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AI推しのCopilot+ PCはシェア1%未満で苦戦。国内PC市場自体は回復基調に
2024年7月23日 11:06
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した国内PC出荷実績によると、2024年度第1四半期(2024年4月~6月)の出荷台数は前年同期比7.9%増の160万9,000台となり、過去最低の実績となった2023年度から、着実に需要が回復しつつあることが分かった。
だが月別に見ると、2024年4月は前年同月比14.1%増の51万2,000台、5月は同31.5%増と、力強い回復を見せていたが、6月は同9.7%減の59万9,000台と、一転して2桁近いマイナスとなり、市況回復が本格化しているとは言い難い状況にある。
JEITAでは、「企業向けが堅調に推移したものの、個人向けが低調な水準となり、台数、金額ともに前年同月を下回った」とコメントしている。JEITAでは、企業向けや個人向けの詳細な実績については公表していないが、6月は、企業向けPCは前年実績を上回ったと見られ、ここから逆算すると、個人向けは2桁台のマイナスとなっていることが想定される。
個人向けPCは低迷の理由
実際、個人向けPC需要は、回復しているとは言えない。
量販店のPOSデータを集計するBCNによると、過去1年間で前年実績を上回ったのは2024年3月だけで、後は前年割れの状態が続いている。個人向けPCが長期に渡って低迷していることが浮き彫りになる。
年月 | 全体 | ノートPC | デスクトップPC |
---|---|---|---|
23年06月 | 90.50% | 90.10% | 94.00% |
23年07月 | 93.40% | 94.50% | 83.80% |
23年08月 | 83.00% | 83.90% | 74.80% |
23年09月 | 96.20% | 98.50% | 77.60% |
23年10月 | 92.10% | 93.90% | 78.30% |
23年11月 | 88.10% | 90.00% | 73.50% |
23年12月 | 74.90% | 76.90% | 58.50% |
24年01月 | 74.30% | 76.10% | 56.90% |
24年02月 | 85.40% | 88.20% | 60.60% |
24年03月 | 107.00% | 109.70% | 73.60% |
24年04月 | 92.40% | 94.40% | 70.10% |
24年05月 | 97.30% | 99.30% | 79.90% |
24年06月 | 94.40% | 96.70% | 74.80% |
特に、個人向けPCの商戦期である2023年12月は、前年同月比25.2%減となり、需要が集中するタイミングで販売実績が4分の3にまで落ち込んでいる状況だ。
BCNのデータでは、2024年度第1四半期も前年割れの結果となっており、2024年6月も、前年同月比5.6%減という実績だ。
個人向けPCの新製品の発売が7月以降に集中していることから、6月は在庫の調整局面に入ったとの見方や、タブレットが好調な動きを見せており、そちらに需要が流れたとの見方があるほか、6月に発売されたCopilot+ PCの出足が鈍かったことも前年割れの要因になっているようだ。
シェア1%未満のCopilot+ PC
実際、Copilot+ PCの売れ行きは低迷している。
BCNの調査データでは、Copilot+ PCの販売を牽引している日本マイクロソフトのSurfaceが集計対象となっていないため、参考値として捉えることを前提に結果を見てみると、Copilot+ PCが発売された6月18日から、7月15日までの約1カ月間で、ノートPC全体におけるCopilot+ PCの販売構成比は、わずか0.3%となり、1%にも満たない水準に留まった。
Snapdragon Xに対応するソフトウェアの課題や、目玉機能であるRecallが現時点では利用できないことなどに加えて、量販店店頭では価格が高い点もマイナス要素として指摘されている。
BCNの調査によると、Copilot+ PCの平均単価は21万6,100円となっており、ノートPC全体の12万1,200円の平均単価の1.8倍になっている。Core i7搭載PCの平均単価は16万800円、Ryzen 7搭載PCの平均単価は12万9,700円であることと比較して、それを大きく上回っており、Copilot+ PCは手が届きにくい価格設定になっているとも言える。
搭載CPU | 平均単価 |
---|---|
全体 | 12万1,200円 |
Core i7 | 16万800円 |
Ryzen 7 | 12万9,700円 |
Copilot+ PC | 21万6,100円 |
なお、Copilot+ PCの販売台数順位は、1位がレノボ・ジャパンの「Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9」となり、次いで、ASUSの「Vivobook S 15 S5507QA」、日本HPの「OmniBook X 14-fe」となっている。いずれも、Snapdragon X Elite搭載モデルであり、現時点で、Snapdragon X Plusを搭載したCopilot+ PCの販売実績はない。
順位 | メーカー名 | 型番 | 品名 | 平均単価 |
---|---|---|---|---|
1位 | レノボ・ジャパン | 83ED000QJP | Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9 | 21万8,700円 |
2位 | ASUS | S5507QA-HA321W | Vivobook S 15 S5507QA | 20万7,300円 |
3位 | レノボ・ジャパン | 83ED002PJP | Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9 | 21万8,800円 |
4位 | ASUS | S5507QA-HA161W | Vivobook S 15 S5507QA | 20万8,900円 |
5位 | HP | A7DA6PA-AAAA | OmniBook X 14-fe | 22万7,100円 |
6位 | HP | A7DA6PA-AAAB | OmniBook X 14-fe | 24万7,100円 |
AI PCは2026年に6割出荷との予測
MM総研では2028年度にはPC出荷の65%をAI PCが占めると予測。レノボでは2026年に60%を占めると予測するなど、今後の需要拡大に向けた期待は高まるが、販売開始から最初の1カ月間におけるCopilot+ PCの国内での動きは鈍い結果となった。
だが今後、IntelのLunar Lakeを搭載したCopilot+ PCの登場によって販売に弾みがつくことになるのか、それともなにか別の要素が起爆剤になるのかは、業界筋でも高い関心が集まっている。
Windows 10の延長サポート終了を2025年10月に控え、買い替え需要が拡大していく中で、Copilot+ PCをはじめとしたAI PCの今後の動きが注目される。