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ムーアの法則、その昔は「モーアの法則」だった!?

ゴードン・ムーア氏の日本語表記はその昔「ゴードン・モーア」氏だったという驚きの展示

 今年(2023年)3月に「ムーアの法則」の提唱者として知られ、半導体メーカーIntelの共同創業者のゴードン・ムーア(Gordon Moore)氏が逝去されたニュースは、半導体産業にとって悲しみをもって迎えられた。

 そうしたムーアの法則が、実は昔はモーアの法則だったという事実をご存じだろうか? いや、実は筆者も知らなかったのだが、ゴードン・ムーア氏が昔作った日本語の名刺にはムーア氏の名前が「モーア」になっていたのだ。その名刺、カリフォルニア州サンタクララにあるIntel本社のIntel MuseumというIntel公式の博物館に展示されている。

Intel Museumに創業者や歴史的なマイクロプロセッサなどに関わる展示

Intel本社のRNB(ロバート・ノイス・ビルディング)。Intel従業員には本社というより、RNBという略称で親しまれている

 Intelは世界各地に拠点を持っているが、本社は創業の地であるカリフォルニア州サンタクララに今でもある。本社ビルの名前は、略称ではRNB、正式名称ではロバート・ノイス・ビルディングという、ゴードン・ムーア氏と一緒にIntelを創業したロバート・ノイス氏の名前が冠せられている建物になっている。

 本社ビルにノイス氏だけの名前がついているのは、ノイス氏が1990年に60歳で亡くなっていたためで、今年亡くなられたゴードン・ムーア氏や、2016年に亡くなられたIntel中興の祖と言ってよいアンディ・グローブ氏とは異なり、Intelとしては早く歴史になったということが影響していると考えられる(もちろん今後そうした創業者たちの名前が冠せられる可能性はあるが……)。

入り口に掲げられているロバート・ノイス・ビルディングの表示
RNBの側面に飾られているゴードン・ムーア氏の遺影

 現在のRNBの側面には、ゴードン・ムーア氏の顔写真が掲載されている。Intelとしても、半導体産業に多大な貢献をされたムーア氏の死を悼み、そして哀悼の意をささげるという意味があるのだろう。

Intel Museumの入り口

 そのRNBには以前から「Intel Museum」というIntel公式の博物館と、Intel公式グッズを販売するカンパニーストアが設置され、何か特別なイベントなどがない限りは、一般の来場者にも公開されている。

4004の展示、有名なビジコンの電卓も……
8086と初代IBM PC
Intelの歴史CPU、もはや懐かしいPentium ProやPentium IIなども展示されている

 基本的には、Intelの最初のマイクロプロセッサとなる4004や、IBM PCに搭載されてその後Intelが飛躍するきっかけになった8086などのマイクロプロセッサが多数展示されている。それらに関しては以前から同じ展示だったのだが、最近はいくつかの展示が追加されている。その代表なのが、この記事のトップ写真のゴードン・ムーア氏の名刺だ。

ロバート・ノイス氏の日本語の名刺

 創業者の名刺に関しては以前からロバート・ノイス氏の社員バッジや名刺が展示されており、ノイス氏の名刺は日本語版が展示されているなど、いち早く日本法人を作って日本でビジネスを始めたIntelと日本の関わりがよく分かるようになっている。

 以前来た時にはそのムーア氏版はなかったのだが、今回訪れたところゴードン・ムーア氏の名刺が多数展示されていたのだ。おそらくムーア氏逝去の報により追加された展示ではないかと思うのだが、係の人に確認したのだが、いつから展示を行なっているかは分からないということだった。

1980年代Intelの公式見解は「ムーア」ではなくて「モーア」だった

ゴードン・ムーア氏の名刺展示

 筆者にとって驚きだったのは、その展示されていたムーア氏の名刺群の中にあった日本語の1枚だった。そこには「インテル コーポレーション 会長 ゴードン モーア」と書かれていたからだ。

 ムーア氏がIntelの会長だった時期は1979年からとされており、1980年代あたりにこの名刺を使っていたと推測できる。つまり、その頃のIntelの公式見解では日本語表記はムーアではなくモーアだったのだ。つまり、ムーアの法則もモーアの法則だったということだ……。

特別展示
初期のIntelの社員名簿。社員番号1はロバート・ノイス氏、2はゴードン・ムーア氏、そしてアンディ・グローブ氏は4番目ということが分かる
カンパニーストア

 なお、現在は特別展ということで、Intel上場時の書類やそのお祝いの時に振る舞った、Intelロゴ入りのワインのボトルといった展示も行なわれている。もし、シリコンバレーに行ったときに、時間があればぜひサンタクララのIntel本社にあるIntel Museumを見に行って見てはいかがだろうか。来場予約などもできるので、詳しくはIntel MuseumのWebサイトをご参照いただきたい。