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ロボットを食べた際の知覚の変化を研究。動いている状態で食べると罪悪感

可食性ロボット(左)と内部に空気圧を供給する部品の断面図(右)

 国立大学法人の電気通信大学大阪大学は15日、可食素材で動くロボットを食べた人間の知覚や食感に変化が生じることを明らかにしたと発表した。世界初としている。動いている状態のロボットを食べた人は、ロボットに対して知性や生物らしさ、罪悪感を知覚するという。

 可食素材を用いたロボットを実際に食べた際の心理的影響の調査を目的とした研究。電気通信大学の仲田佳弘准教授、伴碧特任講師、山木廉氏、堀部和也特任助教、高橋英之招へい准教授、大阪大学の石黒浩教授による研究グループの成果となる。

 研究チームはまず、砂糖、ゼラチン、リンゴジュースなどを材料としてロボットを作製。このロボットは棒状の形をしており、市販のグミ程度の固さを持つ。空気圧により縦/横方向に振動する。

 実験参加者は「ロボットの見た目からどのような印象を受けるか」と「実際に食べたときの感覚」を評価した。さらに後者の実験では、動いている状態と動いていない状態のロボットを食べてそれぞれの印象、味、食感を評価している。

 見た目の評価では、ロボットが縦に動いているときより横に動いているときの方が「生きている」感覚を強く感じるとした。実食時の評価では、動いていない状態よりも動いている状態のロボットを食べた方が、ロボットに対する知覚を強く感じることが明らかになった。具体的には、知性、感情、生物らしさ、罪悪感、新鮮さを動くロボットに対して感じたとしている。

 研究チームでは以上の実験結果から、動いているロボットを食べる際に特定の印象や感覚を得ることが示されたと結論づけている。

 研究チームは本実験を通して可食ロボットと人との相互作用を研究する学問「Human-Edible Robot Interaction(HERI)」を提唱しており、新しい食体験やエンターテイメント性の高い食事の創出へと繋がる可能性、食に関して異なる文化感での差異を探る機会の提供、口腔刺激を通じた脳活動の促進など医療分野への応用なども考えられるとしている。

 電気通信大学では以前より食べられるロボットの研究を行なっており、災害時などでの活用を視野に入れている。これまでに軽量な物体を掴めるグリップ型ロボットや、自ら動いて胃に到達し栄養を届けるロボットなどを開発した。今回の実験は可食性ロボットを実際に食べた際の感覚を調べるHERIの実践となる。

可食性ロボットの実物(左)と、3Dプリントした持ち手をつけた可食性ロボット(右)