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Adobe画像生成AI「Firefly」が強化。ベクター画像も生成可能に
2023年10月11日 01:00
Adobeは10月10日(米国太平洋時間、日本時間10月11日未明)から、Creative Cloudサービスのユーザー向け年次イベント「Adobe MAX 2023」を開催する。午前には同社CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏ら同社の幹部などが登壇し、基調講演が行なわれている。それに先だって報道発表を行ない、3月に発表した生成AIモデルとなる「Adobe Firefly」の機能を拡張する3つの新モデルなどを発表した。
それが「Adobe Firefly Image 2 Model」、「Adobe Firefly Vector Model」、「Adobe Firefly Design Model」の3つで、学習データを含めてきちんと権利処理がされ商用利用可能な生成AIというFireflyの特徴を活かしたまま、より高画質の画像生成やベクター画像の生成などの機能強化が実現される。
また、AdobeはCreative Cloudの機能強化も同時に明らかにしており、主力アプリケーションへのFireflyを利用した生成AI機能の実装、Illustratorへの「テキストからベクター生成機能」の搭載、そしてLightroomには「ぼかし(レンズ)」機能など写真編集の新機能が搭載されることが明らかにされた。
今度のFireflyはより高度な画像が生成できて、ベクター画像の生成にも対応
Adobeは3月に行なわれた、同社のデジタルマーケティングツール「Adobe Experience Cloud」向けの年次イベント「Adobe Summit 2023」において、同社の生成AIサービスとなる「Firefly」を発表した。
Fireflyはそれ自体が1つの製品というよりは、Adobeの製品群(クリエイター向けのCreative Cloud、デジタルマーケティング向けのExperience Cloud、文章管理向けのDocument Cloud)に対して生成AIの機能を提供する基礎となる生成AIのモデルとなる。
Fireflyが発表された2023年3月のAdobe Summit時には、それがプラットフォームなのか、サービスなのかはAdobeもハッキリ定義していなかったが、今回のAdobe MAXからは、Fireflyは明確に「モデル」であると定義しなおし、今回発表されたのはバージョンアップされて強化されたFireflyのモデルとなる。そのため、従来の単にFireflyとだけ呼ばれていた画像生成AIモデルには「Adobe Firefly Image 1 Model」という呼ばれ方が追加されている。Fireflyというブランドは、そうした生成AIモデルの総合的な呼び方になる(以下の図はそれをイメージにしたものだ)。
AIのモデルとは、学習データも含む仕組みそのものを指しており、従来型のアプリケーションでは「エンジン」など呼ばれていたアルゴリズムに近いモノだと考えれば理解できるだろう。
最も有名な生成AIであるChatGPTに利用されているモデルはLLM(大規模言語モデル)の「GPT」だが、そのGPTにもバージョンがついており、GPT-2、GPT-3のように表現されているが、Fireflyもそのように世代を示す番号が追加されることになったと考えれば分かりやすい。
今回Adobeが発表したのは「Adobe Firefly Image 2 Model」、「Adobe Firefly Vector Model」、「Adobe Firefly Design Model」の3つで、Adobe Firefly Image 2 Modelが従来提供されていた画像生成AIの「Firefly」(今回からFirefly Image 1 Model)の後継となる画像生成AIの最新版、Firefly Vector ModelとFirefly Design ModelがFirefly Image 1 Modelから派生した登場した新しいモデルとなる。
Firefly Image 2 Modelは、Firefly Image 1 Modelから機能が強化され、ユーザー指定のカスタムスタイルでコンテンツを生成する「生成マッチ」(Generative Match)、写真スタイルの画像調整を可能にする「写真設定」(Photo Settings)、コマンドの追加や言い換えを支援する「改良されたプロンプト」(Improved Text Prompt)などの機能が追加されており、画像生成時の柔軟性が上がっていることが特徴となる。
生成マッチでは、ユーザーがFireflyに対してテキストでこういう画像を生成してほしいと指示を出せるが、その時に事前に用意されているリストから画像を選択するか、サンプルとなるような画像をアップロードすることで、よりユーザーの好みに近い画像を生成できる。
たとえば、自動車の画像を生成してほしい場合でも、その自動車がオープンカーなのか、4ドア車なのか、SUVなのかで指示も違ってくるだろう。そこで、自動車と指示を出すのと同時にオープンカーの写真をアップロードすれば、ユーザーの望みに近い画像を生成AIが生成してくれる。
Firefly Vector Modelは、その名の通りで、ベクター画像を生成してくれるAIになる。Adobeは長年ベクター系のドローイングツールとして「Illustrator」を提供しているが、Firefly Vector ModelはそのIllustratorのノウハウを応用して生成AIのモデルとしたものになる。
最初の実装は今後ベータ版として「Illustrator」に実装される予定の「テキストからベクター生成」(Text to Vector Graphic)で、テキストで指示を出すことで生成AIがベクター画像を生成してくれる。そこからユーザーが自由に編集したりすることなども可能になる。
Firefly Design ModelはAdobe Firefly Image Model、Adobe Fonts、Adobe Stockと協調して動作する生成AIで、ユーザーのテキストによる指示を元にデザインのテンプレートを自動生成してくれるAI。Adobeのデザインツールとなる「Express」に「テキストからテンプレート生成」(Text to Template)として実装されている。
Fireflyを利用した生成AIやLightroomのぼかし機能などの新機能がCCアプリに追加される
そうした生成AIモデル「Firefly」のバージョンアップと同時に、Adobeのクリエイター向けツールの「Adobe Creative Cloud」の各種アプリケーションのバージョンアップも行なわれ、新機能などが追加されている。
AdobeはCreative Cloudを「年額・月額」などのサブスクリプション型ソフトウェアサービスとして提供しており、WindowsやmacOSなどにインストールできるローカルアプリケーションには、適時アップデートを提供している。中でも、最も大規模にアップデートが提供されるのがAdobe MAXに合わせて投入されるバージョンアップで、今回のAdobe MAXでもそれを踏襲した形となる。今回もIllustrator、Express、Lightroom、Premiere Proなどの代表的なソフトウェアに生成AI関連の機能などが追加されている(PhotoshopなどはMAXに先駆けて最新版=バージョン25がリリースされているので今回大規模アップデートは用意されていない)。
Illustrator
ベータ版として「テキストからベクター生成」機能が用意される。Firefly Vector Modelを利用した機能で、テキストプロンプトからさまざまなアイコンやシーン、パターンなどのベクターを自動生成し、それをベースにして編集して活用が可能になる。
そのほかにも、アウトライン化されたテキストからフォントを素早く識別して編集可能にするリタイプ(Retype)、画像やグラフィックスなどをリアルな画像の商品写真やモックアップに素早く変換できる「モックアップ」などもベータ版機能として実装される。また、Photoshopと同じようにIllustratorにも機能限定のWeb版が登場する。
Express
Fireflyを利用した生成塗りつぶし機能の追加と、Firefly Design Modelを利用したデザインテンプレートをAIが自動生成してくれる「テキストからテンプレート生成」(Text to Template)が追加される
Lightroom
撮影後に写真のあらゆる部分にぼかしを入れられる「ぼかし(レンズ)」(Lens Blur)の機能が追加される。通常は高価なレンズを使ってぼかしのある写真を撮るのだが、このエフェクトを利用することでそうしたレンズを使っていない写真でもぼかしの入った写真にできる。
また、モバイル版のLightroomのUIが更新され、ツールバーに人気のある機能が優先的に表示されるようになり、編集効率が向上している。また、Adobeなどが主導している「CAI(Content Authenticity Initiative)」のコンテンツクレデンシャル機能が強化され、より多くのファイル形式に対応する。
Premiere Pro/After Effects
Premiere Proのベータ版では、SNSへの投稿機能が強化される。Premiere Proから「Instagram」、「Facebook」、「YouTube」、「TikTok」などのSNSに動画を直接投稿することが可能になる。
以前から搭載されているAIを利用しているPremiere Proの「文字起こしベースの編集」、After Effectsの「ロトブラシ」の機能などが強化される。また、Premiere Proからは「共有」ボタンを押すだけで。Freme.ioへのアクセスも可能になる。
そのほか、Premiere Proのタイムラインパフォーマンスが5倍高速化されるほか、新しいカラー環境設定とトーンマッピングの強化などにより、色合わせのユーザー作業の低減が実現される。
Stock
テキストプロンプトを画像に変換する「テキストから画像生成」と、数クリックで画像の背景を拡張したりアスペクト比を変更したりできる「生成拡張」など、Photoshopに導入されていたような画像生成の機能がStockにも実装される。また、Premiere Proなどの動画ツールで利用できる新機能「ビデオテンプレート」が用意される