon NPU」を内蔵しているのも特徴だ。Copilot+ PCの要件を満たす45TOPSの性能を持ち、ローカルで言語モデルや生成AIの処理が可能になっている。

CPUには、Hexagon NPUも内蔵。NPUの稼働状況はタスクマネージャーで確認できる
NPUに対応するアプリはまだ少ないが、Webカメラ映像の背景ぼかしなどが利用できるWindows Studio エフェクトはNPUによって処理が行なわれる

 メモリはLPDDR5X-8448の16GBで増設はできない。ストレージはPCI Express 4.0接続M.2 SSDで容量は1TBだ。OSはWindows 11 Homeで、Arm版だがx86およびx64のアプリを動作するためのPrismが用意されている。そのため、多くのWindowsアプリはそのまま利用可能だ。

CrystalDiskMark 8.0.5によるストレージテストの結果。シーケンシャルリードでMB/sと十分高速だった

 しかしゲームは動かないものが多い。ゲームをプレイしたい場合は、クラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」を利用するのがよいだろう。筆者が試す限り、GeForce NOWで問題なくゲームが楽しめた。

Arm版のWindows 11ではゲームは動かないことが多い
クラウドゲーミングサービスのGeForce NOWなら、ゲームを問題なく楽しめた。ただし、快適にプレイするには高速なネット回線が必要だ

 ディスプレイはASUS Lumina OLEDと呼ばれる13.3型の有機ELを採用。アスペクト比は16:10で解像度は2,880×1,800ドットと高い。リフレッシュレートは60Hzだ。

ディスプレイは13.3型の有機ELを搭載。解像度は2,880×1,800ドット

 広い色域を求めるデジタルシネマ向けのDCI-P3カバー率100%と優れた色の再現性を持ち、色域を用途に合わせてDCI-P3、Display-P3、sRGBにカスタマイズも可能だ。

色域はDCI-P3、Display-P3、sRGBにカスタマイズが可能だ

 タッチパネルも搭載し、4,096段階の筆圧検知に対応するASUS Pen 2.0も付属。本格的なイラスト制作も行なえる。

4,096段階の筆圧検知に対応するASUS Pen 2.0も付属。B/HB/Hと3種類の替え芯も用意されている
ペンの充電はType-Cポート経由で行なう

 インターフェイスは、USB4×2、SDカードスロットとシンプル。このほか、ステレオスピーカー、Windows Helloの顔認証に対応する491万画素のインカメラとオートフォーカス対応で1,324万画素のアウトカメラも備えている。ワイヤレス機能はWi-Fi 7とBluetooth 5.4に対応。

右側面はボリュームのみ(電源ボタンは上部にある)
左側面はUSB 4×1があり、カバーを外すとUSB 4×1とSDカードスロットを利用できる
インカメラは491万画素でWindows Hello対応
アウトカメラは1,324万画素でオートフォーカス対応だ

 キーボードには84キーの日本語配列だ。右下にCopilotキーも用意されている。キーピッチは筆者の実測で約19mmが確保されており、薄型ながらバックライトも内蔵。タッチパッドは実測で約127×79mmと十分広かった。

キーボードは日本語配列。右下にCopilotキーもある
キーピッチは実測で約19mmと十分なサイズが確保されている
タッチパッドは実測で約127×79mm

Office系の処理でも17時間以上のバッテリ駆動が可能

 ここからはベンチマークで性能をチェックしていこう。

 CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」は、マルチコアが521、シングルコアが108だ。Snapdragon X Plusは8コアなので順当と言えるスコアだ。

Cinebench 2024の結果。マルチコアは521、シングルコアは108

 PCMark 10はMicrosoft Word、Excel、PowerPoint、Edgeを実際に使用する「PCMark 10 Applications」を実行し、スコアは12,116となった。十分高いスコアで、一般的な処理なら快適にこなせることが分かる。

Armに対応するPCMark 10 Applicationsの結果。12,116と上位のSnapdragon X Eliteに引けを取らないスコア

 続いて、定番3Dベンチマークの「3DMark」だ。DirectX 12ベースの「Steel Nomad Light」が1,136、DirectX 11ベースの「Fire Strike」が3,602、クロスプラットフォーム対応の「Wild Life」が11,280だ。軽めのゲームなら何とかプレイできるというスコアと言える。

Steel Nomad Lightの結果
Fire Strikeの結果
Wild Lifeの結果

 最後にバッテリ駆動時間をテストしよう。動作はMyASUSアプリでウィスパーモードに、ディスプレイの輝度は50%、キーボードバックライトはオフにして測定している。

 テストではMicrosoft Word、Excel、PowerPoint、Edgeを実際に動かす「PCMark 10 Application battery life」を実行した。バッテリ残量が100%から5%まで約17時間51分も駆動。さまざまな処理を行なうテストで、これほどまで長時間駆動するのは驚異的だ。

PCMark 10 Application battery lifeの結果。バッテリ残量が100%から5%で約17時間51分の駆動となった

 ProArtシリーズはクリエイター向けだが、着脱式のキーボードとスタンドカバーによって自由なスタイルで使えるのが大きなメリットと感じた。普通のノートPCとして使ってもいいし、キーボードとスタンドカバーを外せば、軽量大画面のタブレットとしてごろ寝しながら電子書籍や動画を楽しめる。

 Arm版Windows 11はアプリ互換に若干の不安はあるが、Snapdragon X Plusによる十分な性能と長時間のバッテリ駆動は魅力的だ。モバイル性能を重視する人にとっては選択肢として入ってくるだろう。