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産総研、量子コンピュータの性能向上につながるトランジスタの低温動作メカニズムを解明

超極低温測定によりトランジスタのスイッチング特性を解明

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は、トランジスタの低温動作メカニズムを解明したと発表した。量子コンピュータの性能向上につながるとしている。

 トランジスタの動作特性は温度によって変化するため、その特性を把握・考慮して集積回路を設計する必要がある。近年では、量子コンピュータ用の制御回路として、低温下(4K=-269.15℃)で動作する集積回路の研究開発が進められているが、それに必要な低温動作トランジスタのスイッチング特性は解明されていなかった。

 研究グループでは、トランジスタのスイッチング特性を示すサブスレッショルド係数(S係数)の温度依存性を調査。S係数は低温になるに従って直線的に減少するものの、50Kから1Kの間で減少の仕方が変わるとされていたが、今回の研究によって1K以下の温度帯でS係数が再度減少することが分かった。従来主流の仮説だった可動電子モデルではなく、捕獲電子モデルで説明できることから、界面の欠陥に確保される量子の量がスイッチング特性を決めていることが明らかになった。

 これにより、低温で動作する集積回路をより正しく設計できるようになるとしており、研究グループでは得られた成果を元に、トランジスタ特性を再現する方程式の高度化を実施し、制御用集積回路の設計技術を高めていくという。

トランジスタ特性の温度変化(左)とS係数の温度依存性(右)
S係数の理論計算結果(赤:可動電子モデル、青:捕獲電子モデル)